21世紀のキーワード―平和・人権・環境

長野県平和・人権・環境労働組合会議

コロナ禍を乗り越え労働者の新たな団結と連帯を

県労組会議が定期総会開き、コロナ後の運動の再構築を確認

長野県平和・人権・環境労働組合会議(県労組会議)は10月22日、長野市のホテルメルパルク長野で第26回定期総会を開き、コロナ禍で生活と労働に直撃を受けた医療・公衆衛生の労働者や地域公共交通に携わる労働者を支援していくこと、感染防止対策のため中止や延期になったさまざまな運動を、コロナ後には改めて多くの仲間が参加できる運動にしていくこと、10月30日に投開票となる総選挙で市民と野党の統一候補を支援することなどを確認しました。

主催者を代表して松澤佳子議長は、「1年半以上にもおよぶコロナ禍は、私鉄、国労、全自交など公共交通を担う仲間や、病院や自治体の現場で働く仲間に大きな犠牲を強いている。一方、自公政権はアベノマスク、学校の一斉休校など非科学的で『やってる感』を漂わすだけの政策に終始してきた。『新しい資本主義』を掲げた岸田内閣もすでに掲げた政策は後退し、アベ・スガ政権を引き継ぐものであることは明白。中国や朝鮮民主主義人民共和国の脅威を盾に、『敵基地攻撃能力』の保有に前のめりになっているが、武力では何も解決しないばかりか危険であることはアフガニスタンやミャンマーの情勢からも明らかだ。アウシュヴィッツ強制収容所から生還した精神学者のフランクルは、著書『夜と霧』の中で最後まで助け合ったり夕陽を美しいと感じる人間性を失わなかった人が生き残れたことを書いている。厳しい状況下だからこそ、職場や地域で連帯し、労働者が団結することが必要だ」などとあいさつしました。

来賓は、連合長野から根橋美津人・会長、立憲民主党県連から篠原孝・代表(衆議院議員)、社会民主党県連合から中川博司・代表(県議会議員)、労働事業団体を代表して県労福協から中山千弘・理事長があいさつしました。

質疑討論では3人が発言しました。「コロナ禍で地域公共交通は大変な状況。県労組会議から各単組への激励金に感謝」(私鉄県連)「県労組会議青年女性連絡会で2年ぶりに反核平和の火リレーを実施した。12地区中7地区で実際にランナーが走った。若い人が平和を考える機会になっている。運動を止めずにやっていきたい」(自治労)、「アスベスト被害で仲間を亡くした。JR車両所で今でもアスベストが古い車両や建材に使用されている。引き続き取り組みを職場で進めたい」(国労長野)などの発言がありました。

総会では、岸田自公政権と対峙し、総選挙に勝利する特別決議と、「組合員はもちろんですが、組織されていない労働者・国民にも共感が広がる労働運動が今こそ必要とされています。コロナ後を見据えて、地域社会において労働者の新たな団結と連帯を再構築しましょう」とする総会宣言を採択しました。

☞ ここをクリック 岸田自公政権と対峙し、総選挙に勝ち抜く特別決議

☞ ここをクリック 定期総会総会宣言

ミャンマー民主化を支援する学習交流会と街頭募金を実施

長野・松本2日間で12万5千円の温かい募金集まる

県内市民有志、労組関係者、県内に在住するミャンマー人などでつくる「ミャンマー民主化を支援する信州の会」は10月23日、24日、長野駅、松本駅前で民主化支援を戦うミャンマー人や国軍の脱圧によって職を失ったり、生活がひっ迫しているミャンマーの人々を支援する募金活動を行いました。また、24日には、松本市内で学習交流会を開き、信州大学の佐藤友則先生のミャンマーの現状に関する講演を聴き、意見交換を行いました。長野駅での街頭募金の活動には約35人、松本での集会・街頭募金には約40人、Zoomでの集会参加者は約10人でした。長野県内に住む約10人のミャンマー人も参加してくれました。

駅前を通る多くの市民のみなさんがミャンマー問題に関心を寄せていただき、2日間で約2時間の募金活動でしたが、約12万5千円のカンパが集まりました。このカンパは、信州の会が責任をもって、ミャンマー国内で民主化を求めて闘う人々や日本国内に住むミャンマー人にお届けします。

