21世紀のキーワード―平和・人権・環境

長野県平和・人権・環境労働組合会議

留学同東海の皆さんと松代大本営地下壕を見学し、交流しました

 秋の気配が漂い始めた去る10月22日(土)、松代大本営追悼碑を守る会では、留学同東海の皆さん(主に愛知、岐阜、三重、長野、静岡で活動している朝鮮半島にルーツを持つ大学生、専門学校学生)と県労組会議青年女性連絡会が集い、限られた時間のなか、交流会を催しました。

 初めに、松代大本営地下壕隣の『もう一つの歴史館・松代』のガイド・宮島さんから説明を受けながら見学、次に追悼碑を守る会・喜多事務局長から長野市の案内看板について解説、壕の中を石合上田市議の案内のもと、見学しました。留学同東海の皆さんは、到着すると明るい笑顔で挨拶をしてくれましたが、案内が始まるとメモを取り、終始真剣な表情で聴いていて、その様子がとても印象的でした。

 見学後は、長野市の有形文化財・寺町商家(旧金箱家住宅)に場所を移して、それぞれの活動の紹介を聴き、5班に分かれて松代大本営を見学した感想などを話し合いました。短い時間での交流となったこともあり、参加者からは、初対面であることとそれぞれの歴史認識の相違などの心配もあり少々不安な気持ちがあったようで、想像以上に学びの大きい楽しい交流となり、また次回もこのような会を開いてほしいという声をいただきました。この出逢いをきっかけに今後もつながっていくことを約束して解散しました。

追悼碑について説明する喜多事務局長

真剣なまなざしで聴く参加者の皆さん

喜多事務局長から長野市の案内看板についての話を聴く参加者たち

追悼碑の前で集合写真

石合市議が壕の中を案内

壕の中での参加者の様子

寺町商家での様子

留学同東海の活動について報告

県労組会議青年女性連絡会の活動報告

B班で話し合ったことを発表

C班で話し合ったことを発表

喜多事務局長によるまとめ

 ※留学同とは

正式名称は在日本朝鮮留学生同盟といい、1945年9月14日に結成されました。在日同胞団体の中でも旧い歴史と伝統を持つ留学同は、日本の各大学・短大・専門学校で学ぶたくさんの同胞学生が集う学生団体です。留学同は、各自の個性を大切にし、大衆的で、開かれた運営をモットーにしています。

留学同は結成以来、同胞学生を祖国のもとに固く結集させ、祖国の平和・統一・発展、同胞社会の繁栄に少なからず貢献してきた祖国愛、民族愛を大事にする団体です。留学同は、祖国の北・南・海外の同胞青年学生との団結と交流を強める一方、日本と世界各国の学生との友好・親善を深める活動を活発に行っています。21世紀、同胞学生のより豊かで充実した明るい未来のために留学同は日々邁進しています。(留学同中央ホームページより)

 

「誰にも言えず、苦しんできた」~福島甲状腺がん患者の現実

11月19日(土)13:30~ 白石 草(はじめ)さん講演会 

市民集会・脱原発2022in信州 開催のお知らせ
(会場参加・Zoom参加併用型集会)

東日本大震災・福島原発事故から11年以上が過ぎた現在でも4万人以上の被災者が避難生活を余儀なくされている中で避難者の方達は、放射能汚染によってふるさとや生業を剥奪され、大きな将来不安を抱えながら、いまだに避難生活を強いられています。
福島県は、福島原発事故当時、概ね18歳以下であった約38万人の子どもたちを対象に「県民健康調査」において甲状腺(超音波)検査を実施してきました。2021年10月の報告で265人が甲状腺がんまたはがんの疑いと診断されました。日本における甲状腺がんの発症率は、15歳~19歳では 100万人に女性で約20人、男性は約5人で、年を経るごとに高くなります。福島での県民健康調査の検査対象者は約38万人とされ、甲状腺がんの罹患率はきわめて高いものです。しかし、県民健康調査検討委員会は、甲状腺がんへの放射能の影響について「証拠はない」とし、あくまでもスクリーニング効果の結果だとしています。
国は事故を起こし人々を被曝させた責任を認め、生涯にわたる医療支援、精神的ケア、生活・経済支援等を行うべきです。
2022年1月には、東京電力を相手に甲状腺がんを発症した事故当時6~16歳の6人が、東京地裁に対して損害賠償請求訴訟を提訴しました。
市民集会・脱原発2022in信州は、ビデオジャーナリストとして福島第一原発事故の問題を追い続け、甲状腺がん子ども裁判についても取材を進めている白石草さん(認定NPO法人OurPlanet-TV共同代表)を講師に招き、甲状腺がんになってしまった人たちがどのような思いで裁判を起こしたのか、報告をしていただきます。

