21世紀のキーワード―平和・人権・環境

長野県平和・人権・環境労働組合会議

~明日の労動運動を考える~21世紀の労動運動研究会 第1回講座「若者の労動と貧困」(講師:渡辺寛人氏)

若者の貧困と労働問題に取り組むPOSSE

「〈第18期〉21世紀の労働運動研究会」が、5月24日(金)、須坂市勤労者研修センター(須坂市)で開かれ、第1回講座として「若者の労働と貧困」というテーマでNPO法人POSSEの渡辺寛人氏に講演いただきました。須高地区の若手組合員を中心に、オンラインと会場参加あわせて約50人が集いました。

渡辺寛人氏には事務局長を務めるPOSSEでの若者の労働・貧困問題への取り組みを中心に、ブラック企業や非正規雇用の広がる無秩序な労働市場、多様な背景をもつ人が共闘する非正規春闘のたたかい、家族から逃走する若者たちなどについて詳しくお話いただきました。「ふつう」の暮らしが困難になっている日本社会の現状を変えていくにはどうしたらいいのかを考える機会になりました。講演後、長電労組の飯川書記長は「私たちには既存の労働組合というしっかりとした母体がある。まずはそこから労働組合運動を形骸化することなく、しっかりと運動をすすめていこう」と呼びかけられました。

講演する渡辺寛人氏(須坂市・勤労者研修センター)

現場からの報告

講演と合わせて、「現場からの報告」として私鉄県連・長野電鉄労働組合からは、運転手不足(25人不足)のため長野市内路線バスの日曜日運休など公共交通の厳しい現状が報告されました。またアトリオン製菓労働組合からは、明治産業からアトリオンに会社名称が変わり経営陣も変わったこと、次世代を担う若手執行委員の育成の取り組みなどについて報告していただきました。

【講演概要】

現場と研究の両輪で活動。活動に関わったきっかけは2008年のリーマンショックと「年越し派遣村」。テント村ができ、炊き出しが行われ、ボランティアに参加してPOSSEのメンバーと出会った。2000年代の非正規雇用問題の中心は若者だった。就職氷河期のため大学を出ても就職ができないひとがたくさん出て、派遣労働や契約社員やアルバイトという形で、若者中心に増えていったのが2000年代。企業は正社員雇用を減らす、政府も派遣法の規制緩和をすすめ非正規雇用の活用を促した結果だった。しかし当時の非正規問題の語られ方は、「若者はダメになった」という若者バッシングが強かった時代。「フリーターやニートという言葉もその頃から使われるようになった。ニートの本来の意味は教育や職業訓練を受けられていない若者という英国発の概念だったが、日本では働かないダメなやつみたいな使われ方だった。若者がダメになったから非正規雇用が増え格差貧困が拡がったという論調が強かったのが2000年代。

渡辺氏が編集長を務める雑誌『POSSE』最新号(Vol.56)では「春闘」が特集されている

雑誌「POSSE」(堀之内出版ウェブサイト)

https://info1103.stores.jp/?category_id=560eae663cd482ff5d0013d8

■若者が若者自身の手で若者バッシングに対抗

活動の中心は労働相談、生活相談など。年間4000件くらいメールや電話で相談が寄せられる。活動のコンセプトは、相談を受けながら、相談を受けたことで、職場・業界・社会システムの問題に繋がっていることが多いことがわかる。労働・生活相談を受けながら、なぜこのようなことが起こるのかを調査研究して社会に発信して世論を動かしていく、社会の側を変えていくことで、今の労働環境をよくしていこうと活動している。社会をどうやったら変えていけるか模索しながら活動している。

NPO法人POSSEとは?

POSSEは、2006年に若者の労働・貧困問題に取り組むNPOとして発足。英語で「仲間」のこと。ブラック企業と闘い、労働環境を改善するため、働く仲間が力を合わせるという意味を込めた。メンバーは20代を中心とした若者で、労働・生活相談、労働法教育、調査研究、雑誌発行、社会発信などに取り組んでいる。2014年からは、「総合サポートユニオン」を立ち上げ労働組合運動を展開。2019年にはPOSSE外国人労働サポートセンターを立ち上げ、外国人労働者の支援も開始。

NPO法人POSSE
https://www.npoposse.jp/

総合サポートユニオン
https://sougou-u.jp/

POSSE外国人労働サポートセンター
https://foreignworkersupport.wixsite.com/mysite

■「ブラック企業」という言葉のインパクト

リーマンショック以降、大卒正社員からの相談が増えてくる。世の中では、正社員勝ち組、非正規負け組という風潮だったが・・・正社員が自分から辞めて、生活苦に陥っているという相談が増えた。これまでの「終身雇用」「年功賃金」などの日本型雇用のない世界が見えてきた。正社員の責任だけは重いが保障はないという「あたらしい正社員」のようなものが出てきた。若者の労働環境の変化を問題提起したのが「ブラック企業」という言葉だった。POSSE代表の今野晴貴の著書『ブラック企業』がベストセラー、流行語大賞などでメディアや世間でも使われるようになった。自己責任論を転換していく契機になった。

■自己責任論ではない思考ができるようになった

賃金未払いやパワハラなどがあっても、相談者は自分が悪いと思っている。自己責任を内面化しているひとが多かったが、「うちの会社ブラックかもな」という問いの立て方自体が、最初から自己責任論ではない思考ができる考え方。しかしそれだけで会社がよくなるわけではないので、具体的な交渉、賃上げ、労働条件の改善を求めて行動していくために総合サポートユニオン、ブラックバイトユニオンという労働組合を設立した。2018年頃からストライキを武器に自分たちの労働条件を自分たちで改善していくことに取り組んでいる。2018年の東京駅の自販機のベンダー(補充員)のストライキが契機に。東京駅で働く20人くらいの補充スタッフの内10人が労働組合に加入。「ストライキやります。補充しません」というアクションがネットも含めて広く支持された。

■POSSEの近年の取り組み

大人食堂の取り組み。子どもの貧困は親の貧困なので、それを無視できない。コロナ禍の変化では、若い人、女性が多くボランティアに参加するようになった。今は20代前半のひとが中心になっている。

■ブラック企業

80年代、特に90年代以降に出てきた新興産業は、サービス産業(IT、飲食、小売り、福祉系)。震源地はIT産業だった。

■ブラック企業の手口~選別型の事例

ブラック企業問題を告発していくことになる最初のきっかけだった。正社員なのに自分から辞めてしまう。雇用保険は自己都合退職だとペナルティで、すぐにはお金がもらえず、貯金もたいしてない状況だと生活に困窮してしまう。そういう状況に陥ってからPOSSEに相談してくるケースが多い。組織的に行っていたことは、その会社の総務の方からもセクハラの相談がきたことでわかった。

■「予選落ち」と告げられ自殺

2000年代、2010年代にトライアル雇用(試用期間なども)が増えた。この会社は、すぐには正社員で採用せず、半年間の自称「予選制度」を設けていた。小さい頃から気象予報士になりたくて、国家資格を取得して、ウェザーニュースに就職。半年間の予選を勝ち抜くために、多い時に月200時間の残業をする。月80時間で過労死ラインが超えると言われているので、3倍近い残業をしてがんばったが「予選落ち」を告げられ、翌日に練炭自殺してしまう。遺族が会社を訴えて事件になっていった。

■働けなくなったら使い捨てる~使い捨て型の事例

選別はしないが、低賃金・長時間労働で使い捨てていく手口。固定残業代という仕組みが非常に特徴的。あらかじめ月の残業代を給料のなかに組み込んで手当として支払う制度。賃金を水増しして人を集める。スライドは日本海庄やのケース。当時の同社のHPにあった「月給19万6400円」は、日本銀行の初任給より高かったが、入社後に80時間の固定残業代が組み込まれていることを告知された。

■最近の労働相談で増えている「いじめ」の問題

東京都の個別労働紛争の相談内容も、この10年で「いじめ・いやがらせ」が最も多くなってきている。なぜこのような理不尽な加害行為をして会社の方も放置しているのか。労働条件が低いまま、業務量が増え、責任が重くなることで、ストレスがたまりやすい職場になってきている。本来は経営側の責任なので、労働組合から労働環境を改善するように求めていくことが健全だが、労働組合が機能していない職場も多い。そのストレスが、職場の同僚、ちょっと器用ではないひとに向かってしまう。本来同じ労働者なので団結して経営側に労働環境を改善していくべきだが。目先の利益を優先する経営になっていることと、近年の人手不足の中で人が育たないということが追い打ちをかけている。

■従来の正社員とブラック企業の違い

終身雇用・年功賃金などの福利厚生などの保障は強かったが、全国転勤あたりまえ、残業命令拒否できないなど昔から日本の働き方は広範な指揮命令権があった。今は保障がないのに企業の命令が強いままの企業が拡がっていて、それを「ブラック企業」と私たちは呼んでいる。しかし従来からの正社員も賃金が上がらず保障がない労働市場の方に引っ張られている状況がある。

