21世紀のキーワード―平和・人権・環境

長野県平和・人権・環境労働組合会議

気骨の労働弁護士・宮里邦雄さんの逝去を悼んで

長野県の「21世紀の労働運動研究会」の専任講師として16年

国鉄闘争など数々の労働争議で労働者を激励、弁護活動を展開

7月1日 東京で開いた偲ぶ会に500人が参列し追悼

労働運動研究会で講演する宮里邦雄弁護士

弁護士で日本労働弁護団の元会長、宮里邦雄さんが今年2月5日、83歳で亡くなられました。

宮里さんは、弁護士になって以来、労働者のさまざまな活動を支援し、一貫して「労働弁護士」として活動されてきました。国鉄闘争をはじめとする数々の労働争議にも関わり、虐げられた労働者、解雇された労働者などに寄り添って活動された弁護士でした。

県労組会議は、2007年から「21世紀の労働運動研究会」を発足させ労働問題に関する様々なテーマで講座を開いています。今年で17年目となる労働運動研究会ですが、宮里さんには、1回目からご病気になられて体調を崩される前の2020年まで毎年欠かさず講師を務めていただきました。

宮里邦雄さんのご逝去をに改めてお悔やみ申し上げるとともに、心から追悼の意を表します。安らかにお眠りください。

7月1日は84歳の「誕生日」 宮里さんへの思いがあふれた偲ぶ会

7月1日には、東京都内で「宮里邦雄弁護士を偲ぶ会」が開かれ、5百人を超える関係者が参列しました。以下は、東京共同法律事務所のホームページに掲載された偲ぶ会の様子を伝える記事です。

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7月1日、宮里さんが存命であれば84才の誕生日でした。
会場には400人を越える宮里さんを偲ぶ方々が参加され、宮里さんがいつも提唱していた「労働組合は、団結なくして勝利なし」の信念を確認しあう熱気あふれる2時間になりました。そして、宮里さんの温厚で決して怒らず、情熱と信念をもって相手方を説得するまねのできない人格のすばらしさを確認しあいました。
この偲ぶ会は、東京共同法律事務所と日本労働弁護団の共同主催でした。労働弁護団の先生方の宮里さんの思いと活動を是非若手弁護士に伝えたいという願い、そして東京共同の弁護士と事務局メンバーにとって恩師であり、慈愛あふれる父親であり、いつも心の支えであった宮里さんを偲ぶ思いがあふれる感動的な会でした。
冒頭の中川亮弁護士が沖縄に2度、大阪に1度出張して作った宮里さんを偲ぶ10分間余のビデオ上映、そして宮里さんがこよなく愛したモーツァルトのレクイエムの音楽家ユニオンによる演奏と、宮里さんのお孫さん宮里夏生さんのテナーサックスとの合奏。つづいて、主催者代表の山口広、徳住堅治両弁護士とのあいさつあたりで会場は宮里さんを偲ぶ雰囲気につつまれました。労働法の大家菅野和夫さんの宮里さんを偲ぶお話、国労組合員の国鉄民営化を口実とした大量解雇を宮里さんと10年余ともにたたかった元委員長高橋伸二さんの話。どの話も本当に感動的でした。しばしの食事休憩のあと、東京共同で1年実務経験して沖縄で活躍している金高望弁護士と、関西生コン労組の不当刑事弾圧を支援してきた宮里さんを思う小谷野毅さん、日本労働弁護団を宮里さんと引っ張ってきた棗一郎弁護士、宮里さんのたくさんの原稿と生の声からひろった発言集「宮里邦雄かく語りき」を中心でまとめた海渡雄一弁護士の各あいさつ。
そして最後に宮里さんの息子さん、宮里邦哉さんの父を思うウィットあふれるごあいさつと、娘さんの菅純子さんのあいさつで終幕。
海渡雄一、新村響子両弁護士のあたたかい司会で熱気一杯の会は終了しました。
この会にご協力いただいた皆様に心から感謝申し上げます。
なお、前述した2023年7月1日刊「宮里邦雄かく語りき」(旬報社)を、著者特別価格割引1600円(定価1800円)にて販売いたしております。東京共同に電話でもメールでもいただければ郵送しますので是非手にとって読んで下さい。

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宮里邦雄さんの弁護士活動50周年を記念して出版

『労働者の権利 軌跡-展望』への寄稿文(2015年5月)

