21世紀のキーワード―平和・人権・環境

長野県平和・人権・環境労働組合会議

6月28日に長野市で「アスベスト被害面談・電話相談会」を開設

アスベスト(石綿)が気になる方、気軽に相談してください

2005年のクボタショック以降、アスベスト(石綿)問題が、労働現場でのアスベスト使用や解体に伴うばく露、中皮腫・肺がん発症など労働災害問題にとどまらず、一般市民にも健康被害を及ぼす危険性が明らかになり、重大な社会問題として認識されるようになりました。アスベストによる健康被害は、30年から40年と言われる長期間にわたる潜伏期間ののちに中皮腫、肺がんなどが発症するため、アスベスト大量使用時代に現役であった労働者や関連工場の周辺住民の健康被害が現代の問題として浮上しています。また、アスベストの吹付、建材に使用された建築物の解体時期を迎える問題も地域社会にとっては重要な問題です。高度経済成長時代の効率のみを追い求める社会風潮が生み出したアスベスト問題は、経済優先の「負の遺産」です。これからの時代は、何よりも人の命や健康を優先させる社会が求められています。

長野県内でもアスベストを扱う事業所での労働者のばく露問題や建築物に使用されるアスベストの解体・補修時の飛散問題など、大きな社会問題となっています。JR東日本では現役の社員がアスベストばく露により悪性胸膜中皮腫を発症、闘病のすえ死亡するという労働災害も注目を集めました。

また、建設アスベスト訴訟で最終的に国の責任が最高裁によって認定され、政府は2022年1月からアスベスト被害にあった建設労働者へ「給付金」を支給する制度をスタートしました。しかし、最高裁に賠償責任を認定されたアスベスト建材メーカーは、「各メーカーのシェア割りがわからない」「どの現場にどれだけ使用されたのかが不明」などの理由で、給付金制度への参加を拒み、現在も裁判で争っています。

建材メーカーを相手取った損害賠償請求裁判「東日本建設アスベスト訴訟」(横浜地裁)は、2021年10月に提訴され、第6次提訴まで48名の原告が裁判で争っています。

アスベストによる肺がんで亡くなられた長野市の内装工・Aさんの遺族(妻)がこの裁判に昨年6月7日、提訴しました。現在、準備書面のやり取りが続いていますが、今年の年末から原告尋問が始まる予定です。

「長野県アスベスト対策センター」は2018年4月に結成しましたが、「NPO法人じん肺・アスベスト被災者救済基金」(神奈川県横須賀市)の協力により、長野県内の県民・労働者、関係事業者などを対象に、長野市で面談相談会・電話相談会を開設します。

アスベスト被害の補償・救済については、労災補償制度(主管:厚生労働省等)と労災以外の救済制度(主管:環境省・環境再生保全機構)によって実施されていますが、制度に対する周知や関係者の認識不足などによって、補償・救済を受けられないで苦労されている患者と家族がおられます。また、中皮腫はじめアスベスト関連疾患の治療について相談先を求めておられる場合も少なくありません。

また、政府がアスベスト被害にあった建設労働者へ「給付金」を支給する制度についても、まだまだ周知されているとは言えません。

長野県アスベスト対策センターではそうした実情に対応し、過去11回、長野市・松本市で電話相談や相談会を実施し、補償・救済の促進、情報の提供を行ってきました。実際に労災申請へつながる相談も数件ありました。

今回の相談会を通じて、アスベスト被害の実態を掘り起こすとともに、少しでも悩みや疑問がある人からの相談への対応や、健康被害で苦しんでいる人への救済制度の説明など、身近な相談センターとして親身に相談に乗ります。

長野市でのアスベスト被害 面談・電話相談会の計画概要

1.日  時  6月28日(土) 10:00~16:00

2.相談場所  面談相談 長野県労働会館3階 第2小会議室(長野市県町532-3)

電話相談 026-234-2116

※相談料は無料/秘密厳守

※面談相談を希望される方は事前に連絡を。

3.主  催  長野県アスベスト対策センター

協力:NPO法人じん肺・アスベスト被災者救済基金(神奈川県横須賀市)

長野県アスベスト対策センター第8回総会・学習会を開催しました

長野県民の命と健康を守る活動を推進していくことを確認

長野県アスベスト対策センターは、5月24日に県労働会館(長野市)で、第8回総会を開催しました。オンライン参加者を含めて約30人が参加しました。

2024年度の活動経過報告として、アスベスト被害面談・電話相談会(面談3人・電話相談3人)、アスベスト裁判に関わる福田護弁護士、山岡遥平弁護士を講師とした学習会(県労組会議と共催)、アスベストによる肺がんで夫を亡くされた県内在住のご遺族が、建材メーカーへ損害賠償を請求する集団訴訟に参加するための支援などのとりくみが報告され、今年度も引きつづき活動方針に沿って、長野県民の命と健康を守る活動を推進していくことが確認されました。

「県アスベスト対策センター」の鵜飼代表

昨年の能登半島地震とその後の豪雨災害で被害を受けた石川県珠洲市の建造物でも、発がん性が高いアスベスト「青石綿」が露出したままになっていることがNPO法人「中皮腫・じん肺・アスベストセンター」(東京都)の現地調査で分かったとの報道がされています。アスベスト自体の製造は禁じられましたが、古い建築物には、吹付や建材にアスベストが使用されており、今後、解体が進むなかで新たなアスベスト被害が生じかねません。

また今年は阪神淡路大震災から30年を迎え、復旧作業や解体作業に従事した人々がアスベストを吸い込んだことで肺がんを発症し労災認定がされるなど、今後被害が顕在化してくる可能性が懸念されています。アスベストは、曝露後30~40年が経過して発症するが多いため、これから過去のアスベスト曝露による中皮種や肺がんなどを発症する方が増えることが予想されます。

県アスベスト対策センターは、吹付アスベストやアスベスト建材を使用した建築物の解体が2020年代後半にピークを迎える状況から、これからさらにアスベスト被害が広がる危険性があると認識し、労働者・県民の命と健康を守るために活動を進めていきます。

アスベスト被害者のご遺族から連帯のあいさつ

「じん肺・アスベスト被災者救済基金」の池田理恵氏

建材メーカーへの損害賠償を請求する集団訴訟に参加する県内在住のAさんと「じん肺・アスベスト被災者救済基金」の池田理恵氏から連帯の御挨拶をいただきました。Aさんは、「アスベストの知識がなく、どこに相談すればいいかわからなかったが、テレビでアスベスト相談会があることを知り、相談することができた」と県アスベスト対策センターを知るきっかけを紹介され、抗がん剤や放射線治療、在宅での24時間酸素療法などを試みたが、次第に体力が落ちていき寝たきり状態になった夫に何もしてあげられず本当に辛い日々だったと当時を振り返られました。「アスベストで被害にあわなければ、孫やひ孫と楽しく遊んだり、趣味の家庭菜園でおいしい野菜を育てたりしていた」と夫の無念について話され建材メーカーとたたかう裁判への協力を呼びかけました。

講演動画「アスベスト問題の現在と今後の対応」を視聴

総会終了後には、学習会として村山武彦教授(東京科学大学・環境社会理工学院)による講演動画「アスベスト問題の現在と今後の対応」を視聴しました。アスベストの産業利用、アスベストの有害性と曝露の機会、アスベスト曝露による影響の広がり、外国の動きと総合的対策の必要性という内容でした。

