21世紀のキーワード―平和・人権・環境

長野県平和・人権・環境労働組合会議

杉尾秀哉・参議院議員と核兵器禁止条約をひろげる長野ネットが懇談

2021年1月22日に核兵器禁止条約が発効となり、間もなく2年を迎えようとしています。条約では前文において「核兵器使用の被害者(ヒバクシャ)及び核兵器の実験により影響を受けた者にもたらされる容認しがたい苦しみと被害に留意し」「核兵器のいかなる使用も人道の諸原則及び公共の良心に反するであろうことを再確認し」と記載しました。そして、核兵器の開発、実験、生産、製造、取得、占有、貯蔵などを禁止し、核兵器の使用、その使用の威嚇を行うことを禁止しています。

長年にわたるヒロシマ・ナガサキのヒバクシャの核兵器廃絶、ヒバクシャ援護への訴えが、この条約の大きな原動力になったことは疑いがありません。被爆者が、そして人類が長年求め続けてきた核兵器そのものを法的に「禁止」する条約として、核兵器廃絶への歴史的一歩と評価できるものです。

しかし、今年2月に開始されたロシアによるウクライナ侵攻は、現在も各地で激しい戦闘が続いており、多くの市民の被害が報告されています。また、ロシア軍による核兵器使用の威嚇や原発への攻撃・占拠は、この間、核軍縮に向けた積み重ねを踏みにじる暴挙です。軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)の拡大や、ウクライナ東部のロシア系住民に対する迫害を口実にしていますが、いかなる理由があろうとも、断じて許すことができない蛮行であり、抗議の声をあげ続けていかなくてはなりません。

ウクライナによる反撃も強まるなか、ロシアによる核兵器使用の可能性も指摘される緊迫した情勢にありますが、そうした暴挙を許さないために、市民が声を上げ国際世論の形成を押し進めることが必要です。

こうした状況にあって大きく問われなくてはならないのは、戦争被爆国である日本の役割です。岸田文雄首相は広島県選出であり、これまで「核軍縮はライフワーク」と語ってきた人物であることもあり、日本政府の姿勢の変化を期待する声もありましたが、「核抑止」論へ依存する態度を維持し続けています。さらに、核兵器禁止条約には署名・批准をしない姿勢を続けています。唯一の戦争被爆国である日本は、被爆の実相や、核兵器の残虐性、非人道性、被爆者の思いを世界に発信する責務があります。日本政府の主張は、それらの視点を欠いています。今後、核兵器禁止条約の実効性を担保するためにも、日本は核抑止政策に拘泥することなく条約を批准し、核保有国の条約批准を促していく立場に立たなくてはなりません。

長野県原水禁は、長野県原爆被害者の会(長友会)、県原水協、県生協連、県教組などとともに「核兵器禁止条約をひろげる長野ネット」をつくり、日本政府が核兵器禁止条約に署名・批准するように求めて活動をしています。現在、内閣総理大臣あての要請署名を展開しています。来年1月22日の条約発効2周年にあたり、長野ネット独自に日本政府に署名を提出する方針です。

「自分事として核兵器について考えている」-杉尾秀哉さん

12月3日、核兵器禁止条約をひろげる長野ネットの代表者・事務局が長野市・県教育会館で杉尾秀哉・参議院議員と懇談しました。杉尾さんは「自分の妻は広島出身で被爆2世。核兵器の問題は他人事ではなく自分事としてとらえている」「岸田政権は『敵基地攻撃能力』を保有する方針を打ち出し、大変危機的な状況だ」「何としてもこの動きを止めなければ」などとあいさつしました。

市民集会・脱原発2022 in 信州「誰にも言えず、苦しんできた~福島甲状腺がん患者の現実~」白石草(OurPlanet-TV)講演会

■市民集会・脱原発2022in信州

市民集会・脱原発2022in信州実行委員会が主催する「市民集会・脱原発2022in信州」が11月19日(土)、長野県教育会館ホール(長野市)で開催されました。

今年は「誰にも言えず、苦しんできた~福島甲状腺がん患者の現実~」というテーマで、特定非営利活動法人〈OurPlanet-TV〉の白石草代表が講演をされました。県内の脱原発運動にかかわる市民を中心に、Zoom参加・会場参加あわせて約40人が参加しました。

OurPlanet-TVの取り組みについて説明する白石草さん

会場の様子

採択された集会アピール

■311子ども甲状腺がん裁判はじまる

今年1月27日、これまで固く口を閉ざしていた原発事故当時の幼稚園生から高校生だった甲状腺がんの当事者、17歳から27歳の男女6人(現在は7人)が原発事故による放射線被曝によって甲状腺がんを発症したとして、東京電力に6億1600万円の損害賠償をもとめる訴訟を提起しました。白石さんがかかわってきた若い当事者も原告として参加しています。現在、勇気をもって立ち上がった原告を支援するための輪が広がってきています。

311子ども甲状腺がん裁判の弁護団と支援者

 

「誰にも言えず10年を過ごした」〜原告6人の声

裁判に臨む若い原告たちの声をOurPlanet-TVが報じている

 

■甲状腺がん裁判に立ちあがった若い原告たち

白石さんは、2013年からの3回にわたるチェルノブイリ取材を重ねるなかで、原発事故による健康影響について調べるためには、小児甲状腺がんの全容を知ることが欠かせないと感じたそうです。今回の講演では、はじめに福島県内で多発している子どもの甲状腺がんが、専門家たちにどのように扱われてきたか、その問題点と現在の状況について解説いただきました。後半では、小児甲状腺がんの問題を追うなかで出会った患者とその家族とのかかわりのなかから見えてきたもの、福島県立医大でのアイソトープ治療の過酷さ、若い当事者たちの苦悩、甲状腺がん裁判に臨む原告たちの声を伝えていただきました。

福島県立医大で甲状腺がん手術を執刀してきた鈴木眞一教授は「過剰診断」を否定する

※アイソトープ治療(RI)治療:甲状腺がヨウ素を取りこむ性質を利用し、甲状腺がん細胞が肺などの遠隔組織に転移した場合や、甲状腺全摘出後に、再発を防ぐ目的で「放射性ヨウ素」を内服してがん組織を破壊する治療法

 

■若い原告たちの声「将来が考えられない」

 

