21世紀のキーワード―平和・人権・環境

長野県平和・人権・環境労働組合会議

将来の平和運動を担う若い世代が2泊3日で学習・交流

4回目の平和フォーラム・ピーススクールを開催

11月17日から19日まで、二泊三日の日程で「平和フォーラム2023ピーススクール」が開催されました。

ピーススクールは、平和運動を担う若い世代を育成することを主な目的として、さまざまな課題を丁寧に伝え、共に考える場として開催されてきました。講演やグループワーク、フィールドワークを通して、平和運動や原水禁運動、人権課題などの現状や課題を学ぶ機会とするものです。

今年は、全国各地から32団体の41人が参加し、職種や世代も異なる6~7人でグループをつくり、課題ごとに意見交換をおこない、同世代の仲間と問題意識を共有しました。

公務職場や公共交通などそれぞれの職場の厳しい状況についても知る機会にもなりました。

辻本清美参議院議員、市田真理氏ら充実の講師陣

一日目の辻本清美議員の講演では、学生時代のピースボートの取組みから政治に至った経験から、運動から政治へのコミットメントの重要性、運動と政治の両輪が必要だと訴えられました。二日目の第五福竜丸展示館学芸員の市田真理さんからは、第五福竜丸を保存するために多くの方々が尽力した経過、被害者たちのその後、第五福竜丸事件を巡って日本政府とアメリカやソ連・中国とのせめぎ合い、見落とされがちなマーシャル諸島の住民たちの存在、さまざまな書式で全国から集まった原水爆禁止署名の運動と多岐にわたる視点からこの問題を考えるヒントを頂けました。午後からは在留外国人の置かれた困難な状況、LGBTQの差別問題についての講演が続き、朝鮮大学学生の李さんの差別に立ち向かう民族教育の意義についての訴えに参加者一同圧倒されました。

憲法から第五福竜丸、LGBTQ、在留外国人の差別問題と多岐に渡る課題を学ぶ

密度の濃い熱量の高い講義がつづきファシリテーターの方が記録してくれたホワイトボードがどんどん埋まっていきました。

フィールドワークで訪れた第五福竜丸展示館

市田さんのお話を伺ったあとは、夢の島公園内の林のなかにひっそりとある第五福竜丸展示館を見学しました。実際に目の前にする第五福竜丸の大きさに参加者の多くが驚いていました。当事者が亡くなっていくなかで、どうやって次世代に伝えていくかという問題があることを考えたあとに、実際にモノとして残っているものをしっかりと保存継承していくとりくみも大切な運動なのだと理解することができました。そして当事者ではない市田さんの伝える力についても改めて学ぶことがあると思いました。

最終日のディベートでの葛藤

最終日には、グループワークの総集編として、「安全保障に関する防衛力の強化」「原発推進政策」「労働組合の政治活動・平和運動積極参加」をテーマに、賛成・反対に分かれ、ディベートを行いました。本来の自分の考えと違う立場で主張を展開することの難しさがありましたが、双方の立場からどう伝えたらいいのか考える時間は貴重な経験になりました。防衛力の強化をテーマにしたディベートでは、全港湾出身の参加者から「海外から武器に変わる原料や資材を港で運ぶのは自分たち。運びたくない」と

また、一部参加者はピーススクール終了後に開催された「19日行動」にも参加し、より実践的に学びを深めました。

衆議院議員会館前に並んでスタンディングアピール

ピーススクール終了後に永田町へ

三日間の密度の濃い日程から「難しそう」「大変そう」「ついていけるだろうか」といったイメージを抱えて参加した方がほとんどでしたが、「学びが多かった」「貴重な経験になった」「参加できてよかった」などと最後のあいさつで発言している方が多くありました。

コロナ禍を経て、全国各地から集った参加者同士で交流を深められたことで、実際に会って交流する大切さも確認することができました。

今回得た経験を活かし、これからの活動に活かしていきたいと思います。

駐イスラエル大使館付近ではガザへの攻撃の中止を求めるデモが行われていた

イスラエル大使館周辺には警察の警備車両が停まる

ミャンマーにあたたかい古着を送る活動に220人が協力

アジア子ども交流支援センターがミャンマー現地に送付

長野市に本部を置く「アジア子ども交流支援センター」(ミャンマー民主化を支援する信州の会加盟団体)は、今年7月から9月までの間、ミャンマーの人びとにあたたかい古着を送ろう市民に呼びかけてきました。これに対し220人の市民が古着を寄付してくれました。古着は、船便でタイ経由でミャンマー現地に届けられました。ミャンマー現地からはお礼の手紙や写真、動画が届きました。