日本でも大量に輸入され建材等で使用された

2028年(令和10年)に解体のピークを迎える

アスベストの種類や特性、過去から現在までの使用実態とその背景、健康被害のメカニズムと日常生活や職場でのリスク、中皮種などを発症した被害者の実態と社会の関心の薄さなどアスベストをとりまく現在の状況を網羅的に学ぶことができました。

BRICsなどの新興国でアスベスト使用が続いていることがわかる

最後に、海外の規制事例(オーストラリア)やインドなどの新興国でのアスベスト使用の広がりなど国際的な動向を踏まえたうえで、日本での包括的な対策の重要性が指摘されました。アスベスト問題の全体像と今後の対応策がわかりやすく解説されています。アスベスト問題に関心のある方はぜひご視聴ください。

動画は環境省の「環境省環境管理課公式チャンネル」から視聴できます。また資料(PDF)もダウンロードできます。

講演動画と資料ダウンロードのリンク

【Youtube】東京工業大学・村山教授講演「アスベスト問題の現在と今後の対応」

https://youtu.be/hjrg78p82EE?si=6-vhNvSUcXz1eyZe

【資料ダウンロード】講演スライド資料(環境省)

https://www.env.go.jp/content/000063557.pdf

「若年労働者の労働と貧困」POSSE渡辺寛人氏が木曽地区で講演

「〈第19期〉21世紀の労働運動研究会」が始まりました。全4回の講座を予定しています。今回は木曽町(木曽地区)を会場にして行われた第1回講座についてご紹介します。

POSSEの渡辺寛人氏が若者・女性の労働と貧困の問題について語る

労働運動研第1回講座は、5月16日(金)、木曽町文化交流センターで、「若年労働者の労働と貧困」というテーマで、NPO法人POSSEで若者の労動問題に取り組んできた渡辺寛人氏(法政大学専任講師[現代福祉学部 ])に講演いただきました。オンラインと会場参加あわせて約75人が集いました。平日夜の開催にもかかわらず、会場は、自治労・林野労組の若手組合員を中心に大勢の参加者で賑わいました。渡辺氏の講演終了後には、地元・木曽地区の単組からの報告としてそれぞれの職場の厳しい現状や人員不足について共有していただきました。

講演する渡辺寛人氏

未組織労働者の問題は今も課題

冒頭、木曽地区労組会議の西村議長は「私たちも木曽労組会議とか連合で未組織労働者のことを大会の方針で謳っていますが、現実には、自分たちの職場の改善の要求だけにとどまってしまっています。私たちの先輩たちも一生懸命取り組んできテーマですが、労働者全体の改善要求というものが一向に進まず、それが今も課題となっています。今日の講座が、そのきっかけになれば、また地域の労働運動全体の発展につなげていければと思います。今日の講座を機会にして、ひとつでも学んでいってください」と挨拶されました。

木曽地区労組会議の西村議長

若年労働者の労働と貧困

NPO法人POSSEの取り組みから

渡辺氏は、はじめに「最近は闇バイトが流行っている。なぜこんなに広がっているのか、若者の労働と貧困と関連付けながらお話したい」と問題提起しました。埼玉県八潮市の道路陥没によって、突如現れた巨大な穴が若者の労働と貧困の問題と重なると指摘し、高度経済成長期に整備された上下水道のなどのインフラの老朽化と、これまでの日本の生活保障モデルの「老朽化」を重ね合わせました。これまでのPOSSEでの活動や相談事例に触れながら、日本社会があたりまえに安心して働き生活できる社会ではなくなってきていることが示されました。また派遣労働や非正規雇用などの拡大、雇用の劣化によって生じた若者の貧困を家族が吸収してきたことで隠されてきたこと、家族が受け止めることも限界にきていることが指摘されました。安定した仕事がなく家族にも頼れず、生活保護からも排除された孤立した若者が、闇バイトに流れていることに警鐘を鳴らしました。渡辺氏は最後に、社会が不安定になり混乱してゆくことを防ぐために、労働組合を通じて賃金や労働条件を守る戦いを広げ、生活保護が機能するようにしていかなければならないと訴えました。

POSSE vol.59「特集:何が若者たちを闇バイトに追い込むのか?」(堀之内出版サイト)

https://info1103.stores.jp/items/680080ea12d03971c9aa5b07

『POSSE』最新号も闇バイトを特集している

【講演概要】

 

POSSEとは

POSSEも若者の団体と言っているが、設立が2006年で、若者の中での非正規がすごく増えていた時代だった。いわゆる就職氷河期や、その後の世代で、今は40代、50代になり、中高年フリーター、引きこもりなどの問題につながり、もはや若者から始まった問題が若者にとどまらずいろんな世代に広がってきている状況になっている。今でこそ社会問題とされているが、2000年代中頃は若者が真面目に働かなくなった、若者がダメになったから非正規が増えたという論調が非常に強かった。POSSEはそれに対して、労働環境が変化してきていることを告発しながら、若者の労働の権利を行使する支援をしていこうと、当時の大学生とかフリーターが中心になって立ち上げたNPOだった。

POSSEの世代交代

コロナ禍には若い大学生などがたくさんボランティアに来てくれた。一緒に活動する中で2025年からはもう若い世代で新しい運動を作っていってもらおうということで、現在大学院生の岩本さんが代表になった。事務局長には、ブラック企業で追い込まれ、POSSEに相談に来て団体交渉を行い、残業代を取り返して、その取り返した残業代で大学に入り直して、POSSEの活動をはじめた経歴の方に交代した。

「ブラック企業」という画期的な言葉

ブラック企業やブラックバイトという言葉は、正社員になっても使い潰され安定した生活が保証されない状況が広がってきていることや、大学生のアルバイトの労働環境もひどくなり、大学生活をまともに送れる状況ではなくなっていることを問題提起した。ブラック企業という言葉が広がったことの意義として、「うちの職場ブラックかも」などと思う機会があるかと思うが、ブラック企業以前の労働相談では、どんなにひどい状況にあっても自分も悪いと言う方が多かった。「ブラック企業」という言葉ができたことによって、自分ではなく会社の方に何か問題があるのではと多くの人たちが考えられるようになった画期的な言葉だった。

労働組合の立ち上げ

2015年からは、「総合サポートユニオン」という労働組合を立ち上げ、直接企業に対して団体交渉やストライキを行い、直接行動を組織して、労働環境の改善を目指して活動を広げている。2018年頃からは、外国人労働者の組織化も始めていて、技能実習生とか留学生ビザで働く外国人を中心に、労働の権利の行使の支援をしている。貧困問題への取り組みとして、生活保護の申請支援、生活相談を行っている。コロナ禍では、特に女性非正規が首を切られたり休業保障が得られずに生活に困窮していく問題に取り組んできた。