「死んだ方が楽かもしれない」

6時間半に及ぶ手術のあと、朦朧とした意識のなかでそんな思いがよぎった。

― 25歳・男性・福島県浜通り

恋愛や結婚は「自分とは関係ないもの」

手術を受けてから「普通」に生活する将来が考えられない。

― 17歳・女性・福島県浜通り

憧れはバリバリ働くキャリアウーマン。

手術後体調がすぐれず、希望して入った会社も2年で退職。

― 26歳・女性・福島県中通り

会場配布資料『原発事故後、福島県では「甲状腺がん」になり人生を変えざるをえなかった子どもたちがいるのです。』(通販生活2022年夏号掲載)より

 

 

【OurPlanet-TV】「子ども甲状腺がん裁判」 始まる~20代女性陳述「大学行きたかった」

「子ども甲状腺がん裁判」 始まる~20代女性陳述「大学行きたかった」

 

■10年間、孤立してきた甲状腺がん患者と家族

「甲状腺がんが増えている」という報道には苦情やバッシングが殺到する社会状況、復興一色の福島県のなかで、誰かに相談することも助けを求めることもできずに孤立していた患者とその家族。小さな手がかりから白石さんは甲状腺がん患者家族と出会い、かかわりを深めていきました。当初は、その深い絶望と孤独感、封じ込められてきた言葉に接するたびに、眠れない日々がつづいたそうです。白石さんは、診療に不安を抱く母親からの要望で、福島県立医大への通院に同伴するなど、若い当事者のすぐそばで彼ら・彼女らの苦悩に寄り添いながら取材・支援をつづけています。若い年齢でがんと診断されることは本人や家族の精神的・肉体的な苦痛、治療費など経済面を含めた日常生活への影響など当事者以外には想像できない大変さがあります。大学入学や就労などの人生の節目で希望が叶わず我慢を強いられること、また結婚・妊娠・出産などへの不安、そもそも恋愛にすら億劫になってしまっている当事者たちの気持ちを伝えていただきました。

結婚、治療費、学業、就職、出産などさまざまな心配がある

甲状腺がん発症の原因を患者たちは知りたいと思っている

親しい友人、親戚にさえ話せないでいる患者もいる

甲状腺がんの発症は若い患者たちの人生に大きく影響する

甲状腺がんによってさまざまな我慢を強いられる若い患者たち

 

■3・11甲状腺がん子ども基金が実施したアンケート「甲状腺がん当事者の声 2022」

「3・11甲状腺がん子ども基金」は、2011年の東京電力福島第一原発事故以降に甲状腺がんと診断された子どもとそのご家族を多方面で支えるために2016年に設立された特定非営利活動法人。

【アンケートから】

・現在の体調には問題はないが、年齢的に結婚や出産を考えるようになり、がんになって薬を飲み続けている私でも、健康に赤ちゃんを産めるのか心配になり、将来を考えると不安。(26歳・女性)

・手術をした後からずっとヨウ素制限を続けており、ワカメや昆布などヨウ素が高いものは食べられない。ずっと続くのかと不安。薬を飲めばよいのだが、一生続けなければならないかと思うと、なかなか決断ができない。(25歳・男性)

・転職直後のタイミングで福島に帰れず、経過観察のための県立医大への通院ができなかった。それから2年ほど受診していないため、今の状態が気になってはいる。(27歳・女性)

・夜勤勤務が体の負担になってきたため、転職を考えている。(25歳・女性)

・子ども医療費受給資格がなくなったあと、一生内服しなければいけない薬代、診察、検査代がかかり、大人になってからの本人の負担が大きいのではと心配している。(16歳・男性)

・現在、奨学金を借りて大学へ通学しているので、将来、身体的に健康に働いて返済できるのか不安。(18歳・男性)

・昨年夏に結婚。心配なことがあるとすれば、今後も病気とつきあっていかなければならないことです。(28歳・女性)

・大学3年生。このまま何もなく、普通に元気に生活していければいいと願っています。(20歳・女性)

 

「手のひらサポート」アンケート-甲状腺がん当事者の声 2022

https://www.311kikin.org/wp-311kikin/asset/images/pdf/questionnaire2022.pdf

白石さんも調査に協力したアンケート(リンク先からダウンロード可)

 

■大手メディアで報道されない子ども甲状腺がん裁判

講演の終盤、白石さんがインタビューした原告の子どもたちの音声が流され、「2人以上の方に今日の話を伝えてください」というスライドが映されました。NHKなど大手メディアで甲状腺がん裁判のニュースが報道されない問題に触れて、今日の講演に参加していただいた一人一人が少しでも伝えていってほしいと求め、最後に裁判の原告の子どもたちへの支援を呼びかけました。会場では、裁判を支援するカンパが呼びかけられ、参加者から約26,000円が集まり、青山実行委員長から白石さんにカンパが手渡されました。

講演の最後に映された白石さんからのお願い

若い当事者の声が会場に流された

青山実行委員長から白石さんへ裁判へのカンパが手渡された

■参加者アンケートから

・日本は福島を切り捨て、若者を切り捨てた。福島のリアルを日本政府は見せないようにしている。その中で、将来のある若者が必死に生きている。なんとか希望を持たせてあげたい。自分たちの子どもや孫を見ているようだ。OurPlanet-TVはこのまま独自路線をつづけてほしい。協力したい。

・言葉にならないです。でも眼を背けることはできません。甲状腺がんの情報が少なく実態が見えにくいですが、現状がよくわかりました。原告の皆さんは私の子どもと同世代で、ひとごとではありません。しっかりこの裁判を見つめていきます。皆さんはひとりではありません。一緒にがんばろう。

・現実を知ってちょっと唖然としました。一人でも多くの国民に知ってもらいたいです。

・福島原発事故の結果に苦しんでいる人の存在を事実上隠ぺいされている現状に怒りを感じます。

・甲状腺がんが原発事故のせいだと認められていないことに驚きました。認めないように歪めていた調査委員会の長が国会議員になったことに怒りさえ覚えました。

・白石さんのお話たいへんわかりやすかったです。子どもたちへの影響は極力くいとめ止めなければならないのに、見えない形にしようとする大きな力が動いていると感じました。これからも地道な取材をつづけてください。

 

【各団体リンク】

311甲状腺がん子どもネットワーク

https://www.311support.net/

 