宮里先生の労働者への深い愛情を感じる講座

―長野県の「21世紀の労働運動研究会」主任講師を務めていただいて

長野県平和・人権・環境労働組合会議事務局長 喜 多 英 之

1.二つ返事で引き受けていただいた「21世紀の労働運動研究会」の主任講師

「今の労働運動に取って必要な企画ですね。引き受けます」―2006年一1月、東京共同法律事務所を訪ねたときの宮里邦雄先生の言葉だ。

長野県平和・人権・環境労働組合会議(県労組会議)では、若い世代や現場の労働組合活動家に学習と交流の機会をつくるため、「21世紀の労働運動研究会」を発足させて、年間を通して定期的に講座を開き、社会的労働運動の復権につなげたいと構想を練っていた。

その構想の最も重要なポイントとなる主任講師。「何とか宮里先生にお願いできないかな」とみんなで相談していた。ただ、宮里先生は東京を拠点に活動しておられるし、全国的なネームバリューもあり、講演料なども多額になるだろうから、難しいだろうと感じていた。

「当たって砕けよ」と2006年11月のとある日、新宿の東京共同法律事務所を訪ねて宮里先生に直談判。「研究会」の構想をお話しさせていただいた。そして冒頭のご返事をいただいたのだった。講演料も格安で、忙しい合間を縫って長野県に来ていただけるという。さらに日本労働弁護団の弁護士を中心にそうそうたる講師陣も紹介していただいた。「産別や企業の壁を乗り越えて、労働運動の再生に向けて学習したいという、あなたたちの設立趣旨に賛同したからね。私の知識と経験が少しでも役に立てば」と宮里先生は快諾の理由を述べられた。

2.労働運動が企業主義的傾向を強める状況への宮里先生の危機感

宮里先生が「21世紀の労働運動研究会」の主任講師を引き受けていただいた背景には、先生自身の現在の労働運動に対する危機感があるのだからと思う。

労働運動が「冬の時代」と称されて久しくなる。労働組合への組織率は2割を切り、春闘をはじめとする社会的公正労働基準の確立のための労働運動の波及力も弱くなり、パート・派遣などの非正規雇用労働者の増大により、正規労働者との賃金・労働条件格差は広がるばかりだ。また、所得や資産、雇用、社会的地位など社会のあらゆる分野で格差が拡大し、新たな「階級社会」が日本に出現している。

特に現在、安倍政権の下で新たな装いを羽織っての「新自由主義政策」が進められ、労働分野でも財界の意向を全面的に受け、労働法制の大改悪が強行されようとしている。戦後の労働運動によって闘い取ってきた労働判例や、労働法制の規制が一挙に改悪されるきわめて重大な局面に立たされている。

まさに今、労働運動が社会的な影響力を発揮するときだ。労働運動が正規・非正規を問わずすべての労働者の生活と権利を守る社会的責任を果たさなければならない。

しかし残念ながら、現在の労働組合運動の主流は、企業主義的な傾向をますます強めていると言わざるをえない。労働者・労働組合が企業ごとに分断され、企業経営者への対抗力を失うだけでなく、企業間競争に勝ち抜き、企業利益をいかに実現するかという発想に陥っている労働組合幹部も少なくない。労働組合を担う役員や活動家が、企業の動向や企業利益に敏感になり、内向きの発想になっている現状は否定しがたい事実である。

宮里先生は、このような傾向を強める労働運動に対して強い危機感を感じておられるのだろう。私たちの「研究会」が「社会的労働運動の復権」という目的を掲げたことに共感をしていただいたと思っている。

3.受講者の共感を呼ぶ宮里先生の講演―労働者・労働運動への温かい激励・期待

「21世紀の労働運動研究会」の記念すべき第1回講座は2007年1月、長野市内に約80人の参加者を集めて開いた。講座は、宮里先生をメイン講師としたパネルディスカッションだった。

宮里先生には講座の冒頭で「労働組合の役割」というテーマで講演していただいた。

宮里先生はまず「1965年に弁護士になって以来、一番力を入れて生きがいを感じてきたのは労働問題だった。労働裁判、労働委員会、労働運動に携わってきて、多くの解雇された労働者や労働組合と付き合い、そのなかで労働組合のあり方とか役割などについて、労働者と伴走しながら考えてきた」と前置きし、「解雇・雇い止め、退職勧奨、配転や出向、転籍、偽装派遣など、労働者の雇用の質が、これほど悪くなった時代はない」と指摘。これらの劣化する雇用、労働条件などの問題解決のために労働組合が果たすべき役割がかつてなく大きいと強調された。そして、宮里先生は、労働組合は「対使用者という企業内の役割と社会的な役割」と二つの役割を背負っていると述べ、「雇用における非対等な関係」を改善し、労働者同士の競争を、連帯・絆によって規制する企業内における労働組合の役割、そして「労働者の団結を通じて、未組織労働者を含めた全体的な労働条件の向上、水準の引き上げ、標準化という労働条件に対する社会的な規制という役割」を果たすことが求められ、「労働組合は単に組合員のため、労働者だけのための存在ではなく、広い意味での社会的な運動の担い手である事が期待されている」と強調された。現在の「労働組合の危機」を乗り越えるために、地域合同労組などの地域労働運動と産業別労組がお互いを補っていく運動、さらに非正規雇用の増大に対応し、正社員との格差、分断化、差別化の是正に真正面から取り組むことが重要だと指摘された。宮里先生は最後に「労働者の団結にとって今日的なキーワードは『自立と連帯』だ」と述べ、「労働者一人ひとりが権利意識を磨き、企業内の連帯から企業の枠を越えた連帯へ」広げていこうと締めくくられた。