1.日 時  11月19日(土) 13時30分~16時

2.場 所  長野県教育会館 3階 ホール
〇〇〇〇〇〇〇長野市旭町1098 電話 026-235-6995

※駐車場がありませんので、近くの公共施設や有料駐車場の利用、公共交通機関をご利用ください。

3.主 催  「脱原発2022in信州」実行委員会(代表:青山正/脱原発共同学習会)
〇〇〇〇〇〇〇構成:脱原発共同学習会などの市民団体、県原水禁などで構成

4.講 師  演題「誰にも言えず、苦しんできた」~福島甲状腺がん患者の現実
白石草さん(認定NPO法人OurPlanet-TV 共同代表)しらいし・はじめ ビデオジャーナリスト。認定NPO法人OurPlanet-TV 共同代表。インターネットによる市民メディア活動を展開。福島原発事 故をめぐる東京電力のテレビ会議を題材にしたドキュメンタリー『東電テレビ会議49時間の記録』 で 2014 年、日本科学技術ジャーナリスト会議の「科学ジャーナリスト大賞」を受賞。

5.Zoomでの配信も行います。ZoomID、パスコードなどは以下の通りです。
なお、講師の講演資料は当日、パソコン視聴の方にはZoomのチャットで配信します。なお、スマホ視聴の方には配信できませんのでご了承ください。

当日は、開始30分前から入室できます。

https://us06web.zoom.us/j/85165001627?pwd=cGxkUzBSYjFOZ2x3RGlwSjYyM3U2dz09

ミーティングID 851 6500 1627

パスコード 111999

 

        

格差と貧困、戦争を生みだす新自由主義政策の転換を

「自助」よりも「公助」、「自己責任」より「共生」、

労働者・国民の暮らしと平和を最優先する政策へ

県労組会議が定期総会開く-新議長に宇佐美正信氏(国労長野)

長野県平和・人権・環境労働組合会議(県労組会議)は10月21日、代議員・役員など約50人を集め、長野市内で第27回定期総会を開きました。

主催者あいさつで、松澤佳子議長は「今日は10月21日。私の年代では、10.21国際反戦デー集会をやった記憶がある。ベトナム戦争反対デモが行われていた。今、ウクライナ戦争の即時停戦を求めてウクライナ市民の声に耳を傾けなければならない。ウクライナに暮らす女性の言葉に『何かを組織できる団体が存在していることが大事だ。一人の人間は小さくてもどこかの団体に所属していることで、自分だけじゃないと思うことができる』とある。労働組合の意義はここにある。平和を求める運動を職場・地域から、労働組合が組織として、団体として声をあげていく必要がある。ある社会福祉法人の労働者が、新たな労働組合を立ち上げた。本当に勇気のいることだったと思う。パワハラやセクハラやさまざまな問題を抱え、労働基準監督署に相談したりしてきたが、最後に労働組合として闘わなければだめなんだと、一生懸命に組合員を募り、パート労働者にも声をかけて、過半数を超える労働組合を結成できた。職場集会でパート組合員の方の『私たちにも声をかけてくれて本当にうれしい』という発言に目が覚める思いだった。自分の置かれている実態を素直に話せる職場での集会がすべての労働組合でできたら、どんなにか労働組合は素晴らしいものになるか、実感した。正しいことを言えば攻撃をされる、こんな世の中じゃいけない。変えていかないといけない。自分は労働組合での任務は終わるが、引き続き一人の市民として、一人の女性として、しっかり声をあげていく決意だ」と訴えました。