3・11甲状腺がん子ども基金

https://www.311kikin.org/

 

OurPlanet-TV

https://www.ourplanet-tv.org/

 

【講師プロフィール】

白石草(しらいし・はじめ)

ビデオ・ジャーナリスト

早稲田大学卒業後、テレビ局勤務などを経て、2001年に非営利のインターネット放送局「OurPlanet-TV」を設立(現在、代表理事)。マスメディアでは扱いにくいテーマを中心に番組を制作配信する一方、映像ワークショップを展開し、メディアの担い手作りに取り組む。一橋大学大学院地球社会研究科客員准教授。
3.11以降の原発報道などを評価され、2012年「放送ウーマン賞」「JCJ日本ジャーナリスト会議賞」「やよりジャーナリズム賞奨励賞」、2014年「科学ジャーナリスト大賞」を受賞。
著書:『ルポ チェルノブイリ 28年目の子どもたち~ウクライナの取り組みに学ぶ』(岩波ブックレット) 、『メディアをつくる 「小さな声」を伝えるために』(岩波ブックレット)、『ビデオカメラでいこう』(七つ森書館)

 

子どもが生まれ、平和で生きやすい社会を残したい思いが強くなった

「敵基地攻撃能力」など安保関連3文書の閣議決定に抗議

長野駅前での街頭宣伝で中村宏典さんがアピール

戦争をさせない1000人委員会・信州や県憲法9条を守る会連絡会など6団体、北信市民連合は12月16日、長野駅前で岸田政権が「敵基地攻撃能力」保有や防衛費の倍増をめざす安全保障関連3文書(国家安全保障戦略/国家防衛戦略/防衛力整備計画)の閣議決定に反対する街頭宣伝を行いました。参加者は約50人。宣伝カーを使って街頭アピールを行いました。

県労組会議青年女性連絡会事務局長の中村宏典さん(自治労)のアピールを掲載します。

アピールする中村宏典さん

参加者は横断幕、プラカードをもって抗議の意思を表した

 

「必要なのは、私たちの日々の暮らし、今日、明日を生きることに歯を食いしばっている人たちへの生活支援であって、軍拡にお金を使っている場合ではありません」

中村宏典さん(県労組会議青年女性連絡会事務局長)

私事ですが、先日、子どもが生まれました。この子が大きくなった時、平和で生きやすい社会であってほしいと願うばかりです。

いま、この国は平和と言えるのでしょうか。

ロシア政府によるウクライナ軍事侵攻を利用し、不安をあおって、軍拡が進んでいます。長距離巡航ミサイルの購入や護衛艦の改修による空母化、そして敵基地攻撃能力の保有。「戦争のできる国」へと変わろうとしています。軍事力が強まれば強まるほど、周辺諸国を刺激し、緊張関係が高まることは目に見えています。

子どもが大きくなったときにこの問題をどうやって説明してあげたらいいか、考えてみました。

今年、引越しをしました。隣近所への挨拶にいくとき、隣人はどんな人なのか、とても不安でした。今はあんまり挨拶に行かない人も多いし。

例えば、自分の隣の家に、昔からあまり話もしたことない、よく知らないAさんがいて、物騒な武器を持っていて、普段から庭で武器を使う練習をしている(この時点で通報ですが)って知ったら、じゃあ我が家も負けない武器を準備しなきゃ・・ってなりますかね、なるかもしれませんね。

じゃあ、Aさんの立場に立ってみます。

Aさんは元々、隣のBさんと昔から仲が良くない、今は落ち着いているようだけど。Bさんは向かいの大きな家に住むお金持ちのCさんと親しく、定期的に一緒に訓練している、お金もあるから色んな最新鋭の武器を準備している。Aさんを攻撃するとは言っていないけど、「敵を攻撃、排除するためだ」と、この敵って誰のこと?

そんな時、今までは先祖代々の家訓で「争いごとはしません、武器も持ちません」って宣言していたはずの私の家が、「今日から”敵”を攻撃するための武器を持ちます。それを仲良しでお金持ちのCさんから買います」となったら、Aさんはどう思う?

この話のハッピーエンドはありますか?

決して、核兵器を持つことを肯定しているわけではありませんが、守るためと言って、武器を買い揃えることが、解決に繋がるとは私は思えません。仮想の敵を作って、世論をあおりにあおり、ワールドカップの裏で国民にたいした説明もせずに、こんな物騒なことを決定しようとしている。反対の声をあげずにいられません。

そして、防衛費のことにしてもそうです。毎年どんどん上がっています。何兆円、GDPの何%といわれても、莫大すぎてよく分かりません。

子どもが生まれて、もうすでにお金が凄くかかっています。出産一時金で賄えない入院費が11万3000円、服やおむつやベッド、チャイルドシートなど最低限そろえるだけでもバカになりません。出産一時金を10万円増額する、じゃあいいかとなりません。騙されません。

格差社会で、6人に1人が貧困、特に若い人の貧困が増えています。子どもを持たない理由の第一位が、圧倒的に経済的負担で、「今以上の生活費や教育にかかる経済的負担にたえられない」が理由。しかも、20代30代では特に顕著、自分ひとり、夫婦だけでも余裕がないのに、結婚も出産も考えられない、こんな国で本当によいのでしょうか?

限りある財源で、本当に今、防衛費にお金が必要ですか?それが本当に私たちのためなんでしょうか。それとも!国家を守るためには国民は犠牲になってもいいのか?贅沢は敵ですか?

子どもをもつ、持たないの選択が、お金に余裕のあるなしで決まってほしくない、決して贅沢な望みではないと思います。

いま、必要なのは、私たちの日々の暮らし、今日を明日を生きることに歯を食いしばっている私たちの生活への支援であって、軍拡にお金を使っている場合ではありません!