最近のとりくみ

非正規春闘に2、3年前から取り組んでいる。28の労働組合が集まって、そこで組織している非正規労働者のいる会社144社に対して10パーセントの賃上げ要求した。コロナ禍で苦境に立たされた非正規の人たちを支援しようと全国の労働組合がネットワークを作った延長線上で取り組んでいる。コロナの取り組みで終わらせずに、非正規の労働者の賃上げ、労働環境の改善を目指して活動している。学生、女性、外国人労働者が、非正規労働者として、一緒に労働環境を変えていこうと連帯して、ストストライキも構えながら、とにかく非正規の生活可能な賃金水準を目指して毎年おこなっている。POSSEとしても、労働者かどうかを超えて、ストライキにも一緒に学生が参加して、非正規の人たちが今どんなふうに生活しているのかを調査しながら、それを社会に発信することで、非正規の戦いをサポートしていこうとしている。

闇バイトと穴が重なって見える

1月28日に埼玉県八潮市で大規模な道路陥没が発生して巨大な穴が開いた。全国の道路の陥没発生件数は年々増加している。この穴の問題は、私たちの生活や労働、貧困の問題と重なって見える。

家族があって、いい学校に行って、いい企業に入って、正社員になって、生活保障されるという日本の生活保障モデルが作られたのも、上下水道と同じ1970年代で「老朽化」している。1990年代中頃から2000年代にかけて、この学校から企業へのルートが切断される。いわゆる就職氷河期にあたり、いい大学に行ったのに正社員になれない若者が増え、正社員だが保証がない使い捨てられるブラック企業の正社員も広がっていく。特に90年代前後、2000年前後に労働者派遣法の規制緩和によって、正社員になれなかった若者を派遣労働が吸収し、全国の製造業の派遣のラインに若者たちを吸収していく。日本の生活保障のパイプから水が漏れていく。

日本の社会保障の水漏れの矛盾が家族へ

学校を卒業しても正社員になれず、なかなかうまくいかない人たちは本来は失業者だが、日本社会は社会保障、失業保障、生活保護で生活するというように社会保障がしっかりと整備されていない。基本は家族で生活を支え、学校卒業したら企業が生活を支え、国家の社会保障はそれができない場合のみ最低限支えるという立て付けになっている。ブラック企業で鬱病になり、働けなくなった時に、失業保証ではなく家族がそのつけを払わされ、鬱になった若者の面倒をみることになる。それが引きこもりと言われることもある。どんどん家族の中にこの水漏れの矛盾が溜まっていく。その親も亡くなって、この先どうするのかと社会問題になってきているが、全部家族に放り投げてきたことのツケがどんどん来ている。

生活保護から排除され闇バイトへ

家族にも頼れず企業で働くことももうできなくなってくる人たちに対応する制度として生活保護を中心とした福祉があるが使える人はあまりいない。水際作戦と呼ばれるように、「家族に頼れませんか」「若いんだから頑張って働けませんか」と、生活保護行政が申請をさせずに追い返すことが社会問題になっている。生活保護からも排除されて生きていかなきゃいけないとなった時に、闇バイトに吸収されていくような構図になっている。日本の生活保障の老朽化で水漏れがどんどん起きて、それを放置してきた結果、ある日、白昼堂々強盗が現れるみたいなことが起きてくる。八潮市に開いた穴とこの闇バイトの問題が重なって見える。さらにスマホとかSNSの広がりが闇バイトへのリクルートを加速させていく状況に見える。

具体的な状況

雇用の劣化がこの20年、30年、すごく激しく進んでいる。正社員になっても年功賃金もなく終身雇用も保証されないような状況の正社員が増え、非正規雇用も最低賃金レベルで働かされ処遇は低いのに非常に責任は重いという状況がある。これまで正社員は責任は重いが保証はしっかり、非正規は保証はないが責任は軽いという住み分けがあったが、正社員はどんどんブラック化し、非正規は処遇が低いまま責任が重くなっていく状況に社会全体が進んできている。今の若い世代は、一生懸命働くことで見返りとして雇用の保障や生活の安定が得られるという感覚が薄まっていて、頑張って働く意味がわからないという感覚が広がってしまっている。

2000年代から2010年代にかけて社会問題化したブラック企業が成立するのは、正社員になれば安定するという期待があったからで、ブラックな環境でも見返りがあるはずだと頑張って働き続けて使い潰されるという構図だった。最近、若者の早期退職が非常に問題になっているが、頑張って残る意味がもはやわからない、そういう期待すらも失われてしまっている状況になっているのでは。

男性の賃金は下がり、女性の賃金は低いまま、日本社会全体が非常に貧しくなっている。この間のインフレも含め、この10年を見ても実質賃金も下がって、社会保険料が毎年どんどん上がっていくので、さらに手取りも減っていくという傾向はさらに加速していく。頑張って働いても全然使えるお金が増えず苦しくなっている。

アメリカより高い日本の貧困率

日本は失業保証が不十分で、雇用保険の受給率は大体2割程度と言われている。生活保護の補足率(申請をすれば生活保護を受けられる条件がある人のうち、実際に生活保護を受けている人の割合を補足率と言う)は15パーセントから18パーセント程度だと言われ、大体生活保護受給者200万人超なので800万人ぐらいが生活保護から漏れている状況になっている。

社会全体に貧困がすごく拡大している。元々日本の貧困率は高く、15~16パーセントで先進国ではアメリカに次いで2番目に高い状況だったが、2021年に日本がアメリカを抜いて先進国で1番貧困率が高くなった。しかし貧困が広がっている実感や感覚がないのは、貧困が家族に吸収されているからで、社会の問題ではなく家族の問題にされてしまっている。

貧困の矛盾が家族の問題として顕在化

介護殺人や虐待とかいろんな形でその貧困の矛盾が家族の問題として現れているが、プライベートな問題だと捉えられてしまい、社会から貧困が隠されてしまう構図になっている。日本の場合、貧困が進めば進むほど家族関係のグロテスクな事件が、これからたくさん増えてくることになると強く思う。では家族はいつまで貧困を支えられるのか。この家族の体力も当然どんどん落ちてきて、支えることにも限界がある状況が広がってきている。

90年代から大学卒業して非正規になるという流れができて、2005年ぐらいまでは親元で生活依存する若者が増えて、2012年ぐらいまでは若干減りつつも横ばいで、家族が受け止めていたが、2013年頃から親に依存できる若者の割合がかなり減ってきて、家族に若者の貧困を吸収する体力がなくなってきていることが見える。

共働き世帯も90年代中頃からずっと増えて、大学生や高校生の子どもも生活費の一部を稼がないと普通の生活が成り立たない状況も広がっている。1人暮らし単身世帯が38パーセント、4割近くで、要するに結婚して世帯を形成すること自体ができなくなり、家族が貧困を吸収することができなくなってきている。

 

「闇バイト」の背景にある家族と貧困の問題

POSSEに寄せられる相談事例では、家族関係に難があり逃げ出したいという相談が非常に多い。お金がなく家を出ることはできないという相談もすごく多い。家族に頼らざるを得ないが、親も余裕がなくストレスになり家族関係も悪化していく。貧困が社会の目には見えない形で人々を蝕んでく状況がある。

本来なら家族に頼るのではなく公的な手段、特に日本の場合は生活保護しか貧困に対応する制度がないので生活保護で対応すべき問題だが、生活保護は機能不全を起こしてしまっている。不正受給が話になるが、不正受給は金額ベースで見ると0.4パーセント程度であり補足率の低さの方が問題だ。