討論では「7月から8月にかけて青年女性で77市町村を走り抜ける反核平和の火リレーに取り組んだ。ウクライナ戦争が続くなか、改めて平和の大切さを実感した。私鉄の仲間からの『私鉄は平和産業』という言葉が印象的だった」(自治労)、「アスベスト被害で仲間を亡くした。JR総合車両センターでは、建物や車両にアスベストが使用されていて、解体時などに飛散する危険性がある。会社に責任ある対応を求めている」(国労長野)、「コロナ禍により私鉄は厳しい状況に置かれている。高速バスはピークで利用者が8割減、貸切バスはほぼゼロになった。収入が減り生活できないので退職者も相次いでいる。県労組会議から私鉄県連、単組に支援金をいただき感謝している」(私鉄県連)、「松澤佳子議長が退任するが、4年間、みなさんにお世話になり感謝したい。現在の経済・政治状況でまさに労働組合の社会的役割が問われている。共生や連帯という労働組合の価値観を大切にして活動しよう」(自治労)などの発言がありました。

特別決議として「岸田自公政権の軍拡・改憲を阻止する決議」が採択されました。総会は最後に「組合員はもちろんですが、組織されていない労働者・国民にも共感が広がる労働運動が今こそ必要とされています。コロナ後を見据えて、地域社会において労働者の新たな団結と連帯を再構築しましょう」とする「総会宣言」を採択しました。

なお、総会では任期満了に伴う役員改選が行われ、4年間にわたり議長を務めた松澤佳子氏(自治労)が退任し、新たに宇佐美正信氏(国労長野)が議長に就任しました。選出された三役は次の通りです。◇議長=宇佐美正信(国労長野)、◇副議長=伊藤浩二(自治労)、同=若林茂(私鉄県連)、同=大橋孝宏(森林労連)◇事務局長=喜多英之(自治労)

議長退任あいさつをする松澤佳子氏

議長就任あいさつをする宇佐美正信氏

総会会場では、JAL争議団の鈴木圭子さんが物資販売

総会の最後には、全員で団結ガンバロー

採択された特別決議

採択された総会決議

 

“被害”と“加害”の両面から満州移民の歴史を考える

佐久地区労組会議が満蒙開拓平和記念館訪問ツアーを実施

館内を見学する佐久地区の参加者

館内を案内していただいた戦争体験があるボランティアガイド

佐久地区労組会議の役員や加盟単組の代表者9人が10月15日、下伊那郡阿智村にある「満蒙開拓平和記念館」を訪問し、戦前・戦中に「満州」(現在の中国東北部)に多くの開拓民を送り出した長野県の「負の歴史」について学びました。

旧日本軍が1932年、中国東北部を軍事的に制圧し、傀儡(かいらい)国家である「満州国」を建国、日本国内から多くの開拓農民を送り出しました。全国的には約27万人が「満州」にわたり、長野県は全国で最も多い3万3千人が移住しました。その4分の1の8400人が飯田・下伊那郡からの開拓民です。この満蒙開拓は、昭和の大恐慌対策と過剰人口の口減らしが背景にあったとされましたが、実は軍事上の必要性がおもな理由でした。「満蒙は日本の生命線」といわれ、日露戦争で獲得した権益を守るため、多くの農民が半ば強制的に送り込まれました。

記念館を訪れた佐久地区労組会議の参加者は、戦争体験がある80歳代のボランティアガイドさんに館内を案内・説明していただきました。コロナ禍でガイドさんが案内は停止されていましたが、今年10月から再開されました。ガイドさんは自らの戦争体験もあるので、満蒙開拓の歴史について熱い思い入れをもって説明していただきました。

