21世紀のキーワード―平和・人権・環境

長野県平和・人権・環境労働組合会議

「災害時の廃棄物処理・アスベスト対策を考える学習会」-長野県アスベスト対策センター第6回総会-

災害時の廃棄物処理・アスベスト対策を考える

長野県アスベスト対策センターは、5月19日にJA長野ビルで、第6回総会後に「災害時の廃棄物処理・アスベスト対策を考える学習会」を開催しました。長野県内の自治体の廃棄物処理の担当者を中心に会場・Zoomを合わせて60人が参加しました。

今回の学習会は、昨年9月に開催したシンポジウム「令和元年長野市台風19号災害におけるアスベスト対策」で報告された長沼地区(千曲川の堤防が決壊)や長野市の取組みとその教訓について、県下の自治体間で広く共有することを目的として開催しました。長野県、長野市、松本市のほか多くの町村から担当者が参加されました(13自治体)。

学習会では、元長野市長沼地区住民自治協議会会長の西澤清文氏(報告Ⅰ)、長野市環境保全温暖化対策課(被災時)の桑原義敬氏と長野市環境部廃棄物対策課の中嶋隆夫氏(報告Ⅱ)、中皮種・じん肺・アスベストセンターの永倉冬史氏(報告Ⅲ)からそれぞれの取り組みや見えてきた課題について報告をいただきました。

長野県アスベスト対策センター鵜飼代表

【来賓挨拶】長野県環境部資源循環推進課 滝沢課長

【報告Ⅰ】堤防が決壊した長沼地区での災害ゴミ対策の教訓

元長野市長沼地区住民自治協議会会長 西澤清文氏

報告Ⅰで登壇した元長野市長沼地区住民自治協議会会長の西澤清文氏からは、「台風19号災害時の長沼地区での災害ゴミ対策の教訓について~その経緯と課題~」と題して、災害に備えて長沼地区で行ってきた取り組み(地区防災計画等)、発災初動対応期の長沼地区での実態(災害ごみ勝手仮置き場等)、Operation One Naganoの取組みや、災害ゴミ分別チラシへのアスベストの記載についてなど、災害現場でどういうことが起きていたか具体的にお話いただきました。そこから見えてきた災害廃棄物(災害ゴミ)への対応と教訓、課題について共有していただきました。

長沼地区の「勝手」仮置場の実態

地権者・管理者に了解をとったうえで確保された仮置場

アスベストの注意喚起の記載がなかった災害ゴミ分別チラシ

災害に備えて普段から準備をしておくことが重要

【報告Ⅱ】長野市のアスベスト対策・災害廃棄物処理の取組み

台風19号災害に対応した長野市担当者からの報告

報告Ⅱで登壇した長野市の桑原氏からは、①「大規模災害発生時(令和元年東日本台風災害)の石綿飛散防止の対策について」と題して、被災地での石綿防止対策として実施した緊急的な対応及び計画的な事業の手順とその内容(災害廃棄物仮置場等でのモニタリング調査、建設業及び解体工事事業者への注意喚起、ボランティア・被災者への情報提供、解体作業現場の立入調査の実施、不適正な事例紹介)について報告いただきました。

また長野市の中嶋氏から②「台風19号災害での災害廃棄物処理の取組について」と題して、災害廃棄物仮置場の選定、災害廃棄物仮置場の準備で注意したこと(高さ、危険物、動線、無関係な廃棄物の持込禁止)、被災世帯への周知、実際の運用のなかでのアスベストの分別状況、仮置場周辺で発生した渋滞や災害ゴミの発熱などさまざまな問題について報告いただきました。

そのなかで、長沼地区などで発生した自主仮置場の解消に向けて、内閣府・国交省・環境省・自衛隊・NGO・長野県・長野市による「自主仮置場の解消に向けた打ち合わせ会議」(11月26日までに延べ24回開催)が開催され、関係者が連携して赤沼公園・大町交差点に災害廃棄物を集積し、郊外の仮置場へ搬出するフローが構築され搬出が開始されたこと、「オペレーションONE NAGANO」と称して昼間は市民・ボランティア・行政職員等が廃棄物を赤沼公園に搬入し、夜間に自衛隊が赤沼公園から郊外へ搬出する活動が実施されたことなどを詳しく説明いただきました。

反省点として、鉄板(砕石)が用意できず、廃棄物の運搬に伴い周辺の道路が泥で汚れ、苦情が発生した仮置場があったことや、被災地以外での仮置場は廃棄物の保管が長引くと住民の苦情が発生する(付近住民の理解必要)ことなどを挙げられました。

今後もいつどこで発生するかわからない災害に備えて、長野市の経験を検証し、その教訓を今後に生かしていくことの重要性が伝わりました。

 

