21世紀のキーワード―平和・人権・環境

長野県平和・人権・環境労働組合会議

2024年 国民・労働者が安全・安心して平和に過ごせる年に

2024年の新しい年を迎えたと同時に1月1日の元日、石川県能登地方で大地震が発生し甚大な人的・物的被害が出ています。また、2日には、羽田空港で日本航空の旅客機と海上保安庁の輸送機が激突・炎上するという衝撃的な事件も発生しました。

また、自民党の安倍派を中心とする「裏金」事件では、改めて自民党・保守政治の「政治とカネ」の問題が根深い問題であり、どうしようもなく政治腐敗が進み、国民の不信感は頂点に達しています。自民党政治に国民・労働者の怒りを真正面からぶつけて、政治変革の年にしていきましょう。

1月4日、仕事始めの日に長野県労働会館に入居する労働団体、労働組合の役職員約60人が一堂に会し、合同新年会を実施しました。

冒頭、一般財団法人長野県労働会館理事長の宇佐美正信氏(県労組会議議長)が「能登地震と航空機事故という衝撃的な事件で年が明けた。被災地への支援活動を早急に展開しよう。また、今年こそ岸田政権の退陣を勝ち取り、政治に信頼を取り戻そう」などとあいさつしました。

来賓として出席していただいたのは、政党代表として、立憲民主党県連幹事長の羽田次郎氏(参議院議員)、社会民主党県連合副代表の布目裕喜雄氏。その他、篠原孝・衆議院議員、杉尾秀哉・参議院議員、埋橋茂人・県議会議員、望月義寿・県議会議員があいさつ。労働事業団体からは、県労福協、県住宅生協の中山千弘・理事長、県労働金庫の小池政和・理事長、こくみん共済coop長野推進本部の村山智彦・本部長があいさつしました。

今年も1年、長野県平和・人権・環境労働組合会議が取り組む様々な運動へのご参加、ご指導をお願いします。

長野県労働会館合同新年会には約60人が参加。

あいさつする宇佐美正信・県労働会館理事長(県労組会議議長)。

 

将来の平和運動を担う若い世代が2泊3日で学習・交流

4回目の平和フォーラム・ピーススクールを開催

11月17日から19日まで、二泊三日の日程で「平和フォーラム2023ピーススクール」が開催されました。

ピーススクールは、平和運動を担う若い世代を育成することを主な目的として、さまざまな課題を丁寧に伝え、共に考える場として開催されてきました。講演やグループワーク、フィールドワークを通して、平和運動や原水禁運動、人権課題などの現状や課題を学ぶ機会とするものです。

今年は、全国各地から32団体の41人が参加し、職種や世代も異なる6~7人でグループをつくり、課題ごとに意見交換をおこない、同世代の仲間と問題意識を共有しました。

公務職場や公共交通などそれぞれの職場の厳しい状況についても知る機会にもなりました。

辻本清美参議院議員、市田真理氏ら充実の講師陣

一日目の辻本清美議員の講演では、学生時代のピースボートの取組みから政治に至った経験から、運動から政治へのコミットメントの重要性、運動と政治の両輪が必要だと訴えられました。二日目の第五福竜丸展示館学芸員の市田真理さんからは、第五福竜丸を保存するために多くの方々が尽力した経過、被害者たちのその後、第五福竜丸事件を巡って日本政府とアメリカやソ連・中国とのせめぎ合い、見落とされがちなマーシャル諸島の住民たちの存在、さまざまな書式で全国から集まった原水爆禁止署名の運動と多岐にわたる視点からこの問題を考えるヒントを頂けました。午後からは在留外国人の置かれた困難な状況、LGBTQの差別問題についての講演が続き、朝鮮大学学生の李さんの差別に立ち向かう民族教育の意義についての訴えに参加者一同圧倒されました。

