21世紀のキーワード―平和・人権・環境

長野県平和・人権・環境労働組合会議

「ノコギリの使い方を教えてもらったら木を切る音が良くなった」

食とみどり、水を守る県民会議が林業体験でヒノキ除伐作業

「令和のコメ騒動」から日本農業の考える学習会も開く

食とみどり水を守る長野県民会議は、10月4日と5日、伊那市で第11回食とみどり、水を考える集いを昨年に続き一泊二日で実施しました。参加者は16人でした。

一日目は、はじめに開会式を行い、県労組会議の喜多英之事務局長より「カーボンニュートラルが話題になる中で、森林の役割は重要であることや、自身も年間の行動の中で一番好きなので行事なので一日頑張りたい」と挨拶があり、南信森林所管内の手良沢山国有林で除伐作業を実施しました。当日は100%の降水確率の中ではありましたが、作業終了まで雨が降ることはなく参加者全員でノコギリを使い、息を切らしながらヒノキの伐採に挑みました。

参加者からは、「歩くだけでも大変だった。明日は筋肉痛が心配」「ノコギリの使い方を教えてもらったら、木を切る音が良くなった」などの感想が聞かれました。

二日目は、南信森林管理署の会議室で、「2024年の話題 地震・台風・米騒動」と題して、ソーシャルライターの吉田百助氏より講演を受け、米不足の際に政府が備蓄米を放出しない理由や、大規模農業業者が燃料費高騰や機械の高額化により倒産が増えている、現在の日本は米食を1とすると、麺食が1、パン食が1.7となっていて、米が主食でなくなっているなど、農業・食料を取り巻く情勢について学習し、その後参加者で意見交換を行いました。

最後の閉会式で、中川博司・県民会議会長(県議会議員)から「農林水産省は売る物を作ることでなく食べるもの作ることに力を入れるべきだ。そのことを頭に入れながら様々な取り組みを継続しよう」と集約し二日間の日程を終了しました。

林野労組南信分会、伊那バス労組の皆さんに準備段階からお世話になったことに感謝申しあげます。

急な斜面でノコギリを使って作業

カッパを着て除伐作業

林道を借りてみんなで記念写真

2日目は農業問題の学習会

「〈第18期〉21世紀の労働運動研究会」第2回講座「コミュニティ・ユニオンの現在とこれから」(講師:鶴丸周一郎氏)

「〈第18期〉21世紀の労働運動研究会」の今期の全4回の講座が終わりました。
今回は松本を会場にした第2回講座についてご紹介します。

「名古屋ふれあいユニオン」の鶴丸周一郎氏が講演

第2回講座が7月20日(土)、松本市勤労者福祉センター(松本市)で名古屋ふれあいユニオン運営委員長の鶴丸周一郎氏を講師に迎え「コミュニティ・ユニオンの現在とこれから」というテーマで、未組織労働者からの労働相談の実態、地域ユニオン運動、日本の労働運動のあり方などについてお話いただきました。会場参加・Zoom参加あわせて30人が参加しました。

職域に単位を置く企業別労働組合が主流の日本のなかで、職場をこえて1人でも加入できる労働組合=コミュニティ・ユニオンの活動が注目されています。日本では労働組合の加入率が年々低下するなかで、労働者10人のうち8人が労働組合に加入していません。労働組合のない職場の労働者からの相談を受けて、ユニオンに加入してもらい、企業と団体交渉などを行い問題を解決していくユニオン活動は、労働組合への組織化の最前線を走っています。

講演する鶴丸周一郎氏

「労働組合」「1人」「入れる」と検索したことから始まった

昆虫学者を目指していたなかで市役所職員になるなど異色の経歴を持つ鶴丸氏は、ある職場で社長に異を唱えたことで解雇されたことをきっかけに、1人でも入れる労働組合「名古屋ふれあいユニオン」に加入することになり労働組合との関わりが始まったことや、短期間での配置換えの末に研究開発部と称した「隔離部屋」での地震の体験なども語られました。

講演の最後に組織や国を垣根をこえた運動づくりの重要性が強調され「分断をこえなければ労働運動に未来はない」と訴えました。

講演終了後は、鶴丸氏にコメントをいただきながら、ワークルールについての学習を深めました。

名古屋ふれあいユニオン公式サイト

https://nagoya-union.online/

コミュニティ・ユニオンの現在とこれから

【講演概要】

■コミュニティ・ユニオンとは?