アジア子ども交流支援センターはこのたび会報「ピース・ウェーブ」を発行し、古着送付活動と、10月29日に開いたミャンマー交流フェスタin信州の報告を掲載しました。

東日本大震災の癒しのイベント「311のキャンドルナイト」が発足しました

発起人の3人。左からアワプラの白石草(はじめ)さん、グリーンアクションのアイリーン・美緒子・スミスさん、サステナのマエキタミヤコさん。

東日本大震災からもうすぐ13年になろうとしています。あの日の午後7時3分に発令された「原子力緊急事態宣言」は未だに解除されていません。まだ多くの被災者が県内外で散り散りに暮らしています。

趣旨の説明をするマエキタさん

13年が経つ東日本大震災は、被災地が広範囲で被災者も全国に散らばったことから、これまで阪神淡路大震災やチョルノービリ原発事故のような、市民によるメモリアルイベントはありませんでした。落ちたデブリは確保できず、廃炉の日程は延期に次ぐ延期、デブリに触れ核種を帯びた地下水の海洋放出は対話なく強行され、復興キャンペーンや「それは風評被害だ」キャンペーンに大金が投じられ、本当の被災者の支援は足りていません。いま私たちにできることは何だろう。今も傷を負っている人たちに心を寄せる場は作れないのか、そんな思いで3人の女性が立ち上げたイベントです。

2024年3月11日(火)午後7時3分、一斉にろうそくを灯す「311のキャンドルナイト」へのゆるやかな連帯と開催、参加を呼びかけます。

衆議院第ニ議員会館での記者会見の様子

ぜひあなたも「311キャンドルナイト」を呼びかけてください。

「311キャンドルナイト」交流ホームページ  http://311candlrnight.org/

★賛同金(ひとくち3,000円)も募集します。

城南信用金庫 経堂支店(028)普通444695

 

 

原発事故における国の責任をただす「ノーモア原発公害市民連絡会」が発足しました

原発事故の被災住民らが国に損害賠償を求めた4件の集団訴訟で、最高裁は昨年6月、国の賠償責任を認めない判決を言い渡しました。

記事はコチラ👉https://www.asahi.com/articles/ASQ6K3R5MQ6GUTIL037.html

この判決を受けて、11月17日(金)、あの原発事故は防ぐことができた!国の責任を認めさせるため最高裁6・17判決をただそうと、学者や弁護士らが「ノーモア原発公害市民連絡会」を発足しました。今まさに無責任極まりない「原発回帰」政策を強行する国に対して、原発事故による様々な被害の全面救済や、これからの世代が原発公害などの恐怖にさらされないための社会を目指します。東京・永田町の議員会館での発足総会には、オンラインを含めると約70人が参加しました。

議員会館の国際会議室にて

代表世話人は寺西俊一・一橋大名誉教授(環境経済学)や元TBSのジャーナリスト金平茂紀さん、弁護士の小野寺利孝さんら。発足総会では、最高裁判決について「巨大津波が原発を襲う可能性を知りながら何もしなかった国を免責した判断は誤りだ」として、新たな判決を勝ち取る方針を確認しました。

講演で分かりやすく話す樋口英明さん

4人の裁判官について話す樋口さん。うち三浦守判事は、「国が規制権限を行使しなかったことは、法令の趣旨などに照らし、著しく合理性を欠くものであって違法である」という反対意見をつけた。

記念シンポジウムでは、元福井地裁裁判長・樋口英明さんによる「原発事故と国の責任 6・17判決をどうただすか」と題した講演後、3人の原発被害者がこれまでの経験を伝えるとともに、裁判の勝利に向けて固い決意を表しました。

決意を語る原発事故避難者の森松明希子さん

<主な活動>
① 福島原発事故を引き起こした国の責任を認めない最高裁の不当判決をただす。
② 被害者への人権侵害や環境破壊がいまなお深刻であり、その全面救済と原状回復を求める。
③ 新たな「原発公害」を広げるALPS処理汚染水海洋放出の中止や、老朽原発再稼働の即時停止を求める。