長野駅前で若麻績敏隆代表とミャンマー人が募金を訴える

松本駅前での募金活動には東京からミャンマー人が参加

松本駅前での募金活動の後、反独裁の「三本指」のポーズで

信濃毎日新聞の記事(10月24日)

〈第15期〉21世紀の労働運動研究会 第2回 渡辺寛人氏(NPO法人POSSE事務局長)講演「パンデミックと労働運動」

講演「パンデミックと労働運動」渡辺寛人氏

「〈第15期〉21世紀の労働運動研究会」が、10月9日(土)、いなっせ(伊那市)で開かれ、第2回講座として「パンデミックと労働運動 POSSE・総合サポートユニオンの取り組みから」というテーマで渡辺寛人氏(NPO法人POSSE事務局長)にリモートで講演いただきました。Zoom視聴と会場参加あわせて、約30人の方が参加されました。

渡辺寛人氏には事務局長を務めるPOSSEでの若者の労働・貧困問題への取り組みを中心に、コロナ禍に急増した若者・女性・外国人からの相談や、その背景にある日本社会の構造的問題についてお話いただき、パンデミックのなかでの労働運動について伺いました。講演後には、渡辺氏も参加して分散交流会を実施しました。

リモートで講演する渡辺寛人氏

【講演概要】

NPO法人POSSEとは?

POSSEは、2006年に若者の労働・貧困問題に取り組むNPOとして発足。英語で「仲間」のこと。ブラック企業と闘い、労働環境を改善するため、働く仲間が力を合わせるという意味を込めた。メンバーは20代を中心とした若者で、労働・生活相談、労働法教育、調査研究、雑誌発行、社会発信などに取り組んでいる。

 

2014年からは、「総合サポートユニオン」を立ち上げ労働組合運動を展開。2019年にはPOSSE外国人労働サポートセンターを立ち上げ、外国人労働者の支援も開始。

 

NPO法人POSSE

https://www.npoposse.jp/

総合サポートユニオン

https://sougou-u.jp/

POSSE外国人労働サポートセンター

https://foreignworkersupport.wixsite.com/mysite

 

パンデミックの影響 女性・学生・外国人

コロナ禍において相談が急増している。コロナ以前は2500件/年でしたが、2020年度は労働相談が3675件、生活相談が379件、外国人相談が342件。

女性からの相談が61%。コロナの影響が人と接するサービス業中心の職種に広がっていること。また学校の休校などにより、子育てが女性に押し付けられていることがわかる。

非正規雇用者からの相談が多く、全体の68%(計872件)。雇用の調整弁としての非正規。そもそも雇調金の対象にされず、テレワークや休業補償においても差別されている。

 

一番多い相談は休業に関するもの

もともと低賃金水準で労基法26条の休業手当(平均賃金の6割)では手取りは10万円前後になり生活苦に陥る。まったく休業補償がないという相談も多数あった。3月ごろから新型コロナの影響が色濃くなりはじめ、二カ月連続で収入がない、という人も出てきた。休業補償の不払いの相談も多く、IT関係の方からは、人事に「アルバイトだから出せない」「アルバイトには支払う義務がない」と言われ休業補償が支払われないケース。また飲食関係では、緊急事態宣言後シフトが減って、週2日勤務になり3時間で帰らされた日もあった。試食販売の方からは、コロナで試食の仕事が一切なくなったが会社は「日々雇用のため、継続して雇っている認識はない」と主張し、休業補償は支払われなかったケースもあった。

休業手当が全く支払われなかった事例や、平均賃金の6割しか支払われなかった事例が多数あり、制度の活用を求めても拒否されてしまう。

 

新型コロナとブラックバイト

コロナ禍でのアルバイト相談

 

20代前半女性(アルバイト・居酒屋)

「仕送りはもらっておらず、生活費として月13万~15万稼いでいた。それが3~4万にまで減少。奨学金を借りて学費を払っている。緊急事態宣言以前から店が休業になった。休業補償がでるかわからない。

 

19歳女性(アルバイト・塾講師)

「3~4月、生徒が来れないという理由で、シフトが完全になくなった。その間の補償に関する連絡は一切なかった。母子家庭で生活に余裕がない」

 