2013年から生活扶助基準の史上最大規模の引き下げをおこなったが、原告1000人以上が自治体、国を訴えていて、かなり原告が勝っている。6月に最高裁判所が引き下げが違法かどうか判断を示すが、生活扶助基準の引き下げが不当であったという判決が出る見込みになっている。3食たべられない、毎日お風呂に入れないという人が増えて、今は米が買えないという状況が拡がっている。

まっとうな仕事や人間関係があれば闇バイトに手を出さなかった

生きて行くために犯罪をするような状況に追い込まれている。闇バイトに手を染めたひとの状況は先ほどから見てきた相談事例の人たちと大差ないことが見えてくる。刑務所に入っている人にインタヴューしたが、闇バイトのリクルーターは悩みを聞いてくれてお金もすぐに振り込んでくれると言う。またスマホのインパクトは無視できない。いつでもアクセスできるスマホを通じたオンラインカジノなどの依存症の問題も貧困とは別の闇バイトに流れていくもう一つの背景と見られている。人間を依存症にさせて犯罪に巻き込んでいくルートもできてしまっている。

NHKの調査では、およそ半分の人たちが、お金や真っ当な仕事があれば闇バイトに手を出さなかったと回答している。次いで3割が、健全な家族や友人関係があれば手を出さずに済んだと回答している。当たり前が崩れ去って生活が保障されなくなった社会で、これだけの闇バイトが増えていくっていうのは必然というか、本当に穴だと思う。闇バイトは突然現れてきたわけではなく、これまで日本社会が放置してきた労働や貧困問題が、この10年でぐっと深まったことによって、穴が開いたと見るべきだ。

労働組合でたたかうことの意義

やはり労働組合によって働くことの意味を取り戻さないと、この社会はどうなっていくかわからない。その働くことの意味は二つあって、一つは働いたらそれなりの生活が保障される労働条件、賃金や労働時間をめぐる戦いは本当に重要。真面目にフルタイムで働いてる人がバカを見るみたいな状況を変えないと、闇バイトに手を出してしまう人たちどんどん増えるだろう。コロナ禍で注目されたエッセンシャルワーク、地域や社会を支える仕事の社会的な意義は非常に大きい。意味のある仕事をしてる人たちがまともな賃金をもらって生きていけるような社会を作る、そのためにはもう労働組合を通じて戦うほかない。そういう戦いを広げていかなければ、この社会がカオスに、無秩序になって混乱していくことになっていく。貧しい人たちは犯罪組織にどんどんリクルートされていって、本来は労働環境や社会保障を整備していくべきなのに、若者が犯罪者になってるから、どんどん警察権力を強化して、セキュリティを強化して取り締まるというディストピア的な、SF的な世界になっていく。もうすでになってきている。

生活保護を機能させる

もう1つは、生活保護をめぐる戦いがこれまで以上に重要な意義を持ってきている。生活保護基準下げたり制度の利用を妨げて排除してくことが、社会のいろんなとろに穴を開けていく、足元からこの社会を切り崩していくことにつながる。生活保護をきちんと機能させていくことをしなければならない。今、貧困に対応する制度は生活保護しかない。生活保護は万能な制度ではないし、いろんな問題を抱えているのも事実だが、生活保護をしっかり機能させていくことを出発点としながら、様々な制度、再分配を拡充させていくような取り組みを広げていかなければならない。(文責:事務局)

 

単組からの報告1 公務職場の慢性的な人員不足

私が働く職場の労働環境の問題点は、人員不足です。どの課を見ても主な問題かと思います。現在、私は教育委員会に所属して社会体育活動を行っております。土日出勤が多く、代休で平日休みを取ると、一人一係のため事務作業が溜まってしまうことになり、ゆっくり休みを取ることができない状態です。人員が増えることにより、土日の勤務もローテーションで回すことができ効率よく回せるのではないかと思います。以前に建設水道課で水道担当を行っておりました。沢から原水をとっておりますので、雨が降ると濁ってしまうため水道の警報が出ると現場へ駆けつけて対応を行っておりました。夜中の水道異常により呼び出しや、休日も出かけている時も呼び出しがありました当時は2人体制で人員が足りない状況でした。
現在は施設の浄水棟も新しくなり、維持管理は容易になったかと思いますが、まだまだ他の水道施設は老朽化が進んでおり、停電になれば現場へ駆けつけて対応することになるかと思います。先ほども話しましたが、人員が増えればローテーションで回して対応でき、気持ちの面でも軽減できるのかと思いました。また保育園の保育職場においても、早番、通常の勤務、遅番、土曜日の希望保育の勤務があり、超過勤務やお昼の休憩も十分に取れない環境が常態化しており、募集をかけても応募がなく一般職においても採用がない状態なので、当局へ、募集の時期を早めることや募集の工夫など、そういった交渉を今後行っていきたいと思います。

単組からの報告2 医療現場の過酷な労働環境

私が勤める公立病院も慢性的な人員不足に悩まされています。都会の病院に比べて給与面での不満や僻地ということもあり、木曽生まれの若い方もやめていく状況です。渡辺先生のお話にもあったように残った正社員は責任と業務量が増えるだけで、賃金が見合っていないという状況がずっと続いています。外来では医師の数は減っていないのに看護師は減っているので、先生が2人診察しているところに看護師が1人であっちこっち走り回っている状況や、休憩時間も本来は1時間休憩のところを30分休めるかどうかという状況で、休憩中もピッチ(PHS)を1人で2、3台持っています。電話が来れば休憩をやめて一旦また業務に戻るということが常態化しています。組合として今後も給与面、労働環境の改善、福利厚生の充実に対して交渉を続けていこうと思っています。

大勢の参加者が集まった木曽町文化交流センター

7月25日(金)18:00~松本市勤労者福祉センターで第2回講座を開催

次回の講座では棗一郎弁護士(旬報法律事務所)から「労働法制の動向・有期契約・パート労働問題」(予定)について講演いただきます。

ぜひご参加ください。Zoomでの視聴も可能です。ご希望の方は県労組会議までお問い合わせください。

~明日の労動運動を考える~21世紀の労動運動研究会 第2回講座

講師:棗 一郎 弁護士(旬報法律事務所[東京])
日時:7月25日金曜日 18時00分~(19:35閉会予定)
会場:松本市勤労者福祉センター(松本市中央4-7-26)

生産者と消費者の利益が一致するコメ政策を

食とみどり、水を守る県民会議の定期総会に26人が参加

水道事業の広域化についても学習-「水は人々の共有財産」

食とみどり、水を守る県民会議は418日、役員と会員26名が参加し、長野市内で第14回総会を開催しました。総会の冒頭、中川博司会長(県議会議員)は挨拶で「食の問題、緑と森林の問題、水の問題には山積する課題がある。それらの課題を前進させるため、そこで働く仲間とともに1つでも2つでも進めていけるよう、今年も力を尽くしていきたい」と述べました。