この講座での宮里先生の講演は、これからの労働組合の役割―「社会的労働運動」をめざす意義をわかりやすく説明していただき、参加者には深い共感の輪が広がった。

4.温泉とお酒が好きな気さくな人柄

宮里先生には2007年以降、毎年「21世紀の労働運動研究会」の主任講師を務めていただいている。今年で8期目を迎えた研究会は、宮里先生の人柄と人脈に支えられてきた面が大きい。棗一郎弁護士(旬報法律事務所)や小川英郎弁護士(ウェール法律事務所)も毎年講演に来ていただいているが、宮里先生に紹介いただいたことが縁だった。

せっかく信州・長野県まで来ていただいているので、宮里先生には毎年講座の終了後に、温泉場でゆっくりしてもらうのが慣例となっている。信州には様々な泉質の温泉地があり、山の幸も含めて宮里先生と杯を酌み交わし、労働運動について語り合う機会を与えられて、大変光栄に思っている。

宮里先生の人柄をあらわすエピソードを一つだけ紹介する。宮里先生が結婚して間もない頃に、「夫婦で長野県の浅間山を見てゆっくり温泉につかりたい」と思い立ち、松本市の「浅間温泉」の旅館に来てみたものの、肝心の浅間山は見えない。よく調べてみると浅間温泉と浅間山は直線距離で約50㎞も離れていた。同じ名前だからさぞ近くに浅間山が見えるだろうという早とちりで浅間温泉に来てしまったというエピソードだ。

講演の際でも酒席でも、宮里先生からは気さくな人柄と合わせて、労働者への深い愛情と、強き者の不条理・横暴は許さないという信念をひしひしと感じる。労働弁護士一筋に半生を生きてきた人だからこそ、言葉にも説得力と重みがある。

宮里先生なくして「21世紀の労働運動研究会」は生まれなかったし、8年も継続できなかったであろう。労働組合が「冬の時代」から脱却し、労働者や社会から信頼される社会的労働運動の再構築をめざして、今後も宮里先生を研究会に招き続けたいと思う。

研究会第1回講座でのパネルディスカッション(2007年1月)

宮里邦雄さんの弁護士活動50周年お祝い会(2015年11月)

安曇野市・穂高温泉郷で(2014年11月)

上高地・河童橋で(2019年11月)

偲ぶ会を報道する毎日新聞

長野市で「アスベスト(石綿)被害面談・電話相談会」を開設

県アスベスト対策センターが7月2日(日)に

長野県アスベスト対策センターは、アスベスト被害者・遺族やNPO、労働組合関係者などで2018年に結成しました。このたび「NPOじん肺・アスベスト被災者救済基金」の協力により、長野県内の県民・労働者、関係事業者などを対象に、7月2日(日)に長野市で面談・電話相談会を開設します。

アスベスト被害の補償・救済については、労災補償制度(主管:厚生労働省等)と労災以外の救済制度(主管:環境省・環境再生保全機構)によって実施されていますが、制度に対する周知や関係者の認識不足などによって、補償・救済を受けられないで苦労されている患者と家族がおられます。また、中皮腫はじめアスベスト関連疾患の治療について相談先を求めておられる場合も少なくありません。

建設アスベスト訴訟で2021年5月、国の責任が最高裁によって認定され、政府は昨年1月からアスベスト被害にあった建設労働者へ「給付金」を支給する制度をスタートしました。この給付金制度についてもまだまだ周知されているとは言えません。

長野県アスベスト対策センターではアスベスト被害の拡大状況に対応し、過去9回、長野市・松本市で相談会を実施し、補償・救済の促進、情報の提供を行ってきました。実際に労災申請へつながる相談も数件ありました。

今回の相談会を通じて、アスベスト被害の実態を掘り起こすとともに、少しでも悩みや疑問がある人からの相談への対応や、健康被害で苦しんでいる人への救済制度の説明など、身近な相談センターとして親身に相談に乗ります。