■非正規雇用、貧困の広がり

正社員もきついが、非正規雇用も大変な状況。ブラック企業を一度経験してしまうと、正社員で働くことがトラウマになってしまう人もいる。正社員をドロップアウトすると家族が支えるしかない。最近、中高年のひきこもりも言われているが、学校時代から不登校になって、ひきこもりという人もいるが、労働を経験してドロップアウトしてひきこもりになる人もかなり多い。

2000年代は若者中心だったが、現在は若者だけではなく全世代にわたって広がっていて働く人の40%が非正規雇用労働者となっている。主婦パートのように誰かが稼いでくれているのなら直ちに問題にはならないが、今の問題は、自分で稼いで自分で自立しないといけない非正規雇用労働者が増加していること。日本の最低賃金制度では、東京都は1,113円で、長野県は948円となっているが、どうしてこんなに低いのかというと、養ってくれる夫がいる主婦パートを基準にして設計されているから。1人で食っていくには足りていない水準が日本の最低賃金。近年あがりつつあるが1500円くらいは必要と推計されているのでまだまだ不十分。東京の最賃でも全然足りない。国際比較すると韓国の方が最賃が高い。

■コロナで顕在化したサービス業の非正規女性

ブラック企業の多い新興産業もサービス産業が多かったが、特に2000年代以降の日本の産業構造を見ていくとサービス経済が中心になってきている(高度経済成長期は建設・製造業が牽引して経済成長していたが)。サービス産業は、正社員が少なく、非正規雇用が多い部門。とりわけ医療福祉部門がこの20年で倍増している。サービス経済化が進み必要になった雇用者数のほとんどを女性が進出することでまかなっている。その多くが非正規雇用労働者。それまで家庭にいられた女性たちが労働市場に吸収されている状況。

サービス経済化、ケアワーク化を女性が中心に担ってきている。そこにコロナ禍が襲い、宿泊・飲食サービス業などで、非正規の人を中心に休業補償がされない、シフトに入れないなどの被害が大きかった。その多くが女性で、また女性は家庭のケアの責任も負わされているので、労働市場で排除されながら家庭の責任も負わされるという状況が生まれた。コロナ禍の被害は女性を中心に現れてきた。

■年功賃金の縮小

なぜ女性が働かなきゃいけないかというと、男性の賃金がこの20年で非常に低下している。年功賃金を受け取れる男性正社員の数が減少している。逆にこの20年で年収300万円未満の割合が増加している。

■あがらない女性の賃金

男性の賃金は下がっているが、女性の賃金はまったく上がっていない。女性が何らかの形で男性に依存しないと生きていけないような状況。この20年は男性の賃金が下がっていき、女性の賃金は変わらない。また物価高騰・インフレによって生活にかかるコストはむしろ高くなっている状況。

■専業主婦モデルが成り立たない

結果、共働き世帯が増加し、専業主婦モデルが成り立たなくなっている。働ける子どもはアルバイトなどをする。みんなが働いてなんとか「ふつう」の生活を維持しようという「多就業家族モデル」に移行している。しかし相変わらず女性に家事や家庭のケアの負担が押し付けられていることが多い。家族の中でケアを担う人がいなくなることからヤングケアラーというような子どもがケアの担い手になっていることが社会問題になっている。

■男性の賃金が下がり「ふつう」の生活が困難に

一昔前の「ふつう」の生活をしようとすればするほど苦しい状況になっている。

■若者の貧困の実態

労働市場で包摂されていればいいが、労働問題が発生すると労働市場から出ていくことになる。日本の場合、失業補償、雇用保険とか生活保護とかが全然機能していない。働けなくなった場合、家族が生活の面倒をみることになる。ひきこもりという形で、失業が隠されてしまう。ひきこもりと言われているが、失業問題だ。支える家族の負担も増え、働くようにというプレッシャーから家族関係が険悪になり、家族から逃げ出した人からの相談が最近多い。ネットカフェや友人・知人宅に居候するなど、路上には出てこないが、安定した住まいも仕事もない状況に陥っている。若者の貧困が深刻化しているが不可視化されている。

■失業できる社会にしていくこと

きちんと失業補償の制度を作っていくことが必要で、失業できる社会にしていくことも重要。若者が自立できるための住宅手当もないし、家賃の安い公的住宅も非常に不十分。生活保護など公的な社会保障で生活を成り立たせるようにしないと家族が壊れてしまう。

■家族から逃げ出す若者

ジェンダー差があり、女性の方が労働自立のハードルが高く、家族への依存度が高いが、親・夫/パートナーへの依存も困難になっている。生活保護くらいしかないので生活保護を使って「自立」しようという支援をPOSSEではしている。

おそらく地方と都市部で「生活保護」の課題は変わってくると思うが、若者の労働をカバーしながら、家族が共倒れするまえに生活保護を活用して支援していく。しかし生活保護のハードルは高い。本来、生活保護は誰でも申請できるが、行政の現場では「水際作戦」といって「若いんだからハローワークに行ってください」「若いんだから家族を頼れるんじゃないの」「お父さんどうした」「家族と一緒に来てください」などと言って申請させずに追い返すことが横行している。

東京などでは無料定額宿泊所という貧困ビジネスと呼ばれる施設が多くある。ホームレス状態で申請にいくと「施設に入れ」と言われる。最低生活費13万円の内、10万円くらい施設にピンハネされたり、ベニヤ板の間仕切りの部屋だったり南京虫がわいていたりするなど劣悪な環境の施設で生活することを行政に強いられている。そうではなく地域でアパートを借りて生活できるようにPOSSEでは支援している。

■若者の労働と貧困に取り組む

これまでの労働組合に組織されていない、非年功型のブラック企業などの正社員、家計自立して自分で生きていかないといけない非正規雇用労働者、地域のなかで必要なサービスを提供しているのに非常に不安定な状況で働かされている非正規公務員(会計年度職員)など、エッセンシャルな仕事を担っている人達の扱いが非常に悪い。

非正規雇用では、主婦パートを前提にした最低賃金規制があるだけで、企業ごとの賃金の基準や賃金を上げる論理などが存在せず、経営者の属人的な恣意的な判断になっている。非常に無秩序な状況が広がっている。5年~10年働いている熟練のパート・アルバイトより最近雇った人の方が賃金が高いというような無秩序な労働市場になっている。円安・インフレの影響で支出ばかり上がっているが、賃上げの流れから取り残されている。

■このままでは社会が壊れてしまう

ちゃんと働いたらふつうに生活できるだけの賃金が得られるようにしないといけない。どういう論理で要求していくのか。非正規の人は、かつてのような年功賃金はもう要求できないので、きちんと仕事の内容に対する評価をして、責任の重い仕事をしていたら、それに応じた賃金要求をしていく。また、生活賃金(リビングウェイジ)という考え方があって、働いたら一人前の生活が成り立つだけの賃金を払いなさい。それが少し前の試算では時給1500円だったが、1500円でもきついと言われている。日本社会で、ふつうに暮らしていくのにどれくらいの賃金が必要か明らかにしていく作業をして、それに基づいて要求していくことが必要。

群馬県の桐生市のケースでは、介護の仕事をしている人が時給1100~1000円で、スーパーのレジ打ちの仕事が時給1300円~1200円という状況がある。生活のことを考えると介護をやめたほうがいいことになる。人材不足のなかで小売り・飲食は賃上げしているが、介護などのケアの仕事の賃金は公定価格、介護報酬などの政策で決まるので低いままに留め置かれている。これを放置していたら介護するひとがいなくなる。仕事の内容をきちんと評価して賃金をあげていかないと社会が壊れる。働いて生活が成り立つことをどうやって実現していけるかが課題。

■非正規春闘のたたかい

賃上げされていないという人が8割。非正規春闘に取り組んでいる。2024年の成果は現在まとめている。

■ABCマートのパート春闘支援

POSSEはABCマートのパートの春闘を支援した。ABCマートはインフレ・物価高騰のなかで賃下げした。それに怒った女性のパートの人から組合に相談がきた。ストライキなども行うたたかいをして、パート5000人の6%の賃上げを勝ち取った。今の物価上昇ではそれでも足りないが。非正規の労働者をきちんと組織して労働条件を改善していくことが重要な状況。

■いろんな背景を持つ人の「共闘」が生まれている

労働運動というとどうしても男性・正社員が中心になって、歴史的にも男性・正社員の企業別労働組合を中心に組織され、おじさん中心のイメージが一般的には非常に強い。しかし非正規春闘ではいろいろな属性・背景をもった人達が中心になってたたかう運動になっている。

■労働組合が注目されている時代

非正規労働者の低処遇は恣意的で、差別的な理由で正当化されてきたが、社会にとって必要不可欠な労働をしている人達。今回の非正規春闘もまだまだ運動として広がりは不十分で、当事者の組織も充分広がっていないが、これまでの労働運動で排除されてきたような人達が繋がって、非正規の賃金・労働条件を改善していくことに結集して声をあげているところに非常に大きな意味がある。

今こそ労働運動がどんなふうに存在感を発揮して新しい社会をつくっていくのかを問われている時代。この20~30年でいちばん労働組合が注目されている時代になってきている。POSSEでもいろいろ取り組んでいきたい。皆さんも働きながらで大変だと思うが、組合活動に意義がある時代になってきている状況なので、交流しながら一緒に運動を広げていけたら。

■質疑応答

Q POSSEではどういった発信をしていますか?