このことを声を大にして訴えたくて、今日、この場に来ました。ありがとうございました。

平和フォーラムが閣議決定に抗議の声明を発表

「敵基地攻撃能力」保有は戦争への道

「安保関連3文書」の閣議決定に反対します

12月16日に各地で反対・抗議の声をあげましょう

「敵基地攻撃能力」の保有は、専守防衛に反し、明白な憲法9条違反

岸田政権は「敵基地攻撃能力」を「反撃能力」と言い換えた上で、12月16日に「安保関連3文書」(国家安全保障戦略/国家防衛戦略/防衛力整備計画)を閣議決定しようとしています。そして、防衛予算の倍増化方針を打ち出し、長射程ミサイルの開発や配備に入る方針です。

日本が、仮想敵のミサイル基地およびその発射を指令する中枢機能(つまり首都)をミサイル攻撃する能力を保有することは、明白な憲法9条および国際法違反となる先制攻撃に踏み込んでしまう可能性をはらむ重大事です。また一貫して「専守防衛」の範囲内で抑制的に安全保障政策を組み立てることで、戦争を回避し戦火を決して拡大させない「平和国家」として存立するという、戦後日本の国是を根幹から破壊するものであり、断じて許されることではありません。

暮らしと経済を脅かす軍拡競争に

「敵基地攻撃能力」を保有することは、ただ単に憲法をないがしろにする暴挙というだけではありません。底なしの泥沼のような軍事費の増大によって暮らしと経済を脅かす軍拡競争を加速させる上に、結局、戦争を誘発した結果、相手側のミサイル基地を全て破壊できるはずもなく、報復的なミサイル攻撃を正当化する口実を相手側に与えます。これは日本の被害をより甚大なものとしてしまうことに他ならず、国民の生命、自由および幸福追求権を守るはずの防衛政策としてもまったく機能しません。いま必要なのは、地域的安定をめざす柔軟で強力な外交努力です。

断じて、敵基地攻撃能力の保有は認められません。岸田政権の大軍拡政策に反対しましょう。

12月16日、長野駅前で抗議の昼休みスタンディンク゛

6つの県的団体でつくる「6団体共闘」と北信市民連合は12月16日、長野駅前で岸田内閣の安保関連3文書の閣議決定に反対・抗議するスタンディングを計画しています。

誰でもが参加できます。プラカードを持って集まりましょう!

◆と き 12月16日(金) 12時15分~13時

◆ところ JR長野駅 東急REYホテル前

◆主 催 6団体共闘/北信市民連合

※6団体共闘=戦争をさせない1000人委員会/九条の会/県護憲連合/県憲法会議/県労組会議/県労連

◆行 動 安保関連3文書の閣議決定に反対・抗議するスタンディング

※参加者による街頭宣伝、チラシ配布、横断幕・プラカード掲示

◆参 加 どなたでも参加できます。

大学院での松代大本営の調査・研究の成果を報告

金穂実さん(一橋大学院生)が日朝県民会議総会で講演

朝鮮半島での軍事的な緊張の増大、中国・台湾問題やウクライナ戦争などを理由に、日本政府は、いわゆる「敵基地攻撃能力」(反撃能力)の保持や防衛費の倍増という大軍拡をすすめようとしています。

このような状況のなか、日本政府が9月にJアラートを送信した以降、少なくとも5つの朝鮮学校に対し、計9件の暴行、脅迫事件が発生し、インターネット上には朝鮮学校への攻撃的なコメントが溢れています。松本市の長野朝鮮初中級学校に対しても何者かがカッターナイフの刃を大量に投げ込むなどの嫌がらせが発生しました。

これまでも朝鮮半島の状況によっては、何ら責任のない朝鮮学校の子どもたちがヘイトスピーチ、ヘイトクライムの対象となってきました。差別を放置すれば、エスカレートし、より危険な状態を生み出します。

また、日本と韓国との関係も元徴用工問題や日本軍慰安婦問題、明治産業遺産や佐渡金山のユネスコ産業遺産登録の問題など、対立関係が解消されていません。

元徴用工問題では、日本政府は1965年の日韓請求権協定で「解決済み」という立場を強硬に主張しています。しかし、個人の賠償請求権は消滅していないことは日本政府も認めています。日本の関係企業は対立を回避し和解に向けた話し合いを行うべきです。同様の和解が強制労働を強いた中国人との間で成立しています。旧植民地では、強制連行・労働ではなく、日本人と同様の「徴用」であったなどと偽ることなく、その責任を企業は果たさなくてはなりません。同様に、企業の和解を政府が阻むことがあってはなりません。歴史の真実をしっかりと見詰める姿勢がなくては問題の解決にたどりつくことはできません。

ロシアのウクライナ侵攻に関しても日本政府は、ロシアとウクライナの戦闘を拡大する方向での支援ではなく、戦争の停戦を求めて国際社会に働きかけるべきです。

私たちは今、冷静な眼で世界を見つめなければならないときです。紛争や対立をあおり、軍事力に頼るのではなく、一方的な価値観での見方ではなく、双方向の視点で国際社会をとらえて、対話、協調、非軍事・平和的な流れにどう展開していくかが求められています。

12月17日13時30分 長野市・県労働会館で総会・記念講演

日朝県民会議定期総会を12月17日(土)13時30分から長野県労働会館(長野市県町)で開きます。会場参加とオンライン(Zoom)併用での総会です。

総会終了後、14時30分頃からの記念講演の講師は、金穂実さん(キム・シスル/一橋大学大学院生/朝鮮大学校卒業生)です。講演のテーマは、「松代大本営調査・研究の修士論文を書き終えて」。

金さんは、朝鮮大学校(東京都)を卒業して現在、一橋大学院の修士課程で学んでいます。修士論文のテーマに「松代大本営工事」を選択し、1カ月に1回程度は東京から長野市に来て、松代大本営工事に関して、関係者からの聞き取りや資料収集をすすめてきました。現地視察では、長野市松代の地下壕だけでなく、長野市安茂里小市の海軍壕や中野市の十三崖壕などを訪れ、調査・研究を重ねてきた方です。

若い研究者の松代大本営の調査・研究の成果をお聞きください。

平和フォーラムが3年ぶりに「ピーススクール」開く

若手組合員約40人が3日間、平和や憲法、人権、環境問題を学ぶ

長野県からは青木雅裕・私鉄県連書記長が参加

フォーラム平和・人権・環境(平和フォーラム)は11月18日から20日までの3日間、東京都内に全国から約40人の40歳程度までの若手組合員を集めて「2022ピーススクール」を開きました。労働組合の活動で平和や人権、民主主義の意義を広げていく取り組みが重要性を増しているなか、次代を担う人材の育成が求められています。ピーススクールでは、平和・人権・環境・民主主義などに関するテーマで6人の講師が講演、フィールドワークとして参加者は、国会前での宣伝行動にも参加しました。