シンポジウムや学習会の開催、判決の是正を求める署名運動を始め、多くの人にこの「ノーモア原発市民連」による取り組みを知ってもらい、活動が全国各地に広がることを呼びかけています。

 

 

 

12月6日から10日まで伊藤孝司写真展「平壌の人びと」松本展を開催

朝鮮民主主義人民共和国に対する政府やマスコミなどによる「反北朝鮮キャンペーン」により、「悪の帝国」「独裁国家」などという負のイメージが広がっています。しかし、朝鮮国内では普通の人々が普通の暮らしをしているという当たり前の事実が後景に置き去りにされています。

フォトジャーナリストの伊藤孝司さんは、約200回にものぼる海外取材を重ねています。その中で 「空白」 となっている国、朝鮮民主主義人民共和国を初めて訪れたのは1992年でした。実際に見たこの国が、 日本で伝えられている姿とあまりにも異なることに疑問をもち、日本と関わるテーマを精力的に取材しました。2019年10月までに43回にわたり朝鮮を訪問されました。訪問時に撮った膨大な写真から選択した写真展が全国各地で開かれています。写真は朝鮮の人びとをテーマに、約4割は地方都市で撮影されたものです。

日朝県民会議は、日朝松本市民会議などとともに伊藤孝司さんの写真展を12月6日から10日まで松本市美術館市民ギャラリーBで開く計画です。写真展の開催中に伊藤孝司さんの記念講演会も企画いたしました。お誘い合ってご参加いただけるようにお願いします。

労働者・国民に共感が広がる運動を地域からつくろう

約60人参加した県労組会議定期総会で今年度の運動方針を確認

長野県平和・人権・環境労働組合会議(県労組会議)は10月20日、代議員・傍聴者、来賓など約60人を集め、長野市内で第28回定期総会を開きました。

主催者あいさつで、宇佐美正信議長は「暴走する岸田政権を許さない闘いはまだまだ続く状況。多くの政治課題に対して声を上げていく地道な運動が必ず変えていくことができる力になる」(あいさつ別掲)などと強調しました。

討論では「反核平和の火リレーは7月11日から8月4日まで実施し、ランナー総数635人が参加した。要請した77自治体中64自治体で市町村長(もしくは副市町村長)が直接参加してくれた。この運動が組織強化につながっている」(自治労・中村代議員)、「蔦友印刷が会社破産し、全員解雇された事件では、多大なカンパをいただき心から感謝申し上げる。組合員の半数が就職した状況」(印刷フォーラムながの・原田代議員)、「公共交通を維持していくうえで、人員不足、低賃金から抜け出せず、私鉄は厳しい状況におかれている。ライドシェア導入問題には反対運動の取り組みをお願いする」(私鉄県連・飯川代議員)、「上小地区労組会議の地域組織の『依田窪連絡協議会』『東御市連絡協議会』が様々な議論を経て合併した。連協組織を残して、地域運動を大切にしていきたい」(上小地区労組会議・竹内代議員)などの発言がありました。

特別決議として「国民の切実な願いに背を向け、軍拡・改憲をすすめる岸田政権と対峙し総選挙に勝利する決議」が採択されました。最後に「新自由主義政策を転換し、所得の再分配や富裕層・高収益大企業への課税を強化し、自助よりも公助、自己責任より共生、労働者・国民の暮らしを優先する政策へ転換を」「組合員はもちろんだが、組織されていない労働者・国民にも共感が広がる労働運動、平和運動が必要とされている」などとする「総会宣言」を採択しました。

あいさつする宇佐美正信議長

来賓、役員、代議員など約60人が参加

蔦友印刷の破産事件を報告する原田代議員

総会の最後には団結ガンバローを三唱

 

仲間との信頼関係を深め運動を広げていこう

県労組会議議長 宇佐美正信

昨年10月に行われた県労組会議の大会から早くも一年が経過をしました。少しこの一年間を振り返りたいと思います。

新型コロナは5月に2類から5類へと移行になりました。4年目を数える「コロナ禍」で8月19日に県労組会議として4年ぶりにソフトボール大会を開催しました。大変暑い中、各地区労組会議の精鋭たちが集まり、熱戦が繰り広げられ塩尻地区が優勝しました。終了後、団結会が開催され大変盛り上がりました。未だコロナが終息したわけではありませんが久々の開催ということもあり、一堂に会して話ができたことが大変有意義であったと思っています。普段話ができないことや初めて会う仲間がテーブルを挟み、膝を交えて話すことができたこと、コロナで制限されていたことが少し晴れたのではないかと思っています。各地区、単産の皆さんと会ってお話しすることが改めて重要だと感じました。