◆日  時  7月2日(日) 10:00~16:00

◆相談場所  面談相談 長野県労働会館3階 会議室 長野市県町532-3

◆電話相談 026-234-2116

◆相談料は無料/秘密厳守

◆面談相談を希望される方は事前に連絡を。

2022年7月の松本市での相談会の様子

「災害時の廃棄物処理・アスベスト対策を考える学習会」-長野県アスベスト対策センター第6回総会-

災害時の廃棄物処理・アスベスト対策を考える

長野県アスベスト対策センターは、5月19日にJA長野ビルで、第6回総会後に「災害時の廃棄物処理・アスベスト対策を考える学習会」を開催しました。長野県内の自治体の廃棄物処理の担当者を中心に会場・Zoomを合わせて60人が参加しました。

今回の学習会は、昨年9月に開催したシンポジウム「令和元年長野市台風19号災害におけるアスベスト対策」で報告された長沼地区(千曲川の堤防が決壊)や長野市の取組みとその教訓について、県下の自治体間で広く共有することを目的として開催しました。長野県、長野市、松本市のほか多くの町村から担当者が参加されました(13自治体)。

学習会では、元長野市長沼地区住民自治協議会会長の西澤清文氏(報告Ⅰ)、長野市環境保全温暖化対策課(被災時)の桑原義敬氏と長野市環境部廃棄物対策課の中嶋隆夫氏(報告Ⅱ)、中皮種・じん肺・アスベストセンターの永倉冬史氏(報告Ⅲ)からそれぞれの取り組みや見えてきた課題について報告をいただきました。

長野県アスベスト対策センター鵜飼代表

【来賓挨拶】長野県環境部資源循環推進課 滝沢課長

【報告Ⅰ】堤防が決壊した長沼地区での災害ゴミ対策の教訓

元長野市長沼地区住民自治協議会会長 西澤清文氏

報告Ⅰで登壇した元長野市長沼地区住民自治協議会会長の西澤清文氏からは、「台風19号災害時の長沼地区での災害ゴミ対策の教訓について~その経緯と課題~」と題して、災害に備えて長沼地区で行ってきた取り組み(地区防災計画等)、発災初動対応期の長沼地区での実態(災害ごみ勝手仮置き場等)、Operation One Naganoの取組みや、災害ゴミ分別チラシへのアスベストの記載についてなど、災害現場でどういうことが起きていたか具体的にお話いただきました。そこから見えてきた災害廃棄物(災害ゴミ)への対応と教訓、課題について共有していただきました。

長沼地区の「勝手」仮置場の実態

地権者・管理者に了解をとったうえで確保された仮置場

アスベストの注意喚起の記載がなかった災害ゴミ分別チラシ

災害に備えて普段から準備をしておくことが重要

【報告Ⅱ】長野市のアスベスト対策・災害廃棄物処理の取組み

台風19号災害に対応した長野市担当者からの報告

報告Ⅱで登壇した長野市の桑原氏からは、①「大規模災害発生時(令和元年東日本台風災害)の石綿飛散防止の対策について」と題して、被災地での石綿防止対策として実施した緊急的な対応及び計画的な事業の手順とその内容(災害廃棄物仮置場等でのモニタリング調査、建設業及び解体工事事業者への注意喚起、ボランティア・被災者への情報提供、解体作業現場の立入調査の実施、不適正な事例紹介)について報告いただきました。

また長野市の中嶋氏から②「台風19号災害での災害廃棄物処理の取組について」と題して、災害廃棄物仮置場の選定、災害廃棄物仮置場の準備で注意したこと(高さ、危険物、動線、無関係な廃棄物の持込禁止)、被災世帯への周知、実際の運用のなかでのアスベストの分別状況、仮置場周辺で発生した渋滞や災害ゴミの発熱などさまざまな問題について報告いただきました。

そのなかで、長沼地区などで発生した自主仮置場の解消に向けて、内閣府・国交省・環境省・自衛隊・NGO・長野県・長野市による「自主仮置場の解消に向けた打ち合わせ会議」(11月26日までに延べ24回開催)が開催され、関係者が連携して赤沼公園・大町交差点に災害廃棄物を集積し、郊外の仮置場へ搬出するフローが構築され搬出が開始されたこと、「オペレーションONE NAGANO」と称して昼間は市民・ボランティア・行政職員等が廃棄物を赤沼公園に搬入し、夜間に自衛隊が赤沼公園から郊外へ搬出する活動が実施されたことなどを詳しく説明いただきました。

反省点として、鉄板(砕石)が用意できず、廃棄物の運搬に伴い周辺の道路が泥で汚れ、苦情が発生した仮置場があったことや、被災地以外での仮置場は廃棄物の保管が長引くと住民の苦情が発生する(付近住民の理解必要)ことなどを挙げられました。