 

【報告Ⅲ】東日本大震災・熊本地震でのアスベスト対策

中皮種・じん肺・アスベストセンター 永倉冬史氏

報告Ⅲでは、「中皮種・じん肺・アスベストセンター」の永倉冬史氏から、「東日本大震災・熊本地震でのアスベスト対策」と題して支援活動の内容とその教訓について報告をいただきました。

被災地で撮影された写真から、がれきのなかにアスベスト含有建材の破片や鉄骨に吹き付け材があること、がれきを重機で搔き集める際に粉塵が発生することなどが示され、住民やボランティアがアスベストに曝露することを防ぐために、現地で行われた防じんマスクの装着のレクチャーや、解体現場を見守る住民へのマスク配布などの活動について報告いただきました。

また「中皮種・じん肺・アスベストセンター」の被災地でのアスベスト調査活動(マッピング、石綿濃度測定など)と被災地での報告活動(調査結果の報告)の取組みについても、東北や熊本での実際の活動事例を挙げながら解説いただきました。

東日本大震災沿岸部の被災地での活動の様子

 

震災等災害時のアスベストリスクの検証

災害時のボランティアの曝露が懸念されている

アスベストの危険性を住民に周知しておくことが重要

熊本地震でアスベスト汚染はあったのか

阪神大震災、東日本大震災での吹き付けアスベスト飛散の経験から、環境省が早い段階で対応について指示を出し、業界団体が熊本県、熊本市に協力して建物調査を実施でき、吹き付けアスベストのある建物19棟を特定し、飛散防止対策、除去工事を実施できたことなど熊本地震では過去の大地震の際にくらべ適切に対応できたことも多く学ぶべき点が多いことが指摘されました。

教訓として平時から吹き付けアスベストの有無を調査・把握しておくことの必要性、防災計画にアスベスト対策をきちんと入れること、行政では緊急時対応訓練、図上演習の実施の重要性が指摘されました。

アスベスト含有建材への対策が丁寧に実施されている

 

災害発生前から防塵マスクを備蓄しておくことが大切

 

災害が起きる前から備えることの重要性

石綿輸入量と中皮種死亡者数の推移(日英比較)

最後に、イギリスでのアスベスト輸入量とアスベスト被害のグラフから、今後、大量にアスベストを輸入・使用してきた日本でも中皮種などのアスベスト被害が顕在化していくことが予想されることが指摘されました。災害時だけでなく、アスベスト建材を使用した建造物の老朽化もすすみ解体工事が増えていくことから、新たな被害が生まれる可能性が高まっていくことが危惧されます。永倉氏は報告の最後に、子どもたちに負の遺産を残さないためにと訴え、今後の取り組みが重要になってくると強調しました。

日本でも被害の拡大が予想される

【学習会参加者アンケート紹介】

アンケートには、非常に参考になったと言う声や、アスベストを知らない若い世代がいることへの驚きなどの感想が寄せられました。

アスベストの危険性を知らない世代にどう伝えていくかなど新たな課題も見えてきた学習会になりました。

報告Ⅰ 感想

・各地区において防災計画を策定しているということを聞いて大変驚きました。自治会での動き、また市・県の動きの経過ごと示したフローも分かりやすく非常に参考になりました。

・災害発生時は、突然の事であるので、どうしても個人対応になってしまうと思う。自分の事で精一杯で、他人の事を心配している状況にない。台風19号の時は、私は、松代地区にボランティアに入ったが、青垣公園のゴミ捨て場に行ってもアスベストに関する情報が無かった。やはり、行政が災害時のマニュアルを作成する事が大切と感じた。

報告Ⅱ 感想

・水質汚濁事故の対応だけでなく、公費解体の立入り検査など、アスベスト対策に関してお聞きし勉強になった。仮置場の運営、また設置前の備えなど、事前にどこまで対策を行えるか考える機会になった。

報告Ⅲ 感想

・東日本大震災時のお話など、住民の方がアスベストにばく露する危険性が高まることを改めて感じた。アスベスト台帳など事前の備えの重要性を感じた。

・自治体の若手職員がアスベストのことを知らないのはおどろいた。周知は必要と感じた。今後の被害者の増加が心配だ。

アンケートに寄せられた声

長野県アスベスト対策センター第6回総会

午前には同会場で、長野県アスベスト対策センター第6回総会が開催されました。2022年度の活動経過報告、決算報告、2023年度の活動方針、予算などが確認されました。県アスベスト対策センターは、今後もアスベストの危険性を多くの方に知っていただき、災害時におけるアスベスト被害を防ぐために活動をすすめていきます。またアスベスト被害に苦しむ当事者とその家族の相談支援、裁判支援等を継続していきます。