SNSでも発信しているが、代表の今野がYahoo!オーサーとして、Yahoo!ニュースや様ざまなメディアで労働問題など発信している。労働問題はどれだけみんなに関心を持ってもらえるかが重要と思っているので、介護など社会のインフラを担っている方々の労働の在り方がこれでいいのかということを多くの人に関心を持ってもらえるように意識して発信している。

Q 東京に行けばなんとかなると考え、地方から東京に出てくる若者が多い。その前に地方でなにかサポートができたらと考えている。アドバイスをください。

家族から逃げ出す若い子が非常に多い。アルバイトをしても家から出て自立できず家族と暮らさざるを得ない。そこでは虐待や家族との不和などいろいろあって、東京に出て来る理由が仕事を求めてではなく、家族から逃げるためという理由になっている。最近はオンラインライブ配信などで繋がって、その人を頼って居候しているというようなケースが多い印象がある。地方で、親元を離れて自立生活できるようにしていくことが必要だが、そういう方と繋がることは容易ではない。しかし相談窓口を設けて支援に繋げるモデルケースなどができたらまた変わっていくと思うがなかなか難しいだろう。

Q 定時制高校の教員から相談を受けて動いているが、子ども食堂や支援センターなどと連携して動いていくことも大事では?

若者ということで18才以上の支援が中心だが、18才未満は親との関係も複雑なので児相が介入するなどないと親から引き離すのは大変。距離をとることが大事だと考えるが、どういう体制を地域でつくれるか。若者の貧困、家族の崩壊のなかで非常に重要な課題だと思う。

7月20日・松本市で2回講座を開催

次回の講座では鶴丸周一郎氏から「コミュニティユニオンの現在とこれから」というテーマで、若者、女性、非正規労働者、外国人労働者からの労働相談と組織化について講演いただきます。

~明日の労動運動を考える~21世紀の労動運動研究会
第2回講座「コミュニティユニオンの現在とこれから」

講師:鶴丸 周一郎 氏(名古屋ふれあいユニオン運営委員長)
日時:7月20日土曜日 13時30分~
会場:松本市勤労者福祉センター 2-1
   松本市中央4-7-26(電話 0263-35-6286)

◆Zoomからも参加できます。

ミーティングID 816 6355 7440 パスコード 777222

 

6月22日に松本市でアスベスト面談・電話相談会を開設します

10時~16時 無料・秘密厳守 誰でもお気軽にご相談ください

電話 0263-39-0021 もしくは0263-33-9513

2018年11月に開いた松本市での相談会

2005年のクボタショック以降、アスベスト(石綿)問題が、労働現場でのアスベスト使用や解体に伴うばく露、中皮腫・肺がん発症など労働災害問題にとどまらず、一般市民にも健康被害を及ぼす危険性が明らかになり、重大な社会問題として認識されるようになりました。

アスベストによる健康被害は、30年から40年と言われる長期間にわたる潜伏期間ののちに中皮腫、肺がんなどが発症するため、アスベスト大量使用時代に現役であった労働者や関連工場の周辺住民の健康被害が現代の問題として浮上しています。また、アスベストの吹付、建材に使用された建築物の解体時期を迎える問題も地域社会にとっては重要な課題です。高度経済成長時代の効率のみを追い求める社会風潮が生み出したアスベスト問題は、経済優先の「負の遺産」です。これからの時代は、何よりも人の命や健康を優先させる社会が求められています。

長野県内でもアスベストを扱う事業所での労働者のばく露問題や建築物に使用されるアスベストの解体・補修時の飛散問題など、大きな社会問題となっています。JR東日本では現役の社員がアスベストばく露により悪性胸膜中皮腫を発症、闘病のすえ死亡するという労働災害も注目を集めました。

また、建設アスベスト訴訟で最終的に国の責任が最高裁によって認定され、政府は2022年1月からアスベスト被害にあった建設労働者へ「給付金」を支給する制度をスタートしました。

「長野県アスベスト対策センター」は2018年4月に結成しましたが、「NPO法人じん肺・アスベスト被災者救済基金」(神奈川県横須賀市)の協力により、長野県内の県民・労働者、関係事業者などを対象に面談相談会・電話相談会を開設する計画を立てました。

アスベスト被害の補償・救済については、労災補償制度(主管:厚生労働省等)と労災以外の救済制度(主管:環境省・環境再生保全機構)によって実施されていますが、制度に対する周知や関係者の認識不足などによって、補償・救済を受けられないで苦労されている患者と家族がおられます。また、中皮腫はじめアスベスト関連疾患の治療について相談先を求めておられる場合も少なくありません。

また、アスベスト被害にあった建設労働者へ国が「給付金」を支給する制度についてもまだまだ周知されているとは言えません。

長野県アスベスト対策センターではそうした実情に対応し、過去10回、長野市・松本市で電話相談や相談会を実施し、補償・救済の促進、情報の提供を行ってきました。実際に労災申請へつながる相談も数件ありました。

今回の相談会を通じて、アスベスト被害の実態を掘り起こすとともに、少しでも悩みや疑問がある人からの相談への対応や、健康被害で苦しんでいる人への救済制度の説明など、身近な相談センターとして親身に相談にのります。

アスベスト(石綿)被害 面談相談会・ホットライン

1.日  時  6月22日(土) 10:00~16:00

2.相談場所  面談相談 松本市中央4-7-22 松本市勤労会館 1階

ユニオンサポートセンター(松本地区労働組合会議内)

        電話相談 0263-39-0021もしくは0263-33-9513

        ※相談料は無料/秘密厳守

        ※面談相談を希望される方は事前に連絡を。

3.主  催  長野県アスベスト対策センター

        協力:NPO法人じん肺・アスベスト被災者救済基金(横須賀市)

長野県アスベスト対策センター第7回総会・講演会を開催

長野県アスベスト対策センターは、5月18日に県労働会館(長野市)で、第7回総会を開催しました。アスベストによる肺がんで夫を亡くされた県内在住のご遺族が、建材メーカーへ損害賠償を請求する集団訴訟に参加するための支援など、昨年度の取組みについての報告がされ、今年度の活動方針に沿って、引きつづき長野県民の命と健康を守る活動を推進していくことが確認されました。

国労家族会から県アスベスト対策センターに寄付金贈呈

国労家族会から県アスベスト対策センターに寄付金が贈呈されました。家族会メンバーでアスベスト被害者遺族でもある小林さんから連帯のご挨拶をいただきました。また「JR東日本大井工場アスベスト黒沼裁判」について、「じん肺・アスベスト被災者救済基金」の池田理恵氏から報告をいただきました。

中皮腫・じん肺・アスベストセンターの永倉氏が講演

総会終了後には、県アスベスト対策センターの連携団体である「NPO法人中皮腫・じん肺・アスベストセンター」の永倉冬史氏から「能登半島地震での災害ごみ処理とアスベスト対策/阪神・淡路大震災30年プロジェクト報告」というテーマで講演いただきました。あわせて長野市環境部生活環境課の梨本正彦氏から「能登半島地震災害における災害廃棄物処理事業の現状と課題」というテーマで報告いただきました。オンライン参加者を含めて50人が参加しました。石川県内の自治体議員(2人)の方も参加され飛び入りで報告もいただけ有意義な会となりました。

能登半島地震被災地の状況・アスベスト対策

石川県珠洲市へ支援に入った長野市担当者からの報告

石川県の能登半島地震の被災地では、多くの建造物やインフラに被害が発生しました。現地調査を行った永倉氏から、がれきの中にアスベスト含有建材の破片や鉄骨に吹き付け罪があることが紹介され、災害ごみの処理、アスベスト対策の現状と課題について共有いただきました。また珠洲市の支援に入った長野市役所の梨本氏から、現地の被災状況、支援にかかわる中で見えてきた災害廃棄物処理事業の課題、アスベスト対策について台風19号災害の経験と教訓をふまえながら報告をいただく貴重な機会となりました。梨本氏への質疑応答では、「台風19号災害の経験から、今回の支援に役だった点、活かされた点は?」という質問があり、「次になにが来るかがわかったこと。この時期には仮置場を開設しなくてはいけない、この時期には公費解体の相談が増えてくる、マスコミ対応など、先回りして助言ができることが一番大きかった」と返答され台風19号の経験が今回の支援活動に活かされていることも共有されました。

「阪神・淡路大震災30年プロジェクト」

アスベスト疾患発症増加への懸念

1995年に発生した阪神・淡路大震災から来年で30年を迎え、被災地で飛散したアスベスト(石綿)による健康被害が懸念されています。全国から集まったボランティア活動が注目されましたが、震源被災地でのアスベスト粉塵問題が注目された初めての災害でもありました。大震災から30年が経過し、潜伏期間が30~40年とされるアスベスト疾患の発症が、今後増加していくことが予想されています。