今後もいつどこで発生するかわからない災害に備えて、長野市の経験を検証し、その教訓を今後に生かしていくことの重要性が伝わりました。

 

 

【報告Ⅲ】東日本大震災・熊本地震でのアスベスト対策

中皮種・じん肺・アスベストセンター 永倉冬史氏

報告Ⅲでは、「中皮種・じん肺・アスベストセンター」の永倉冬史氏から、「東日本大震災・熊本地震でのアスベスト対策」と題して支援活動の内容とその教訓について報告をいただきました。

被災地で撮影された写真から、がれきのなかにアスベスト含有建材の破片や鉄骨に吹き付け材があること、がれきを重機で搔き集める際に粉塵が発生することなどが示され、住民やボランティアがアスベストに曝露することを防ぐために、現地で行われた防じんマスクの装着のレクチャーや、解体現場を見守る住民へのマスク配布などの活動について報告いただきました。

また「中皮種・じん肺・アスベストセンター」の被災地でのアスベスト調査活動(マッピング、石綿濃度測定など)と被災地での報告活動(調査結果の報告)の取組みについても、東北や熊本での実際の活動事例を挙げながら解説いただきました。

東日本大震災沿岸部の被災地での活動の様子

 

震災等災害時のアスベストリスクの検証

災害時のボランティアの曝露が懸念されている

アスベストの危険性を住民に周知しておくことが重要

熊本地震でアスベスト汚染はあったのか

阪神大震災、東日本大震災での吹き付けアスベスト飛散の経験から、環境省が早い段階で対応について指示を出し、業界団体が熊本県、熊本市に協力して建物調査を実施でき、吹き付けアスベストのある建物19棟を特定し、飛散防止対策、除去工事を実施できたことなど熊本地震では過去の大地震の際にくらべ適切に対応できたことも多く学ぶべき点が多いことが指摘されました。

教訓として平時から吹き付けアスベストの有無を調査・把握しておくことの必要性、防災計画にアスベスト対策をきちんと入れること、行政では緊急時対応訓練、図上演習の実施の重要性が指摘されました。

アスベスト含有建材への対策が丁寧に実施されている

 

災害発生前から防塵マスクを備蓄しておくことが大切

 

災害が起きる前から備えることの重要性

石綿輸入量と中皮種死亡者数の推移(日英比較)

最後に、イギリスでのアスベスト輸入量とアスベスト被害のグラフから、今後、大量にアスベストを輸入・使用してきた日本でも中皮種などのアスベスト被害が顕在化していくことが予想されることが指摘されました。災害時だけでなく、アスベスト建材を使用した建造物の老朽化もすすみ解体工事が増えていくことから、新たな被害が生まれる可能性が高まっていくことが危惧されます。永倉氏は報告の最後に、子どもたちに負の遺産を残さないためにと訴え、今後の取り組みが重要になってくると強調しました。

日本でも被害の拡大が予想される

【学習会参加者アンケート紹介】

アンケートには、非常に参考になったと言う声や、アスベストを知らない若い世代がいることへの驚きなどの感想が寄せられました。

アスベストの危険性を知らない世代にどう伝えていくかなど新たな課題も見えてきた学習会になりました。

報告Ⅰ 感想

・各地区において防災計画を策定しているということを聞いて大変驚きました。自治会での動き、また市・県の動きの経過ごと示したフローも分かりやすく非常に参考になりました。

・災害発生時は、突然の事であるので、どうしても個人対応になってしまうと思う。自分の事で精一杯で、他人の事を心配している状況にない。台風19号の時は、私は、松代地区にボランティアに入ったが、青垣公園のゴミ捨て場に行ってもアスベストに関する情報が無かった。やはり、行政が災害時のマニュアルを作成する事が大切と感じた。

報告Ⅱ 感想

・水質汚濁事故の対応だけでなく、公費解体の立入り検査など、アスベスト対策に関してお聞きし勉強になった。仮置場の運営、また設置前の備えなど、事前にどこまで対策を行えるか考える機会になった。

報告Ⅲ 感想

・東日本大震災時のお話など、住民の方がアスベストにばく露する危険性が高まることを改めて感じた。アスベスト台帳など事前の備えの重要性を感じた。

・自治体の若手職員がアスベストのことを知らないのはおどろいた。周知は必要と感じた。今後の被害者の増加が心配だ。

アンケートに寄せられた声

長野県アスベスト対策センター第6回総会

午前には同会場で、長野県アスベスト対策センター第6回総会が開催されました。2022年度の活動経過報告、決算報告、2023年度の活動方針、予算などが確認されました。県アスベスト対策センターは、今後もアスベストの危険性を多くの方に知っていただき、災害時におけるアスベスト被害を防ぐために活動をすすめていきます。またアスベスト被害に苦しむ当事者とその家族の相談支援、裁判支援等を継続していきます。