・これまでの日本の労働組合の多くが企業ごとに正社員だけを対象に組織されてきた者であったのに対し、コミュニティ・ユニオンは、地域社会に密着して、パートでも派遣でも、外国人でも、だれでもひとりでもメンバーになれる労働組合。

■運動のはじまり

・1975年頃からサービス業、卸・小売業、飲食店などでの雇用が急速に拡大。その多くが不安定雇用・低賃金の主婦パートだった。1981年頃から労働組合の地域組織(地区労)を中心にして「パート110番」などによる労働相談活動が広がった。江戸川区労協の相談に訪れたパート労働者が「私たちでも入れる組合があればいいのにね」と言ったのがきっかけとなり、1984年に「ふれ愛・友愛・たすけ愛」を合言葉にした江戸川ユニオンが結成。これをきっかけにコミュニティ・ユニオン運動が広がった。

■名古屋ふれあいユニオン

・1999年に結成。組合員数は約420人、うち移住労働者は40%。14分会のうち半数が移住労働者の分会。ブラジル人の組合員が組織にとって重要な役割を果たしている。大規模雇い止めなど、職場で共通する問題が複数加入のきっかけになっている。

名古屋ふれあいユニオンの組合員数の推移 

■名古屋ふれあいユニオンの課題

  • 問題の原因、問題解決について

移住労働者が職を失いやすい構造(企業が都合よくクビを切れる構造)がもともとあるため、理不尽ではあっても、必ずしも違法ではない。

  • 言語

通訳が常駐していないため、相談の電話にすぐ対応できないことも多い。

いまは1人の組合員に頼ることが多いが、将来的には通訳ができる専従者が必要。しかし現状は費用(人件費の確保)と対象者どちらもクリアできていない。

  • 組織化

個別問題が解決した組合員に対し、組合員である意義をどう理解してもらうか、どうしたら組合内で横のつながりをもてるかが課題。

多くのブラジル人の組合員は家族ぐるみで組合の集まりに参加

■コミュニティ・ユニオンのこれから―運動を継続するために

(1)次世代の担い手をいかにしてつくるか

・20~30代の専従者は、全国ネットのなかでは十数人。50歳でも「若手」。

・20年後も運動を継続するために何が必要か? 全国ネットでは、毎年開催しているユニオンセミナーのほか、近年は比較的若い世代のつながりづくりも行っている。

(2)垣根をこえた運動づくり

・分断をこえなければ運動に未来はない。第1回講座の講師の渡辺さんのPOSSEと同じように名古屋ふれあいユニオンも上部組織がない。特定の潮流もなく、連合系と一緒に活動することもあり、一方で全労連系とも共闘することもある。組織内にも多様な声があるが、こういったことを意識してやっている。自分が労働組合の経験が浅いから出来ているのかもしれない。組織を一つにするのは不可能かもしれないが、必要な運動があればできるだけ垣根をこえていくことが、将来、労働運動を継続、発展させていくために重要。

・労働運動にとどまらないことが重要。あるいは国内だけにとどまらない。労働運動は社会運動の一部だが、労働運動でこの社会を変えることができるということを認識すること。

ポルトガル語の「解雇を撤回しよう」というプラカード

上小地区労組会議チームが初優勝

第20回地区労組会議対抗親善ソフトボール大会に10チーム150人

県労組会議は9月7日、松本市・あずさ運動公園で20回目となる地区労組会議対抗親善ソフトボール大会を開きました。10チーム約150人が参加して熱戦を繰り広げました。トーナメント方式で行われた大会は、上小地区労組会議チームが優勝、準優勝は塩尻地区労組会議チームでした。

大会の終了後には、炎天下の中、テントを張って焼肉交流会を開きました。各地区労組会議から大会の感想などについてアピールがあり、参加者は地区を越えて交流を深めました。

試合前に整列してあいさつ

50歳代でもしっかり打てる

体が多少でかくてもバットは振れる

この打撃フォームはカッコイイ!