「中皮腫・じん肺・アスベストセンター」では、大震災から30年となる2025年1月までの期間において、災害とアスベストに関する調査・研究を進め、今後の災害に活かすため、記録に残す活動に取り組んでいます。永倉氏からは「阪神・淡路大震災30年プロジェクト」の取り組みについても報告をいただき、発災直後の防護だけではなく、長期にわたってその影響をモニタリングしていく必要があり、市民の健康を守るためにもアスベストについての情報を周知していく活動の重要性が参加者に共有されました。

Ⅰ 講演概要 永倉冬史氏(中皮腫・じん肺・アスベストセンター)

能登半島地震での災害ごみ処理とアスベスト対策/阪神・淡路大震災30年プロジェクト報告

➀阪神・淡路大震災30年プロジェクト報告

オンラインで報告する永倉氏

■阪神・淡路大震災30年プロジェクト

・2025年は、阪神・淡路大震災から30年の節目の年。30年となる2025年1月までの期間において、災害とアスベストに関する調査・研究をすすめ、今後の災害に活かすために記録を残す活動を開始する。

・今年の防災の日(9月1日)、来年の1月にシンポジウムを開始する。

・災害被災地でのボランティア活動が注目される契機となり「ボランティア元年」と呼ばれるようになった。また震災被災地でのアスベスト粉塵問題がとりあげられた初めての災害でもあった。震災発災直後の倒壊した建造物から発生したアスベスト粉塵は、被災地全域に飛散したと考えられる。アスベスト疾患の発症までの潜伏期間は30~40年と言われ、今後増加していくことが懸念される。

・発災当時、被災地でボランティア活動など粉塵のなかで活動した心当たりのある方に、アスベスト情報を提供することを目的とした活動を実施する。

■阪神・淡路大震災30年PJ事業計画

飛散検証チーム
環境省を中心に一般環境の濃度測定値を発表しているが、その濃度測定地に疑義がある。当時のアスベスト粉塵濃度は、白石綿(クリソタイル)しか測定していない。それ以外のアスベスト繊維の濃度が測定されないままに一般環境の濃度が発表され、それほど危険はないという判断に繋がってしまったことは問題ではないか。当時の記録を集めて分析している。

災害とボランティアチーム
30年ばかり前のことであり難航している。当時ボランティアとして関わったひとたちの記録も残っておらず、高齢化も進行している。

アスベスト曝露チーム
連続公開講座の企画。当時のボランティアへの聞き取りを神戸大学の学生を中心にして取り組んでもらう。若い世代にもアスベスト問題を知ってもらうこともひとつの目的。

防災対策チーム
阪神・淡路大震災から始まった災害被災地でのアスベスト曝露の問題について、能登半島地震被災地の行政等への提言を具体的に練っていく活動。

記録チーム
アスベスト問題への取り組みの活動記録は重要。今後に活用していくためにも。被災地の神戸新聞、東日本大震災の被災地の新聞・河北新報などの記者に専門にアスベスト問題を追った記者たちがいる。彼らに災害被災地での報道の記録の作成をお願いしていく。

■連続公開講座を神戸大学で実施

「震災の経験を記録する——阪神・淡路大震災とアスベスト被害を聞き取り、語り継ぐために」

当時のニュース映像などを交えながら、アスベスト問題がどのように捉えられたか、これからどのようなことが必要かを考える。当時、さまざまなボランティア活動に関わった方にヒアリングに協力していただくことを目指している。

(上記のWEBサイトから転載)

連続公開講座「震災の経験を記録する——阪神・淡路大震災とアスベスト被害を聞き取り、語り継ぐために」

2025年1月に、阪神・淡路大震災から30年の節目をむかえます。1995年の震災やその復興の過程のなかで、たくさんの人々がアスベスト(石綿)の曝露にさらされました。しかし、膨大に広がったものと考えられるアスベスト被害の全貌はいまだに把握されず、しかも30年後の現在はまさに被害が発症するタイミングです。アスベスト被害は決して過去の出来事ではなく、いまも続いているのです。そのような問題意識のもと私たちは、連続公開講座を開催することにしました。第二回となる今回の講座では、アスベスト被害を経験した当事者の方々にお越しいただき、生の声に耳を傾けます。そして、震災によるアスベスト被害の現実を学び、当事者の声を記録し、私たち自身の声で社会へと発信していくことをめざします。

■「阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター」

阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター(WEBサイト)

https://www.dri.ne.jp/

■具体的な今後の取り組み

全国的なアンケートを実施していく。すでに石川県の被災地に防塵マスクを届ける活動を開始しているが、さたに備蓄用のマスクを送る活動のための寄付金も集めていく。連続講座「震災の経験を記録する」では、若い世代に震災アスベスト問題の本質を理解してもらえるような講座にしていきたい。

②能登半島地震での災害ごみ処理とアスベスト対策

■能登半島地震被災地の現地調査

5月6~8日に「ひょうご安全センター」3人、「東京労働安全衛生センター・リスクコミュニケーションプロジェクト」4人、計7人のメンバーで現地調査に入った。

 

■現地の状況

■防塵マスクを社協・ボランティアセンターに寄贈

輪島市の社協のボランティアセンターを訪問した。マスクを寄付し、「市民のためのアスベスト対策ガイド」やアスベストについて知るための漫画を届けた。漫画は東日本大震災の際に制作したもの。

◇市民のためのアスベストガイド(東京労働安全衛生センターサイトより)

アスベストのばく露を防止するためには被害を受けるおそれのある人々が対策に参加することが重要です。これは職場では「リスクアセスメント」と呼ばれており、世界中で行われていますが、日本の中小の解体の現場では未だ普及していません。アスベストの被害は職場を超えて周辺住民と建物を利用する人々に及びます。住民、建物利用者、建物所有者、工事業者、行政などの関係者が情報を共有し、対策に関与することをリスクコミュニケーションと呼びます。アスベストの対策では、このリスクコミュニケーションが効果的であり、重要とされています。私たちは全国各地で解体工事などでのアスベストをめぐるリスクコミュニケーションに関わってきました。このガイドは、アスベストとは何か、その用途と危険性について解説します。そしてその危険を避けるために働く人や建物利用者と住民が何をすればいいのかを示すために作成しました。皆さんの問題解決のために役立てば幸いです。

市民のためのアスベストガイド(PDFダウンロード)
https://tokyo-oshc.org/wp/wp-content/uploads/2021/08/asbestosguide_compressed.pdf

■被災地のアスベストの状況

大きく報道された倒壊したビル。二つの四角い煙突にアスベスト保温材が使われいる恐れがある。解体には注意が必要になってくる。

焼け野原になった朝市通り。いたるところに花が手向けられていた。

アスベスト吹き付け材が焼け跡に見受けられる。

アスベストが含有される西洋屋根瓦が粉々になって散乱していた。

アスベストを意味する「a」マークが見つかる。

アスベストの吹き付け材が疑われる焼け残った建物の鉄骨。

アスベスト含有の可能性が疑われるロックウール。焼け残った建物の多くに同様の箇所が見つかった。分析していく必要がある。

煙突の耐火材も確認する必要がある。対策が取られない状況で放置されている可能性がある。

ぽつぽつと穴が空いている板が見つかる。押出成形版は最期までアスベストが使用された建材。おそらくアスベストが含有されている。押出成形版がかなり広範囲に散乱していた。アスベスト対策が必要な状況。

橋には段差が発生し車がスムーズに出入りできない状況。同行した神戸のメンバーは「阪神淡路大震災の際に大規模な火災が発生した長田区を彷彿とさせる」と発言していた。

■石川県庁に調査で得られた情報を報告

この視察で得られた情報を翌日金沢市内の石川県庁を訪れ担当部署に報告したが、危険な現状がなかなか伝わっておらず、現状についての情報がよく理解されていないという印象を受けた。

環境省が建物のアスベストの分析依頼を出した。石川県が保有するアスベスト台帳(国交省が主導して災害前から準備するように自治体に働きかけ)をもとに、64棟の被災建物にアスベストの露出状況の調査を行った。そのうちの12棟で吹き付けアスベストの露出が確認され、今後の公費解体の際にアスベスト対策が必要とされる。しかし石川県全域で12棟という数字は、現在の状況が反映されているとは言えない。

全体的に石川県全体でアスベストに対する認識が立ち遅れている現状がある。今後、NPO、NGOなどからの提言が非常に重要になってくる。私たちも今後も被災地を訪れ、調査結果から提言を行いたい。また公費解体にかかわる事業者向けにアスベスト対策のレクチャー・講習も行っていく。

石膏ボードなどの分別を示す看板が設置されていた。まだ運び込まれる前だったのでがらんとしていた。特徴的だったのは、がれき置場の出入口のスタッフに「中を見せて下さい」と声をかけると簡単に入ることができた。他の被災地ではあまりなかったこと。それがいいのかわるいのかはいろいろあるが、行政の監視管理状況も十分には機能していないと感じられた。

今後もわれわれのできることをつづけていく。長野県アスベスト対策センターとも連携して取り組んでいきたい。

【質疑応答】

質問:生協関連で輪島市に派遣されていた方から、団体同士の連携がうまくいっていないという声をきいた。団体同士の繋がりが弱いという印象は持たれたか?