【県アスベスト対策センター今後の予定】

7月2日(日曜日)に第10回アスベスト被害面談・電話相談会を開催します。過去の相談会で寄せられた相談から労災申請にも繋がっています。アスベストの健康被害を抱える方や不安を感じている方、アスベスト加工を業務とする事業者などからの相談をひろく受け付けます。

※相談料は無料/秘密厳守 ※面談相談を希望される方は事前にご連絡ください。

日時 2023年7月2日・日曜日 10:00~16:00

面談相談 長野県労働会館3階 第2小会議室/第3小会議室

電話相談 026-234-2116

 

会社破産で全員解雇された蔦友印刷労組組合員に支援を

労働債権の確保、再就職の実現を 対策会議を設置して支援活動

蔦友印刷株式会社本社

長野市の蔦友印刷株式会社が約12億4千万円の負債を抱えて長野地裁に破産を申請し、4月3日、裁判所が破産手続きの開始を告知しました。

労働者は3月30日付で全員解雇されました。今後、労働債権である未払いの退職金支払い、労働者の再就職が焦点となっています。長野地裁が選任した破産管財人が会社資産を管理し現金化、清算して債権者に支払うこととなります。退職金を含む労働債権は、優先的な債権です。

蔦友印刷労働組合の組合員は23人。解雇された組合員の退職金を何としても確保し、組合員が希望する再就職を実現するために、県労組会議、長野地区労組会議、印刷フォーラムながのは、対策会議を設置して支援活動を展開しています。

現在、解雇された組合員の当面する生活資金の一助になるように支援カンパ活動に取り組んでいます。ぜひ多くのみなさんから、あたたかいカンパをよろしくお願いします。

◆支援カンパをお寄せいただける方は県労組会議事務局までご連絡を

県議選で推薦・支持候補7人が当選

労働者の声が届くリベラルな県政をめざそう

4月9日、投票が行われた長野県議会議員選挙では、県労組会議が推薦・支持する7人が当選を果たしました。

県労組会議は昨年8月に行われた県知事選で阿部守一知事を推薦しました。これは、阿部知事の12年間の県政運営を総合的に評価すると、私たちが掲げる理念・政策とおおむね方向性を共有していると判断したからです。ただ、県議会を構成するほとんどの県議が阿部知事を支持する状況のなかで、県政のスタンスがどちらかというと産業界や保守政党に向き、勤労者の声はかき消されがちになっています。県労組会議は、労働者・勤労者の声を代弁し、暮らしや平和、民主主義、人権を最優先するリベラルな県議会議員の存在が必要だと考えています。

今回当選した7人の推薦・支持議員と一緒になって、労働者の声が届く県政をつくっていきましょう。

県労組会議が県議選で9人の候補を推薦・支持

投票日は4月9日 くらしと平和を守る一票を

3月31日告示、4月9日投票で県議会議員選挙がスタートしました。県労組会議は、民主主義と平和、勤労者のくらしを守る県政を推し進めるため、9人の候補を推薦・支持しています。

関西生コン事件のドキュメンタリー映画を80人が鑑賞

主役の組合員・松尾聖子さんも来場して訴える

約80人が映画を鑑賞

松尾聖子さんと西澤かおりさんの対談

県労組会議や県護憲連合、I女性会議などでつくる実行委員会は2月18日、長野市の県労働会館で、建設や生コン関連の労働者でつくる「全日本建設運輸連帯労働組合」(全日建連帯労組)関西地区生コン支部に対する使用者団体や警察などによる大弾圧事件をテーマにしたドキュメンタリー映画「ここから『関西生コン事件』と私たち」上映会を開きました。休みの日の午前中にもかかわらず約80人が参加し、関西生コン支部の女性組合員・松尾聖子さんを主役とした映画を鑑賞しました。

映画は、ストライキやビラまき、建設現場の法令違反是正を求める調査・申告活動(コンプライアンス活動)などの正当な組合活動は、労働組合法で刑事免責が明記されているにもかかわらず、威力業務妨害、強要未遂、恐喝未遂といった刑事事件にでっち上げられ、のべ81人もの組合員が逮捕、起訴(66人)された労働運動史上でも類を見ない大弾圧事件を、一人の女性組合員の生活や活動、思いを描写するなかで弾圧の不当性を訴えています。

上映会場には、主役である松尾聖子さんも駆けつけてくれました。映画上映の後、私鉄アルピコ労組川中島バス支部の西澤かおりさんとの対談も行われました。対談の司会は、I女性会議の松澤佳子さん。