館内には、長野県からの開拓団がどの地域に移住したのかを示す詳細な地図が展示されていました。10歳代の若い人によって組織された「青少年義勇軍」の移民の多くは、ソ連(当時)からの侵攻の防御のため国境近くに居住を強制されました。地図には、県内のどの地域から移住したかがわかる開拓団名が記載されていました。「富士見分村王家屯」「大古洞下伊那郷」「索倫河下水内郷 」「康平松本郷」などの開拓団名が地図に記載されていました。多くの人たちの寄付によって建築費を集め、2019年に完成したセミナー棟で、満蒙開拓の歴史と体験者の証言などを映像化したDVDを視聴しました。ガイドさんは案内の最後に「満蒙開拓には多くの長野県民が送り込まれ、戦後の引き上げ途中やソ連によるシベリヤ抑留などにより、8万人もの開拓民が死亡したという被害の側面を持っている。同時に、中国人の土地を取り上げ傀儡国家をつくったという加害の面も併せ持っている。その視点が大事だ」などと訴えました。

駒ヶ根市社会福祉協議会はAさんの不当解雇の撤回を

労働審判では解雇無効の審判。しかし社協側は裁判へ持ち込む

社会福祉法人駒ヶ根市社会福祉協議会に正規職員として勤務していたAさんは、仕事中に椎間板ヘルニアを発症しました。しばらくは腰に負担がかからない職場で勤務していましたが、駒ヶ根市社協から腰に負担がかかる職場への異動内示がでたため、異動内示の変更と腰痛対策を申し出たところ、「労働契約上の労働債務を提供できない」ことを理由に解雇されました。

Aさんは長野一般労組(本部:松本市)に加入。組合との団体交渉で駒ヶ根市社協は、一旦は異動内示を撤回したものの、突然、債務不履行を理由にAさんに解雇を通告しました。また、団体交渉でも社協側は、解雇は有効であり解雇有効訴訟を起こすという頑な姿勢を崩さなかったため、組合は長野地裁松本支部に労働審判を申し立てました。

2021年1月21日に行われた第3回労働審判で松本地裁は、Aさんの訴えを全面的に認め、解雇無効と地位確認、解雇以降の賃金及び一時金の支払いを命じる審判を下しました。駒ヶ根市社協は審判に応じることなく、地裁松本支部に対し異議を申し立てるとともに、6月14日付で「解雇有効確認訴訟」を長野地裁伊那支部に提訴しました。駒ヶ根市社協から異議が申し立てられたため、労働審判は効力を失い地裁松本支部において本訴に移行することとなりました。

この間、地裁松本支部で口頭弁論が継続的に行われ、今年10月19日には証人尋問が行われました。来年1月11日に判決がくだされる予定です。

高崎市県立公園にある朝鮮人犠牲者追悼碑の設置許可の更新不許可問題

裁判報告と歴史修正主義について考える日朝問題学習会開く

日朝長野県民会議は10月5日、松本市・長野朝鮮初中級学校体育館で、Zoom参加も含めて約60人が参加し、日朝問題学習会を開きました。

学習会では、群馬県高崎市の県立公園に建立されている戦時中に動員された朝鮮人労働者の犠牲者を追悼する碑の設置許可の更新について群馬県が許可しなかった問題について、碑を守る会が裁判で更新不許可の取り消しを求めていた問題について、原告弁護団事務局長を務めた高崎市の下山順弁護士が講演しました。

2022年6月15日、最高裁は「記憶 反省 そして友好」の追悼碑を守る会が群馬県を被告として提訴した追悼碑の設置期間更新の不許可処分に対する取消等請求事件において、守る会の上告を却下するというきわめて不当な決定を行ないました。

追悼碑は2004年に建立され、戦時中に動員された朝鮮人労働者を追悼する集会が2012年まで碑の前で開かれてきました。群馬県は、追悼集会の参加者が3回「強制連行」に言及したことを問題視。碑の設置を許可した際の「政治的行事を行わない」との条件に違反するとして、2014年7月、設置期間の更新を不許可とする行政処分を出しました。原告は碑の存続を求めて同年11月に提訴しました。