【県アスベスト対策センター今後の予定】

7月2日(日曜日)に第10回アスベスト被害面談・電話相談会を開催します。過去の相談会で寄せられた相談から労災申請にも繋がっています。アスベストの健康被害を抱える方や不安を感じている方、アスベスト加工を業務とする事業者などからの相談をひろく受け付けます。

※相談料は無料/秘密厳守 ※面談相談を希望される方は事前にご連絡ください。

日時 2023年7月2日・日曜日 10:00~16:00

面談相談 長野県労働会館3階 第2小会議室/第3小会議室

電話相談 026-234-2116

 

「新たな戦前」にさせない!改憲・大軍拡NO! 650人が参加し県民の集い

午前中には愛敬浩二(早稲田大学教授)講演会に220人

6月11日午後、「新たな戦前」にさせない!守ろう平和といのちとくらし長野県民の集い」が長野市内のセントラルスクゥエアで開かれました。県下から約650人が参加。あいにくの雨模様となりましたが、「改憲・大軍拡NO!」の危機感と熱気あふれる集会となりました。

護憲連合や憲法会議、戦争をさせない1000人委員会、9条の会などの6団体共闘が中心となった実行委員会の主催で、立憲民主党・共産党・社会民主党の3野党の代表も参加しました。

集会の終わり頃には雨雲を吹き飛ばしプラカードでパフォーマンス。この後、長野駅前までパレード。

集会には雨にもかかわらず多くの市民・労働者が参加

オープニング…松本で活動する民族舞踊集団「迦楼羅(ガルーダ)」の皆さんが沖縄民謡を披露

集いでは、早稲田大学教授・愛敬浩二さんのミニ講演、また、沖縄南西諸島で進む軍事化、入管法改悪問題で特別アピールも行われました。下記は採択されたアピールです。

6/11長野県民の集いアピール

今日、私たちは、「新たな戦前にさせない」「戦争のない平和で豊かな日本をつくりたい」その思いを抱えてここに集まりました。「戦争か平和か」、歴史的にも重大な岐路のまっただ中に、今、私たちはいます。

昨年12月の「安保3文書」改定がもたらすものは、どんなに政権が詭弁を弄しても、他国への攻撃が可能な武器を持つための、本格的な戦争準備そのものです。「専守防衛」を投げ捨てて、憲法9条の実質的な空洞化を進める暴挙です。「長射程ミサイル」の南西諸島への配備が始まっています。近隣の国がそれに対抗して軍拡に走れば、沖縄が再び「捨て石」にさせられるのではないでしょうか。軍拡競争は、ほんのちょっとしたきっかけで本格戦争に突入します。そして、自国民だけでなく内外の人々に多大な犠牲を強いることになります。その痛苦の歴史から、私たちは9条という「不戦の誓い」を手にしたのです。

大江健三郎さんはノーベル文学賞受賞記念講演で「日本は、再出発のため憲法の核心として9条に『不戦の誓い』をおいた。この誓いを憲法から取り外せば、アジアと広島・長崎の犠牲者たちを裏切ることになる」と訴えました。不確実性が高まる国際情勢だからこそ、「戦争の準備」ではなく、対話と外交によって「戦争をさける努力」を続けることが、「不戦の誓い」というバトンを受け継いで今を生きている、私たちの使命と責務ではないでしょうか。

コロナ禍と物価高騰で貧困と格差が拡大しています。国際比較でも、子どもの貧困と高齢者の生活悪化は深刻です。教育・子育てや社会保障の予算は、「大軍拡・大増税」でさらなる削減が不可避です。暮らしといのちの重大な危機が迫っているにもかかわらず、ウクライナ情勢や台湾有事などの不安と緊張が、防衛費増額を肯定する思いにつながっていることも事実です。生活と人権の最大の侵害は戦争でありながら、「無関心」と危機意識の欠如が、「沈黙」と「思考停止」を必ず呼び込みます。国民生活が徐々に戦争に動員されていく、「新たな戦前」に確実に組み込まれていることを私たちは直視すべきです。

「政治の役割は2つ。国民を飢えさせないこと、絶対に戦争をしないこと」かつて菅原文太さんが沖縄の集会で訴えました。きわめて単純でありながら、実に政治の本質を突いています。残念ながらこの国の現在の政治は、その訴えとは対極に、立憲主義を踏みにじって、暮らしといのちを脅かす「大軍拡・大増税」に突き進んでいます。さらに今国会では、人権無視、いのち軽視の「入管法」、原発回帰の「原発推進法」、国民皆保険制度の根幹を揺るがす「マイナンバー法」など、本来ならいくつもの国会を経て議論をすべきものが、次々と成立させられようとしています。

