金穂実さん(一橋大学院生)が日朝県民会議総会で講演

朝鮮半島での軍事的な緊張の増大、中国・台湾問題やウクライナ戦争などを理由に、日本政府は、いわゆる「敵基地攻撃能力」(反撃能力)の保持や防衛費の倍増という大軍拡をすすめようとしています。

このような状況のなか、日本政府が9月にJアラートを送信した以降、少なくとも5つの朝鮮学校に対し、計9件の暴行、脅迫事件が発生し、インターネット上には朝鮮学校への攻撃的なコメントが溢れています。松本市の長野朝鮮初中級学校に対しても何者かがカッターナイフの刃を大量に投げ込むなどの嫌がらせが発生しました。

これまでも朝鮮半島の状況によっては、何ら責任のない朝鮮学校の子どもたちがヘイトスピーチ、ヘイトクライムの対象となってきました。差別を放置すれば、エスカレートし、より危険な状態を生み出します。

また、日本と韓国との関係も元徴用工問題や日本軍慰安婦問題、明治産業遺産や佐渡金山のユネスコ産業遺産登録の問題など、対立関係が解消されていません。

元徴用工問題では、日本政府は1965年の日韓請求権協定で「解決済み」という立場を強硬に主張しています。しかし、個人の賠償請求権は消滅していないことは日本政府も認めています。日本の関係企業は対立を回避し和解に向けた話し合いを行うべきです。同様の和解が強制労働を強いた中国人との間で成立しています。旧植民地では、強制連行・労働ではなく、日本人と同様の「徴用」であったなどと偽ることなく、その責任を企業は果たさなくてはなりません。同様に、企業の和解を政府が阻むことがあってはなりません。歴史の真実をしっかりと見詰める姿勢がなくては問題の解決にたどりつくことはできません。

ロシアのウクライナ侵攻に関しても日本政府は、ロシアとウクライナの戦闘を拡大する方向での支援ではなく、戦争の停戦を求めて国際社会に働きかけるべきです。

私たちは今、冷静な眼で世界を見つめなければならないときです。紛争や対立をあおり、軍事力に頼るのではなく、一方的な価値観での見方ではなく、双方向の視点で国際社会をとらえて、対話、協調、非軍事・平和的な流れにどう展開していくかが求められています。

12月17日13時30分 長野市・県労働会館で総会・記念講演

日朝県民会議定期総会を12月17日(土)13時30分から長野県労働会館(長野市県町)で開きます。会場参加とオンライン(Zoom)併用での総会です。

総会終了後、14時30分頃からの記念講演の講師は、金穂実さん(キム・シスル/一橋大学大学院生/朝鮮大学校卒業生)です。講演のテーマは、「松代大本営調査・研究の修士論文を書き終えて」。

金さんは、朝鮮大学校(東京都)を卒業して現在、一橋大学院の修士課程で学んでいます。修士論文のテーマに「松代大本営工事」を選択し、1カ月に1回程度は東京から長野市に来て、松代大本営工事に関して、関係者からの聞き取りや資料収集をすすめてきました。現地視察では、長野市松代の地下壕だけでなく、長野市安茂里小市の海軍壕や中野市の十三崖壕などを訪れ、調査・研究を重ねてきた方です。

若い研究者の松代大本営の調査・研究の成果をお聞きください。