憲法から第五福竜丸、LGBTQ、在留外国人の差別問題と多岐に渡る課題を学ぶ

密度の濃い熱量の高い講義がつづきファシリテーターの方が記録してくれたホワイトボードがどんどん埋まっていきました。

フィールドワークで訪れた第五福竜丸展示館

市田さんのお話を伺ったあとは、夢の島公園内の林のなかにひっそりとある第五福竜丸展示館を見学しました。実際に目の前にする第五福竜丸の大きさに参加者の多くが驚いていました。当事者が亡くなっていくなかで、どうやって次世代に伝えていくかという問題があることを考えたあとに、実際にモノとして残っているものをしっかりと保存継承していくとりくみも大切な運動なのだと理解することができました。そして当事者ではない市田さんの伝える力についても改めて学ぶことがあると思いました。

最終日のディベートでの葛藤

最終日には、グループワークの総集編として、「安全保障に関する防衛力の強化」「原発推進政策」「労働組合の政治活動・平和運動積極参加」をテーマに、賛成・反対に分かれ、ディベートを行いました。本来の自分の考えと違う立場で主張を展開することの難しさがありましたが、双方の立場からどう伝えたらいいのか考える時間は貴重な経験になりました。防衛力の強化をテーマにしたディベートでは、全港湾出身の参加者から「海外から武器に変わる原料や資材を港で運ぶのは自分たち。運びたくない」と

また、一部参加者はピーススクール終了後に開催された「19日行動」にも参加し、より実践的に学びを深めました。

衆議院議員会館前に並んでスタンディングアピール

ピーススクール終了後に永田町へ

三日間の密度の濃い日程から「難しそう」「大変そう」「ついていけるだろうか」といったイメージを抱えて参加した方がほとんどでしたが、「学びが多かった」「貴重な経験になった」「参加できてよかった」などと最後のあいさつで発言している方が多くありました。

コロナ禍を経て、全国各地から集った参加者同士で交流を深められたことで、実際に会って交流する大切さも確認することができました。

今回得た経験を活かし、これからの活動に活かしていきたいと思います。

駐イスラエル大使館付近ではガザへの攻撃の中止を求めるデモが行われていた

イスラエル大使館周辺には警察の警備車両が停まる

12月6日から10日まで伊藤孝司写真展「平壌の人びと」松本展を開催

朝鮮民主主義人民共和国に対する政府やマスコミなどによる「反北朝鮮キャンペーン」により、「悪の帝国」「独裁国家」などという負のイメージが広がっています。しかし、朝鮮国内では普通の人々が普通の暮らしをしているという当たり前の事実が後景に置き去りにされています。

フォトジャーナリストの伊藤孝司さんは、約200回にものぼる海外取材を重ねています。その中で 「空白」 となっている国、朝鮮民主主義人民共和国を初めて訪れたのは1992年でした。実際に見たこの国が、 日本で伝えられている姿とあまりにも異なることに疑問をもち、日本と関わるテーマを精力的に取材しました。2019年10月までに43回にわたり朝鮮を訪問されました。訪問時に撮った膨大な写真から選択した写真展が全国各地で開かれています。写真は朝鮮の人びとをテーマに、約4割は地方都市で撮影されたものです。

日朝県民会議は、日朝松本市民会議などとともに伊藤孝司さんの写真展を12月6日から10日まで松本市美術館市民ギャラリーBで開く計画です。写真展の開催中に伊藤孝司さんの記念講演会も企画いたしました。お誘い合ってご参加いただけるようにお願いします。

労働者・国民に共感が広がる運動を地域からつくろう

約60人参加した県労組会議定期総会で今年度の運動方針を確認

長野県平和・人権・環境労働組合会議(県労組会議)は10月20日、代議員・傍聴者、来賓など約60人を集め、長野市内で第28回定期総会を開きました。

主催者あいさつで、宇佐美正信議長は「暴走する岸田政権を許さない闘いはまだまだ続く状況。多くの政治課題に対して声を上げていく地道な運動が必ず変えていくことができる力になる」(あいさつ別掲)などと強調しました。