私たちは「政治のなすべきことは、暮らしといのち、そして平和を守ること」この声を広く大きなものにしなければなりません。そして「大軍拡・大増税NO!」につながるあらゆる取り組みを、広範な国民とともにつくりだそうではありませんか。

以上、アピールとします。

2023年6月11日        6・11長野県民のつどい参加者一同

また、集いの前段に、愛敬浩二教授の講演会『岸田政権下の「改憲・壊憲」策動と私たちの課題』を高教組会館で開催。予想を超え、会場からあふれる220名を超える皆さんが参加しました。

愛敬教授は、安倍政権から岸田政権のもとで進む「改憲・壊憲」の動きを振り返りながら、「憲法9条は死んではいない」と強調し、私たちの課題として、「政権交代に拘泥することなく、多数を握る政府・与党の権力濫用を抑止する野党の役割が問われている。『責任ある野党』の憲法的意義の再定位が必要」「敵基地攻撃能力を保有することで、日本の防衛は“盾”から“矛”に転換する。今こそ憲法9条のリアリズムを再確認する時」と強調しました。

【布目裕喜雄・長野市議会議員ブログから転載】

「新たな戦前」にさせない!6・11県民の集いにご参加を

6月11日 長野市・セントラルスクゥエアで集会・デモ

午前中には愛敬浩二さん(早稲田大学教授)の講演会も

岸田政権は、ウクライナ戦争、中国・朝鮮との安全保障上の緊張の高まりを理由に、安全保障政策の見直しを加速してきました。昨年12月には「敵基地攻撃能力」や、今後5年間で43兆円を超える防衛費の確保をめざすとする安保関連3文書の改定を閣議決定しました。専守防衛はないがしろにされ、財源として増税が検討されています。沖縄辺野古新基地建設の強行、重要土地調査規制法や経済安全保障推進法など憲法改正を伴うことなく実質的に戦争をできる体制整備が政権の独断で進められています。軍備、軍事費の拡大を止める世論づくりが急務です。

県内の市民団体や有志でつくる実行委員会は6月11日、長野市で「『新たな戦前』にさせない!守ろう平和といのちとくらし 6・11長野県民の集い」を開き、多くの市民が参加する集会・デモを計画しています。また、午前中には、早稲田大学教授の愛敬浩二さんをお招きし講演会も計画しています。政治・社会を変えたいという、市民一人ひとりの意思をあらわすための集会です。

誰でもが参加できる企画ですので、多くの方々のご来場をお待ちしています。

◆愛敬浩二講演会

(1)日 時  6月11日(日) 10時30分

(2)場 所  長野県高校教育会館 別館(南側)2階 大会議室 長野市県町593

(3)講 演  愛敬浩二氏「岸田政権下の『改憲・壊憲』策動と私たちの課題」

あいきょう・こうじ 1966年生まれ。信州大学教育学部助教、経済学部助教、名古屋大学教授を経て現職。専門は、憲法学・憲法思想史・比較憲法学。著書に『近代立憲主義思想の原像:ジョン・ロック政治思想と現代憲法学』(法律文化社/2003年)、『改憲問題』(ちくま新書/2006年)「人権の主体 (講座 人権論の再定位) 」(法律文化社/2010年)など。

◆「新たな戦前」にさせない!守ろう平和といのちとくらし

 6・11長野県民の集い

(1)日  時  6月11日(日) 13時30分 (雨天決行)

(2)場  所  長野市・ながの表参道セントラルスクゥエア

(3)集会内容

◆オープニング企画 民族舞踊集団「迦楼羅(ガルーダ)」演舞

◆政党代表アピール(立憲民主党 /日本共産党/社会民主党)

◆特別ゲスト 愛敬浩二さん ミニ講演

◆特別アピール ①沖縄問題 ②入管法改悪問題

◆県民の集いアピール採択

※終了後、長野駅前までパレード

311子ども甲状腺がん裁判第5回口頭弁論を傍聴して

東京電力福島第一原発事故に伴う放射性物質の影響で甲状腺がんになったとして、事故当時、福島県内に住んでいた男女7人が東京電力に損害賠償を求めている「311子ども甲状腺がん裁判」の第5回口頭弁論が3月15日、東京地裁で開かれました。