参加者のアンケート回答には、「このような異様な弾圧事件を知らなかった。労働者の権利を守り抜くために支援しなければと感じた」「普通の女性労働者が悩みながらも闘う姿に感動した」などの感想が寄せられました。

「労働組合があったから働き続けられた」

松尾聖子さんと西澤かおりさん(アルピコ労組)の対談(要旨)

対談後に3人で記念撮影。

松澤佳子(司会) 松尾さんも、西澤さんも「労働組合があったから働き続けられた。闘ってこられた」と感じていますね。

松尾聖子 生コン業界は労働組合の影響がすごく強くて、労働組合に入っていない人でも賃金とかは高い。組合員と同等になっていたので。知り合いに紹介してもらって、初めて小型のミキサー車を乗った時も「賃金をなんでこんなにぎょうさんもらえるんやろ」と思った。職場を移動し、労働組合が三つあった。組合に入っていない人たちは、組合をよく思っていなかったけど、でも、組合があるから賃金や労働条件が良いと分かってはった。男女平等なので女だから賃金が安いこともなかったし、何か決めるときでも対等で決めていくこともすごいなと思った。労働組合で学習とか活動していると、言いにくいことも言えるようになるし、周りもちゃんと理解しようとしてくれるから、一人では何もできないけど仲間が増えていって理解が広がっていった。

松澤佳子 映画の中でも「男女関係なく仲間だ」と言っている人がいたけど、労働組合が民主的に運営されているのが本当に必要だと感じた。

西澤かおり ユニオンショップなので、入社したら組合員になる。何もわからずに組合員になっていた。映画を見たとき「私甘っちょろいな」と感じた。守られているのが当たり前だとずっと思っていたので、それが当り前じゃないんだと実感させてられた。私が労働組合が一番ありがたいなと思ったのは、2000年に小泉政権の下で規制緩和が進み、バス料金が安くなって、バスガイドは別料金になった。そこで会社から労働組合のない「子会社に行きなさい」と条件が提示された。やめるか、事務員になるか、バス運転手という選択も示された。私は、仲間と労働組合に支えられてこの仕事を続けられてきたので、一大決心をして大型二種を取ってバス運転手になった、労働組合やまわりの人に助けられたから、バス運転手として働き続けられている。

松澤佳子 今コロナ禍で仕事がなくなり賃金が下がり、すごく退職者が増えていて、どう思っているか。

西澤かおり 女性の仲間をたくさん迎え入れることができた。その女性たちが働き続けられるために、私が訴えていかなければならない。家庭もあって仕事もあるので、女性が男の働き方と一緒でなくてもいいと思う。家庭と仕事が両立できる職場をつくっていきたい。朝の6時から夜の8時までの間で女性を働かさせてほしいと会社に求めている。子どもが大きくなったら朝早い仕事や夜遅くてもいいと思うが。長く働き続けられるために労働組合があると思う。

松尾聖子 弾圧でやめて行った人がすごく多い。連帯労組と一緒に沈みたくないという人もいて、誰も止められずに辞めていったことがつらかった。

松澤佳子 映画の中での聖子さんの「間違ったことをしていないから絶対にやめない」という言葉が印象的だった。仲間が去っていく中でも活動し続ける原動力は。

西澤かおり 仲間が一番大切だと思う。入社した時に「お前が一番先にやめる」と言われたが、一番最後まで残っている。おべっかも使わないし、飾らないし、こんな自分を貫き通した。男社会と言われるバス業界で、私を理解してくれた仲間がいることが原動力。仕事は接客業なので、お客さんと接したときに一言、「ありがとう」と言っていれる人がいるとがんばっていこうと思える。

松尾聖子 関西生コン支部も人と人とのつながりを大事にしている。自分もストレスをためて、娘や親の前で泣いて、部屋から出られなくなったり、しんどかった時期があったが、関生支部の仲間がずっと声をかけてくれた。人とのつながりを大切にする関生があるからやめない。

松澤佳子 仲間とのつながりや自分のことを正直に出せる、そのことが働き続けていくうえですごく大事で、それが労働組合があるからできるんだと自分自身も感じている。自分も40年間も労働組合活動を続けてきたが、男が多い労働組合の中で女性が声をあげていくことは大変だった。

西澤かおり 映画を見て「私本当に甘っちょろいな」と実感しました。このような闘いを貫き通せるかどうか、ストライキも昔はやったけど、今は世間から怒られるんじゃないかという雰囲気。労働組合が無ければ、一人では声をあげられない。私は仲間に助けられている。聖子さんももっともっと仲間をつくって、さらにパワーアップしてほしい。