討論では「反核平和の火リレーは7月11日から8月4日まで実施し、ランナー総数635人が参加した。要請した77自治体中64自治体で市町村長(もしくは副市町村長)が直接参加してくれた。この運動が組織強化につながっている」(自治労・中村代議員)、「蔦友印刷が会社破産し、全員解雇された事件では、多大なカンパをいただき心から感謝申し上げる。組合員の半数が就職した状況」(印刷フォーラムながの・原田代議員)、「公共交通を維持していくうえで、人員不足、低賃金から抜け出せず、私鉄は厳しい状況におかれている。ライドシェア導入問題には反対運動の取り組みをお願いする」(私鉄県連・飯川代議員)、「上小地区労組会議の地域組織の『依田窪連絡協議会』『東御市連絡協議会』が様々な議論を経て合併した。連協組織を残して、地域運動を大切にしていきたい」(上小地区労組会議・竹内代議員)などの発言がありました。

特別決議として「国民の切実な願いに背を向け、軍拡・改憲をすすめる岸田政権と対峙し総選挙に勝利する決議」が採択されました。最後に「新自由主義政策を転換し、所得の再分配や富裕層・高収益大企業への課税を強化し、自助よりも公助、自己責任より共生、労働者・国民の暮らしを優先する政策へ転換を」「組合員はもちろんだが、組織されていない労働者・国民にも共感が広がる労働運動、平和運動が必要とされている」などとする「総会宣言」を採択しました。

あいさつする宇佐美正信議長

来賓、役員、代議員など約60人が参加

蔦友印刷の破産事件を報告する原田代議員

総会の最後には団結ガンバローを三唱

 

仲間との信頼関係を深め運動を広げていこう

県労組会議議長 宇佐美正信

昨年10月に行われた県労組会議の大会から早くも一年が経過をしました。少しこの一年間を振り返りたいと思います。

新型コロナは5月に2類から5類へと移行になりました。4年目を数える「コロナ禍」で8月19日に県労組会議として4年ぶりにソフトボール大会を開催しました。大変暑い中、各地区労組会議の精鋭たちが集まり、熱戦が繰り広げられ塩尻地区が優勝しました。終了後、団結会が開催され大変盛り上がりました。未だコロナが終息したわけではありませんが久々の開催ということもあり、一堂に会して話ができたことが大変有意義であったと思っています。普段話ができないことや初めて会う仲間がテーブルを挟み、膝を交えて話すことができたこと、コロナで制限されていたことが少し晴れたのではないかと思っています。各地区、単産の皆さんと会ってお話しすることが改めて重要だと感じました。

私たちを取り巻く情勢は今さら言うまでもありませんが生活も組合活動も労働実態も厳しい状態が続いています。詳しい情勢については後ほど、方針案の提起によりますので割愛させていただきますが、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の他、全世界では現在、武力紛争が50以上あります。最近ではイスラエルがハマスを壊滅させようとガザ地区に侵攻を始めています。こうした武力戦争によって民間人、特に女性、子どもが犠牲になっています。人の命を奪ってまで得たい物っていったい何なのでしょうか。「話し合いをしよう」「外交によって解決をしよう」とはならないのでしょうか。

戦争の影響でエネルギー、食糧、原材料上昇によって円安、物価高など、日本国内外ともに不穏・不安定な状況下にあります。

そうした中、岸田内閣は昨年12月安保三文書の改訂によって敵基地攻撃能力を保有することや、先の国会では防衛費増額の財源を確保するための特別措置法や、原発の再稼働、運転延長、東日本大震災から12年たった現在、被災者に寄り添うことなく支援の打ち切りや子供甲状腺がんの発症に対する補償は何もなく、福島原発で発生したトリチウムを含む汚染水を「関係者の理解なしには放出しない」と約束していたことを反故にし、海洋放出を強行してきました。

さらにはマスコミにこぞって放射能を含む汚染水を処理水というように誘導し、まさに戦争に突き進む道、国民生活の安全・安心を脅かす道を突き進んでいます。

武力で解決する平和などは絶対あり得ない、核と人類は共存できないことは多くの犠牲を払ってきた先人たちが教えてくれています。

こうした政治情勢ですから、岸田政権には辞めていただくしかありません。県労組会議としては政治情勢を見極めながら私たちの掲げる運動課題、政策要求に方向性が合致する立憲民主党、社会民主党と連携して運動を展開していきたいと思います。