今回の公判で原告すべてが意見陳述を終えた

今回の裁判をもって、原告全員が陳述をしたことになります。この日は、原告1番、20代後半の男性と原告3番の原告団長の意見陳述でした。

原告1番の男性は、事故当時高校1年生で、いつでも避難できるようにと準備しつつも地元での生活が続きました。大学1年の時に一斉検査を受け、再検査で甲状腺乳頭がんと診断されました。お母さんが医師と話している診察室の外で、スマートフォンで必死で【乳頭がん 死亡率】と検索したそうです。どんなにか彼の頭の中はパニックだったことでしょう。不安な中で手術を決断し、無事に手術を終えたその日の夜中、麻酔が切れた途端に激痛に襲われました。すぐに追加の鎮痛剤を投与してもらい、退院後の1週間は鎮痛剤なしには食事ができなかったそうです。裁判に参加した理由は、大学卒業後、就職で上京した際に、原発事故後に甲状腺がんになった人達の集まりに参加し、甲状腺がんで苦しんでいる人たちの手助けができればと思ったからです。今回の裁判で彼は、原告が納得できる判決をと強く望んでいます。

原告3番の女性の意見陳述は、こう始まりました。「今日は3月15日。12年前のこの日、午後3時を過ぎたちょうど今頃の時間。私の住む町に、高濃度の放射性プルームが襲ってきました。」皮肉にも、もっとも高濃度の汚染があった日でした。事故当時中学3年生だった彼女が、12年後、まさかこのような裁判の原告団長となっているとは、想像もできなかったでしょう。地元のテレビ局が「放射能は花粉みたいなもの」と放送していたり、枝野官房長官が「直ちに健康に影響はありません」と記者会見で話していたことに対して家族はそんなはずはないと言っていたこと、県内の子どもに配られるのではと聞いていたヨウ素剤が、実際は福島県立医大のお医者さんとその家族のみに配られたこと・・・彼女の中で少しずつ不信感が募っていきました。また、放射能の話をすると気にしすぎという態度を取られるので徐々にしなくなったなどと語られました。憧れの東京の大学生になってから、体調が少しずつ悪くなっていき、検査でがんと診断され、3年の時に手術を受けます。その後も体調を崩しやすく、広告代理店に就職が叶ったにもかかわらず、一年半で退職せざるを得ませんでした。

彼女に裁判を決意させたのは、告知後すぐに「このがんは、福島原発事故との因果関係はありません」と釘を刺された時です。この時の強い不信感が、彼女を裁判に駆り立てたそうです。

当時まだ子どもだった何の責任もない彼らたちに、このようなつらい経験をさせなくてはならない現実に、ひとりの大人として申し訳ない気持ちと、そうさせている張本人、国と東京電力に強い憤りを感じます。少しでも多くの方にこの裁判について知ってもらうために運動し、今後もこの裁判に注目していきたいと思います。

 

裁判が始まる前の地裁前のアピール行動で、原告のお礼の音声が流されました。

 

 

地裁前アピールの様子

地裁前アピールでの井戸弁護団長

 

 

アイリーン・美緒子・スミスさん

第5回公判報告集会

 

 

今回の裁判は「勝った!」感触が強いと話す海渡副団長

 

第8準備書面(只野靖弁護士)

第9準備書面(井戸謙一弁護士)

第10準備書面(田辺保雄弁護士)

 

「新たな戦前」としないために 憲法記念日に各地で集会

憲法施行から76年目を迎えた5月3日(憲法記念日)、憲法の価値を再確認し、護り活かす取り組みを強める集会が長野市・松本市・駒ヶ根市でそれぞれ開かれました。政府は昨年12月、安保関連3文書を閣議決定し、敵基地攻撃能力の保有や防衛費の大幅増に踏み込みました。ロシアによるウクライナ侵攻や東アジアの緊張感の高まりを理由としていますが、審議を尽くしたとは言い難く、国是としてきた平和主義を転換する動きが加速されています。各地の集会では、「新たな戦前」とも指摘される現状への危機感が強調されました。

「戦争ができる国」から「戦争をする国」へ

松本市の講演会で石井暁さん(共同通信記者)が指摘

3日午前の松本市での講演会

午後には松本駅前で集会

松本市の会場では、共同通信社専任編集委員の石井暁さんが、「『戦争ができる国』から『戦争をする国』へ」と題し講演を行いました。石井さんは、安倍政権下で強行された集団的自衛権の行使容認により、日本が「戦争ができる国」になり、岸田政権による敵基地攻撃能力(反撃能力)保有を明記した安保関連3文書改定で「戦争をする国」になったと指摘。台湾有事が現実となった場合には、「自動的な参戦が可能となった」と、日本が戦争の当事者となる条件が揃ってしまった状況に危機感を示し、戦争を回避するためには、軍拡を進めるよりも「外交努力が必要」と訴えました。