私たちを取り巻く情勢は今さら言うまでもありませんが生活も組合活動も労働実態も厳しい状態が続いています。詳しい情勢については後ほど、方針案の提起によりますので割愛させていただきますが、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の他、全世界では現在、武力紛争が50以上あります。最近ではイスラエルがハマスを壊滅させようとガザ地区に侵攻を始めています。こうした武力戦争によって民間人、特に女性、子どもが犠牲になっています。人の命を奪ってまで得たい物っていったい何なのでしょうか。「話し合いをしよう」「外交によって解決をしよう」とはならないのでしょうか。

戦争の影響でエネルギー、食糧、原材料上昇によって円安、物価高など、日本国内外ともに不穏・不安定な状況下にあります。

そうした中、岸田内閣は昨年12月安保三文書の改訂によって敵基地攻撃能力を保有することや、先の国会では防衛費増額の財源を確保するための特別措置法や、原発の再稼働、運転延長、東日本大震災から12年たった現在、被災者に寄り添うことなく支援の打ち切りや子供甲状腺がんの発症に対する補償は何もなく、福島原発で発生したトリチウムを含む汚染水を「関係者の理解なしには放出しない」と約束していたことを反故にし、海洋放出を強行してきました。

さらにはマスコミにこぞって放射能を含む汚染水を処理水というように誘導し、まさに戦争に突き進む道、国民生活の安全・安心を脅かす道を突き進んでいます。

武力で解決する平和などは絶対あり得ない、核と人類は共存できないことは多くの犠牲を払ってきた先人たちが教えてくれています。

こうした政治情勢ですから、岸田政権には辞めていただくしかありません。県労組会議としては政治情勢を見極めながら私たちの掲げる運動課題、政策要求に方向性が合致する立憲民主党、社会民主党と連携して運動を展開していきたいと思います。

暴走する岸田政権を許さない闘いはまだまだ続く状況ですが、多くの政治課題に対して声を上げていく地道な運動が必ず変えていくことができる力になると思います。

もう一つ、県内で大変大きな事件が起きました。県労組会議に加盟する印刷フォーラムの蔦友印刷が3月に破産手続きを申し立て、倒産しました。従業員である組合員が解雇されました。解雇によって給与及び退職金が支払われないことから、当面の生活費の補助として長野地区労組会議とで組合員に対する支援カンパを取り組んできました。仲間を助ける支援活動として多くのカンパを取り組んでいただきました。ありがとうございました。支援する側でさえ厳しいにもかかわらず大変多くのカンパをいただきました。取組みにご協力いただいた皆さんに改めてお礼を言いたいと思います。また関西生コンやJAL闘争団などこうした仲間が困っているときに支援をする、各地区や単産、単組の皆さんにまで声をかけられる労働運動ができるのは労組会議だけだと思います。皆さん自身も大変かと思いますがもっと大変な状況で助けを求めている人、労働者がいます。引き続きそうした人たちに寄り添い支援をしていきたいと思います。

最後になりますが、今年4月の統一自治体選挙では私たちが推薦する議員が当選することができました。本当にご協力ありがとうございました。

私たちはこれまで学習や交流によって仲間との信頼関係を築いてきました。その知識を生かし幅広く仲間に危険性や重要性を訴え、今まで以上に反戦、護憲、反核、脱原発を軸に平和と民主主義を守る闘いの運動を進め、労働者の雇用、平和・人権・環境に関わる運動課題について、労働者の立場に立って引き続き運動を進めていきたいと思います。

以上で県労組会議を代表してのあいさつに代えさせていただきたいと思います。

特別決議全文

総会宣言全文

 

南木曽の国有林で約30人が除伐の林業体験

水道の広域化・民営化問題、水の公共性についても学習

4年ぶりに一泊二日で食とみどり、水を考える集いを実施

林野労組、全農林、全水道などの労働組合でつくる「食とみどり水を守る県民会議」は11月2日と3日、南木曽町で第10回食とみどり、水を考える集いを4年ぶりに一泊二日の泊まり込みで実施しました。参加者は2日間で約30人。