暴走する岸田政権を許さない闘いはまだまだ続く状況ですが、多くの政治課題に対して声を上げていく地道な運動が必ず変えていくことができる力になると思います。

もう一つ、県内で大変大きな事件が起きました。県労組会議に加盟する印刷フォーラムの蔦友印刷が3月に破産手続きを申し立て、倒産しました。従業員である組合員が解雇されました。解雇によって給与及び退職金が支払われないことから、当面の生活費の補助として長野地区労組会議とで組合員に対する支援カンパを取り組んできました。仲間を助ける支援活動として多くのカンパを取り組んでいただきました。ありがとうございました。支援する側でさえ厳しいにもかかわらず大変多くのカンパをいただきました。取組みにご協力いただいた皆さんに改めてお礼を言いたいと思います。また関西生コンやJAL闘争団などこうした仲間が困っているときに支援をする、各地区や単産、単組の皆さんにまで声をかけられる労働運動ができるのは労組会議だけだと思います。皆さん自身も大変かと思いますがもっと大変な状況で助けを求めている人、労働者がいます。引き続きそうした人たちに寄り添い支援をしていきたいと思います。

最後になりますが、今年4月の統一自治体選挙では私たちが推薦する議員が当選することができました。本当にご協力ありがとうございました。

私たちはこれまで学習や交流によって仲間との信頼関係を築いてきました。その知識を生かし幅広く仲間に危険性や重要性を訴え、今まで以上に反戦、護憲、反核、脱原発を軸に平和と民主主義を守る闘いの運動を進め、労働者の雇用、平和・人権・環境に関わる運動課題について、労働者の立場に立って引き続き運動を進めていきたいと思います。

以上で県労組会議を代表してのあいさつに代えさせていただきたいと思います。

特別決議全文

総会宣言全文

 

関東大震災時の朝鮮人大虐殺事件から100年

日本政府は虐殺の真相を解明し関係者へ真摯な謝罪を

いまだ続くヘイトスピーチ、民族排外主義を許さない

今年9月1日は、首都圏に甚大な被害をもたらした関東大震災から100年。多くの日本人には9月1日は「防災の日」として広く知られています。

しかし、このとき起きたのは自然災害だけではありません。震災のさなか流言飛語が飛び交い、戒厳令が公布され、6千人以上の朝鮮人が、軍隊、警察、自警団によって虐殺されました。

2003年8月、日本弁護士連合会は日本政府に対して虐殺の責任を認め、被害者と遺族への謝罪、真相調査と原因究明を勧告しました。しかし、日本政府はいまだに事実を認めず、調査も謝罪も賠償もしていません。それどころか今年5月23日に開かれた参議院内閣委員会で谷公一国家公安委員長は、朝鮮人虐殺事件についての質問に対し、「事実関係を把握できる記録が見当たらない。さらなる調査は考えていない」と答弁し真相調査すら拒んでいます。

そうしたなか、「虐殺否定論」がまん延し、災害時にはSNSなどで「朝鮮人犯罪」に関わるデマが繰り返され、在日朝鮮人に対する差別や暴言、暴行事件など、100年前を想起させる事態が後を絶たないのが日本社会の現状です。

関東大震災時に虐殺された犠牲者を追悼し、虐殺の真相究明を進め、政府などの責任を追及する必要があります。そして、「多文化共生」が強調される社会のなか、在日韓国・朝鮮人に対する差別と偏見、ヘイトスピーチ・クライムを根絶するための運動が求められています。

日朝県民会議が朝鮮人虐殺の歴史を学ぶ学習会を開く

日朝長野県民会議は8月26日、日朝問題学習会では、朝鮮大学校で在日朝鮮人史を専攻する講師、鄭永寿(チョン・ヨンス)さんを講師に、関東大震災での朝鮮人虐殺の真相、日本による朝鮮半島植民地支配による朝鮮人に対する加害と抑圧の歴史について講演していただきました。学習会には約50人が参加。