回答:短期間の調査のため全体像は見えていない。しかし神戸からボランティアに来ていた方にきいた話では「連携がわるい」、「情報が全然伝わってこない」という声があった。そのような状況は、他の被災地でもあったが、情報がなぜ均等に行き渡らないのかという問題がある。東日本大震災の際も、当初は行政が機能せず、ある病院の医師が宮城県庁に乗り込んで「これでは誰も助けられないぞ」と発破をかけて、その医師が中心になって連絡体制を構築したという話があった。全体像を理解して体制が組めるような人がいなかったのではないかという印象を持っている。環境省のホームぺージなどを見ると、どういう支援が行われた詳細に分析しているものがあがっている。分析している間に他のことができるのではというくらい分析している。能力のあるひとが現地に入っているだろうが、適材適所になっていたのか。

他県から被災した建物調査に入っているが、それらの情報が石川県にあがっていない、活かされていない、連携がとれていないという感じがあった。長野県の場合は、さまざまな情報を環境政策課、環境課などが取りまとめる能力があった。それを現場で反映して活用できるように情報処理することもできていた。ただ長野県の場合は石川県と異なり狭い範囲で被災地が完結していたが、石川県は被災エリアが広範囲に及び分散する自治体をまとめることができなかった。むしろボランティアの方が連携ができていた。自治体はうまくカップリングできず遅れてしまった印象を受ける。

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Ⅱ 報告概要 梨本正彦氏(長野市環境部生活環境課)

台風19号災害の経験と教訓を踏まえた、能登半島地震災害における災害廃棄物処理事業の現状と課題

【趣旨】令和6年能登半島地震災害において災害廃棄物処理支援員登録制度(人材バンク)として石川県珠洲市で活動した内容を報告するもの。アスベスト対策も含めて報告する。

・2023年5月5日にも石川県能登地方でマグニチュード6.5の地震が発生して、石川県の珠洲市で最大震度6強を観測した。倒壊などの被害を受けた建物があったが、元日の地震がさらに追い打ちをかけた。

・発災直後の現地入りの際は、市役所の別棟に雑魚寝できる部屋があり環境省の職員らと共に寝袋でやすんだ。歯磨きなどはミネラルウォーターを持って行って、朝口をゆすぐという状況だった。
・水道管や下水道管に被害が出て、市民の方も市役所に用を足しに来るが詰まって使えなくなった。その後、仮設トイレを市役所の外に設置した。しかしバキュームカーも道が悪くなかなか回収に来れない状況だった。午前中になると満杯になっている状況だった。
・食事も制限して、できるだけトイレの利用をしないように気を使った。当然風呂にも入れない。
・1月末~2月はじめの二度目の現地入りの頃には、トイレの設置もすすみ、避難所各所に設置されるようになり、活動しやすくなった。
・支援者も増えてきたので宿泊場所が少ない状況になっていたので、長野市の車のなかで休んだ。トイレは利用できたが水道が出ない状況がつづいていた。
・3月の現地入りの際の宿泊はキャンピングカー(北九州ナンバー)だった。30~40台ならんでいた。衛生環境が整ってきた。

・し尿の処理(バキュームカーでの回収・運搬等)に多大な経費
・支援に入った福井県は回収したゴミを福井県内まで運んで処理していた
・一度に施設が被災するとどうにもならないなと感じた。私たちが経験した台風19号災害とは比べ物にならないほどの大きな被害だと実感。

・珠洲市はアスベストが使用される以前の古い建物が多く残る街並み。
・今回の地震では、台風19号災害とおなじく特定非常災害に指定されたので、全壊家屋も半壊家屋も公費解体となり国の補助対象になった。
・写真は元旦の地震で崩れた寺院。かなり大きく立派な建物だったが崩れた。手を付けられずそのままになっていた。

・穴水町が非常に細い道がボトルネック。
・発災直後は、救急車が通行するたびに交通が止まった。
・長野市役所から珠洲市まで12時間かかった。石川県庁から珠洲市役所まで7時間かかった。
・困ったのは携帯の電波が使えず、ナビが使えなかったこと。能登里山街道が走れず、脇道を勘で走るしかなかった。

・1月末の仮置場の開設・運営方法についての会議 アスベスト含有しているとみなして対応することが決定

■被災地の被害の状況

・配管がズタズタになっていた。急ピッチで復旧作業をしている状況。

・能登の復興には、東日本大震災や台風19号災害よりも息の長い支援が必要と感じた。


・いちばんの繁華街のエリア。被災直後の頃は、一日一往復が給油車の限界だったので午前中にはガソリンスタンドは売切れの状態。

・いちばん大きな避難所になっていた。福井県庁が支援に入っており比較的衛生状態がよかったが、仮説トイレも当初は8基しかなかった。また夜間は真っ暗になるため、用を足すのは明るいうちに限られた。

・もっとも津波の被害が大きいエリア。マンホールの隆起が目立った。全部やり替えになる。粉塵が舞っていた。散水もできないのでマスクで防ぐしかなかった。

・焼却場は突貫工事で復旧できた。山を削った場所に建てたので問題なかったが、管理棟は盛り土の上に建てたので被害が大きかった。

【質疑応答】

質問:台風19号の経験は今回の支援に役だった点、活かされた点など教えてください。

回答:次になにが来るかがわかること。この時期には仮置場を開設しなくてはいけないとか、この時期には公費解体の相談が来るとか、マスコミ対応など、先回りして助言ができることが一番大きかった。仮置場の開設の話が1月末に出ている。市内全域が被災した状況のなかでは素早い対応だった。

【県アスベスト対策センター今後の予定】

6月22日(土)第11回アスベスト被害面談・電話相談会を開催

6月22日(土)に第11回アスベスト被害面談・電話相談会を開催します。過去の相談会で寄せられた相談から労災申請にも繋がっています。アスベストの健康被害を抱える方や不安を感じている方、アスベスト加工を業務とする事業者などからの相談をひろく受け付けます。

※相談料は無料/秘密厳守 ※面談相談を希望される方は事前にご連絡ください。

日時 2024年6月22日(土) 10:00~16:00

面談相談 松本市中央4ー7ー22 松本市勤労会館 1階 ユニオンサポートセンター(松本地区労組会議内)

電話相談 0263-39-0021 もしくは

0263-33-9513

今を変えよう 私たちの声で ― くらし、平和、政治 

松本駅前での集会・市民アクションin信州に700人が参加

立憲民主党・日本共産党・社会民主党の3野党からの訴えも

市民運動家の菱山南帆子さんが「政治をchangeしよう」とアピール

43人の呼びかけ人と信州市民連合、中信市民連合などでつくる実行委員会は、「Change Now by Our Voice(今を変えよう 私たちの声で)―くらし、平和、政治 6・2市民アクションin信州」を6月2日、松本駅前に約700人の市民を集めて集会と市街地のパレードを行いました。当日は、雷雨も予報されていましたが、幸いに集会中は太陽も顔をのぞかせ、パレードの際にも小雨にとどまり、予定通り実施することができました。

集会では、呼びかけ人の又坂常人さん(信州大学名誉教授)が主催者として「岸田政権は末期症状だ。政権交代を実現してよりましな政治をつくろう」などとあいさつしました。そのあと、立憲民主党から杉尾秀哉さん(県連代表/参議院議員)、日本共産党から武田良介さん(前参議院議員)、社会民主党から大椿裕子さん(副党首/参議院議員)の3人から裏金問題が発覚し、大軍拡・防衛増税をすすめ、国民が苦しむ物価高による生活苦を放置している自民党政治を変えようという訴えがありました。地元(長野2区)の衆議院議員、下条みつさん(立憲民主党)も駆けつけてあいさつしました。

特別ゲストの市民運動家の菱山南帆子さんは、「まさに今、市民の声をあげて政治をchangeしていこう」とアピールしました。

集会では「今こそきちんと怒らなければなりません。仲間を増やし、史上最悪の岸田政権を退陣、政権交代を実現させましょう」というアピール文を採択しました。

集会後には、松本市街地をパレードし「政治をchangeしよう」と市民にアピールしました。

なお、集会の運営費をねん出するため参加者にカンパをお願いしたところ177,664円もの現金が集まりました。あたたかいご協力に感謝申し上げます。

3野党代表と又坂さん、菱山さんが並んで

小雨の中の集会に多くの市民が

アピールする菱山南帆子さん

松本駅前に菱山さんのアピールが響く

参加者がプラカードを掲げてアピール

呼びかけ人が壇上で3野党代表などと一緒にプラカードパフォーマンス

松本市街地をパレードして市民にアピール

集会を報じる信濃毎日新聞(2024年6月3日)

2024 フクシマ連帯キャラバンに参加して

 

全港湾などの若い世代の組合員が中心となって活動

長野県原水禁 草野麻理子

今年で13年になる東日本大震災と福島原発事故。3月16日の「原発のない福島を!県民大集会」と20日の「さようなら原発全国集会」に合わせて、今回で8回目となる「フクシマ連帯キャラバン」が開催された。私は、そのうちの17、18日に参加した。