事務局からは、2024年度の活動報告として、食と農の安全、林業、水環境などの重要課題に取り組んできた。食料問題に関しては、異常気象や物価高騰の影響を受けた学習会を実施し、「食料・農業・農村基本法」の改正に関する議論も行いました。また、アジア・アフリカ支援米活動として、県内5か所で米作りを行い、2570kgを集約してマリ共和国に送付をした。森林分野では、森林環境税を活用した整備が進められており、林業人材の確保と育成のための施策も強化されている。水環境では、地域主導で持続可能な水道運営を推進し、「水の自治」の重要性が確認され、さらにPFAS問題への対応も引き続き注視が必要。また、全国集会への参加と、特に「食とみどり、水を考える集い」では多くの意見交換が行われたと報告されました。2025年度の活動方針として、引き続き地域に根ざした活動を推進することが確認され、採択されました。

総会終了後には、2つの講演が行われました。1つ目の講演は、吉田喜美夫さん(フリーライター)による「令和と米騒動」で、令和の米の価格高騰や外国産米の輸入増加、さらには「世界で最初に飢えるのは日本である」と警鐘を鳴らしました。

2つ目の講演は、全水道の岩倉朋視・中央本部副委員長と鈴木渉書記が水道事業の広域化について講演、広域化が市民や地域に与える影響についての問題提起がありました。講演は、市民とエンドユーザーの理解なしに広域化が進むことの危険性を訴え、「水はすべての人々の共有財産である」という認識を深める必要性が強調されました。

コメ問題について話す吉田喜美夫さん

水道事業の広域化問題について話す鈴木渉さん

暮らしといのち、平和のために-信じられる未来へ!6・15県民の集い

6月15日に長野市・表参道セントラルスクゥエアで開催

◇国民生活の負担軽減のため、食料品ゼロパーセントや一律5%への引き下げなど緊急の消費税減税を!

◇選択的夫婦別姓制度を実現し、男女の賃金格差の是正などジェンダー平等社会へ!

◇安保法制の違憲部分は廃止、専守防衛に徹し、軍拡のための大増税ストップを!

食料品などの物価高騰、実質賃金の減少、年金の支給水準の低下など、日本では暮らしの破壊がすすんでいます。石破内閣は、生活に苦しむ庶民に対し何ら有効な対策を打てていません。今こそ、庶民の暮らしを支援する緊急対策を行う必要があります。

また、石破内閣は、国民の過半が望む選択的夫婦別姓制度の導入や同性婚制、男女の雇用・賃金格差の是正などジェンダー平等の実現に極めて消極的であり、世界の潮流に背を向け続けています。

一方、アメリカのトランプ政権は自国第一主義を掲げ、理不尽で道理のない関税政策を強行しています。また、ウクライナ、ガザなどでも強引な外交方針により混乱が生じています。世界の状況は混とんとし、経済危機、平和の危機がすすんでいます。

日本国内においても、5年間で43兆円もの巨額の防衛費の計上、「敵基地攻撃能力」の保有や、中国との軍事的緊張を高める沖縄・南西諸島での自衛隊基地の増強、米軍と自衛隊との軍事的一体化など、「新しい戦前」ともいえる戦時体制づくりにつながる軍備拡大が急速に進んでいます。

昨年秋の衆議院選挙で与野党伯仲の政治状況が生まれ、予算案が2度にわたり修正されるなど、国会運営や政策・法案に野党の意見が反映されるようになってきました。

この流れをさらに加速させ、自民党政治からの決別、政権交代の道筋をつけるため、7月の参議院選挙は大変重要な選挙戦となります。

2015年6月、ジャーナリストのむのたけじさんをゲストに、長野市で開いた戦争法反対の大規模県民集会には2700人もの市民・労働者が参加し、立憲主義を掲げる3野党がそろい踏みしました。翌年の2016年の参議院選挙では、初めて市民と野党の統一候補を擁立、1人区の議席で自民党候補に競り勝った意義を今、再確認する必要があります。その後の国政選挙での立憲野党と市民との共闘は「長野モデル」と言われ、地方から政治を変える大きな力となっています。

今年の参議院選挙でも市民と野党が力を合わせ、国民に背を向ける自民党政治からの転換を図り、新しい政治をつくっていくことが求められています。

呼びかけ人や信州市民連合、北信市民連合などでつくる実行委員会は6月15日、長野市で「暮らしといのち、平和のために-信じられる未来へ!6・15県民の集い」を開き、多くの市民・労働者が参加する集会・パレードを計画しています。多くの方のご参加をお待ちしています。

1.日  時  6月15日(日) 13時30分 (雨天決行)

2.場  所  長野市 表参道セントラルスクゥエア

3.主  催  長野県民の集い実行委員会  共催:信州市民連合、北信市民連合

4.名  称 暮らしといのち、平和のために-信じられる未来へ!6・15長野県民の集い

5.ゲスト  特別ゲスト 菱山南帆子さん(市民運動家)

ひしやま・なほこ 市民運動家、市民連合運営委員、許すな!憲法改悪市民連絡会事務局長。1989年八王子生まれ。戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会。単著:『嵐を呼ぶ少女とよばれて〜市民運動という生きかた〜』はるか書房。メールマガジン「猫とトラメガ」配信中

7.集会内容

◆オープニング企画:長沼こまち太鼓(長野市)

◆政党代表あいさつ(立憲民主党/日本共産党/社会民主党)

◆羽田次郎・参議院議員の音声メッセージ(録音)

◇終了後、市街地を長野駅前までパレード

市民の憲法講座「戦後80年 戦争の爪痕を未来へつなぐ」

信州護憲ネット第26回総会・第35回市民の憲法講座を開催

守ろう平和憲法 信州ネットワーク(信州護憲ネット)は第26回総会と第35回市民の憲法講座を5月3日・憲法記念日に、長野市内の県労働会館で開催しました。オンラインを含め45人が集いました。護憲ネットの総会では今年度の活動方針が確認され、午前には新田町交差点(長野市)で街頭行動が行われ、あわせて実施した選択的夫婦別姓への賛否を問うシールアンケートには多くの市民が意思表示をしてくれました。

戦後80年の市民の憲法講座では木下氏と松澤氏が報告

今年の「市民の憲法講座」は、「戦後80年、戦争の爪痕を未来へつなぐ」というテーマで、アイ女性会議・飯伊の木下容子氏から飯田下伊那地域の戦争遺跡を巡り平和について考える学習会のとりくみについて、また信州護憲ネット代表委員でもある松澤佳子氏から「中国侵略の現場から」「アウシュビッツ平和の旅」の二つの報告をいただきました。

市民の憲法講座講師の松澤佳子さんと木下容子さん

飯田下伊那の戦争遺跡を巡り平和を考える

木下容子さんは、満蒙開拓の国策をはじめ朝鮮人や中国人が強制労働を強いられた平岡ダム(天龍村)の建設工事や登戸研究所平和資料館(駒ヶ根市)など地元の飯田市など南信地域の戦争遺跡を巡り学んだことを報告しました。

冒頭には、満蒙開拓平和記念館で展示された魯迅美術学院・王希奇教授が、葫蘆島からの引き揚げを描いた大作『一九四六』に触れ、引き揚げの記念写真の中に髪を短く切って男の子を装った少女が、遺骨を胸に抱いている姿を見つけたことが、王氏が作品を描いたきっかけだったと紹介されました。『一九四六』を前にして「引き揚げ船に向かって列をなしている数百もの人たちに囲まれた空間は、凄まじい思いが伝わる空間だった」そうです。