2018年2月の前橋地裁判決は「政治的行事をしたから公園の効用を喪失したとはいえない」と述べ、県の不許可処分を「裁量権を逸脱し違法」とする原告勝訴判決をしましたが、東京高裁は2021年8月、一審の前橋地裁による原告勝訴判決を破棄し、被告・県の不許可処分を適法とする逆転判決を言い渡しました。地裁裁判長は、追悼集会での「強制連行」への言及について、「政治的発言にあたり、歴史認識に関する主義主張を訴えるための政治的行事」と判断。県の条件に違反し「公園施設」として存立する前提を失ったとして、県の不許可処分は適法と結論づけました。

日本政府は、教科書の「強制連行」の記述を不適切として「徴用」に言い換える閣議決定を行っていますが、そもそも「徴用」とは、権力が個人の意志にかかわらず強制的に連行して労働にあたらせることであって、「徴用」という文言を使用することで「強制連行」の事実が消滅するわけではありません。「強制連行」の使用が政治的であるとする群馬県の主張こそが政治的なのであり、そのことを追認する東京高裁・最高裁の姿勢もまた、歴史事実を歪める政治的判断と言わざるを得ません。

学習会で下山順弁護士は、追悼碑の更新許可をしなかった背景には、右翼団体である「そよ風」なるグループが群馬県に対し猛烈な抗議と排外主義的な宣伝を行ったことがあると報告。追悼碑の前で開かれた式典での来賓のあいさつで朝鮮人「強制連行」について触れたことが「政治的行事」だとする判決の問題点について指摘しました。下山弁護士は、「『強制連行』の用語は、広辞苑や多くの中学、高校の歴史教科書において一般的に使用されている」と述べ、決して「政治的発言」ではないと強調しました。

過去の戦争の加害・侵略の歴史を美化しようとする「歴史修正主義」を日本会議などの保守的・右翼的な団体が広げようと草の根的な活動を展開しています。歴史認識に関して、アジアの人々と積極的に対話し、日本国内でも議論を重ねていくことが大切です。

コロナ禍での若年・非正規・外国人労働者問題を学ぶ

労働運動研究会でPOSSE事務局長の渡辺寛人氏が講演

県労組会議は9月17日、上田市丸子解放センターで「21世紀の労働運動研究会」第3回講座を開き、コロナ禍における若年・非正規・外国人労働者の問題をテーマに学習しました。

講座の講師は、20~30歳代の若い人でつくるNPO法人・POSSE(ポッセ)事務局長で「ブラックバイトユニオン」を運営している渡辺寛人さん。POSSEが取り組んでいるブラック企業の告発活動の紹介とその実態、コロナ禍が広がる中で見えてきた日本のいびつな労働構造などについて、具体的な活動報告も交えて講演していただきました。低賃金、権利侵害が横行する技能実習生などの外国人労働者問題についても問題提起を受けました。

講演で渡辺氏は「コロナ禍での労働相談は女性、非正規労働者からの相談が多い。 女性からの相談が61%を占めている。また、 非正規雇用者からの相談が多く、全体の約68%に当たる」と報告。雇用の調整弁と位置付けられている矛盾がコロナ禍で噴出した実態を指摘しました。コロナ禍で女性への影響を増幅させた背景として、1) 平時のジェンダー視点が欠如した社会・経済構造、2)女性を労働力とするサービス経済化の進展、3)非正規雇用者の社会的保護からの排除などがあると強調しました。また渡辺氏は、女性は「男性稼ぎ主モデル」のもとで、家庭内で無償の家事労働を担わされ、労働市場においては家計補助的な労働力として活用されてきたこと、女性差別は、正規・非正規の雇用形態差別に形式を変えて継続していること、男性稼ぎの主モデルが崩壊し、産業構造が転換している現在、女性労働の位置づけが大きく変化しているが「周辺化」され続けている実態など、構造的な問題点を指摘しました。