新型コロナウイルスの影響でアルバイトや親の収入が減って学費を払えない大学生らが増えています。学生アルバイトからは、休業補償が支払われていないという相談が多数寄せられました。約2割の大学生が退学を検討しています(学生団体FREEの調査)。学生アルバイトは「基幹的な労働力」として組み込まれながら、「雇用の調整弁」として都合よく扱われてしまっています。

 

補償なき休業と解雇が貧困を拡大

補償なき休業と解雇が貧困を拡大

 

外国人労働者の生活困窮の深刻化

外国人労働者からも計524件の相談が寄せられました。

 

20代のスリランカ人留学生

「都内のファミリーレストランチェーンで、通常時は週25時間働き、月12万円ほど稼いでいました。緊急事態宣言の発令後ファミレス事態が休業になりシフトがゼロになりました」「休業補償について店長に聞いたところ、本部に問い合わせるという返答でしたが、その後音沙汰なし。結局、労働基準法で定められている休業手当の支払いがなく、学費や家賃などの支払いが困難になりました」

 

なぜ矛盾が非正規(女性、学生、外国人が多い)に集中したのか?

日本型雇用システムの変容と貧困の拡大の背景には、終身雇用や年功賃金が得られない労働者の増加(非正規雇用、ブラック企業)や、女性の異常な低賃金構造の維持があります。その結果、生活が困難になり、ケア需要の増大によって貧困が拡大しています。

日本型雇用システムの変容と貧困の拡大

 

賃金の低下と共働き世帯の増加

 

大学進学率の増加と学歴による格差の拡大

背景には、①国公立大学の学費の増加、②親世代の収入の減少、③不十分な奨学金が考えられる。大学に通うのに必要な年間費用の平均188万円、私立大学4年生・自宅外だと平均250万円もの費用がかかるためアルバイトをしなければならない学生が増加している。

 

非正規雇用の基幹化(ブラックバイトの構図)

正社員を非正規雇用で代替したことでアルバイトが職場の中で重要な責任を担うようになって、アルバイトがいないと回らない職場になっている。また徹底的な低コストで最低賃金すれすれの給料でありながら辞めることもできない。

 

周辺化されてきた女性労働

女性は、「男性稼ぎ主モデル」のもとで、家庭内で無償の家事労働を担わされ、労働市場においては家計補助的な労働力として活用されてきた。女性差別は、正規/非正規の雇用形態差別に形式を変えて継続。「男性稼ぎ主モデル」が崩壊し、産業構造が転換している現在、女性労働の位置づけをが大きく変化しているが、周辺化され続けている。

 

「人出不足」を埋めるための外国人労働者

・深刻な人手不足(地方では農業や漁業など、都市部ではコンビニなどのサービス業)の穴埋めとして外国人が活用されている。そもそも「人出不足」自体が、その仕事に従事しても再生産できる賃金を得ていないことに起因。その結果、日本人相手にも「求人詐欺」で騙して雇い入れる手法が横行。ブラック企業は固定残業代を用いて給料をかさ増しする。

・外国人に対してはさらに離職を防ぐために物理的な暴力を行使している。パスポートや通帳の会社管理、労働条件の改善を要求した労働者の「強制帰国」といった手段を用いる。

・技能実習生は、そもそも法的に転職可能性が制限されている。外国人技能実習生は約40万人。多くが「エッセンシャル」な産業のサプライチェーンの末端に組み込まれてきた。ファストファッションや外食チェーン、建設産業など。

 

エッセンシャルな仕事。しかし低賃金

この20年間で日本社会は、製造業を中心としら産業構造から、ケアやサービス経済を軸とした産業構造に転換してきた。

しかしサービス産業では生産性を上げることに限界があり、利益を上げるためには人件費を極限まで切り縮める必要がある。企業は労働条件を低いままに、非正規雇用を基幹労働力として組み込んできた。結果的にそこに充当されてきたのが、女性、学生、外国人だった。

コロナ禍はこの矛盾を顕在化させた。

 

POSSE/総合サポートユニオンの取り組み

さまざまなアクション

《一部紹介》

自販機産業ユニオンの気候変動ストライキ

  ストライキの要求事項

1 業界で協力して無駄な自販機の削減とCO2排出を削減してください

2 8時間労働で生活できる賃金を設定してください

3 自販機業界と自販機産業ユニオンでの、気候危機に関する議論の場を設けてください

2021年6月25日にストライキを実施

 

