21世紀のキーワード―平和・人権・環境

長野県平和・人権・環境労働組合会議

5月3日県内各地で憲法集会 -  コロナ禍での憲法の重要性を学ぶ

憲法記念日の5月3日、県内各地で憲法を護り活かす立場からさまざまな集会が開かれました。長野市では、ジャーナリストの竹信三恵子さんより、コロナ禍で浮き彫りとなった「女性不況」といわれる雇用問題から生存権など憲法理念の自洗と実現が必要であることを学びました。松本市で行われた集会では、平和憲法が持つ世界的な先進性について再確認されました。

◆コロナが直撃した女性の雇用問題

長野市で開かれた第30回市民の憲法講座(信州護憲ネット主催)では、長年女性の貧困問題を取材してきたジャーナリストで和光大学名誉教授の竹信三恵子さんがオンラインで講演。コロナ禍で浮き彫りとなった「女性不況」の実態を通じて憲法が保障する生存権や9条の意義について考え合いました。

竹信さんは、働く女性の過半数が非正規雇用であること、さらにコロナ禍で深刻な打撃を受けた対人サービス業の雇用者のおよそ60%が女性であるという構造的な理由からコロナ不況は女性を直撃し、「脆弱な女性の雇用が浮き彫りになった」と指摘しました。

また、非正規も対象となるはずの休業補償が、雇用主の誤解や煩雑な手続きへの敬遠から本人に補償が届かない事例があること、さらに、健康保険ではコロナ発症により給付される「傷病手当」が、非正規が多く加入する国民保険では当初対象外であったことなどを述べ、「非正規への公的ネットワークの不備」を問題視。コロナ禍で行った女性向けの相談会であった、「生活が苦しい」「住むところがない」といった相談内容を示し、憲法25条で保障される生存権がおびやかされていると指摘しました。一方、コロナ禍による労働問題に対し取り組んだ労働組合や市民団体の活動については、困窮者の支援につながった事例を紹介し、こうした活動を憲法理念の実践として評価しました。

社会保障の整備に必要な国の財政についても憲法と照らし合わせて解説された。1894年の日清戦争にはじまり、1945年までの戦争をする国であった日本の財政構造について、69%から最大で85%が軍事費に使われてきたと示し、「戦争時には財政が人に使われない」「9条をいいかげんにしたら財政が人の幸福に使われるのか、一般の生活に公的資金が回るのかを疑問に思わなければならない」と、安易な9条改憲議論に流されないように警鐘を鳴らしました。

最後に、「護憲とは9条を守るだけではなく、生存権・幸福追求権など憲法全体の構造を活かしていくこと」と強調し、「活憲」への不断の努力を呼びかけました。

◆ 世界の歴史を先導する9条

松本市の会場では、中信市民連合が主催し、花時計公園で「新型コロナと憲法~自由と制限を考える」集会が開かれました。ゲストトークでは、名古屋大学名誉教授の池内了さんから「世界の歴史を先導する憲法第9条!」と題する講演を受けました。

池内さんは、「人類の歴史は、戦争・暴力・軍事力に頼る『野蛮』と、平和・軍縮・話し合いによって物事を決める『文明』が絶えず拮抗してきました。その中で世界が戦争放棄を求め、武力に頼らないという流れを先導したのが、日本国憲法の第9条である」と述べました。

また、現在のミャンマー情勢から、軍隊を持つことの危険性に触れ、軍隊は国民を守るのではなく国を守るものであり、今回のクーデターのように「国を守る目的」で、自国の国民を弾圧し、見捨てることもあると指摘しました。その上で、日本同様、世界で唯一軍隊を持たないことを憲法に記すコスタリカと日本とを比較し、「コスタリカの大統領は永世的、積極的、非武装中立を宣言している一方で、日本のトップは自国の憲法をみっともないといい、軍拡路線へつき進もうとしている」と批判しました。

最後に、今年1月ついに発効された核兵器禁止条約に日本が批准していないことについて、「条約に批准し、核廃絶を訴えていくことは、世界史を先導してきた憲法9条をもつ日本の役割である」と強く訴えました。