長野県からは、私鉄県連書記長(アルピコ労組川中島バス支部)の青木雅裕さんが参加しました。青木さんの報告・感想を掲載します。

「改めて活動の原点に触れたスクールだった」

青木雅裕(私鉄長野県連書記長)

誠に恥ずかしながら会社に入社してから今まで労働組合の活動には参加してきた方だと思っていました、「平和」や「護憲」に関わる集会や春闘に伴う集会など活動などです。今では自分が伝えなくてはならない立場になって、改めて活動の原点にふれ、日々変わる情勢に目を向けながら学習はいくらやってもいいのだと思った次第です。

全国から集まった参加者が3日間みっちりと学習

スクールでは班に分かれて「ディベート」も体験した

第1講座 原水禁運動の歴史と課題  金子哲夫氏(広島原水爆代表委員)

今年の原水禁世界大会(広島)にも参加し、日本の被爆者の多くが高齢化していて自分たちの世代が伝える役割持たなくてはと思っていましたが、原水禁運動はウラン採掘者やマーシャル諸島の住民までと聞いて、自分が日本のことしか考えていなかったと思い知らされました。

第2講座 立憲民主党前代表が語る  枝野幸男氏(立憲民主党前代表)

枝野幸男・立憲民主党前代表

労働組合で役員をやっていて民主主義が最善だと思いの方も多いと思われますが、枝野元代表の「民主主義は間違えるときも在る」とのお話しを聞いて、過去に自分の組合で意見が割れた案件などで、多数決で採決した事がありました、枝野議員は国民や組合員がしっかりと監視をしていないと民主主義は間違った方向に向かう時がある。例えば「ヒトラー」や「ムッソリーニ」など、圧倒的な支持を受けて誕生した政権が独裁指導体制となりホロコーストを引き起こし多くの人命を奪うことに繋がるなど同じ過ちを犯さぬようにしてなくてはならないと強調しました。

第3講座 在留外国人の人権課題  鳥居一平氏(移住連代表理事)

外国人労働者の実態を聞いたのは初めてでした。長野県にも労働人口の減少により、海外からの技能実習生が多くいます。働く姿を目にしても何気なく過ごしていましたが、働く外国人の方々の労働実態には大変興味を持ちました。雇用主が思うがまま過酷な条件を突きつけて働かせ、実習生が意見をすれば契約を打ち切り強制帰国になることもあると言います。鳥井氏の元に救済を求めた技能実習生は所定の労働時間に260時間にも及ぶ時間外労働を強いられたり、2年間も休みもなく働かせたり、日本に実習で来た際に生活用品は付与されますが、寝具や家電など用意はあっても高額なリース代を毎月請求されたりと、雇用主からの「ピンハネ」が酷い実態である事も聞かせていただきました。日本では賃金を抑えて利益を追求する風潮が長く続いています。このままでは日本はダメになると強く感じました。

第4講座 憲法を考えるワークショップ   本庄未佳氏(岩手大学准教授)

本庄未佳・岩手大学准教授

日本国憲法前文の作成過程で前文を作成した「ハッシー」氏の描いた日本国憲法は平和憲法に道徳的な表現を用いるべきではないと主張しましたが、GHQを率いる米国(マッカーサー)の思惑と違っていました。GHQは敗戦国である日本の武力を奪い、その無防備な日本を米国が守る、沖縄を要塞化する事で他国の侵略に備えたのだと話されました。

憲法では戦力の不保持・交戦権は否認するが、自衛権を否定するものではないと規定しています。自民党が進めるのは集団的自衛権を行使するために「憲法」を改憲したいのではなく「日米安全保障条約」を改悪したいだけだとのお話しを聞かせてもらいました。

第5講座 近代沖縄の歴史と文化  大里知子氏(法政大学沖縄文化研准教授)

大里知子・法政大学沖縄文化研究所准教授

沖縄の歴史を知るには琉球王朝の時代に遡らないと今の沖縄のアイデンティティーは伝わらないとのお話しでした。日本人の多くの方々は沖縄の戦中・戦後の話ししか知らなくて、日米地位協定がある事で、基地周辺で様々な事件が起こるたびに泣いてきた沖縄県民、自分たちの生活を守る為に祖国復帰を果たし「日本国憲法」が適用されることを望む人が多くいたと、沖縄県の参加者の声を聞き気付かされました。

 

第6講座 環境課題と原発  松久保肇氏(原子力資料情報室事務局長)

日本政府の進めるCO2排出削減や電力需給の問題など、昨今電力供給不足のために節電を要請する電力会社の報道が時々あります。この逼迫した状況を打開するために、原発を稼働させようとする世の中の動きもありますが、原発を稼働させたとしても、火力発電所を止めるので逼迫状況は変わらないとのお話しでした。原発を稼働させればCO2は排出しませんが、燃料となる核燃料を作成する際には大量のCO2を排出すること、今後新たな原発を建設することは難しいので、いまある原発の対応年数の40年を延長させたい経済界の思惑が見え隠れします。日本は海外から輸入する化石燃料を購入しなくてはならない国なので全ての原発に反対するというのも難しい判断だと思いますが、「核のゴミ」問題も解決の糸口すらまだなく、最終処分場の予定地である北海道の問題も自分の住む街じゃないからと目を伏せていてはダメだと思いました。

後世に押し付けることなく「自然エネルギー」の技術がもっと発展するために自分への問題意識にしなくてなりません。

フィールドワークは国会前での宣伝行動

国会議事堂の前で

国会前行動であいさつする勝島一博・平和フォーラム共同代表

発言する青木雅裕さん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピース・スクールを終えて

コロナ感染症が拡大する中で、当初予定していた懇親会などがなくなり、黙食で夕飯を食べるなど、全国から集まった仲間との交流は行えず少し寂しく感じましたが、主催者のリスク管理を思えば仕方ない判断なのだと思いました。事務局の方々は「平和」「軍事」「憲法」など多岐にわたる日本の問題の捉え方を押し付ける集会をしているのではなく、すべての物事を自分たちで考える機会を与えてくださったと思っています。