鄭永寿さんは講演の中で、関東大震災の時にも朝鮮人への偏見、差別から大虐殺が起きた歴史に学ばず、いまだに歴史修正主義がはびこる日本社会だと指摘。関東大震災100年の現実を克服するために、日本政府には、被害者側に立証責任を負わせてきた態度を改め、加害側から真相を徹底的に調査、発表すること、また、「不逞」「騒擾」とみなし弾圧してきた運動の責任追及の声に真摯に向き合うことで、虐殺の罪を認め責任を果たすことが求められていると強調しました。

松本市で開いた日朝問題学習会

講師の鄭永寿(チョン・ヨンス)さん

9月1日には東京で追悼行事が開かれる

レイシスト集団「そよ風」が虐殺否定の式典開き市民が強く抗議

関東大震災から100年が経過した9月1日、東京都立横網町公園内にある朝鮮人犠牲者追悼碑前で、「東京同胞追悼会」(主催=総聯東京都本部、東京朝鮮人強制連行真相調査団)が執り行われた。追悼会には、朝鮮総聯中央本部の許宗萬議長をはじめとする活動家、在日朝鮮人、日本市民など約500人が参加しました。

昼過ぎに始まった追悼会では、犠牲者に捧げる「アリラン」の独唱に続き、参加者全員が犠牲者を偲び黙とうをささげました。

また、同日夜には、東京都中央区の銀座ブロッサムで、関東大震災100年朝鮮人虐殺犠牲者追悼と責任追及の行動実行委員会が主催する集会が開かれ、約800人が集まりました。

9月1日の夕刻には、レイシスト(人種差別主義者)集団の「そよ風」が横網公園の朝鮮人犠牲者追悼碑の前で式典を計画しました。「そよ風」は、加害・侵略の歴史を否定し、民族排外謝儀的な考えを持つグループで、関東大震災時の朝鮮人虐殺もなかったと強弁しています。そのような集団が朝鮮人犠牲者追悼碑の前で「式典」を行うことは、虐殺された朝鮮人への冒涜であり、歴史をねじ曲げようとする行為です。「そよ風」の式典に抗議する市民約300人は会場に座り込み、レイシスト集団に抗議のシュプレヒコールを行いました。結果として、「そよ風」は、追悼碑前での「式典」を断念し、公園の別の場所で実施しました。歴史修正主義、民族排外主義を許さない運動を求められています。

墨田区の横網公園で行われた追悼式典

レイシスト集団「そよ風」に抗議する市民

横網公園の朝鮮人犠牲者追悼碑には多くの献花が。

墨田区の荒川沿いに建立されている追悼碑

9月2日には国際シンポジウムが開かれ350人が参加

翌日、9月2日には、「関東大震災100年朝鮮人虐殺犠牲者追悼と責任追及の行動」実行委員会が主催する国際シンポジウム「関東大震災朝鮮人虐殺の責任と課題」が東京・千代田区の連合会館で行われました。場内は、日本各地から集まった在日朝鮮人や日本市民など約350人でいっぱいになりました。

主催者を代表し、元法務大臣の平岡秀夫さん(弁護士)があいさつ。平岡さんは、100年前の大震災で虐殺された朝鮮人犠牲者らに哀悼の意を示したうえで、昨今、官房長官が会見の場で「事実関係を把握する記録は見当たらない」と述べるなど朝鮮人虐殺に関する日本政府の対応を非難。「今を生きる日本人の中には個人的に責任を負うべき人はいないかもしれない。しかし、朝鮮人虐殺の事実を明らかにし、その明らかにされた事実に応じて、謝罪など必要な対応をする責任がある」として、今を生きる日本の市民らの責務について問いかけました。

国際シンポジウムに先立ち、コーディネーターの佐野通夫・東京純心大教授が発言。佐野教授は、「関東大震災時の戒厳令をもって在日朝鮮人を『討伐すべき敵』としての『不逞鮮人』とみなす公的なヘイトが、民衆のヘイト感情を掻き立て官民一体のジェノサイドが起きた。またその背景である日本の植民地主義の清算がなされていないことを見逃してはいけない。国家と社会による歴史の忘却、責任からの逃避が戦後日本社会における朝鮮人差別を形作ったのではないか」と問題提起しました。