いわき市小名浜のホテルで集合

16日、福島市での集会を終えたキャラバン隊は、宿泊先のいわき市小名浜で夕食懇親会を行い交流を深め、私を含めた二名が翌17日朝、ホテルで合流した。

参加者総勢72人がキャラバン数台でいわき駅前の会議室での学習会に向けて出発。同乗したキャラバンには、部落解放同盟や兵庫県からの参加者らがいて、昨日の様子などを聞いたりこちらの活動を話しながらの道中となった。

学習会では、これまでのキャラバン隊について全港湾東北小名浜支部の矢内誠也さんからお話していただいた。課題として、2011年の福島原発事故を知らない世代にどうつなげていくか、また、能登地震による志賀原発のトラブル、避難経路は土砂崩れで通行不可、日本海側には福井の原発銀座もあり地震も多い地域であること、汚染水の海洋放出がもう既に計4回も行われ、1回あたり7800トンという量であること、作業員のトラブルも散見され、13年経っても廃炉作業が進んでいないことや燃料デブリが1グラムたりとも取り出せていないことを、地元に戻ったら拡げてほしいと話した。

これまでのキャラバンの活動を話す全港湾東北小名浜支部の矢内誠也さん

いわき駅前ラトブにて学習会

いわき市内郷の白土屋菓子店の超特大ジャンボシュークリームがふるまわれた

 

昼食後、一路被災地へ。

この企画は、一人ひとりが必ず福島原発事故を風化させないこと、被害を受けた地域の現状を自分の目で見て、「原発って必要なの?本当の復興とは何か?」を肌で感じ、これからも続く脱原発運動に活かしていくためのフィールドワークという趣旨を聞き、被災地へ向かう車内で身が引き締まる思いだった。

13年が経ち、風化してしまった家

一か所に集められたフレコンバッグ。一部ビニールシートで隠されていた。

人が戻らない中で立派すぎる双葉町役場。隣接する施設も有。

 

震災遺構・請戸小学校

津波の高さを明示している校舎の様子

津波による大きな被害があった請戸小学校が震災遺構として整備され、外観~内部を見学。当時の状況に思いを馳せた。小学校の周りは何もなく、ここだけがポツンと残っているのが印象的。たくさんの住宅や建物があったというのに・・・。小学校の児童と職員は全員無事だったことがせめてもの救いだった。

唯一の鉄筋コンクリート造だったことで、残った。

校舎の全体像。津波により窓ガラスが割れているのがわかる。

津波の影響で折れ曲がったプールの手すり。

慰霊碑(大平山霊園)

 

東日本大震災・原子力伝承館を見学

 

津島訴訟原告団・武藤晴男さんの自宅を見学

津島訴訟原告団の武藤さん、今野千代さん(診療所の元看護師)、馬場さんの案内で、津島小学校、診療所、ご自宅を見学した。避難所となった津島小学校は、津島の人口1,400人のところ、8,000~10,000人が4日間ここに滞在したそう。

武藤さんと今野チヨさんとキャラバン隊の渡辺団長

グランドは隙間がないぐらい車が停まっていて、一番の被害者は子どもだった。何もわからず連れてこられたという感じ。水洗トイレが詰まってしまって、大変困った。畜産農家がバキュームカーで吸い上げようとしたがホースが入らず、結局、青空トイレで済ませた。その後は原発事故避難となり、想定外が連続して起こった。

当時、線量が高いことも知らずにここ津島小学校に避難してきた。

置いてきぼりの軽自動車

モニタリングポストの数字は0.378を示している

当時、浪江町町議だった馬場さん

 

 

<今野千代さん談>

3月11日当日は先生(医師)と事務受付と後輩看護師2人で昼食にカレーを食べた。地震が起きて大変だったため22:00にようやく帰宅。翌12日一斉避難し、診療所に人がたくさん並んでいると聞き、急いで診療所へ。しかし、そんなにたくさんの薬は置いていないので、製薬会社に電話するも電話が通じない。13日になって、福島市から薬を持ってくることになった。チヨさんは原発事故のことをその時まったく知らなかった。浪江の開業医もかけつけた。15日に避難指示が出たが、患者さんを置いていけず、先生とチヨさんともう一人の3人が残った。14日、持病を抱えた避難者の700~800人が診療所の前に並んだが、お薬手帳もなく、何を処方すればいいかもわからず困った。

レントゲン室があったため、線量をガラスバッチで確認したところ、3~4日間で800ベクレル以上(建物内)。事故前は毎回測ると0だった。

自宅は築65年。除染は宅地から20メートルまでと決まっている。ここでの線量は1.3マイクロシーベルト。畑は竹藪と化し、除染はされていない。武藤さんは2つのお願いがあると話す。

①13年経った今になっても、こういうものだと伝えてほしい。

②10万筆の署名活動にご協力を。

屋内の様子

動物の荒らされた中の様子

この後、キャラバン隊は原告団との意見交換、茨城県で東海第二原発の周囲30キロ圏内にある15自治体へ避難計画及び老朽原発20年延長問題を記した要請書を首長へ直接提出する要請行動を行ったあと、東京代々木公園での「さようなら原発」全国集会へ向かった。

県労組会議のロゴマークをつくりました

組織と運動を表現するダブルロゴマークを採用しました

県労組会議のロゴマークをつくりました。組織本体を表すロゴマークと、平和運動などを表現するロゴマークのダブルロゴマークです。必要に応じて2種類のロゴマークを使うこととなります。

ロゴマークの色として、緑が環境、ピンクが人権、黄色が平和のカラーイメージが組み合わさることで、憲法の3原則「国民主権、平和主義、基本的人権の尊重」を表しています。

また、組織本体ロゴは、人と人が組み合わさって地域をつくる運動を表現。運動ロゴは、平和の象徴である鳩をイメージしています。

いろんな場面で使用して広げていきたいと思います。

組織を表現する本体ロゴマーク

平和運動などを表す運動ロゴマーク

 

 

 

第56回全国青年団結集会長野県大会が開催されました

長野県内、全国から330人の青年が結集

第56回全国青年団結集会長野県大会が、2月3㈯・4㈰にかけて、長野県千曲市・戸倉温泉 圓山荘で開催されました。長野県内から、全国各地から330人(13産別・2団体)が結集することができました。コロナ禍を経て、産別・地域を超えて集まった全国の仲間が2日間にわたって学習と交流を深めました。

全国から集まった参加者たち

千曲川のほとりにある戸倉上山田温泉

働き続けることが困難な職場に立ち向かおう

初日の全体集会では実行委員長の横川慶和さん(林野労組)から「北は北海道、南は沖縄から13産別の仲間が結集しました。私たち労働者は生活のため、社会のためにも、職場実態を見直し、前向きに働ける職場にしなくてはなりません。今集会での仲間との交流を通して、全国にたたかう仲間がいると感じることができれば、わたしたち働く仲間にとって心強い支えになるのではないでしょうか。この青年団結集会を、わたしたち労働者の団結をさらに強めるきっかけにしよう」と呼び掛けました。

矛盾や問題が顕在化する職場

基調提案では、2020年1月に高知県で第53回集会を開催したあと21春闘期、22春闘期にわたって青年団結集会を開催できなかったこと、労働組合においても自粛の雰囲気が強まり、学習や交流の取組みなどが次々と中止にされてきたことに触れ、自粛が労働組合の組織の弱体化や職場・社会への影響力の後退をまねき、青年の生活や労働の実態をますます困難にしかねないことが指摘されました。

そしてコロナ禍においても合理化はとまらず、労働者に問題と矛盾が突きつけられている現状が示されました。医療の現場では医療崩壊の危機感が煽られ、医療従事者への感謝がしきりに強調されたが、医療崩壊はコロナ禍以前からの病院の統廃合、病床の削減、人員の削減などの合理化によって発生していたこと、強調される感謝はその事実をごまかし医療従事者にさらなる労働強化を強いていたことなどが確認されました。

労働組合の弱体化は労働条件の後退をもたらすが、労働組合の強化、青年部運動の前進が、青年に低賃金や長時間労働を強いる社会や職場を変える力へと繋がること、そのために交流を力にしていこうと提案されました。

 特別報告➀消防職員協議会の仲間からの訴え

初日には、特別報告として消防職員協議会ユース部の関野晃充さんから消防職員協議会の活動についてスライドを交えて報告をいただきました。

勤務形態や業務内容、御嶽山噴火や台風19号災害などの災害派遣について、また人員不足やハラスメント、無賃金拘束時間などの消防職場の問題について報告されました。団体交渉権などの労働基本権がない消防が、劣悪な労働環境を改善していくために消防職員委員会制度がつくられましたが、使用者側の恣意的な運営が見られるなど、その効果は十分ではなく、委員会を実効あるものにさせるためにも職員の自主組織として消防職員協議会がつくられたことが紹介されました。労働組合がある職場が当たり前ではないことが参加者に伝わりました。

消防職員委員会制度について(総務省消防庁HPより)

https://www.fdma.go.jp/mission/enrichment/syobosyokuin_iinkai/iinkai.html

全消協ってなに?(全国消防職員協議会HPより)

http://zensyokyo.jp/zensyokyo/

(全国消防職員協議会HPより)