集会の締めに、三つのテーマを各班ごと分けて討論する場「ディベート」を行いました。

・原発の再稼働は「1必要」「2不必要」

・防衛力の増強は「3必要」「4不必要」

・労働組合の積極的な政治への関与と平和運動「5必要」「6不必要」

6班に分けられたグループがそれぞれの立場を選び肯定派と反対派に分かれて討論しました。

日頃から組合では反対派の声を聞く機会があります。組合の役員を担っていると、不満を言う組合員の声を聞くと思いますが、頭ごなしに否定するのではなく、相手の主張をしっかり聞いて答えなくはならない、責任感を改めて持ったいい機会になりました。

長野県内の仲間の皆様、参加させて頂きありがとうございました。

戦争を賛美する「自衛隊松本駐屯地祭り」に異議あり

長野県危機管理部や自衛隊駐屯地に申し入れ

祭り当日には駐屯地門前で抗議のスタンディング

岸田文雄政権は、ロシアのウクライナへの軍事侵攻や中国、朝鮮民主主義人民共和国の「軍事的脅威」を理由に、防衛費の対GNP比2%への倍増、「敵基地攻撃能力」の保持と日米軍事同盟のさらなる連携の強化など、日本が戦後、長らくとってきた「専守防衛」を根本的に転換し、自衛隊を「普通の軍隊」へと変質させようとしています。

このような状況のなか、陸上自衛隊松本駐屯地は10月29日、創立72周年を記念した駐屯地祭りを市民に開放する形で開きました。新型コロナの感染拡大により2019年以来3年ぶりの開催で、当初4月に予定されていましたが秋に延期になっていたものです。県労組会議や県護憲連合、松本地区の労組や民主団体などでつくる「連絡会」は、30年以上にわたり、自衛隊祭りが市民や子どもを巻き込んで開催されることに反対してきました。祭りでは、戦争の場面を再現する「模擬戦闘訓練展示」や武器・兵器の展示など、まだ、判断能力のない子どもたちに「カッコイイ」と思わせるような催しが毎年実施されています。

県労組会議や県護憲連合、自衛隊祭り反対松本地区連絡会議などは、好戦的な自衛隊祭りのあり方に異議申し立てするため、10月に長野県。松本市への要請、自衛隊駐屯地への申し入れ、祭り当日に抗議のスタンディング・街頭宣伝などを行いました。

長野県には「武力攻撃事態」を想定した訓練に関しても申し入れ

県労組会議、県護憲連合、県労連、県憲法会議、県教組の5団体は連名で10月17日、長野県危機管理部に対し、自衛隊祭りに関する要請書を手渡して意見交換しました。

申し入れでは、自衛隊祭りでの模擬戦闘訓練や武器類の展示・軍用車試乗はまだ十分な判断力のない子どもたちに好戦的な感覚を植え付けるだけなので、教育的見地から、県代表が出席しないように求めました。これに対し県側は、「台風19号での災害救助など、自衛隊には災害時に大きな支援をいただいている。その御礼の意味で、副知事が出席する」と回答しました。また、9月県議会で阿部守一知事が、国民保護法の「武力攻撃事態」を想定した訓練の実施を検討する考えを示した件に関して、実施する判断に至った経過と目的等をただしました。県側は、「国からの要請もあった。訓練の概要などはまだ何も決まっていない」と答えました。参加者からは「いたずらに危機感をあおるような対応はせず、平和的な外交を国に求めるようにしてほしい」などとくぎを刺しました。

なお、松本市や松本市教育委員会に対しても同様の申し入れが実施されました。

5団体で長野県危機管理部へ要請

長野県知事あての要請書

 

 

自衛隊松本駐屯地へ15人で申し入れ

小部屋に押し込み、立ったままでの不誠実な対応

10月25日には、県労組会議、県護憲連合、松本地区の労働組合、民主団体など10団体15人が陸上自衛隊松本駐屯地に申し入れを行いました。駐屯地側は広報担当が対応しましたが、参加者を3畳程度しかない部屋に押し込み、立ったまま話をするという極めて不誠実な対応。

申し入れ書では、「駐屯地祭りにはまだ十分な判断力がない子どもたちも多く参加し、戦争を賛美する駐屯地祭りの企画内容が、子どもたちに好戦的な感覚を植え付けてしまうのではないかと危惧」するとし、① 模擬戦闘訓練展示は実施しないこと、②銃器・武器などの展示は中止すること、③駐屯地祭りの模擬戦闘展示の事前訓練、あるいは当日の訓練展示において、複数のヘリコプターが駐屯地周辺を低空飛行しているが、その騒音は市民の平穏な生活を脅かすものであり、住宅密集地の上空を飛行するため安全確保の上でもきわめて問題である。事前訓練および当日の訓練展示においてヘリコプターの使用を中止することなどを求めました。

駐屯地の広報担当者は、「祭りは模擬戦闘訓練も含めて予定通り実施する」と答え、「ヘリコプターによる訓練展示の事前訓練や当日、過去に近隣住民から苦情があった」と明らかにしましたが、「模擬戦闘訓練のための訓練や当日の訓練展示を中止するつもりはない」と答えました。

3畳程度の小部屋で広報担当が対応

10団体が連名で申し入れ

 

自衛隊祭り当日には約20人が駐屯地門前で抗議の街頭宣伝

10月29日には自衛隊祭りが市民に公開する形で実施されました。反対連絡会のメンバー約20人は、駐屯地正門前の路上で、「戦争賛美の自衛隊祭り反対」や「戦闘場面を子どもたちに見せないで」などと書かれたプラカードや横断幕をもって抗議のスタンディングを行いました。また、ハンドスピーカーを使って、祭りに参加する親子連れなどに「展示されている武器・銃器は人を殺すものだと子どもたちに教えてほしい」「戦争をあおる模擬戦闘訓練は中止しろ」などと訴えました。

スタンディングの終了後、監視行動として駐屯地内に入り、武器・銃器の展示や模擬戦闘訓練の様子などを監視しました。子どもたちが自由に軍用車両に乗ったり、銃器を間近で見て自衛隊員の説明を喜々として聞いていました。監視行動を終えた参加者は「子どもたちにどういう影響があるのか心配になる。自衛隊の本来の目的は戦闘する集団であり、戦争となれば人を殺傷する場面があるんだと子どもたちに伝えたい」と感想を述べていました。