キャッチャーは大変な守備位置だ

大会は20回目を迎えた

優勝した上小地区労組会議チーム代表に賞品を贈呈

大会後にはお楽しみの焼肉交流会

チームごとに焼肉を囲んで交流

焼肉交流会の最後には団結ガンバロー

311 子ども甲状腺がん裁判第11回口頭弁論を傍聴して

東京電力福島第一原発事故に伴う放射性物質の影響で甲状腺がんになったとして、事故当時、福島県内に住んでいた男女7人が東京電力に損害賠償を求めている「311子ども甲状腺がん裁判」の第11回口頭弁論が9月11日、東京地裁で開かれた。

この日は、大法廷の一般傍聴席が85席に対し、207人が傍聴券の抽選に並んだ。傍聴希望者が200人を超えたのは、第5回期日ぶりとのこと。裁判は、進むにつれて傍聴者が減るのが一般的だが、この裁判においては少しずつ傍聴希望者が増えているそう。その後の報告集会もほぼ満席。原告はもちろん、弁護団や支援者たちのたゆまぬ努力の賜物なのだろう。

         

今回は傍聴抽選に当たり、法廷内に入ることができたのだが、珍しく協議が長引き、10分ほど開廷が遅れた。資料も揃わず裁判所側がモタモタしている様子だった。ようやく原告意見陳述が始まったころは14:30頃で、原告は「自分の住む町が福島第一原発から西に100キロの場所にあり、まさか被ばくする環境とは知らず、30~40分かけて自転車で通学や買い物に出かけた。自宅の目の前の道路を自動車が通るたび、地面から粉じんが巻き上げられていた。手術後は、再発、転移のことを考えないようにして自分の精神状態を保った」などと緊張しながらもしっかりとした口調で話した。

裁判所から、全ての主張を出し尽くすよう求められていた原告は全部で15本の準備書面を提出した。一方、東京電力は2本の反論書面を提出した。

UNSCEAR報告書の過小評価の原因特定か

原告の主張のうちの1つは、被告の主張する「過剰診断」論を否定するもの。福島県の甲状腺がんの手術症例などに基づき、福島県で見つかっている甲状腺がんは、被告の指摘するような「潜在がん」とは言えないと主張した。また、原告一人ひとりについても、病気の推移を詳細に示し、短期間で腫瘍が増大している実情や、多数のリンパ節転移が見つかっていることを指摘した。

              

大気中浮遊物測定局内で「霧箱」効果?

また、UNSCEARの報告書の被ばく線量評価については、黒川眞一高エネルギー加速器研究機構名誉教授の5通目となる意見書を提出した。UNSCEAR報告書はデータ解析の際、大気汚染を監視するために設置されているSPM局で採取された放射性セシウムの値を利用しているが、意見書では、その値が、大幅に少なくなっている原因を特定。最も高濃度の放射性プルームが福島県内を覆っていた3月15日から16日にかけて、福島市内では気温が低く、かつ湿度の高い飽和状態に近い気象条件にあったとした上で、SPM局の中に取り込まれた大気が、高濃度の放射性物質の影響でイオン化し、液滴となる「霧箱」のような状態に陥っていた可能性があると指摘した。原発事故と甲状腺がんとの関係を証明する意見書を東京地裁に提出した黒川眞一・高エネルギー加速器研究機構名誉教授に対し、東京電力が「放射線の専門家ではない」と主張していることについて、只野弁護士は「黒川名誉教授は高度の学識を持っており、専門家である。東京電力側の主張は黒川さんに対する侮辱であり、今後、このような侮辱は金輪際、やめていただきたい」と語気を強めて抗議する場面もあった。

さらに、当時の福島市内で計測された大気中浮遊物(SPM)のデータが、放射性プルームの到来時間に、数値がゼロになっている事実を提示。この時間に、SPM局内では霧箱状態となり、SPMや放射性セシウムは、粒径が大きくなって排除され、濾紙に付着する量が極端に少なくなっていた可能性が高いと主張した。

「誰ひとり泣き寝入りさせない」〜原賠法の立法時

このほか、原子力損害賠償法の立法当時に遡り、立法趣旨を解説する書面も提出。法廷のプレゼンでは、原賠法立法当時、原子力事故が起きたい際に、被害者が重い立証責任を負うことは想定されていなかったことを解説した上で、国会でも「誰一人泣き寝入りさせない」という答弁が繰り返されていたことを裁判所に訴えた。

         

第12回口頭弁論期日は12月11日(水)に予定されている。

次回期日には、地区労組会議を介して購入いただいているレーメンの販売利益分を3団体(3・11甲状腺がん子ども基金、311甲状腺がん子ども支援ネットワーク、日本チェルノブイリ連帯基金)にそれぞれ寄付する予定。組合員のみなさまの善意がここにも届いている。

次回以降は証人尋問が始まり、裁判も新たなフェーズを迎える。今後もより一層の支援をしていきたい。