1日目は、南木曽町の国有林に入り、ヒノキ林の「除伐」の体験作業をしました。除伐とは「育てようとする樹木の生育を妨げる他の樹木を刈り払う作業」です。植樹してから22年たつヒノキのなかで、林野庁職員が、伐採した方が他の樹木の成長を助ける木に青いテープを巻いて、それをノコギリを使って切り倒す作業。比較的細いヒノキが多いのですが、20cm程度まで成長したヒノキもあり、切り倒す方向にノコギリで「受け口」を斜めに切り込みを入れて作業を行いました。参加者は、日ごろ、ノコギリを持つ機会がほとんどない人が多く、作業する場所も斜面のため、息を切らしながら作業をしていました。女性参加者の3人が班をつくり、力を合わせて作業する姿が印象的でした。約1時間半の作業を終えてヒノキ林を眺めると、作業前は薄暗かった林に太陽の光が降り注ぎ、残されたヒノキがすくすくと育つ環境が整備されました。

2日目は木曽森林管理署南木曽支署の会議室で、水道の広域化・民営化問題について学習しました。講師は、全水道中央本部副執行委員長の岩倉朋視氏(松本水道労組)。岩倉氏は、改正水道法で水道事業の基盤強化のため、水道の広域連携を推進する方向性が打ち出されたと報告。水道事業の広域化ついて、5つの視点で見ることが大切だと指摘しました。5つの視点とは、①市民のための広域化か、②持続可能な水道に寄与するか、③民営化のための広域化ではないか、④市民に開かれているか、⑤働く者が納得しているか、です。岩倉氏は、「水は『究極の自治』であり、広域化は『地域で決めること』が重要」と強調しました。

数人で助け合って除伐作業

ヒノキを切った後には、枝打ちを行い短く切る作業も

切り倒す方向に受け口をつくってから伐採

女性3人組もしっかりと除伐作業を行った

横須賀で米軍空母母港化50年に抗議する全国集会に750人

横浜港のど真ん中にある米陸軍基地ノースドックの現地視察も

平和フォーラム全国責任者会議で集会とフィールドワークに参加

平和フォーラムは10月5日~6日、神奈川県横須賀市で約120人を集めて全国責任者会議を開きました。会議の後の夕刻には、会場近くのヴェルニー公園で「米空母母港化50周年抗議!原子力空母ロナルド・レーガンの配備撤回を求める10.5全国集会」を開き、約750人が参加しました。1973年10月に米海軍空母ミッドウェイが横須賀に配備され母校化されて以来、危険な原子力空母も配備され続けて50年。米国の「国益」を守るために配備が継続されている横須賀の実態が集会やデモ行進のなかで改めて告発されました。

集会では、平和フォーラムの藤本泰成代表が、この夏アメリカのキャンプデービッドで行われた日米韓首脳会議で、日米安保を越えて日米韓の軍事同盟ともいえる連携強化が打ち出されたことを批判し、東北アジアでの戦争回避のために憲法9条の平和主義を守り、自民党、日本維新の会などの改憲勢力に台頭を許さない取り組みの強化が必要だと訴えました。平和フォーラム関東ブロック連絡会議の中條貴仁代表(東京平和運動センター議長)は、全国の米軍基地から漏出した有機フッ素化合物の問題に触れ、飲料水の汚染は国が責任を持って早急に対応するように求めました。全国基地問題ネットワークからは代表委員の米村豊さん(長崎県平和運動センター議長)があいさつを行い、G7広島サミットにあわせて長崎県佐世保に入港した原子力空母ニミッツに抗議するとりくみを行ったことを紹介するとともに、九州および南西諸島での日米軍事強化の実態を報告しました。

市民団体からの連帯あいさつでは、非核市民運動ヨコスカの新倉裕史さんが、米空母の母港化に至った過程と湾岸戦争やイラク戦争などで米軍の出撃拠点となった横須賀基地の歴史を振り返りつつ、横須賀の米軍が自衛隊を戦う軍隊へと育て上げた日米軍事一体化の現状に警鐘を鳴らしました。在日米軍の動きを追跡している市民団体リムピースの星野潔さんは、米海兵隊が新たに進めている「海兵沿岸連隊」の輸送拠点として横浜ノースドックの基地機能強化が進められていることを説明し、横浜を戦争の拠点にさせない行動が必要だと訴えました。最後に反核平和の灯リレーに取り組む青年労働者からの決意表明を受け、集会アピールを採択しました。