憲法くんの誇り「他の国の人を殺したことがない」

駒ケ根市で松元ヒロさんが爆笑ライブ

松元ヒロさんの公演

松元ヒロさんのトークで会場は大いに沸いた

駒ヶ根市の会場では、「テレビでは会えない芸人」とのタイトルで映画にも取りあげられた芸人・松元ヒロさんのライブが開催されました。松元さんが日本国憲法になりきる「憲法くん」の舞台を鑑賞し、平和憲法の大切さを共有する機会としました。擬人化された「憲法くん」は、改憲へ前のめりとなる動きについて「私が生まれた時のことを思い出して。国中が喜んでいたはず」と語り、平和主義が謳われる憲法前文を暗唱。「この76年間、戦争で他の国の人を殺したことがない。そのことを誇りに思う」と力強く語りました。

「無自覚な被ばく」が広がる社会に

長野市で鎌仲ひとみさん(映画監督)が講演

長野市での講演会には全体で70人が参加

鎌仲ひとみさん

長野市の会場では、核の被害を取り上げたドキュメンタリー作品を手掛ける映画監督で辰野町在住の鎌仲ひとみさんが「暮らしの中にある核と私たち」と題し講演しました。鎌仲さんは米国の核兵器製造工場の周辺で取材した被ばくの実態を報告。住民に健康被害が広がりながら、被ばくに無関心ゆえ被害が拡大している状況に触れ、「核兵器開発国を中心にグローバルに放射能汚染が進み、加害者と被害者の区別がなくなっている」と指摘。日本でも原発の60年運転延長など暮らしの中に被ばくの要素が潜み、「無自覚に被ばくしていく」と警鐘を鳴らしました。原発は深刻な事故が起きれば、生命・生活基盤に重大な被害を及ぼし、憲法が規定する人格権を奪う、さらには潜在的核兵器製造能力の保有といった問題も強調されました。講演を通じ、平和・反核運動の拡大を確認しました。

(機関紙「自治労ながの」から引用)

会社破産で全員解雇された蔦友印刷労組組合員に支援を

労働債権の確保、再就職の実現を 対策会議を設置して支援活動

蔦友印刷株式会社本社

長野市の蔦友印刷株式会社が約12億4千万円の負債を抱えて長野地裁に破産を申請し、4月3日、裁判所が破産手続きの開始を告知しました。

労働者は3月30日付で全員解雇されました。今後、労働債権である未払いの退職金支払い、労働者の再就職が焦点となっています。長野地裁が選任した破産管財人が会社資産を管理し現金化、清算して債権者に支払うこととなります。退職金を含む労働債権は、優先的な債権です。

蔦友印刷労働組合の組合員は23人。解雇された組合員の退職金を何としても確保し、組合員が希望する再就職を実現するために、県労組会議、長野地区労組会議、印刷フォーラムながのは、対策会議を設置して支援活動を展開しています。

現在、解雇された組合員の当面する生活資金の一助になるように支援カンパ活動に取り組んでいます。ぜひ多くのみなさんから、あたたかいカンパをよろしくお願いします。

◆支援カンパをお寄せいただける方は県労組会議事務局までご連絡を

信州安保法制違憲訴訟 5月25日に東京高裁が判決言い渡し

新安保法制は「平和的生存権を侵害し憲法違反」と明確に判断を

東京高裁での口頭弁論終了後の原告団会議

集団的自衛権などを認めた新安保法制が、憲法が規定する平和的生存権を侵害すると、県内の原告が長野地裁の判決を不服として控訴した国家賠償請求事件は、東京高裁での口頭弁論で昨年10月4日、裁判官が原告側が申請した3人の証人申請を却下するという不当な判断を示しました。原告・弁護団は直ちに裁判官の忌避申し立てを行いました。しかし、東京高裁で忌避は却下され、特別抗告した最高裁でも棄却されるという不当な訴訟指揮がまかり通りました。

この裁判所の決定で信州安保法制違憲訴訟の東京高裁での控訴審は2月21日に結審しました。東京高裁の法廷で開かれた最後の口頭弁論では、原告から成澤孝人・信州大学教授、松澤佳子・前県労組会議議長が意見陳述をしました。また、代理人の最終意見陳述として、安藤雅樹・弁護士が裁判官に語り掛けるように意見を述べました。

判決は5月25日に東京高裁で言い渡されることとなりました。長野地裁では、新安保法制に対する憲法判断が回避され、「平和的生存権は国家賠償を請求できる具体的な権利ではない」などという国側の主張がほぼ100%採用されました。国民の生命や平和を維持しようとする裁判所の姿勢は微塵もありませんでした。東京高裁では、正面から新安保法制が日本国憲法前文や9条に照らし合わせて、違憲か合憲か、明確に判断するように求めます。