報告者として、明治学院大の鄭栄桓教授(「関東大震災時の朝鮮人虐殺と『否定論』の諸問題」)、朝鮮大学校の鄭永寿講師(「在日朝鮮人運動による関東大震災朝鮮人虐殺の真相究明・責任追及」)、東京造形大の前田朗名誉教授(「国際法から見た関東大震災ジェノサイド」)が登壇したほか、韓国から淑明女子大の金應教教授(「百年間の証言―韓日の作家と市民がみた関東大震災と朝鮮人虐殺―」)が、米国からイースタン・イリノイ大のリジンヒ教授(『米国における関東虐殺否定論とジェノサイドへの対応』)が登壇しました。

その後、報告者5人による相互討論がありました。

9月2日に開かれた国際シンポジウム

800人が参加した9月1日の追悼集会

松代大本営工事での朝鮮人犠牲者を追悼して

追悼碑を守る会が建碑28周年を記念する式典

松代大本営追悼碑を守る会は8月10日、長野市松代に建立している「朝鮮人犠牲者追悼平和祈念碑」の前で、大本営工事の際に犠牲となった朝鮮人労働者への追悼の意を表すための式典を開きました。日本人や朝鮮総聯、民団などの関係者約50人が参列しました。

冒頭、あいさつに立った追悼碑を守る会の表秀孝会長は、「追悼碑の裏面には私たちの決意が刻み込まれている。亡くなられた朝鮮人犠牲者を追悼し『過去の戦争、侵略。加害を深く反省し、友好親善、恒久平和を祈念してこの日を建立する』と記されている。過酷な労働を強いられ無念と望郷の中で亡くなられた朝鮮半島出身のみなさまに哀悼の意を捧げる。石板に書かれた私たちの決意は28年たっても実現していない。戦える国に傾斜していく政府の姿勢がますます強まるなか、このような動きを止めることができない悔しさを心に刻んでいる。国家権力の暴力がむき出しになる戦争には正義はない。力による平和は存在しないことを私たちは先の大戦から学び取ったはずだ。このような時だからこそ、歴史を直視し、歴史に学び、再び誤まることのないように決意したい。今こそ人と人との結びつきを強めるときだ。民衆の連帯の力を信じたい。善隣友好と平和創造に向けて皆さまとともに取り組みたい」とあいさつしました。

来賓として、駐新潟大韓民国総領事の権相熙(クォン・サンヒ)氏が「過去の誤った歴史を正しく認識し、真に反省し、過ちを繰り返さないようにすることが私たちの責務。しかし、過去のことだけにこだわっていると前に進めない。韓日両国は正しい歴史認識の下、未来に向かって手を取り合って進むべき」などとあいさつしました。

長野市長の荻原健司氏、衆参国会議員の若林健太氏、篠原孝氏、杉尾秀哉氏、羽田次郎氏からメッセージが寄せられたことが紹介されました。

日朝県民会議の中山良一・会長代行、朝鮮総聯県本部の李明宏(リ・ミョンガン)・委員長、民団県地方本部の金秀男(キム・スーナン)・副団長がそれぞれ追悼の言葉を述べました。

式典の最後には、参列者全員で菊の花を献花しました。

表秀孝・追悼碑を守る会会長

駐新潟大韓民国総領事の権相熙(クォン・サンヒ)氏

式典の冒頭で犠牲者を追悼する黙とうを行った

参加者全員で献花

長野朝鮮初中級学校の生徒が松代大本営象山地下壕を見学

追悼碑を守る会が案内 - 追悼碑前で自らの学習発表も

長野朝鮮初中級学校(松本市)中級部(中学校)の1年生から3年生までの生徒11人は7月20日、松代大本営象山地下壕の見学と学習発表を行いました。

生徒たちは、地下壕見学の前に、市民団体が運営する「もうひとつの歴史館・松代展示室」を訪問。なぜ松代に大本営の移転が計画されたのか、朝鮮人労働者の労働・生活の実態はどうだったのか、スタッフの説明をメモを取りながら熱心に聞いていました。