その後750人の参加者は、デモ行進に移り、在日米海軍司令部前では抗議のシュプレヒコールを行いました。

強風の中約750人が集会に参加

全国からの参加者が横須賀米軍基地に抗議の声を上げた

米軍の空母はアメリカの国益のために配備されている

 

在日米海軍横須賀司令部前で抗議のシュプレヒコール

大都会の横浜市のみなとみらい地区に米陸軍基地が

米陸軍の補給・輸送の拠点、軍事訓練にも使用

米陸軍の横浜ノース・ドックは、米軍の物資の補給、輸送の拠点として大都市・横浜市のみなとみらい地区の真正面にあります。米陸軍の装甲車や戦闘ヘリコプターの陸揚げ・輸送や、米海兵隊の行動の拠点にもなっています。「有事」の際には、米軍部隊を展開させるための拠点となり、そのため真っ先に攻撃対象とみなされる危険性があり、まさに横浜に戦火を呼び込むものです。近隣には100万人を超す住民が生活し働き、横浜港に隣接して神奈川県庁・横浜市役所など県・市の中枢機能が集中しています。また、横浜の貿易や隣接する京浜地帯の工業にも多大な影響を与えることは明らかです。長年、横浜市民、横浜市、横浜市議会は党派を超えて早期全面返還を求め続けています。

今年春ごろからは、米陸軍の小型揚陸艇部隊が新たに配備されました。配備される部隊の役割も台湾有事や南西諸島を念頭に置いた揚陸を任務とするなど、極めて対中戦を意識した実践的な部隊であり、今まで補給・兵站・中継の仕事を中心としていたノース・ドックの役割を大きく変質させるものです。

平和フォーラム全国責任者会議では2日目の10月6日、船をチャーターし横浜港の海上から米陸軍ノースドックを視察しました。参加者は、大都市のど真ん中に米軍基地が存在する違和感を感じながら基地を監視しました。

米軍の音響測定艦が3隻停泊

音響測定艦はソナーシステムを展開して潜水艦の音を収拾する

軍用車両は海岸から見えないように建物の陰に

大都市・横浜みなとみらい地区に米軍基地が存在

17年目の「21世紀の労働運動研究会」 年4回の講座が終了

第3回講座 職場におけるハラスメント及び安全衛生の判例と課題

講師の小川英郎・弁護士

講師は小川英郎氏(弁護士/ウェール法律事務所)

17年目を迎えた「21世紀の労働運動研究会」は今年4回の講座を開きました。

第3回講座は9月30日、上田市丸子解放センターで弁護士の小川英郎氏を講師に「職場におけるハラスメント及び安全衛生の判例と課題」をテーマにした講座でした。講演の内容(要旨)を掲載します。

〇パワーハラスメント

◆改正労働施策総合推進法によってパワハラの法的定義や使用者の義務が明記

推進法には、職場のパワーハラスメント(パワハラ)とは、①優越的な関係に基づいて(優位性を背景に)行われること、②業務の適正な範囲を超えて行われること、③身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、又は就業環境を害することと規定されました。

その定義は、①「職場」とは、「当該労働者が通常就業している場所以外の場所であっても、当該労働者が業務を遂行する場所については、『職場』に含まれ」、「業務を遂行する場所」には、出張先、取引先、会社の懇親会等が含まれます。②「優越的な関係を背景にした」とは「行為者に対して、抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われるもの」と定義。③「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動であるかの判断にあたって、「個別の事案における労働者の行動が問題となる場合は、その内容・程度とそれに対する指導の態様等の相対的な関係が重要な要素」となります。