渡辺氏は講演の最後に「労働運動のパラダイムチェンジ=根本的転換」が求められていると強調。「サービス経済化が進むなかで、女性の活動とされてきたものが産業の中心に移動しつつある。にもかかわらず、労働運動は男性中心的なものとしてイメージされている。女性やマイノリティが中心となれるような組織化をすすめよう」とまとめました。

 

渡辺寛人氏の講演資料

 

東京高裁の裁判官が原告の証人申請を却下

信州安保法制違憲訴訟の控訴審で-裁判官の訴訟指揮に異議あり

公平・公正な裁判を求め原告・弁護団は裁判官の忌避を申し立て

集団的自衛権などを認めた新安保法制が、憲法が規定する平和的生存権を侵害すると県内の原告362人が長野地方裁判所に提訴した国家賠償請求事件は、昨年6月25日、長野地裁が原告の請求を棄却する不当な判決を下しました。その後、原告は東京高裁に控訴し、第1回の口頭弁論が5月26日に開かれ、2回目が10月4日に開かれました。裁判には、長野県内から約20人の原告、代理人の弁護士が参加しました。

2回の口頭弁論では、弁護団から控訴理由の説明や原告からの意見陳述が行われました。1回目の弁論では、原告から原告団長の又坂常人さん(信州大学名誉教授)と竹内忍さん(予備校講師)が意見陳述、2回目の弁論では、久保亨さん(信州大学名誉教授)、荒井宏行さん(労働組合関係者)が陳述しました。原告はみんな「新安保法制の制定によって、平和的生存権が侵害され、精神的な苦痛を被った」などと陳述しました。

原告側は、石川健治氏(東京大学教授)、小林武氏(沖縄大学客員教授)、成澤孝人氏(信州大学教授)の3人の証人尋問を行うように申請していました。その理由は、①石川健治氏は、新安保法制法が控訴人らの主張する権利利益を侵害すること、及び新安保法制法が一見して明白に違憲無効であること等を立証するため、②小林武氏は、平和的生存権が具体的権利・利益として法的保護を与えるべき権利・利益であること等を立証するため、③成澤孝人氏は、違憲国家賠償訴訟における判断の方法等に鑑み、原審判決がこれまでの裁判例の流れに照らして妥当でないことなどを立証するため申請したもので、いずれも裁判所の判断のために必要不可欠な証人でした。

しかし2回目の口頭弁論で裁判官3人は、提出された意見書などの書面を証拠とすることで足りるから証人として採用する必要はないとして、証人尋問請求を却下しました。裁判長は「提出された書証で(立証の)不足があるならば書面で提出すればよい」と述べ、他の裁判官両名もこれに対し何らコメントをしませんでした。

原告側は、証人尋問を一方的に却下した裁判官の下では、公正・公平な裁判はできないと判断し、その場で口頭で「忌避」を申し立てました。忌避とは裁判官が担当する事件について不公平な裁判をするおそれがあるとき,原告は、裁判官がその事件に関与しないように申し立てすることができる権利です。

後日、原告側は正式に文書で「忌避申立理由書」を東京高裁に提出しました。その「理由書」では「控訴人(原告)らの証人申請について、意見書が提出されているから必要性なしとして門前払いをしているが、これは、本件の各証人がいずれも本件訴訟の根幹とも言うべき重要な争点について裁判官の面前で裁判官からの質問にも応答しつつ学識経験、研究に基づく証言をなすことを目的としているにもかかわらず、争点に対する原告の立証活動を妨げようとしているのではないかとの疑いを持たざるを得ない。結果、裁判の公平性に多大な疑念を生じさせると言わざるを得ない」と指摘しています。そして「裁判所の証拠調べ却下決定は、本訴訟において極めて重要な証人尋問を行うことなく審理を進めようとするものであって、直接主義・口頭主義の理念に反し、裁量権を大きく逸脱し違法である」と訴えています。

東京高裁の裁判官は、国側の意向に寄り添うような訴訟進行をやめ、ただちに原告側が申請した3人の証人尋問の申請を認めるべきです。

第2回口頭弁論の終了後、東京永田町の参議院議員会館で報告集会を開いた(2022年10月4日)

