長野県民の命と健康を守る活動を推進していくことを確認
長野県アスベスト対策センターは、5月24日に県労働会館(長野市)で、第8回総会を開催しました。オンライン参加者を含めて約30人が参加しました。
2024年度の活動経過報告として、アスベスト被害面談・電話相談会(面談3人・電話相談3人)、アスベスト裁判に関わる福田護弁護士、山岡遥平弁護士を講師とした学習会(県労組会議と共催)、アスベストによる肺がんで夫を亡くされた県内在住のご遺族が、建材メーカーへ損害賠償を請求する集団訴訟に参加するための支援などのとりくみが報告され、今年度も引きつづき活動方針に沿って、長野県民の命と健康を守る活動を推進していくことが確認されました。
昨年の能登半島地震とその後の豪雨災害で被害を受けた石川県珠洲市の建造物でも、発がん性が高いアスベスト「青石綿」が露出したままになっていることがNPO法人「中皮腫・じん肺・アスベストセンター」(東京都)の現地調査で分かったとの報道がされています。アスベスト自体の製造は禁じられましたが、古い建築物には、吹付や建材にアスベストが使用されており、今後、解体が進むなかで新たなアスベスト被害が生じかねません。
また今年は阪神淡路大震災から30年を迎え、復旧作業や解体作業に従事した人々がアスベストを吸い込んだことで肺がんを発症し労災認定がされるなど、今後被害が顕在化してくる可能性が懸念されています。アスベストは、曝露後30~40年が経過して発症するが多いため、これから過去のアスベスト曝露による中皮種や肺がんなどを発症する方が増えることが予想されます。
県アスベスト対策センターは、吹付アスベストやアスベスト建材を使用した建築物の解体が2020年代後半にピークを迎える状況から、これからさらにアスベスト被害が広がる危険性があると認識し、労働者・県民の命と健康を守るために活動を進めていきます。
アスベスト被害者のご遺族から連帯のあいさつ
建材メーカーへの損害賠償を請求する集団訴訟に参加する県内在住のAさんと「じん肺・アスベスト被災者救済基金」の池田理恵氏から連帯の御挨拶をいただきました。Aさんは、「アスベストの知識がなく、どこに相談すればいいかわからなかったが、テレビでアスベスト相談会があることを知り、相談することができた」と県アスベスト対策センターを知るきっかけを紹介され、抗がん剤や放射線治療、在宅での24時間酸素療法などを試みたが、次第に体力が落ちていき寝たきり状態になった夫に何もしてあげられず本当に辛い日々だったと当時を振り返られました。「アスベストで被害にあわなければ、孫やひ孫と楽しく遊んだり、趣味の家庭菜園でおいしい野菜を育てたりしていた」と夫の無念について話され建材メーカーとたたかう裁判への協力を呼びかけました。
講演動画「アスベスト問題の現在と今後の対応」を視聴
総会終了後には、学習会として村山武彦教授(東京科学大学・環境社会理工学院)による講演動画「アスベスト問題の現在と今後の対応」を視聴しました。アスベストの産業利用、アスベストの有害性と曝露の機会、アスベスト曝露による影響の広がり、外国の動きと総合的対策の必要性という内容でした。
アスベストの種類や特性、過去から現在までの使用実態とその背景、健康被害のメカニズムと日常生活や職場でのリスク、中皮種などを発症した被害者の実態と社会の関心の薄さなどアスベストをとりまく現在の状況を網羅的に学ぶことができました。
最後に、海外の規制事例(オーストラリア)やインドなどの新興国でのアスベスト使用の広がりなど国際的な動向を踏まえたうえで、日本での包括的な対策の重要性が指摘されました。アスベスト問題の全体像と今後の対応策がわかりやすく解説されています。アスベスト問題に関心のある方はぜひご視聴ください。
動画は環境省の「環境省環境管理課公式チャンネル」から視聴できます。また資料(PDF)もダウンロードできます。
講演動画と資料ダウンロードのリンク
【Youtube】東京工業大学・村山教授講演「アスベスト問題の現在と今後の対応」
https://youtu.be/hjrg78p82EE?si=6-vhNvSUcXz1eyZe
【資料ダウンロード】講演スライド資料(環境省)