◆パワハラに該当する例、該当しない例が例示

「該当する例」として、①身体的な攻撃(・書類を投げつける・相手の身体の近くに物をなげつける・机を叩く、椅子を蹴るなど)、②精神的な攻撃(・人格否定、名誉毀損となる言葉を吐く「ぶち殺そうか」「馬鹿野郎」「給料泥棒」「使えねえな」「アホ」など)、③容姿・外見を卑下する言葉(「フケがベターっとついてる」「デブ」など)、③性別、性的指向・性自認を差別する言葉(「子宮で物を考えている」「ホモ」「オカマ」など)、④退職、解雇、懲戒処分、降格・減給等の不利益取扱いを示唆する脅迫(「辞めろ」「クビだ」「おまえなんかいないほうが会社のためになる」など)、⑤本人の立場、能力を無視した叱責(・仕事を覚えていない新人労働者に教育指導せず、一方的に叱責など)、⑥相手の感じ方や健康状態を無視した叱責、⑦頻回、長時間にわたる指導(・数十分にわたり説教を続けるなど)、⑦他人の前で不名誉な叱責をする(・全労働者が会する朝礼で、懲戒処分を示唆して叱責・不名誉な事柄や人格を否定する言葉を記載したメールを複数の従業員に送信するなど)、⑧人間関係からの切り離し(・仕事から外す、・席の隔離、・別室での隔離、・理由の無い自宅待機/出勤禁止、・無視、・仕事の手伝いをしない、・行事からの隔離など)、⑨過大な要求(・業務上明らかに不要なことを命じること、・職務上の必要性や合理性に乏しい業務・作業を命じて、本来行うべき業務を行う機会を奪うこと、・遂行不可能なことを命じること、・仕事の妨害など)、⑩過小な要求(・能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じること、・仕事を与えないことなど)、⑪個の侵害(・私的な交際関係について、交際をやめるよう迫る、・労働者に対し、当該労働者の配偶者は物好きである等と発言する、・業務時間外に電話をかける、SNSのチェック、・労働者が拒否しているにも関わらず、自宅まで行って生活状況を確認したり、退職勧奨をする、・遊びや飲み会に無理矢理つきあわせるなど)。

セクシャルハラスメント

◆職場におけるセクハラ

「職場」において行われる「性的な言動」に対するその雇用する「労働者」の対応により、当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること。使用者は「職場におけるセクハラ」が起こらないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければなりません。

◆「性的な言動」とは

①性的な内容の発言

・性的な事実関係を尋ねる、・性的な内容の情報を意図的に流布する、・性的な冗談・からかい、・食事やデートへの執拗な誘い、・個人的な性的体験談を話すなど。

②性的な言動

・性的な関係を強要する、・必要なく身体に触る、・わいせつなポスターを社内に貼る、・強制わいせつ、強姦(犯罪行為であり、もはやセクハラとは言えない)など


講師の松本耕三氏

第4回講座 全港湾の産業別労働運動と小名浜地区労の経験について

講師は松本耕三氏(全港湾元中央執行委員長/小名浜地区労議長代行)

日本の労働組合は「企業別労働組合」が主流ですが、港湾産業で働く労働者でつくる全港湾は、その他の関連労働組合とともに「全国港湾労働組合連合会」を組織しています。そして、港湾業務を担うほぼ全企業が参加する港湾運送(港湾荷役)業界団体と唯一の労使関係を作り上げ、企業別ではなく、産業別に労働協約を取り交わしています。

◆全国港湾労働組合連合会(全国港湾)とは

7組合21000人が参加する労働組合の横断組織(全港湾、日港労連、検数労連、検定労連、全倉運、大港労組、全日通=港湾関係支部)です。対する使用者団体は、日本港運協会(日港協)といい、港湾運送事業社1700社が加盟する業界団体です。

◆港湾産業における産業別制度

1972年6月、日港協と全国港湾労組連絡会が団体交渉に関する確認書を取り交わしました。1979年5月には雇用保障に関する協定が結ばれました。また、「事前協議制度」があり、新規入港の船舶の作業について、港湾労働者の雇用に影響がないかどうかを労使でチェックしています。年間1300件を審査し労使で確認します。

港湾労働者には年金制度があり、港湾で就労年数18年以上の労働者に対し退職後15年間、年間25万円の年金が支給されます。また、港湾労働者の福利厚生として=港湾荷役貨物量1トン当たり5円、総額約60億円を基金として集め、それを財源として、港湾の休憩所、昼食提供、保養所など様々な福利厚生事業を展開しています。産業別の最低賃金などの賃金協定や産業別の統一労働協約(すべての企業が同じ労働条件)による休日・労働時間の規制もしています。

賃金・労働条件を決める団体交渉は、現在、労働組合側から交渉委員150名、商社団体の日港協側から交渉委員120名、総勢270名前後で開催しています。回数は春闘など年5回から10回。これは、企業別の労働条件を決めるのではなく、企業を超えて統一の労働条件を決めていく「産業別団体交渉」と言えます。当然、労働組合法に基づく団体交渉であり、一方で提案されたすべてを議題とします。また、交渉委員は、労使双方が自主的に選出し、相互に無条件で確認するようにしています。