駐屯地前で横断幕を掲げスタンディンク゛

機関銃を眺める子どもたち

軍用車両に幼い子どもたちが自由に乗っていた

模擬戦闘訓練で空砲を撃つために待機する自衛隊員

戦闘機などを狙う高射砲が訓練で使用された

爆音を出し飛来した輸送用ヘリが隊員を地上に降ろす場面

 

職場における労働者の健康と使用者の配慮義務-小川英郎弁護士が講演

21世紀の労働運動研究会第4回講座(今期最終)で

ハラスメントの防止に向けて

県労組会議と各ブロックの地区労組会議が主催する「21世紀の労働運動研究会」は11月5日、長野市・県労働会館で〈16期〉4回目の講座を開催しました。「職場における労働者の健康と使用者の配慮義務」というテーマで、ウェール法律事務所(東京)の小川英郎弁護士に講演いただきました。Zoom参加と会場参加あわせて、約30人の方が参加されました。

長年、労働者側の代理人として労働事件に関わってこられた小川弁護士から、セクシャルハラスメント・パワーハラスメントに対する裁判所の判断や、ハラスメントと認められる基準、またハラスメントの原因と職場で予防・防止するための方法など、実際の裁判例を交えながらわかりやすく解説いただきました。

小川英郎弁護士

【講演概要】

職場における労働者の健康と使用者の配慮義務(パワーポイント資料PDF)

※裁判例等の詳細はレジュメを参照ください

 

リモートワークで深刻化するハラスメント

コロナ渦でオンラインでのやりとりが増えて、コミュニケーションが難しくなっている。オンラインが進めば、パワハラやセクハラが減るのではないかと思っていたが、画面越しのパワハラが増えている。上司からの罵倒などを録音した証拠を持って労働者の方が相談にくる。職場のコミュニケーションが減るとパワハラやセクハラの温床になる。リアルの対面での情報量が100%とすると、オンラインでは20%しか伝わらないという研究もある。伝わる言葉は同じでも、声の調子や表情、ボディランゲージ、しぐさなどの情報を頼りに、相手は何を考えているかを的確に捉えることができる。コミュニケーションの不足がハラスメントを深刻化させつつあるという印象がある。

メンタルヘルスは労働組合が取り組むべき重要な課題

メンタルヘルス事案は特殊で、本人が精神的な疾患になっていて、自身で的確な判断がしにくいという点がある。職場に戻り、良好な就労環境を得るためには、労使の協力が必要になる。弁護士に相談する労働者は組織から飛び出した存在。本来は労働組合が取り組み解決していく課題。メンタルヘルスは労働組合が取り組むべき重要な課題。

パワハラの本質

パワハラには、組織的な問題点が潜んでいる。しかし起きてしまうと加害者の個人の資質の問題に矮小化しがちな傾向がある。職場は仕事をする場であって、部下に感情をぶつける場ではない。それを防止するためには、相談窓口を設置したり相談体制の充実が大事。職場のルール(分担と責任)を確立していく。評価の基準を透明化・客観化していく。管理者自身のストレスマネジメントが重要。パワハラが起きている場では、管理者自身も忙しすぎたりストレスを溜めてしまったりしていて部下にぶつけてしまう。

パワハラの本質(小川弁護士の講演スライドから)

 

ハラスメントを予防するには

過度に競争的な労務管理を見直す。チームでの仕事と成果をみんなで共有することで、一人ひとりバラバラにならずに一緒に仕事をするという環境を整えていく。管理職教育を徹底する。今日のような事例を集積して分析していくこと。重層的な相談体制。内部だけでは不十分な場合は、外部の相談体制もあわせて構築していくこと。うつ病などのメンタル不調は、なかなか気づかないこともあるが、几帳面なひとがだらしなくなるとか、睡眠がとれなくなるとか、鬱病などの徴候を見逃さないようにする。特に管理者はひとの話をしっかり聞くという傾聴のトレーニングが必要。仕事でミスが増えてきた場合は、なんらかの原因があるということなので、単にミスを叱ってハラスメントに繋がるようなことはせずに、その背後にあるものを探っていくという発想で対応していくことが重要。同業他社の事例を学習して、交流していくことも必要。社内規定をきちんと整備すること。

ハラスメントを予防するには

 

労働組合でもハラスメントが起きている

労働組合は本来ハラスメントを防止するべき組織。しかし労働組合なども普通の企業と同じくらいパワハラが起きているのではないかという気がする。自分たちは組合で、労働者の権利のためにたたかっているんだからハラスメントなど起きようがないという油断もある。また労働組合の運動は忙しく、臨機応変に活動する必要があって、みんなで一気にやらなきゃいけない場面でついてこられないひとに対してパワハラ的な言動に及んでしまう。長年、専従で事務的な仕事をしているひとに対して、厳しくあたるという例があり、結構な数の相談を受けている。このような体質は非常に残念なこと。組合のなかで自ら点検すると共に、他の組合とも交流や情報交換をして、少なくとも労働組合内ではハラスメントを起こさないように改善に努めていってほしい。

パワーハラスメントとは?

どのような行為がパワハラになるか

パワハラの態様

職場について語る貴重な場となった分散交流会

講演終了後には、Zoom参加者と会場参加者に分かれて分散交流会を実施しました。参加者からは、「異動によって新たな業務に従事することになり心理的な重圧や長時間労働によって追い込まれた」という声や、「男性中心の職場環境だったが、女性職員が増えた時期にどのように接していいか戸惑いがあり、セクハラ的な言動を行ってしまっていた」という話、若年層の参加者からは「就職した時期がちょうどコロナ禍に重なり同期同士での交流がない」ことなど関係性を築き深める機会を喪失している問題など活発な意見交換が行われました。

2023年も17期の労働運動研究会を企画します

「〈第16期〉21世紀の労働運動研究会」も、今期最終講座となり、最後に閉校式を行い全4回の講座すべてに参加した参加者3人(1人はZoom参加)に宇佐美正信長野県労組会議議長から特典(図書カード)をお渡ししました。2023年も「〈第17期〉21世紀の労働運動研究会」を企画していきます。ぜひご参加ください。

会場の様子

格差と貧困、戦争を生みだす新自由主義政策の転換を

「自助」よりも「公助」、「自己責任」より「共生」、

労働者・国民の暮らしと平和を最優先する政策へ

県労組会議が定期総会開く-新議長に宇佐美正信氏(国労長野)