・自販機産業では、各社が利益のために街中に自販機を設置し、大量の自販機を労働者の長時間労働によって機能。長時間労働、過労死の温床に。

・環境負荷の視点から自販機産業を考えると、街中にあふれている24時間稼働の自販機それ自体の電力消費、さらに、多くの自販機を巡回する際のトラックでの移動や賞味期限切れの飲料などの食品ロスの問題も。

・産業構造そのものが環境と労働者への高い負荷を生み出している。24時間稼働し、大量の食品廃棄を出し続けるコンビニ業界など、多くの産業にも共通。

 

ジェネレーションコロナからジェネレーションレフトへ

ジェネレーションレフトとは?

資本主義を否定し、社会主義を支持する世代の台頭。ミレニアル世代やZ世代が中心。アメリカ民主党で「社会主義者」を自称するバーニー・サンダーズやイギリス労働党のジェレミー・子―ビンを支持していたのは若者だった。

背景:不安定な労働市場、教育ローンなどの債務漬け、家賃やネット等々の使用量などレント負担の重さ、気候危機による将来への不安。にもかかわらず経済成長を掲げ、富裕層を優遇する政治。

 

これまでの経済成長を軸とした資本主義の物語が失効した世代

 

ジェネレーションレフトの条件

2008年 出来事としてのリーマンショック

2011年 オキュパイウォールストリートなど、一連の抗議行動

 

2008年の受動的出来事と2011年の政治的出来事が補完し、新自由主義の物語を失効させ、新たな社会を求める能動的出来事として捉えなおす契機に。日本では、若い世代に魅力的なビジョンもなければ組織化も行われていない。したがって2008年以降、停滞・保守化が進行。

 

ジェネレーション・コロナ

・コロナ世代は「気の毒」か?

・2020年以降、ボランティア応募が飛躍的に増大。250名以上が参加し、そのうち女性が8割。「ダブル」など海外ルーツを持つ人やクィアなど、マイノリティが多い。

・感染対策に伴う大学の規律の低下、海外留学の中断、断念。相対的に自由な時間の出現。社会的関心の高まり。

・入管問題、外国人技能実習生、難民問題、女性の貧困への関心が高い。

 

なぜ女性やマイノリティが多い?

・コロナ危機=ケアの危機。日本社会では、再生産の領域は女性や外国人労働者に外部化されてきた。家庭および労働市場において、外部に周辺化されているがゆえに、外国人労働者への共感や想像力が働きやすい。

・日本社会での閉塞感が強い。女性は男性的な競争社会に入るか、ケアの担い手として男性に従属することが求められる。そのどちらも魅力的ではない。

・日本で求められる生き方の拒絶の裏返しとして海外志向が強かったが、コロナ禍で国内の外国人労働者の問題へと関心が向いた。

 

〝運動とは、何らかの形で社会から取り残されてきた人々を受け入れ、こうした人々を社会の片隅から中央へと動かす。運動が目指す変化とは、今まで目立たなかった人々の存在に光を照らし、社会や経済や政府から全く重要でないとみなされている人々を可視化することだ。″アリシア・カーザ『世界を動かす変革の力』

 

Z世代をめぐる攻防、組織化の重要性

労働運動のパラダイムチェンジが必要

・サービス経済化が進むなかで、女性の活動とされてきたものが産業の中心に移動しつつある。にもかかわらず、労働運動は男性中心的なものとしてイメージされている。

・コロナ禍は、日本社会の矛盾を可視化させた。労働組合がこの状況に対応していくために最も重要なのは、Z世代の女性やマイノリティが中心となれるような組織化を行い、組織のあり方を変えていくこと。

・若い世代に魅力的なビジョンの提示や組織化をつうじて、ジェネレーションコロナからジェネレーションレフトへ!

書籍紹介『ジェネレーションレフト』(キア・ミルバーン)『POSSE vol.48 特集 ジェネレーション・レフトの衝撃』

『POSSE vol.48 特集 ジェネレーション・レフトの衝撃』

POSSE vol.48 特集 ジェネレーション・レフトの衝撃|雑誌『POSSE』ホームページ|NPO法人POSSE (npoposse.jp)