追悼碑の前では、地下壕工事の犠牲者を慰霊し、加害・侵略の歴史の真相を明らかにする目的で追悼碑がつくられた経過を、守る会役員が説明しました。また、長野市が朝鮮人強制連行の歴史的事実をあいまいにした説明看板の問題についても報告されました。その後、実際に地下壕内に入り、過酷な掘削工事の実態を見学しました。

見学が終了後、生徒たちが事前に松代大本営について学んできたことを模造紙に書いて、追悼碑の前で学習発表を行いました。

もうひとつの歴史館でスタッフの説明を受ける

象山地下壕の中で

事前学習の成果を追悼碑前で発表

みんなで記念撮影

関東大震災・朝鮮人虐殺100年-犠牲者の追悼と真相究明を求めて

8月26日 鄭永寿さん(朝鮮大学校講師)を講師に日朝問題学習会

今年9月1日は、首都圏に甚大な被害をもたらした関東大震災から100年となります。多くの日本人には9月1日は「防災の日」として広く知られています。

しかし、このとき起きたのは自然災害だけではありません。震災のさなか流言飛語が飛び交い、戒厳令が公布され、6千人以上の朝鮮人が、軍隊、警察、自警団によって虐殺されたのです。

2003年8月、日本弁護士連合会は日本政府に対して虐殺の責任を認め、被害者と遺族への謝罪、真相調査と原因究明を勧告しました。しかし、日本政府はいまだに事実を認めず、調査も謝罪も賠償もしていません。それどころか今年5月23日に開かれた参議院内閣委員会で谷公一国家公安委員長は、朝鮮人虐殺事件についての質問に対し、「事実関係を把握できる記録が見当たらない。さらなる調査は考えていない」と答弁し真相調査すら拒んでいます。

そうしたなか、「虐殺否定論」がまん延し、災害時にはSNSなどで「朝鮮人犯罪」に関わるデマが繰り返され、在日朝鮮人に対する差別や暴言、暴行事件など、100年前を想起させる事態が後を絶たないのが日本社会の現状です。

関東大震災時に虐殺された犠牲者を追悼し、虐殺の真相究明を進め、政府などの責任を追及する必要があります。そして、「多文化共生」が強調される社会のなか、在日韓国・朝鮮人に対する差別と偏見、ヘイトスピーチ・クライムを根絶するための運動が求められています。

日朝問題学習会では、朝鮮大学校で在日朝鮮人史を専攻する講師、鄭永寿(チョン・ヨンス)さんをお招きし、関東大震災での朝鮮人虐殺の真相、日本による朝鮮半島植民地支配による朝鮮人に対する加害と抑圧の歴史について講演していただきます。

多くの方々が参加していただけるようにお願いいたします。

1.日  時  8月26日(土) 13時30分

2.場  所  長野朝鮮初中級学校(朝鮮学校)敷地内北側 朝鮮文化会館3階 会議室

松本市島内2643-1 電話0263-40-7963

3.内  容  関東大震災時の朝鮮人虐殺の真相、日本による朝鮮半島植民地支配による朝

鮮人に対する加害と抑圧の歴史について考える

講師  鄭 永寿(チョン・ヨンス)さん (朝鮮大学校講師)

1983年生。2006年朝鮮大学校文学歴史学部卒業。朝鮮大学校研究院修了、東京外国語大学大学院博士前期課程修了。専攻は在日朝鮮人史。

4.主  催  日朝県民会議/日朝松本市民会議

5.Zoom   ① 会場参加を基本としますが、Zoom参加での視聴も可能です。

② 当日、Zoomで参加される方のID、パスコードなどは以下の通りです。学習会当日は、13時10分から入室できます。

https://us06web.zoom.us/j/83635308861?pwd=c3JMenI5c1RaNTc2aHd0cEp0VzJXdz09

ミーティングID 836 3530 8861

パスコード 222666

朝鮮初中級学校の卒業式に参加しました

3月18日(土)、長野朝鮮初中級学校(松本市)の卒業式にオンライン配信スタッフとして参加してきました。昨年末に学校側から、県外の病院に入院している生徒さんが同級生たちと一緒に卒業式に参加できないかとご相談をいただいたことがきっかけでした。