長野県平和・人権・環境労働組合会議(県労組会議)は10月21日、代議員・役員など約50人を集め、長野市内で第27回定期総会を開きました。

主催者あいさつで、松澤佳子議長は「今日は10月21日。私の年代では、10.21国際反戦デー集会をやった記憶がある。ベトナム戦争反対デモが行われていた。今、ウクライナ戦争の即時停戦を求めてウクライナ市民の声に耳を傾けなければならない。ウクライナに暮らす女性の言葉に『何かを組織できる団体が存在していることが大事だ。一人の人間は小さくてもどこかの団体に所属していることで、自分だけじゃないと思うことができる』とある。労働組合の意義はここにある。平和を求める運動を職場・地域から、労働組合が組織として、団体として声をあげていく必要がある。ある社会福祉法人の労働者が、新たな労働組合を立ち上げた。本当に勇気のいることだったと思う。パワハラやセクハラやさまざまな問題を抱え、労働基準監督署に相談したりしてきたが、最後に労働組合として闘わなければだめなんだと、一生懸命に組合員を募り、パート労働者にも声をかけて、過半数を超える労働組合を結成できた。職場集会でパート組合員の方の『私たちにも声をかけてくれて本当にうれしい』という発言に目が覚める思いだった。自分の置かれている実態を素直に話せる職場での集会がすべての労働組合でできたら、どんなにか労働組合は素晴らしいものになるか、実感した。正しいことを言えば攻撃をされる、こんな世の中じゃいけない。変えていかないといけない。自分は労働組合での任務は終わるが、引き続き一人の市民として、一人の女性として、しっかり声をあげていく決意だ」と訴えました。

討論では「7月から8月にかけて青年女性で77市町村を走り抜ける反核平和の火リレーに取り組んだ。ウクライナ戦争が続くなか、改めて平和の大切さを実感した。私鉄の仲間からの『私鉄は平和産業』という言葉が印象的だった」(自治労)、「アスベスト被害で仲間を亡くした。JR総合車両センターでは、建物や車両にアスベストが使用されていて、解体時などに飛散する危険性がある。会社に責任ある対応を求めている」(国労長野)、「コロナ禍により私鉄は厳しい状況に置かれている。高速バスはピークで利用者が8割減、貸切バスはほぼゼロになった。収入が減り生活できないので退職者も相次いでいる。県労組会議から私鉄県連、単組に支援金をいただき感謝している」(私鉄県連)、「松澤佳子議長が退任するが、4年間、みなさんにお世話になり感謝したい。現在の経済・政治状況でまさに労働組合の社会的役割が問われている。共生や連帯という労働組合の価値観を大切にして活動しよう」(自治労)などの発言がありました。

特別決議として「岸田自公政権の軍拡・改憲を阻止する決議」が採択されました。総会は最後に「組合員はもちろんですが、組織されていない労働者・国民にも共感が広がる労働運動が今こそ必要とされています。コロナ後を見据えて、地域社会において労働者の新たな団結と連帯を再構築しましょう」とする「総会宣言」を採択しました。

なお、総会では任期満了に伴う役員改選が行われ、4年間にわたり議長を務めた松澤佳子氏(自治労)が退任し、新たに宇佐美正信氏(国労長野)が議長に就任しました。選出された三役は次の通りです。◇議長=宇佐美正信(国労長野)、◇副議長=伊藤浩二(自治労)、同=若林茂(私鉄県連)、同=大橋孝宏(森林労連)◇事務局長=喜多英之(自治労)

議長退任あいさつをする松澤佳子氏

議長就任あいさつをする宇佐美正信氏

総会会場では、JAL争議団の鈴木圭子さんが物資販売

総会の最後には、全員で団結ガンバロー

採択された特別決議

採択された総会決議

 

“被害”と“加害”の両面から満州移民の歴史を考える

佐久地区労組会議が満蒙開拓平和記念館訪問ツアーを実施

館内を見学する佐久地区の参加者

館内を案内していただいた戦争体験があるボランティアガイド

佐久地区労組会議の役員や加盟単組の代表者9人が10月15日、下伊那郡阿智村にある「満蒙開拓平和記念館」を訪問し、戦前・戦中に「満州」(現在の中国東北部)に多くの開拓民を送り出した長野県の「負の歴史」について学びました。

旧日本軍が1932年、中国東北部を軍事的に制圧し、傀儡(かいらい)国家である「満州国」を建国、日本国内から多くの開拓農民を送り出しました。全国的には約27万人が「満州」にわたり、長野県は全国で最も多い3万3千人が移住しました。その4分の1の8400人が飯田・下伊那郡からの開拓民です。この満蒙開拓は、昭和の大恐慌対策と過剰人口の口減らしが背景にあったとされましたが、実は軍事上の必要性がおもな理由でした。「満蒙は日本の生命線」といわれ、日露戦争で獲得した権益を守るため、多くの農民が半ば強制的に送り込まれました。

記念館を訪れた佐久地区労組会議の参加者は、戦争体験がある80歳代のボランティアガイドさんに館内を案内・説明していただきました。コロナ禍でガイドさんが案内は停止されていましたが、今年10月から再開されました。ガイドさんは自らの戦争体験もあるので、満蒙開拓の歴史について熱い思い入れをもって説明していただきました。

館内には、長野県からの開拓団がどの地域に移住したのかを示す詳細な地図が展示されていました。10歳代の若い人によって組織された「青少年義勇軍」の移民の多くは、ソ連(当時)からの侵攻の防御のため国境近くに居住を強制されました。地図には、県内のどの地域から移住したかがわかる開拓団名が記載されていました。「富士見分村王家屯」「大古洞下伊那郷」「索倫河下水内郷 」「康平松本郷」などの開拓団名が地図に記載されていました。多くの人たちの寄付によって建築費を集め、2019年に完成したセミナー棟で、満蒙開拓の歴史と体験者の証言などを映像化したDVDを視聴しました。ガイドさんは案内の最後に「満蒙開拓には多くの長野県民が送り込まれ、戦後の引き上げ途中やソ連によるシベリヤ抑留などにより、8万人もの開拓民が死亡したという被害の側面を持っている。同時に、中国人の土地を取り上げ傀儡国家をつくったという加害の面も併せ持っている。その視点が大事だ」などと訴えました。