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◆小名浜地区労と野党共闘

国鉄の分解・民営化の闘争とともに地区労に関わってきました。当時は国労が一番地域共闘をやっていました。

1996年に小名浜地区労の存続を決定した後、各種選挙では一党の政党支持ではなく、複数政党を推薦しています。議長、事務局長は推薦政党すべてに対応しています。地区労執行部および幹事は所属労組の推薦候補のために活動をするという取り決めです。これは、政党支持を理由とした分裂を回避する方策で、野党共闘の始まりでした。2013年には野党3党(立憲、共産、社民)と労働4団体で{7団体共闘}をつくって現在も活動しています。

2023年の行動で特徴的だったのは、福島原発のトリチウム汚染水の海洋放出に反対する運動です。3月18日には海洋放出に反対するスタンディング行動に200人が参加、6月4日には、経産省と東京電力が汚染水に関する説明会を開き、地元住民や儀業関係者、労働組合など1400人が参加、8月27日には、緊急行動として全国に呼びかけ反対集会をいわき市で開き、500人が参加しました。

 

「市民集会・脱原発2023in信州」と「脱原発集会・ワタシのミライ」

原発に未来はあるか 

10月15日、長野市で開かれた「市民集会・脱原発2023in信州」で、龍谷大学の大島堅一教授(環境経済学・環境政策学/原子力市民委員会座長)が講演されました。「原発に未来はあるか? 無責任の構造を超えて原発ゼロ社会へ」と題し、岸田政権が推し進める原発温存政策について、「原発は高コスト」「責任が問われない体質」と批判し、原発に頼らないエネルギー政策の転換を訴えました。

笑いも交えながら、難しい原発の内容を分かりやすく話す大島教授

岸田首相は、原発の再稼働や60年を超える運転延長、新増設を進める指示を8月のGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議で示しました。脱炭素化を主な理由としているが、これに対し大島教授は、原発と再エネのCO2排出削減の関係を調べた国際調査で、原発の多さがCO2削減に影響を与えないこと、さらに、原発に熱心な国は再エネ導入率が低いという結果を説明し、「原発に頼る限りCO2削減は実現しない」と強調。さらに、電力供給に占める割合は4%程度にすぎず、現在約20%を占める再生可能エネルギーと逆転することは難しく、「原発は大きく衰退している」とし、国内・外で原子力事業から撤退する企業が増加していることからも、すでに斜陽化していると言え、原発推進に異を唱えました。

また、原発の高コスト体質についても言及。福島原発事故後、原発にかかる費用は、発電費・国費投入・事故対策費あわせて33兆円に上り、国民一人あたりに換算すると27万円の負担が電気料・税金にかかっています。「原子力は電気料金の底上げにつながっている」とし、多大なコストがかかる上、事故のリスクや廃棄物処理問題などを抱える原発を「国民生活にとって、不良債権」と厳しく指摘しました。

zoom含めて、約80人が参加した

さらに、原発事業の性質が、事故の責任を回避していることなど「無責任」であり、数々の隠蔽や情報公開の不足により「不可視」の構造と特徴づけ、国民の関心を高める必要を説きました。

ワタシのミライ

天気にも恵まれ、あらゆる年代が参加した集会となった。

思いが込められている歌は、聴いている参加者の心に響く。

9月18日、東京・代々木公園で行われた脱原発集会は、今回より気候変動問題を盛り込み、集会名も変更して開かれました。気候変動対策のための啓蒙活動や再生エネルギーへの転換を求める若者・市民らの運動とコラボし、環境団体のブースやビーガン料理などのキッチンカーの出店もありました。メインステージでは、福島原発事故以降、現地支援に取り組みながら活動するロックバンド、自然派ラッパーらのメッセージ性の高いパフォーマンスがあるなど、さながら「フェス」のような様相でした。司会も環境問題に取り組む20代の青年が務めるなど、若者たちの存在が目立ち、新たな運動の展開と若者世代への継承を感じる集会となりました。参加者はおよそ8千人。「ワタシのミライ」を希望あるものにするためのエネルギーのあり方は、原発に頼らず、再生可能エネルギーの普及によることを求め、公正な社会の実現に向け、声を上げました。

デモ行進は、おしゃれな表参道を闊歩。

(機関紙「じちろう長野」11月1日号より転載)