以下には、原告の松澤佳子さんの意見陳述、代理人の安藤雅樹弁護士の最終意見陳述を掲載します。画像をクリックすると拡大版で読むことができます。

朝鮮初中級学校の卒業式に参加しました

3月18日(土)、長野朝鮮初中級学校(松本市)の卒業式にオンライン配信スタッフとして参加してきました。昨年末に学校側から、県外の病院に入院している生徒さんが同級生たちと一緒に卒業式に参加できないかとご相談をいただいたことがきっかけでした。

県外にいる生徒さんと卒業式会場をリモートでつなぐ

卒業式当日は、朝から雪が降るなかで迎えましたが、初級部の6年生、中級部の3年生の子どもたちの門出を祝うために集った保護者や親族、卒業生、学校関係者の方々で会場は賑わいあたたかな雰囲気に包まれた式典になりました。

式典の前後には、リモートで参加する生徒さんの姿が映し出された舞台横のスクリーンの前に、同級生や親族、保護者の方々が代わる代わる訪れ、「久しぶり」、「元気?」と言葉を交わし久々の再会を喜び合っていました。

コロナ禍の3年間の学校生活

今回、卒業した子どもたちの学校生活は、ちょうどコロナ禍と重なり、本来なら経験できたこともできず、たくさんの我慢を強いられてきた3年間だったそうです。それでも勉強や学校行事などに一生懸命取り組んできたことが、卒業式後の音楽や劇の発表、上映された映像から伝わってきました。朝鮮語を理解することはできませんでしたが、ステージで歌やダンスを披露しながら涙する子どもたちの姿から、かけがえのない瞬間に立ち会えたのだと感じました。

コロナ禍のなかリモート会議などが増えて、人と人の繋がりが希薄になったのではないかと危惧されていますが、このような形で、はなればなれになっていた子どもたちの大切な日に関わることができよかったです。

誰よりも大きな「예!(はい)」

卒業証書授与の際には、リモートで参加した生徒さんも、校長先生から名前を呼ばれると、「예[ ye] (はい)」と大きな声で返事をして、スクリーン越しにしっかりと卒業証書を受け取る姿に、参列者からもひときわ大きな祝福が寄せられていました。

大切な子どもたちの未来

卒業する子どもたちの笑顔、画面越しに涙を流す先生と生徒さんの姿を見て、子どもたちはこの学校で大切に見守られてきたのだと思いました。そして対立や疎外ではなく、互いに知恵を出し合い、思いやりをもって、友好を深めていくことが大切だと感じました。

卒業生のみなさんおめでとう!

県外にいる生徒さんを囲んで卒業する同級生全員で記念撮影

ロシアのウクライナ侵略から1年-長野駅前スタンディング

2022年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻から1年となる2月24日(金)、長野駅前で、戦争をさせない1000人委員会、憲法9条を守る長野県連絡会など6団体と長野県社会保障協議会が合同で、武力攻撃の即時停止、停戦の実現を求める抗議行動を行いました。約60人が参加しました。

長野駅前でプラカードや横断幕を掲げてアピール 

ヨーロッパへ避難したウクライナ難民は816万人以上

ロシアによるウクライナ侵攻によって、ウクライナに住む人々の日常は一変しました。多くの女性や子どもが犠牲になり、国内・国外へ多くの難民が生じています。
この1年の間に、ウクライナからヨーロッパへ避難した難民は816万人以上(2023年4月時点UNHCR[国連難民高等弁務官事務所])に上ります。
また民間人の死者は8490人、負傷者は1万4244人確認されたと発表されています(2023年4月9日時点OHCHR[国連人権高等弁務官事務所])。
しかし、国際機関も戦闘地域に近づけないため、集計値は氷山の一角に過ぎず、実際の死者数・負傷者数はさらに多いとしています。

核兵器の恐ろしさを知る日本国民として

どんな理由があっても、主権国家への一方的な武力行使、軍事侵攻は、国際法違反・国連憲章違反であり認めることはできません。ロシアは国連安保理の常任理事国でもあり、責任ある行動が求められています。
また繰り返し核兵器使用をほのめかす発言や、核兵器搭載可能なミサイルを使用した軍事演習など、核による威嚇を繰り返していることも、核兵器の恐ろしさを知る日本国民として決して許すことはできません。
さらにロシア軍はヨーロッパ最大規模のザポリージャ(ザポロジエ)原発の占拠を続けており危機的な状況が続いています。原発事故の恐ろしさを知るロシア・ウクライナでこのような危機が起きている現状は恐ろしいことです。ロシアはただちに軍事侵攻を中止し、ウクライナや関係諸国と平和的な解決を図るべきです。そして平和国家として歩んできた日本にも大きな役割があるはずです。