関野さんは報告後に青年団結集会ニュースに感想を寄せられています。

「今回初めて、消防協から参加し、消防の職場実態について、全国の仲間に伝えることができて、大変うれしく思います。人員不足や厳しい上下関係がある職場で消防職員が働いていることを知っていただけたのではと思います。私たち消防職員もみなさんと同じ労働者です。みなさんと同じ悩みを抱えています。組合を作る団結権すら奪われる現状で、職場のおかしいことに対して意見を言うために出来たのが消防職員協議会です。団結権の回復、住民サービスの向上のためにみなさんとともに頑張っていきたいと思います。今回の経験を参加しただけで終わらせることなく、この集会での熱気を自分たちの職場へ持ち帰り、団結した仲間とともにより良い職場をつくっていきます」

メイン行事の分散会

300人を超える参加者は40のグループに分かれて二日間にわたって、それぞれの職場の実態を話し、お互いへの質問を通して、職場・産別を超えて共通する職場の問題を確認することができました。

コロナ禍の影響もあり「分散会に参加することがはじめて」という参加者もありましたが、日頃の職場ではなかなか口に出せない気持ちや不満・不安、賃金や労働条件や組合などへの率直な思いなどを話すことができ、悩んでいるのは自分だけではないのだということを知ることができました。公共交通、自治体職場、清掃など他の職種の職場環境や悩みを聞きながら、どうやったら働き続けられる職場・社会にしていけるか参加者それぞれに、いろいろな問いや気づきが生まれた分散会になりました。

分散会での参加者の声

労働者に自己負担を強いる当局・資本

「自己負担があたり前。文房具や子どもの発表会の衣装を作成するための材料・ミシンを自腹で購入している」自治体の保育士の参加者

「制服が1着は会社から支給されるが、着替えのための制服は自腹で購入しなければならない」私鉄の参加者

「基本給に反映しているとの理由で通勤手当が支給されていない。燃料費として1万5千円程度が一時金に含まれて支給されるが、ガソリン代高騰のため全然足りていない。とくに遠距離通勤者ほど厳しい」私鉄の参加者

職場での人員確保の問題

「低賃金のため、採用されても数年で早期退職する仲間があとを絶たない」私鉄の参加者

「民間の初任給の方が高いため、新規採用者が確保できない」自治労の参加者

「長時間労働やサービス残業が多く、精神疾患での病気休暇者や30歳代の早期退職者が増えている」自治労の参加者

「広域異動があることを理由に早期退職する仲間が増えている」林野の参加者

子どもの生命を預かる保育職場の切実な悩み

「低賃金のため保育士の確保が困難。資格を持っていない非正規の保育士が増えている」自治体の保育士の参加者

官民問わず長時間労働・過重労働があたり前に

「管理職は超勤縮減を呼びかけるが、人員は増えず業務量も変わらないため、早朝出勤による不払残業が増えている」自治労・林野の参加者

「高速サービスエリアでの待ち時間は拘束されているにもかかわらず、労働時間から除外されている」私鉄の参加者

(青年の声2月20日号から抜粋)

【構成詩】「分散会交流が職場を変える力に」

今回、分散会を前に、長野県実行委員会の横川委員長たち有志によって模擬分散会をテーマにした構成詩のステージが披露されました。「初対面のひとと何時間も話すことあるのかな?」といった参加者の不安や疑問に応えて、一緒になって考え、楽しみながら、分散会のイメージがつかめるステージになりました。「分散会ってなに?」「参加者の心得」「産別を超えた大交流!」の3部構成で演じられ、合間にはナビゲーターの高橋海さん(自治労)からそれぞれの場面についての解説があり参加者にも理解しやすい工夫がされていました。

構成詩「分散会交流が職場を変える力に」

ナビゲーターの高橋さんはさいごに「自分も、もともとは組合アンチでしたが、今は県本部で副部長をしています。どうして考えが変わったかというと、組合活動に参加するなかで、サビ残や休めないことが当たり前ではなくおかしなことだと気づけたからです」と話し、前回の青年団結集会茨城県大会へ最後に参加してから組合を辞めようと思っていた青年が分散会でいろいろな職場の話を聞くなかで、当たり前だと思っていた権利や労働条件が過去に組合が勝ち取った権利だったと気づき組合脱退をやめたというエピソードを紹介されました。

※ 『構成詩』は、職場の実態などを反映した台本を作成し、参加者(観客)に語りかけ、その語りかけをとおして、参加者は職場の実態などをイメージし、問題意識を高め、より働きやすい職場環境づくりのために、自分ならどうするだろうか?何ができるか?等と考えるきっかけにしてもらう取り組みです。今回は、職場ではなく分散会をテーマにした構成詩が披露されました。

(青年団結集会ニュースより)

 

労働組合は最強のセーフティーネット

二日目には記念講演として松本地区労組会議の平谷哲治事務局長から「セブンイレブン闘争と労働組合のない職場の実態」というテーマで、平谷さん自身の経験をもとに労働組合の大切さについて講演いただきました。

講演「セブンイレブン闘争と労働組合のない職場の実態」

【講演概要】

「このままでは働き続けられない」組合結成

身を粉にして働くことが美徳との価値観で、長時間労働でも休みが取れなくても働き続けていた。しかし脳梗塞など身体を壊す社員が次々と出ても何も対応せず、社員を使い捨てにするような会社に不信感を持つようになった。「このまま働き続けられるのか?」と、同じ不安や疑問を持つ者と社員・アルバイトの雇用の違いを越え会社と交渉するために労働組合を立ち上げた。

巨象とのたたかい、仲間の支援が力に

会社の組合敵視はすさまじくさまざまな攻撃を受けた。組合役員を担う店長職は管理職だから組合員の資格がないと主張し、残業代支払いの義務もないと労基法の規定を悪用して支払いを拒否した。これに対し、組合の存続と「名ばかり管理職」となっている店長の労働者性を認めさせ、未払いの残業代を請求する裁判闘争に踏み切った。巨大企業の名を持つ相手とのたたかいは怖かったが、地域や全国の労働組合からの支援があったからこそたたかうことができた。そして、この裁判闘争は全国的な注目を集め、勝利的和解を勝ちとることができた。

たたかいの成果は全国に波及

組合の勝利後、会社は突然店舗の閉鎖を行った。組合がたたかった結果、職を失ったと批判されることもあったが私たちに後悔はなかった。なにもしなければ自分たちが倒れていた。たたかいを通じ労働条件を勝ち取る喜びを体感した。そして全国の「名ばかり管理職」の扱いが改善された。一組合であっても労組でたたかうことで判例ができ、それが波及して法律となり、私たちを守る武器になる。労働者にとって労働組合は最強のセーフティーネットだ。

特別報告②「安全、安心な空の職場を取り戻そう」(JAL争議団)

JAL被解雇者労働組合(JHU)の客室乗務員争議団長の鈴木圭子さんからも争議団のたたかいについて報告いただきました。また、1月2日の夕刻に羽田空港で起きたJAL機と海保機の衝突事故についても長年の乗務経験をもつ乗務員の立場から考察が必要だと鈴木さんは話し、運輸委員会の事故調査と警察の捜査が進められているが、再発防止に向けて原因を究明する事故調査と警察の捜査は異質なものであり、警察が関与することは真の事故原因究明の妨げになると訴えました。事故機の人員配置やベテランスタッフの不足なども指摘され、労働組合の存在が、事故の防止、安全な空に繋がることが示されました。

「羽田空港衝突JHU見解」

JAL被解雇者労働組合HP

https://jhu-wing.main.jp/

職場・産別・地域を超えた青年労働者の共闘を

さいごに社青同の松浦久美子さんから集会まとめが報告され、集会宣言を採択し、参加者全員の「団結ガンバロー」で閉会しました。全国各地から集まった仲間は学びと交流を深め帰路につきました。長時間労働や低賃金を強いる社会を変え、一人ひとりの労働者が大切にされる職場を実現していくために、職場・産別・地域を越えて共闘し、労働組合がたしかな連帯を取り戻していくことがいま必要とされています。疲弊した日本社会を変えるため、労働組合のない職場で働く労働者のためにも、組織された労働者の団結の強化が求められています。安心して働き続けられる社会を実現するために、それぞれの職場、地域でたたかい努力することを確認し合うことができた青年団結集会になりました。

会場で集まったカンパを富山・新潟から参加した仲間に

みんなでインターナショナルを唄った

あらゆる職場で青年が合理化の犠牲に- 社青同中央常任委員 松浦久美子さん

(…)第56回全国青年団結集会には、30都道県、13産別2団体から330人の仲間が結集しました。実行委員会の事前の想定を大きく上回る結果の背景には、分散会で報告し合ったように、労働者が大切に扱われない職場や社会で蓄積する不満や不安を誰かに伝えたい、という思いがあります。そして、職場、産別、地域を超えた交流のなかで新しい出会いがあり、各県や地区でのこれからの交流の前進に向けた確かな展望を持つことができました。