県外にいる生徒さんと卒業式会場をリモートでつなぐ

卒業式当日は、朝から雪が降るなかで迎えましたが、初級部の6年生、中級部の3年生の子どもたちの門出を祝うために集った保護者や親族、卒業生、学校関係者の方々で会場は賑わいあたたかな雰囲気に包まれた式典になりました。

式典の前後には、リモートで参加する生徒さんの姿が映し出された舞台横のスクリーンの前に、同級生や親族、保護者の方々が代わる代わる訪れ、「久しぶり」、「元気?」と言葉を交わし久々の再会を喜び合っていました。

コロナ禍の3年間の学校生活

今回、卒業した子どもたちの学校生活は、ちょうどコロナ禍と重なり、本来なら経験できたこともできず、たくさんの我慢を強いられてきた3年間だったそうです。それでも勉強や学校行事などに一生懸命取り組んできたことが、卒業式後の音楽や劇の発表、上映された映像から伝わってきました。朝鮮語を理解することはできませんでしたが、ステージで歌やダンスを披露しながら涙する子どもたちの姿から、かけがえのない瞬間に立ち会えたのだと感じました。

コロナ禍のなかリモート会議などが増えて、人と人の繋がりが希薄になったのではないかと危惧されていますが、このような形で、はなればなれになっていた子どもたちの大切な日に関わることができよかったです。

誰よりも大きな「예!(はい)」

卒業証書授与の際には、リモートで参加した生徒さんも、校長先生から名前を呼ばれると、「예[ ye] (はい)」と大きな声で返事をして、スクリーン越しにしっかりと卒業証書を受け取る姿に、参列者からもひときわ大きな祝福が寄せられていました。

大切な子どもたちの未来

卒業する子どもたちの笑顔、画面越しに涙を流す先生と生徒さんの姿を見て、子どもたちはこの学校で大切に見守られてきたのだと思いました。そして対立や疎外ではなく、互いに知恵を出し合い、思いやりをもって、友好を深めていくことが大切だと感じました。

卒業生のみなさんおめでとう!

県外にいる生徒さんを囲んで卒業する同級生全員で記念撮影

長野朝鮮初中級学校の児童・生徒を支援するカンパ活動を実施中

日朝県民会議が取り組み コロナ禍で学校運営が厳しい状況に

長野朝鮮初中級学校の卒業式で記念撮影(2023年3月18日)

2010年度から実施された高校授業料無償化措置(2014年改正され「高等学校等就学支援金制度」)は、第2次安倍政権が成立した直後に文部科学省令が改正され、適用への申請がなされていた朝鮮高校を、制度から除外しました。その後、今日まで10年以上にわたって朝鮮高校生には適用されることなく、全国で適用を求める訴訟が行われてきました。全国5カ所の訴訟は最高裁において、差別を当然とするきわめて不当な決定がなされました。どの不当判決も不適用とした文科大臣の決定を支持し、文科省令の改正の是非には触れないこととなっています。

2019年10月からの幼保無償化からも朝鮮幼稚園やブラジル人学校などの外国人幼稚園が排除されました。また、コロナ対策の一環である「学生支援緊急給付金」の制度からも朝鮮大学校が排除されました。幼保無償化については、様々な批判と要求から、文科省が「地域における小学校就学前の子どもを対象とした多様な集団活動事業の利用支援」の制度を設けましたが、適用の可否の決定や支援内容に問題があり、見直しが求められます。

日本政府の朝鮮学校や幼稚園に対する政策は、「多文化・多民族共生社会」構築に大きな障害となっています。私たちは、一刻も早く、朝鮮高校授業料の無償化と朝鮮幼稚園をはじめとする外国人幼稚園への幼保無償化措置を適用するように求めます。

日朝県民会議、県労組会議は、松本市にある長野朝鮮初中級学校の児童・生徒たちを支えるために毎年、全県的なカンパ活動を行っています。長野朝鮮初中級学校の運営を支えるため、皆さんのあたたかいご協力をお願いします。