満蒙開拓平和記念館で展示された王希奇『一九四六』に描かれた遺骨を抱いた少女

木下さんたち学習会のメンバーはその後、葫蘆島を訪れ、王氏のアトリエを訪問し交流をもったことも報告されました。王教授は今も引き揚げをテーマにした作品を描き続けているそうです。また中国の瀋陽にある9・18博物館(満州事変の発端となった柳条湖事件が起きた日)を訪れたことが報告され、90年以上前の日本がしてきた行動や、中国の方たちの抗日活動をずっと伝え続けている中国と、満州事変でさえもしっかりと教えていない日本の状況、両国の大きな違いに、本当にこれでいいのだろうかという思いを持って帰ってきたそうです。

※葫蘆島在留日本人大送還:日本の敗戦時、中国・旧満州に置き去りにされ難民化した一般邦人約160万人。そのうち約105万人が餓えと恐怖にあえぎながら引揚げ港の葫蘆島に辿り着きました。葫芦島からの引き揚げは1946年5月7日から開始され、同年末までに101万人超、1948年までに総計105万1047人の在留日本人が日本へ送還されました。 葫芦島港の桟橋跡には「1050000日本僑俘遣返之地」の記念碑が建っています。 作家の澤地久枝さん、漫画家の赤塚不二夫さん、俳優の森繁久彌さんなども同時期に葫蘆島から引き揚げました。

全国最多の長野県内で最多の8389人を送り出した飯田下伊那地域

1932(昭和7)年に日本の傀儡国家「満州国」が中国東北部に建国され、1945年の敗戦までに国策の満蒙開拓によって、全国から約27万人が入植しました。敗戦後の引き揚げの過程で殺害されたり集団自決によって約8万人が犠牲になりました。長野県内からは都道府県別で最多の3万人超(その内10代の満蒙開拓青少年義勇軍は6千人余)が送り出され、うち飯田下伊那地域からは8389人に上り、県内最多でした。木下氏は「多くの開拓民を満蒙開拓に送り出した地域だからこそ、満蒙開拓に行った人たちだけでない、送り出した側としてもその歴史を次世代に伝えていく、そういう義務があるんではないか」と訴えました。

満蒙開拓 都道府県別の送出人数(信濃毎日新聞サイトより)

満蒙開拓 長野県内市郡別の送出人数(信濃毎日新聞サイトより)

平岡ダム・飯島発電所で朝鮮人・中国人、捕虜が過酷な労働

天竜川を堰き止める「平岡ダム」や「飯島発電所」の建設工事には、大勢の朝鮮人や中国人のほか、連合軍捕虜、在日朝鮮人も動員され、危険で過酷な労働環境のなかで、大勢の方が亡くなったことが報告されました。また「731部隊」にまつわる展示をするべきか市民による議論が重ねられた飯田市平和祈念館への訪問を重ねたことも報告されました。

多くの開拓団を満州に送り出した地域だからこそ

飯田下伊那にもたくさんの戦争遺跡が残されていることを知り、そのことを私たち自身が知らなかったことにも驚き、申し訳ない気持ちになったそうです。そこから地元の企業と戦争との関わりや学生たちの戦争への関わりについても調べ学んだことが報告されました。飯田地方の中学、公民学校の生徒たち(現在の中学高校生)も「1億総生産」の旗印のもと強制労働させられ、旧飯田高等女学校(現在の飯田風越高校)の生徒たちも勤労動員され風船爆弾に関わったことが記録として残されているそうです。

木下氏は「戦争当時は当たり前だったのかもしれないが、飯田下伊那を代表する企業の多くが軍事産業に関わってきたこと、そこに就職をした私たちもその歴史を背負っているということに気づいた」と話し、「飯田下伊那が満蒙開拓やダムの建設などに関わった歴史を持つ地域であることを考えると、日本人である自分たちも、被害者としてだけではなくて加害者としての一面をも背負っていることを認識をしなければならない」と指摘しました。

満蒙開拓の歴史を後世に伝えようと活動する高校生たち

報告では飯田下伊那地域の若い世代のとりくみも紹介さました。松川高校のボランティア部の生徒たちは、自分たちを戦争体験者から直接話を聞くことができる最後の世代と捉え、戦争体験者から学ぶとともに、満蒙開拓平和記念館でボランティアガイドを務めていることが報告され、木下氏は「戦争体験を次の世代に繋ぐ、そういう役割をこうした若い方が担ってくださっていることに本当に感銘を受けた」と話されました。

木下氏は講演の最後に「多くの開拓団を満州に送り出した地域だからこそ、その歴史をしっかりと受け止めて、次世代に繋いでいきたい。地域に残る多くの戦争遺跡を守り、日本人としての加害の歴史を忘れてはならない。しっかりと平和を守っていかなければならないし、どんなことがあっても戦争だけは絶対にしてはいけない」と訴えました。

中国侵略の現場から―前事不忘 後事之師―

松澤佳子氏からは、はじめに木下さんの報告を受けて、731部隊や満蒙開拓とも関連する中国現地を訪問した際の報告をいただきました。松澤氏は冒頭、演壇に飾られた紫色の花を手にして「この紫金草はうちの庭から持ってきました。中国では二月蘭とも呼ばれていますが、中国南京の記念館などの周りにもたくさん咲いています。南京を訪れた軍医の山口清太郎が南京の惨状を見て、その地で咲く花の種を持ち帰り、戦後平和の象徴として全国に広がったそうです。私はこの花を見るたびに中国のことを思います」と話されました。

紫金草を手にする松澤佳子氏

9・18を忘れない

講演のタイトルの「前事不忘 後事之師」は、「以前のことを忘れてはいけない、それは後の行動の指針となる」という意味で、満蒙開拓記念館にも見られ、中国でもよく書かれている言葉だと紹介し、「中国では侵略の始まった9・18を忘れない、ということが様々な記念館に書かれている」ことが報告されました。

松澤氏からは中国で訪れた「在日殉難烈士・労工紀念館」「撫順平頂山惨案紀念館」などの展示内容や日本軍の「労工狩り」や「平頂山事件」について紹介いただきました。侵略の加害者である日本人自身が、中国への加害の歴史を知らないという現状が指摘されました。

※1931年9月18日に起きた柳条湖事件は、満州(現在の中国東北部)の奉天(現在の瀋陽)郊外の柳条湖付近で、日本の関東軍が南満州鉄道(満鉄)の線路を爆破した事件で、満州事変の発端となりました。関東軍は、中国側の仕業として、宣戦布告もせず軍事行動を展開し、満州全土を占領しました。

在日殉難烈士・労工紀念館

撫順平頂山惨案紀念館

※平頂山事件(へいちょうざんじけん)とは、1932年(昭和7年)9月16日、満洲国撫順市(現在の中華人民共和国遼寧省北部)において、日本軍関東軍撫順守備隊(独立守備隊第2大隊第2中隊)が、前夜の抗日ゲリラによる撫順炭鉱襲撃事件の報復のため、ゲリラと通じていると疑った撫順炭鉱近くの平頂山集落の住民の多くを殺傷した事件である。

侵華日軍第七三一部隊罪証陳列館

七三一陳列館では、テーマパークのように賑わっており、木下氏の訪問時と同じく、ガイドから日本語での案内はできないと断られたそうです。コロナ以前は、どこの記念館にも日本語のガイドがいたが今は難しくなっている状況があることが報告されました。