長野県実行委員会の横川実行委員長は、開会のあいさつで「全国から集まった仲間との交流を通じて、実態を共有できる場があり、しんどい気持ちに共感し、一緒にたたかってくれる仲間がいると感じることができれば、心強い支えになる」と提起していました。私自身も、分散会での交流を通じてそうした支えを得ることができました。全国のさまざまな職場に仲間がいます。職場で黙々と働いているように見える仲間も、心の中ではその働かされ方にさまざまな不満や憤りを感じているのではないでしょうか。職場の仲間に話しかけ、次は各県、各地区の団結集会への参加を呼びかけることが、第56回全国青年団結集会に参加した私たちの課題です。

(「集会まとめ」から一部抜粋)

集会宣言

2024年 国民・労働者が安全・安心して平和に過ごせる年に

2024年の新しい年を迎えたと同時に1月1日の元日、石川県能登地方で大地震が発生し甚大な人的・物的被害が出ています。また、2日には、羽田空港で日本航空の旅客機と海上保安庁の輸送機が激突・炎上するという衝撃的な事件も発生しました。

また、自民党の安倍派を中心とする「裏金」事件では、改めて自民党・保守政治の「政治とカネ」の問題が根深い問題であり、どうしようもなく政治腐敗が進み、国民の不信感は頂点に達しています。自民党政治に国民・労働者の怒りを真正面からぶつけて、政治変革の年にしていきましょう。

1月4日、仕事始めの日に長野県労働会館に入居する労働団体、労働組合の役職員約60人が一堂に会し、合同新年会を実施しました。

冒頭、一般財団法人長野県労働会館理事長の宇佐美正信氏(県労組会議議長)が「能登地震と航空機事故という衝撃的な事件で年が明けた。被災地への支援活動を早急に展開しよう。また、今年こそ岸田政権の退陣を勝ち取り、政治に信頼を取り戻そう」などとあいさつしました。

来賓として出席していただいたのは、政党代表として、立憲民主党県連幹事長の羽田次郎氏(参議院議員)、社会民主党県連合副代表の布目裕喜雄氏。その他、篠原孝・衆議院議員、杉尾秀哉・参議院議員、埋橋茂人・県議会議員、望月義寿・県議会議員があいさつ。労働事業団体からは、県労福協、県住宅生協の中山千弘・理事長、県労働金庫の小池政和・理事長、こくみん共済coop長野推進本部の村山智彦・本部長があいさつしました。

今年も1年、長野県平和・人権・環境労働組合会議が取り組む様々な運動へのご参加、ご指導をお願いします。

長野県労働会館合同新年会には約60人が参加。

あいさつする宇佐美正信・県労働会館理事長(県労組会議議長)。

 

労働者・国民に共感が広がる運動を地域からつくろう

約60人参加した県労組会議定期総会で今年度の運動方針を確認

長野県平和・人権・環境労働組合会議(県労組会議)は10月20日、代議員・傍聴者、来賓など約60人を集め、長野市内で第28回定期総会を開きました。

主催者あいさつで、宇佐美正信議長は「暴走する岸田政権を許さない闘いはまだまだ続く状況。多くの政治課題に対して声を上げていく地道な運動が必ず変えていくことができる力になる」(あいさつ別掲)などと強調しました。

討論では「反核平和の火リレーは7月11日から8月4日まで実施し、ランナー総数635人が参加した。要請した77自治体中64自治体で市町村長(もしくは副市町村長)が直接参加してくれた。この運動が組織強化につながっている」(自治労・中村代議員)、「蔦友印刷が会社破産し、全員解雇された事件では、多大なカンパをいただき心から感謝申し上げる。組合員の半数が就職した状況」(印刷フォーラムながの・原田代議員)、「公共交通を維持していくうえで、人員不足、低賃金から抜け出せず、私鉄は厳しい状況におかれている。ライドシェア導入問題には反対運動の取り組みをお願いする」(私鉄県連・飯川代議員)、「上小地区労組会議の地域組織の『依田窪連絡協議会』『東御市連絡協議会』が様々な議論を経て合併した。連協組織を残して、地域運動を大切にしていきたい」(上小地区労組会議・竹内代議員)などの発言がありました。

特別決議として「国民の切実な願いに背を向け、軍拡・改憲をすすめる岸田政権と対峙し総選挙に勝利する決議」が採択されました。最後に「新自由主義政策を転換し、所得の再分配や富裕層・高収益大企業への課税を強化し、自助よりも公助、自己責任より共生、労働者・国民の暮らしを優先する政策へ転換を」「組合員はもちろんだが、組織されていない労働者・国民にも共感が広がる労働運動、平和運動が必要とされている」などとする「総会宣言」を採択しました。

あいさつする宇佐美正信議長

来賓、役員、代議員など約60人が参加

蔦友印刷の破産事件を報告する原田代議員

総会の最後には団結ガンバローを三唱

 

仲間との信頼関係を深め運動を広げていこう

県労組会議議長 宇佐美正信

昨年10月に行われた県労組会議の大会から早くも一年が経過をしました。少しこの一年間を振り返りたいと思います。

新型コロナは5月に2類から5類へと移行になりました。4年目を数える「コロナ禍」で8月19日に県労組会議として4年ぶりにソフトボール大会を開催しました。大変暑い中、各地区労組会議の精鋭たちが集まり、熱戦が繰り広げられ塩尻地区が優勝しました。終了後、団結会が開催され大変盛り上がりました。未だコロナが終息したわけではありませんが久々の開催ということもあり、一堂に会して話ができたことが大変有意義であったと思っています。普段話ができないことや初めて会う仲間がテーブルを挟み、膝を交えて話すことができたこと、コロナで制限されていたことが少し晴れたのではないかと思っています。各地区、単産の皆さんと会ってお話しすることが改めて重要だと感じました。

私たちを取り巻く情勢は今さら言うまでもありませんが生活も組合活動も労働実態も厳しい状態が続いています。詳しい情勢については後ほど、方針案の提起によりますので割愛させていただきますが、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の他、全世界では現在、武力紛争が50以上あります。最近ではイスラエルがハマスを壊滅させようとガザ地区に侵攻を始めています。こうした武力戦争によって民間人、特に女性、子どもが犠牲になっています。人の命を奪ってまで得たい物っていったい何なのでしょうか。「話し合いをしよう」「外交によって解決をしよう」とはならないのでしょうか。

戦争の影響でエネルギー、食糧、原材料上昇によって円安、物価高など、日本国内外ともに不穏・不安定な状況下にあります。

そうした中、岸田内閣は昨年12月安保三文書の改訂によって敵基地攻撃能力を保有することや、先の国会では防衛費増額の財源を確保するための特別措置法や、原発の再稼働、運転延長、東日本大震災から12年たった現在、被災者に寄り添うことなく支援の打ち切りや子供甲状腺がんの発症に対する補償は何もなく、福島原発で発生したトリチウムを含む汚染水を「関係者の理解なしには放出しない」と約束していたことを反故にし、海洋放出を強行してきました。

さらにはマスコミにこぞって放射能を含む汚染水を処理水というように誘導し、まさに戦争に突き進む道、国民生活の安全・安心を脅かす道を突き進んでいます。

武力で解決する平和などは絶対あり得ない、核と人類は共存できないことは多くの犠牲を払ってきた先人たちが教えてくれています。

こうした政治情勢ですから、岸田政権には辞めていただくしかありません。県労組会議としては政治情勢を見極めながら私たちの掲げる運動課題、政策要求に方向性が合致する立憲民主党、社会民主党と連携して運動を展開していきたいと思います。

暴走する岸田政権を許さない闘いはまだまだ続く状況ですが、多くの政治課題に対して声を上げていく地道な運動が必ず変えていくことができる力になると思います。

もう一つ、県内で大変大きな事件が起きました。県労組会議に加盟する印刷フォーラムの蔦友印刷が3月に破産手続きを申し立て、倒産しました。従業員である組合員が解雇されました。解雇によって給与及び退職金が支払われないことから、当面の生活費の補助として長野地区労組会議とで組合員に対する支援カンパを取り組んできました。仲間を助ける支援活動として多くのカンパを取り組んでいただきました。ありがとうございました。支援する側でさえ厳しいにもかかわらず大変多くのカンパをいただきました。取組みにご協力いただいた皆さんに改めてお礼を言いたいと思います。また関西生コンやJAL闘争団などこうした仲間が困っているときに支援をする、各地区や単産、単組の皆さんにまで声をかけられる労働運動ができるのは労組会議だけだと思います。皆さん自身も大変かと思いますがもっと大変な状況で助けを求めている人、労働者がいます。引き続きそうした人たちに寄り添い支援をしていきたいと思います。

最後になりますが、今年4月の統一自治体選挙では私たちが推薦する議員が当選することができました。本当にご協力ありがとうございました。

私たちはこれまで学習や交流によって仲間との信頼関係を築いてきました。その知識を生かし幅広く仲間に危険性や重要性を訴え、今まで以上に反戦、護憲、反核、脱原発を軸に平和と民主主義を守る闘いの運動を進め、労働者の雇用、平和・人権・環境に関わる運動課題について、労働者の立場に立って引き続き運動を進めていきたいと思います。

以上で県労組会議を代表してのあいさつに代えさせていただきたいと思います。

特別決議全文

総会宣言全文