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長野県平和・人権・環境労働組合会議

建築業でアスベスト被害が多発-県アスベスト対策センターが相談会

長野県アスベスト対策センターは11月23日、長野市・県労働会館を会場にアスベスト被害に関する面談と電話相談会を開きました。

毎年、長野市と松本市で交互に年2回開き、神奈川県のNPO法人「じん肺・アスベスト被災者救済基金」に専門スタッフの派遣をしてもらっている相談会。2020年春の相談会はコロナによって中止となっていました。

相談会当日には、3人が面談の相談で来所。新聞報道を見て後日の相談が1人、計4人からアスベスト被害に関する相談を受けました。相談内容は、「内装業に携わって、建築物の解体作業も行った。JR長野駅の旧駅舎の解体も。アスベストが含まれていそうなスレート屋根も手ばらししていた。小学校の耐震工事では、石膏ボードやPタイルも壊していた。呼吸器科に通院して、自分で健康管理手帳も取得した」(長野市/72歳)、「工務店を経営している。木造建築のほか、鉄筋ビルの工事も行った。吹付作業もやったことがある。医者からはアスベストの影響があると指摘され、間質性肺炎と診断された」(長野市/74歳)、「物流業に昔従事して、ニチアス製品の輸送に携わった。肺が3分の1つぶれていると診断された」(上水内郡/52歳)など、とくに建築業の方からの相談が多かった。

県アスベスト対策センターでは、集中相談日以外にも電話や面談でアスベストに関する心配事、健康被害についての相談を受け付けている。

電話 026-234-2116

 

☞ アスベスト相談会の記者会見の様子を報じる中日新聞記事(2020年11月13日)

☞ アスベスト相談会を報じる信濃毎日新聞記事(2020年11月24日)

 

台風19号被災現場でのアスベスト対策を求め、現場視察、長野県・長野市に要請

2019年10月12日、長野県に最接近した台風19号は、長野県の東北信地域、千曲川流域に甚大な水害を引き起こし、現在、官民が連携し被災地の復旧に向けた取り組みが続けられています。

このなかで被災した建築物に使用されているアスベストについて、長野県や長野市などの行政当局は、ホームページなどで注意喚起を呼び掛けているものの、被災住民や業者、ボランティアが建築物の解体や搬出・運搬作業に従事する際に、建材に含有するアスベストの取り扱いを規制するなどの措置は取られていませんでした。

被害が特に深刻だった長野市の千曲川沿いの地域には、全国から6万2千人を超えるボランティアが駆けつけていただき、住宅内の清掃や泥出し、家財搬出などの作業に従事しています。アスベストを含む床・壁の建材の解体、運搬などもボランティアが行うケースがあり、健康被害を防止するアスベストばく露対策が求められました。

県アスベスト対策センターは、2019年12月23日、「中皮腫・じん肺・アスベストセンター」の永倉冬史事務局長を招き、地元の県議会議員、長野市議会議員とも連携して、被災地やがれき置き場の現地調査、長野県及び長野市の担当部局との懇談・意見交換を行いました。

また2020年2月10日、県アスベスト対策センターは、被災住宅の公費解体が始まることを見据え、家屋の建材等に含まれるアスベスト対策の強化を長野市に要請しました。

要請事項は、ボランティアに対する注意喚起の徹底と防塵マスクのつけ方の説明会の開催などさらに対策を徹底すること、自費解体・公費解体が始まる中、解体業者に対し、特にレベル3とされる床や壁・天井などの建材に含まれるアスベストの取り扱いに関し、厚生労働省の「石綿障害予防規則」や「石綿飛散漏洩防止対策徹底マニュアル」などの指針に沿って指導を徹底すること、安全対策を怠る悪質業者を排除するため、アスベスト対策を事業者選定条件に盛り込むこと、専門的な技術者団体と連携し、被災家屋の解体前にアスベスト含有建材等の現地調査・チェックをすること、がれき仮置場でアスベスト含有が懸念される「波型スレート」や建材などの「スレート板」などの分別、飛散防止策を徹底することなど8項目。

長野市では、県アスベスト対策センターとの12月の意見交換の場での要望・提案を受け止め、1月に入って、被災住民・ボランティア・解体事業者向けそれぞれに、注意喚起と法令順守を周知するチラシを作成・配布するとともに、ボランティアセンターでは解体作業等に従事する場合にアスベスト対策用の防塵マスク(DS2)の無償配布を始めています。広報ながの4月号でも市民向けに注意喚起を促すとのことです。われわれの要望を受けて、すぐに対策を具体化した長野市の姿勢は評価できます。

被災住宅の自費解体・公費解体が行われているなか、アスベストによる健康被害を出さないために、住宅所有者、周辺住民、解体業者、ボランティアが安全に安心して活動できるようにさらに充実した対策を求めます。

☞ 詳細は長野県アスベスト対策センターNEWS第3号

がれきの中にはアスベストが含有している思われる破片も(長野市赤沼公園) 

濁流で破壊された消防団詰所

長野市への要請

がれき仮置場「アクアパル千曲」では、アスベスト含有が懸念される「波型スレート」や「壁材などのスレート板」が「危険物」として一カ所に集められ、ブルーシートをかけて保管されていた。担当業者の自主判断で行われていた