松澤氏は、中国を訪れる度に日本の侵略を体験した生存者の方から証言を聞いてきたそうです。「私たちは日本の軍国主義を憎んでいるけれども、あなたたちを憎んでいるわけではなくて、あなたたちとは友好関係を結んでいきたいんだ、ただ二度とこのような戦争が、残酷なこと、悲惨なことが起こらないように行動してください」と生存者の方はみな言われてきたことが紹介されました。敵基地攻撃能力の保有以降、中国人の感情も中国政府側も二度と攻められないようにというスタンスを強調するように変化しているのではと指摘しました。

731部隊の創設者・部隊長の石井四郎は、アメリカ側に研究資料を渡すことで戦犯を免れた他、捕虜への凍傷実験を指揮した吉村寿人は日本気象学会会長や京都府立大学学長になるなど、多くの関係者が医学会などに残ったとされていることが報告されました。

松澤氏は「中国を訪れて、中国の方とお話をするということがすごく大事」と対話することの重要性を強調しました。

※講演では、信濃毎日新聞でも連載されている731部隊の証言活動を続ける清水英男さんのことも紹介されました。

【NHK】731部隊元隊員 慰霊訪問の中国から帰国 不戦への思い語る(2024年8月26日)

https://www3.nhk.or.jp/lnews/nagano/20240826/1010032023.html

アウシュビッツを訪ねる平和の旅

松澤氏からはアウシュヴィッツ強制収容所(ポーランド・オシフィエンチム市)訪問の報告もいただきました。冒頭にアウシュビッツ収容所の建設から解放までの概要が説明され、現在は国立博物館となっているアウシュヴィッツ収容所の展示や現地の日本人ガイドのエピソードなどが紹介されました。現在のロシアのウクライナ侵攻、パレスチナ・イスラエルの問題などについても触れながら平和について考える時間になりました。松澤氏は「最初に2007年に行きましたが、多くのユダヤ人が命を落とした場所に実際に立つと、やはり胸が締め付けられ、涙が出て止まらなくなった」と現地を訪れた際の心境を語られました。

アウシュヴィッツ・ビルケナウ収容所の建設から解放まで

日本人ガイドの中谷さんとの出会い

アウシュヴィッツ博物館唯一の日本人ガイドの中谷さんは、3年間のサラリーマン生活を送りますが、どうしても学生時代に訪れた強制収容所のことが忘れられず、1991年にポーランドに移り、アルバイトをしながら語学や歴史を学び、難しい公式ガイドの試験を受けて合格をした方で、今もガイドをされているそうです。

中谷さんは「過去に学ばない者は、過ちを繰り返す」という博物館の考え方を大事にして案内していると話されたそうです。涙を流す松澤氏に対して「泣いて済まさないでください」と中谷さんに言われたことが印象に残っているそうです。「二度とこんなことが起きないようにするにはどうしたらいいのかを考えて帰ってください」と厳しく言われ、きちんと伝えていくこと、二度と戦争をしないためにどうしていくか、自分がどうやって行動していくか、どうやって生きていくかということを中谷さんから学んだそうです。

松澤氏が「本当に尊敬するガイドの方」という中谷剛さん

アウシュヴィッツ博物館の展示

※松澤氏が紹介した映画『関心領域』(ジョナサン・グレイザー監督・2023年)は、アウシュヴィッツ収容所の傍らで暮らす所長のルドルフ・ヘスとその家族の穏やかな日常と、壁の向こうで立ち上る煙、ユダヤ人の虐殺を対比的に描く作品。

映画『関心領域』公式サイト

https://happinet-phantom.com/thezoneofinterest/

アウシュヴィッツ博物館サイトと日本語パンフレット

アウシュヴィッツ・ビルケナウ博物館公式サイト

https://www.auschwitz.org/en/japanese/

『アウシュビッツ=ビルケナウ — その歴史と今』 (日本語PDFダウンロード)

https://www.auschwitz.org/gfx/auschwitz/userfiles/auschwitz/historia_terazniejszosc/auschwitz_historia_i_terazniejszosc_wer_japonska_2010.pdf

世界はよくない方に向かっている

松澤氏が今回の旅で感じたのは「こんなひどい目にあったユダヤ人が、なぜパレスチナであんなひどいことができるのか」ということだったそうです。
アウシュヴィッツから戻り改めて学びを深める中で「ロシアのウクライナ侵攻、パレスチナの問題、今起こっている二つの戦争の背景には第二次世界大戦がまだある」「ロシアは第二次世界大戦で3000万人が亡くなり、イスラエルはホロコーストでユダヤ人の犠牲者が600万人と、本当に途方もない数の人たちが犠牲になっていることが背景にある」ということが見えてきたそうです。

イスラエルは今18歳から、男性は3年、女性は2年の兵役義務があります。イスラエルの若者は徴兵されると、紀元70年頃にローマ軍に追い詰められたユダヤ人が籠城したマサダ砦で力尽きて全員自決したこと、ここから2000年の民族離散が始まったと学び、マサダ砦で入隊式が行われているそうです。多くのイスラエルの若者がアウシュヴィッツ博物館も訪れますが「自らの権利を勝ち取るためには武装して戦わなくてはという考えになってしまうのではないか」と松澤氏は指摘します。その根底には長いヨーロッパでのユダヤ人差別があることも指摘されました。

松澤氏の資料が会場で展示された

会場では護憲ネット会員から提供された「撫順の朝顔」の種子が無料配布された

 

ミャンマー大地震被災者支援募金活動を善光寺仁王門でおこないました!

ミャンマー大地震被災者へ156,601円の募金が寄せられました!

ミャンマー大地震被災者支援募金活動を県内在住のミャンマー人学生や県内外の支援者が参加して善光寺仁王門でおこないました。
先月に引き続き二回目のとりくみでしたが、156,601円の募金をお寄せいただきました。
先月は雨の中でしたが、昨日は天候に恵まれ、多くの方で賑わうなかで募金活動をさせていただきました。
ご支援、ご協力をいただいたみなさまありがとうございました。

ミャンマー大地震被災地支援募金2団体へ寄付!次回は5/18(日)12時から善光寺仁王門で募金活動をおこないます!