「核兵器禁止条約」が1月22日に発効 ヒバクシャ国際署名県推進連絡会が長野駅前で街頭宣伝

「核兵器禁止条約」が、1月22日に発効することになったことを受けて、ヒバクシャ国際署名県推進連絡会は、1月22日に長野駅前で宣伝行動を行いました。

宣伝行動では、県原爆被害者の会(長友会)から、藤森俊希さん、今井和子さん、前座明司さん、明恒次郎さん、県連絡会代表世話人の若麻績敏隆さん、県原水禁から松澤佳子さん、県原水協から堰免久美さんが訴えをしました。訴えとともに、横幕やプラカードを掲げたスタンディングの他、チラシの配布を行い、行動参加者は32人でした。

禁止条約の発効によって、核兵器が歴史上初めて違法化されることになり、核保有国とその同盟国に対して大きな圧力になります。被爆者をはじめ核兵器廃絶を求める世界の人々の願いを実現するための歴史的な扉が開かれました。

☞ ヒバクシャ署名県推進連絡会NEWS15号

 

 

県原水禁大会は約60人の参加者を集めて「ヒロシマの日」に開く

8月6日、被爆75周年の「ヒロシマ原爆投下の日」を迎えました。

午前8時から開かれた原水爆禁止長野県大会では、原爆投下の8時15分、広島市で開かれている「原爆死没者慰霊式・平和祈念式」を中継でつなぎ、現地の「平和の鐘」の響きが会場を包む中、約60人の参加者が広島現地と合わせて黙とうを捧げました。

その後、県大会では、75年前に広島市で1歳の時に被爆した県原爆被害者の会の藤森俊希会長の被爆体験を映像にまとめたDVD『藤森俊希の伝言~きのこ雲の下、僕は1歳だった~』が上映されました。また、藤森会長が「核兵器を巡る状況と私たちの課題」と題して講演しました。藤森会長は昨年10月、国連総会に出席し、国連総会第1委員会のヨレンティ議長(ボリビア国連大使)に1051万7872筆の署名を提出しました。ヨレンティ議長は「この場所で藤森さんと出会えたことにとても嬉しい。ボリビアは今年の8月6日に核兵器禁止条約に批准したことから、自分の国に誇りを持っている。核兵器は人類の存亡に関わるものであるから、廃絶を目指しこれからも行動していく」「この国連を藤森さんにとっての家だと思って、署名提出でもそうでなくてもいつでも頼ってきてほしい」などと話しました。

県大会は最後に、「原水禁運動の原点のスローガンである『核と人類は共存できない』を改めて確認し、21世紀には核兵器も原発も存在しない、安心で平和な社会をつくるため行動し続けることを、75回目のヒロシマの日に決意します」とする大会アピールを採択しました。

8時15分を期して黙とうをささげる参加者。

講演する藤森俊希・県原爆被害者の会会長。

☞ 原水禁県大会アピール全文はここをクリック

原水禁世界大会はオンライン配信大会に。現在もYoutubeで視聴が可能

毎年8月に開かれている広島、長崎、福島での原水禁世界大会は数千人の大規模集会であり、全国各地から集まるため、新型コロナの状況にかんがみ参加者を集める方法では中止となりました。代わりに大会当日、オンラインで配信されました。開会総会や分科会などは、インターネットのYoutubeで配信されました。現在も視聴が可能です。

長野県原水禁としては、毎年、広島・長崎・福島へ代表団を派遣してきましたが、今年は、「こども代表団」も含めて派遣しませんでした。来年は、通常の形での開催を実現したいものです。

Youtubeで現在も公開されている被爆75周年原水禁世界大会

長野駅前で核兵器廃絶求める「ヒバクシャ国際署名」の街頭アピール

被爆者自身が核兵器廃絶を求めて、国連あての署名活動をすすめています。県内では、被爆者団体や県原水禁、県原水協、県生協連、県教組などでヒバクシャ国際署名県推進連絡会が結成され、署名活動をすすめてきました。

県連絡会は8月2日、長野駅前で街頭署名行動を行いました。行動には22人の参加があり、藤森俊希さんをはじめ5人がアピールをしました。新型コロナ感染予防のため、署名板を持っての署名やチラシ配布は行わず、机を2カ所設けて立ち寄っていただくというやり方での署名集めでしたが、45分間で19人の署名を集めることができました。

2017年7月7日に国連で「核兵器禁止条約」が採択され、3年が経過しました。核兵器禁止条約は、50カ国以上の批准で発効することになっています。現在、条約を批准した国は44カ国となり、条約発効まであと6か国となりました。