武力より対話を

今回の抗議行動では、参加者一人ひとりが、「NO WAR」、「和平実現」などと書かれたプラカードを掲げ、「ロシアのウクライナへの軍事侵攻に抗議します」、「即時停戦」などと書かれた横断幕を広げてスタンディングを行いました。
主催者を代表して、長野県憲法会議の細尾俊彦さん、長野県護憲連合の松澤佳子さん、長野県社会保障協議会の原健さんが挨拶しました。また私鉄長野県連の若林茂さん、長野県教職員組合青年部の近藤拓也さん、憲法9条を守る長野県民会議の山口光昭さんがアピールを行い、それぞれの反戦・平和への思いを訴えました。

市民にアピールする若林私鉄県連委員長

街頭で掲げたプラカード

「平和が大事」という子どもの声

通りがかった高校生の男の子たちからは「平和が大事だよね」などという声も聞かれました。
どこの国であろうと未来ある世代が戦争に巻き込まれることは悲惨なことです。
大人たちの責任として今後も平和を守るための行動を行っていきます。

福島原発事故から12年の3.11脱原発長野大行動

東日本大震災から12年が経ちました。同時に福島原発事故からも12年という年月が経ってしまいました。

今や、岸田首相の進める原発回帰の政策、再稼働に新増設、老朽原発の運転延長、原発事故が起きた2011年とは真逆の状況が今の日本にあります。

市民団体や県原水禁などでつくる3.11脱原発長野行動実行委員会では、そんな状況を一掃するために今年も集会とデモ行進を行いました。

       

 

温かな日差しの中で約200名が参加

ここ数年のコロナ禍による制限も緩和され、今年は音楽ひろばも再開されました。会場も、例年の南千歳公園から、ながの表参道セントラルスクウェアに変わりました。新たな会場に不安もありましたが、音響設備も充実していたり、通り沿いのため歩いている人から目につくこと、公園を利用している家族連れの方たちへのアピールにもなったことなど、とてもよい会場でした。

 

音楽ひろばで2団体が演奏

集会前段の音楽ひろばは、まずは日本音楽協議会長野県支部の皆さんによる歌と演奏でした。透き通った声が会場いっぱいに広がり、爽やかな歌が周りで遊んでいた親子の皆さんの耳にも届いていたことでしょう。

コロナ前まで例年参加していた長野合唱団の日程調整がつかず、急遽参加してくれた「アコースティック・デュオ 和久島(わくじま)」のお二人も、ギターのセッションで大いに盛り上げてくれました。

日本音楽協議会長野県支部の皆さん

アコースティック・デュオ 和久島のおふたり

 

 

 

 

 

 

 

 

共同代表のあいさつ

あいさつする青山 正さん

3人の共同代表・脱原発共同学習会の

青山 正さん、”原発に頼らない未来をつく

ろうプロジェクト” の田澤 洋子さん、

圓光寺住職 中島 清さんがそれぞれあいさつ

されました。

 

特別アピール、3.11福島子ども甲状腺がん裁判の報告

報告する間宮書記(右)と草野書記

現在、東京電力福島第一原子力発電所の事故の影響で甲状腺がんになったとして、事故当時子どもだった7人が東京電力に賠償を求める裁判が行われています。
福島の子ども甲状腺がんの現状について、福島の子どもたちへの保養支援の経験をもつ間宮正博書記から、原発事故の自主避難者で自身の子も甲状腺検査を受けている草野麻理子書記から、事故当時の経験と裁判傍聴の報告がされました。

 

報告の終盤では、録音されたそれぞれの原告の声を流し、今現在彼女たちが何を思い、どんな経験をしてきたのか、リアルな言葉を聴くことができました。会場にいた皆さんの胸に響いたのではないかと思います。

☟原告の声はこちら

 

右翼の妨害にも負けずにパレードやり切りました

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

集会終了間際に右翼の街宣車2台が現れ、大音量のスピーカーで演説と音楽が流されました。かなり長い時間会場前の道路に居座り、私たちへの妨害を続けました。その後予定時間をだいぶ過ぎてようやくパレードに出発しましたが、右翼の妨害は繰り返されました。街宣車は一旦去っても何度も後ろから現れ、パレード参加者だけではなく周辺の通行人に対しても威圧するような罵声を浴びせ続けました。

それでも脅しに負けず、最後まで「原発止めよう!」とシュプレヒコールを上げながらパレードをやりきることができました。

原発と右翼、こんなとこでつながっているとは・・・あらためて原発がいかに暴力的なものに守られているかをまざまざと見せつけられました。
これからも長野の地で妨害に屈せず脱原発の声を上げ続けていきます。

パレード出発を阻む右翼の街宣車

警察官は話しかけてはいたものの何ら実質的な制止行動をとらず。