松尾聖子 世界では今、若者がストライキを打っている。ストライキを打つことが当たり前の世の中になるように、労働者が団結する世の中にしていきたい。

県交通運輸労組協議会が長野県に交通政策要求を提出

地域公共交通の維持存続に向けた施策の拡充を求める

長野県交通運輸労働組合協議会(県交運/金井俊彦議長)は2月15日、長野県に対し地域公共交通や運輸業界への支援、道路改良や交通安全の確保などの交通政策要求を提出して意見交換しました。私鉄県連や運輸県連、国労、全自交などの産別から11人が参加しました。

政策要求は、1)コロナ禍で利用者が大幅に落ち込んだ鉄道、バス、タクシー業界への支援や、交通運輸関連労働者の賃金減少による生活苦や退職者の増加による人手不足問題への対応、2)2023年4月に長野県は従来の交通政策課を「交通政策局」へ改編するが、街づくりや福祉、環境、産業などさまざまな課題を部局横断的に検討し、総合的な交通政策の立案、3)県内10圏域ごとの地域公共交通計画とそれをつなぐ全県的な地域公共交通計画の策定、4)交通渋滞解消や安全が脅かされかねない道路の改良など22項目です。

県の関係部局の職員と一つ一つの課題について要望を伝え意見交換しました。交通運輸に関係する部局の県職員にとっても現場の生の声を聞く機会は多くありません。バス関係の労働者が仕事量の減少で年間100万円もの収入減となったこと、タクシー関係の労働者も歩合制の賃金のため、利用者減が生活を直撃したことなど、現場の実情も訴えました。

要求書を提出する金井俊彦議長

各部局の県職員との意見交換は2時間を超えた。

「ここから『関西生コン事件』と私たち」上映会を開きます

2月18日に長野市で 主役の松尾聖子さんも来場

建設や輸送、生コン関連産業で働く労働組合でつくる全日本建設運輸連帯労働組合(全日建連帯労組)関西生コン支部に対し、警察や検察、経営者団体などが一体となって弾圧を加えている事件は、現在、裁判や労働委員会などで闘いが継続しています。正当な組合活動を刑事事件化し、81人もの組合員を不当逮捕・起訴した弾圧事件は前代未聞です。関西生コン支部にとどまらず、すべての労働組合の権利に関わる事件だと位置づけられます。もしこのまま、関西生コン支部の弾圧が「正当化」されるならば他の労働組合の活動にも影響が及びかねません。

このたび全日建連帯労組は、映像を通し事件の真実を広く訴えることが重要だとして、ドキュメンタリー映画を制作、昨年秋に「ここから『関西生コン事件』と私たち」(土屋トカチ監督)が完成しました。

映画の紹介文では以下のように記されています。

「襲いかかる警察。つぎつぎに逮捕される組合員。ストライキやビラまきなど当たり前の労働組合活動が、日本ではいつから組織犯罪とされるようになったのか。無法地帯と化した生コン業界で、組合員という理由だけで仕事も奪われていく――。逮捕された組合員のべ81人、組合脱退者500人以上。戦後最大規模の組合弾圧事件=「関西生コン事件」は、仲間と家族を引き裂き、強さを誇った組合は壊滅的危機に陥った。だが、踏みとどまって、苦しみながら、もがきながら、ここから運動を立て直そうとする確かな胎動がある。関生支部の真実と現在を、ひとりの女性ドライバーを中心に描き出す」

県労組会議、長野地区労組会議では、この間、関西生コン支部から組合員をお呼びしてオルグや報告集会などに取り組んできました。今回、上映実行委員会をつくり、一人の女性労働者を通して関西生コン支部事件の真実を訴えるドキュメンタリー映画の上映会を企画しました。

ぜひ多くのみなさんがこの映画を鑑賞していただけるようにお願い申し上げます。

1.上映日時  2月18日(土) 10:00

2.場  所  長野県労働会館 5階 大会議室 長野市県町532-3 電話026-235-3216

3.名  称  「ここから『関西生コン事件』と私たち」上映会in長野

4.主  催  「ここから『関西生コン事件』と私たち」上映会in長野実行委員会

※構成団体 県労組会議/長野地区労組会議/I女性会議/県護憲連合/戦争をさせない1000人人委員会・ながの

5.内  容

①映画上映(74分)

②報告・関西生コン支部事件とは何か 小谷野毅・全日建連帯労組書記長

③対談 松尾聖子・関西生コン支部組合員(映画主役)/西澤かおり・私鉄アルピコ労組川中島バス支部/進行役:松澤佳子・I女性会議

6.上映料金  一人1000円 ※パンフレット付き

7.申し込み  県労組会議まで ホームページ「お問い合わせ」 電話026-234-2116