憲法改悪阻止の運動を各地から展開しよう!               ー労働運動の主体確立と市民運動の共闘強化をー

第42回全国地区労交流会山形集会に参加して

昨年、長野県で行われた全国地区労交流会が、今年は「憲法改悪阻止の運動を各地から展開しよう!—労働運動の主体確立と市民運動の共闘強化を―」をスローガンに、9月10日(土)~11日(日)、山形県天童市・天童ホテルで開かれました。昨年に続くコロナ禍での全国集会でしたが、今年は感染対策を十分とりながらほぼ例年通りの開催となりました。集会には、全国・県内から約80人の参加者が集まり、各地の運動の経験交流や、懇親会は各地から持ち寄った地酒をいただいて大変盛り上がり、学びと癒しの素晴らしい機会となりました。

記念講演は、飯島滋明さん(名古屋学院大学教授、憲法学・平和学)の「憲法の危機と闘いの展望」と題した講演でした。憲法なんて難しい講演だろうと想像していたら、冒頭の「学生には勉強ばかりでは続かない。労働運動も運動ばかりでは続かない。楽しみながらやらないと続かない。」というお話から始まった通り、難しいどころか大変興味深い内容でどんどん講義に引き込まれていきました。

途中、先生がおっしゃっていたように政治に声を上げること、関心を持つということをいかに広げていくか、中間層をいかに取り込むかという課題に対して、①わかりやすく易しい言葉を使う ②SNSを利用する ③若い人に関わってもらうなど、多くのヒントをいただきました。自分に置き換えて考えた時、ごもっとも!と納得しました。

また、スパイ防止法制定の危険性について、ウクライナ侵略と絡めて説明したり、憲法改悪の内容が今まさに大きな問題となっている旧統一教会の教義と同じ内容であるということなど、自分と関連付けて考えられるような興味深い内容でした。

今、政治に関心がないと言われている若い人についても、そうではなく、伝え方の問題とおっしゃっていて、私自身も子どもたちとの話の中で、どう自分と関連付けて伝えればいいのかを考え直してみました。ここには書ききれないほど、盛りだくさんの“目からウロコ”のあっという間の1時間となりました。

また会場の一角には、JAL闘争団の物資販売やシベリア抑留者・澤田精之助(1921-85)の絵巻物の展示がありました。

各地区労や団体からの報告者は以下の通りです。

1)憲法改悪阻止等の運動について  片山 隆司(高松地区労働組合連合会副議長)

2)組織の確立と市民運動等について 園部 公雄(山形県平和センター事務局長)

3)脱原発等の運動について     有田 純也(新潟県平和運動センター事務局長)

4)JAL解雇争議について     鈴木 圭子(JAL被解雇者労働組合)

翌日2日目の分科会と全体会は、以下の通りです。

1.護憲、反戦・反原発・平和運動のとりくみ:担当・三浦半島、長崎
2.地域労働・市民運動等のとりくみ       :担当・江戸川、松本、神戸
3.非正規・ユニオン・最賃等のとりくみ  :担当・市原、栃木、

全体会提起:「最低賃金引上げ闘争と23春闘について」伊藤彰信(労働運動研究討論集会実行委員会事務局長)

 

久しぶりの全国各地の仲間との交流に、これからの運動への刺激とヒントをたくさんいただきました。今後に活かしていきたいと思います。

実行委員会の皆様、有意義な時間を本当にありがとうございました。大変お疲れ様でした。

第42回全国地区労交流会始まりました。

渡部貴之山形県平和センター議長の主催者あいさつ

平和フォーラム・藤本共同代表の来賓あいさつ

運営委員会からの提起・池端章伸事務局長

記念講演・飯島滋明名古屋学院大学教授

夕食・懇親会での山形県団のみなさん

各地の地酒大集合

懇親会での長野県団

集会の総括をする田川地区平和センターの小泉さん