4月13日の善光寺仁王門での募金で21万7281円が寄せられました

善光寺仁王門での(主催:ミャンマー大地震被災者支援募金実行委員会)へのご協力、ご支援をいただきありがとうございました。
県内在住のミャンマー人を中心に県内外のミャンマー支援団体、信州の会メンバーも多数参加してミャンマー大地震被災者への支援を呼びかけました。

「ミャンマーの平和を創る会」と「難民を助ける会(AARジャパン)」に寄付

ミャンマー大地震被災者支援募金実行委員会は、ミャンマーの被災地で支援に取り組む2団体「ミャンマーの平和を創る会」(東京都)と「難民を助ける会(AARジャパン)」(東京都)にそれぞれ10万円を寄付しました。「ミャンマーの平和を創る会」と「難民を助ける会(AARジャパン)」から届いたメッセージと領収証をご報告します。

■一般社団法人「ミャンマーの平和を創る会」
https://www.chitchitkhinkhin.org/

■認定NPO法人「難民を助ける会(AARジャパン)」
https://aarjapan.gr.jp

ミャンマーの平和を創る会からのメッセージ紹介

難民を助ける会(AARジャパン)からのメッセージ・活動報告紹介

※残りの寄付金1万7281円は次回以降に繰り越しさせて頂きます。

ご寄付いただいた皆様、呼びかけに参加された皆様、ありがとうございました。

5月18日(日)12時から善光寺仁王門で募金活動を行います

次回は、5月18日(日)12時~15時、善光寺仁王門でミャンマー大地震被災者支援の募金活動が行われます。主催はミャンマー大地震被災者支援募金実行委員会です。
県内在住のミャンマー人留学生、支援団体メンバーのほか、今回は日本人学生も参加する予定です。

前回(4/13)の善光寺仁王門での支援募金の呼びかけ

被災71周年ビキニ・デー全国集会

1954年3月1日、ビキニ環礁でのアメリカによる水爆実験によって、「第五福竜丸」をはじめとする日本の漁船が被爆しました。このことをきっかけに日本における原水爆禁止運動が大きく拡がりました。原水禁はこの被害の実相を継承し、核廃絶の決意を確認するため、毎年3月1日前後に静岡での集会を行ってきました。

静岡市で行われた平和を願う集会は、多くの人々の思いを集め、核兵器の恐ろしさや平和の大切さについて改めて考える場となりました。この集会には、長年にわたり核兵器廃絶や被爆者支援の活動を続けてきた人々や、若い世代の高校生たちも参加し、それぞれの思いを語り合いました。

さらに、若い世代の高校生たちも、自分たちの思いを伝える場面があり、未来の平和を担う責任について考えるきっかけとなったようです。彼らは、いのちの尊さや平和の大切さを胸に、声を合わせて平和への願いを伝え、次の世代へとその思いをつなぐ決意を示しました。

集会では、主催者と地元からのあいさつの後、原水禁共同議長である金子哲夫さんから「被爆80年・核兵器廃絶のために 原水禁運動に歴史に学ぶ」と題した講演を受けました。

金子さんは「原水禁運動は、広島・長崎の被爆から約10年のブランクを経て、ビキニ事件を契機に始まりました。10年間遅れたのは米軍のプレスコードによって広島・長崎の被害の実態が隠されていたことが大きな原因です。しかし第1回原水爆禁止世界大会で被爆者自身が被爆体験を語ったことで、被爆の実相が全国各地の市民に受け止められ、核兵器廃絶と被爆者救済が運動の柱となりました」と運動の原点についてお話しされました。その後の運動の中で重要な意味を持つ出来事のひとつが、核実験場となったマーシャル諸島の被災者との出会いだったとし、「日本だけが『被爆国』ではなかったことにくわえ、核実験やウラン採掘によって先住民族など弱い立場にいる人たちに核被害が集中している現実に直面した私たちは、その中から『核と人類は共存できない』という核絶対否定の理念を確立することができたのです」と運動の理念を確立することができた経過が説明されました。

さらに「いのちの尊厳をうばい核兵器使用に繋がる戦争を否定する『ヒロシマの心』に立脚して運動を強化することが私たちの課題であり、とりわけ自治体決議や署名運動などを通じて日本政府の核兵器禁止条約(TPNW)参加を迫っていくことが重要だ」と核廃絶に向けてあきらめず声を上げ続けること訴えました。

続いて第五福竜丸漁労長だった故・見崎吉男さんのご遺族、杉山厚子さんからの講話がありました。杉山さんは、父である見崎吉男さんが地域社会から冷遇され、マスコミからは事実に基づかない批判を受けた経験からたいへんな苦悩を抱え込み、長年その体験を語ることがなかったことをお話しされました。杉山さんは父の思いを引き継ぎ、証言活動を行ってきました。最後に見崎さんの墓碑に刻まれた見崎さん自作の詩を紹介されました。

「だれにだって 風の日も雨の日もあらしの日だってあるさ 大切なのは夢をしっかり抱きしめて いのちいっぱい生きたか 波のように何度でも立ち上がったかだ」

この詩に参加者から大きな拍手が起こりました。

集会の終わりには、静岡選出の高校生平和大使(第27代)の谷河優那さん、粂田陽菜さん、水野可麗さんから活動報告とアピールがありました。

翌日は、静岡県焼津市のマグロ漁船、第五福竜丸が米国による太平洋ビキニ環礁での水爆実験で被曝(ひばく)した「ビキニ事件」から71年となった1日、被曝して死亡した同船の無線長、久保山愛吉さんの墓がある焼津市の弘徳院へバスで向かい、墓前祭に参加しました。

 

 

       

「沖縄レポート 」岸本喬氏講演会~県護憲連合第70回定期総会~

県護憲連合総会で沖縄県の現状を報告

2025年2月11日に長野市内で開かれた長野県憲法擁護連合第70回定期総会で、記念講演として沖縄平和運動センター岸本喬事務局長に「沖縄レポート」というテーマでお話いただきました。若年世代が参加する青年女性連絡会のメンバーは「2・11反戦平和学習会」として松本市内の会場からオンラインで参加しました。会場・オンラインあわせて約70人が参加しました。

沖縄からオンラインで講演する岸本氏

女性差別撤廃条約「選択議定書」の意見書採択のとりくみ報告

県護憲連合総会では、戦後80年の節目を迎える中、憲法改正や防衛費増額に反対し、憲法理念の実現を目指す活動方針が確認されました。また松澤佳子代表委員から、国連の女性差別撤廃条約の実効性を強化する「選択議定書」の批准を国に求める意見書が、県と県内73市町村議会で採択されたことが報告されました。

あいさつする松澤代委員

戦後80年 基地の島・沖縄の内実

戦後80年を迎えますが、沖縄は今なお過重な米軍基地の負担に苦しんでいます。日本の国土面積の0.6%に在日米軍施設の約7割が集中する異常な構造は解消されていません。普天間基地の移設をめぐり、県民投票で示された辺野古新基地建設反対の意思(72%が埋立反対)を無視した政府の土砂投入と軟弱地盤工事は、沖縄県と国の法廷闘争に発展して修復不可能な対立を生んでいます。沖縄県は一貫して県民の意思を伝え対話による解決を求めていますが、日米両政府ともに「辺野古が唯一の解決策」との姿勢を変えず、県民の思いを顧みることなく工事が強行されています。

沖縄県民の思いを国・米軍に訴え続ける玉城デ二―沖縄県知事

「沖縄という一地方の問題ではない。
日本の国の制度の在り方が問われている」

岸本氏からは、南西諸島の軍事要塞化、米軍によるPFAS汚染や環境破壊、辺野古の新基地建設問題、新軍港の建設問題を中心に、日米地位協定に圧し潰される沖縄の差別的な状況が示されました。岸本氏は「沖縄という一地方の問題ではない。日本の国の制度の在り方が問われている」と訴えます。有事になれば沖縄は再び戦場になり、「捨て石」にされないかという不安が沖縄県民の間で拡がっています。自衛隊と在日米軍の一体化が進む状況のなか、更なる負担に直面する沖縄で何が起きているのか、現地からのレポートをお届けします。

3月には松本空港にも緊急着陸した米軍のオスプレイ

【以下、岸本氏の講演内容を載録した「信州護憲ネット会報69号」を掲載します】