21世紀のキーワード―平和・人権・環境

長野県平和・人権・環境労働組合会議

9月18日に始まった15年間の戦争

1931年の今日、9月18日の深夜、中国の奉天(現在の瀋陽)駅の近くの柳条湖で日本の国策会社南満州鉄道の線路が爆破されました。「自衛」を名目として日本が配備していた関東軍は、この爆破は中国の仕業として攻撃を始め、長春などを占領しました。経済の行き詰まりを石炭や鉱石など資源の豊富な満蒙を武力で支配することで解決しようとした関東軍の謀略でした。日本政府は閣議で不拡大方針を決定し関東軍へ制止命令を出しますが、関東軍は独断で戦線を拡大し、それを政府は追認、国民も労働組合も巻き込まれていきました。1945年の敗戦にいたるまでの15年間の泥沼の侵略戦争のはじまりでした。

日本だけでなく東アジアの国々の多くの人の暮らしや財産、尊厳と生命が奪われました。中国では、9月18日はファシズムによる侵略を許した日として、忘れてはならない日とされています。この悲惨な戦争の反省から、国際的には世界人権宣言が採択され、日本では平和憲法がつくられました。

退陣した安倍首相が2015年9月19日に法制化した「集団的自衛権の行使」により、すでに自衛隊員が海外に派兵されてしまいました。去り際には、国民の生命と財産を守るために「敵基地攻撃能力の保有」の検討を言い残していきました。

今日は、長野地裁で信州安保法制違憲訴訟の原告6人の口頭弁論が行われました。戦争にさせない、と声をあげる人たちがいることが過去の過ちを繰り返さないことにつながります。

九・一八歴史博物館(瀋陽市)

元内閣法制局長官の宮崎礼壹氏が長野地裁で 「集団的自衛権は憲法9条に明白に違反」と証言 信州安保法制違憲訴訟第12回口頭弁論

市民や学者・弁護士などつくる「信州安保法制違憲訴訟の会」は2016年7月26日、長野地方裁判所に新安保法制が違憲であるという判断を求める訴訟(国家賠償訴訟)を提訴しました。原告は長野県内居住者で第1次・第2次合わせて362名です。

8月28日、第12回口頭弁論が開かれ、この裁判で初めて3人の証人が採用され、2人の原告を含めて5人の尋問が行われました。

証人は、元内閣法制局長官の宮﨑礼壹さん、ジャーナリストで元東京新聞論説委員の半田滋さん、原告の成澤孝人さん(信州大学教授)、原告の佐藤芳嗣さん(弁護団長/弁護士)の5人です。

宮崎礼壹さんは「集団的自衛権は国際紛争に乗り出すことにほかならず、憲法9条に明白に違反している」と証言、武力攻撃から国民を守る最小限度の「実力」であれば、自衛隊は9条2項にある「戦力」に当たらないと解釈されてきたが、集団的自衛権は国際間の武力紛争に介入することになるため「戦力」になると強調しました。

また、半田滋さんは、2004年1月から2006年7月まで2年半にわたり、陸上自衛隊600人がPKO(国連平和維持活動)でイラクに派遣された点について証言。政府は派遣先が「非戦闘地域」としていましたが、派遣期間中に、13回22発のロケット弾が陸上自衛隊サマワ宿営地に向けて発射され、うち3発は宿営地内に打ち込まれた事実を述べました。イラクは、米軍と武装勢力が戦闘を続ける「戦地」だったことを強調しました。

長野地裁での新安保法制違憲訴訟は大きなヤマ場を迎えています。9月18日にも6人の原告尋問が予定されています。

 

「信州護憲ネット」が2020年度個人会員を募集中

安倍晋三首相は、4月の国会の質疑において、「緊急時に国家や国民がどのような役割を果たし、国難を乗り越えるか。憲法にどう位置付けるかは極めて重く大切な課題だ」と述べ、「国会の憲法審査会の場で与野党の枠を超えた活発な議論を期待したい」と強調しました。また、5月3日には、改憲派の団体の会合に同様のメッセージを送りました。

自民党は2018年3月にまとめた4項目の改憲案で、緊急事態条項の新設を掲げています。緊急事態が宣言されると、内閣(行政府)が国会を通さず「政令」だけで、基本的人権を制限・抑圧する強権を発動できるようになってしまいます。新型コロナウイルス感染症が拡大し、人々が不安と困難を抱えている状況の中で、憲法改定を持ち出す安倍首相の見識にはあきれるしかありません。

私たちは、感染症の拡大状況を逆手に取った安倍首相の憲法改定発言に強く抗議します。

2000年5月3日、平和憲法を守りたいと思う方なら、誰でもが参加できるネットワーク「守ろう平和憲法 信州ネットワーク」(略称:信州護憲ネット)を結成しました。現在、2020年度個人会員を募集中です。平和や人権、未来への思いをつなぎ合うため、ぜひ多くの皆さんがご参加いただけるようにお誘い申し上げます。

申し込みは下記の入会申し込み用チラシに必要事項をご記入のうえ、郵便局で会費をお支払いください。

県護憲連合が検察庁法「改正」案に反対する緊急の街頭宣伝行動

安倍内閣が国会での成立を断念した「検察庁法改正案」は、国家公務員の定年延長に乗じて、検察官の定年を63歳から65歳に延長するだけではなく、内閣や法務大臣の裁量で「公務の運営に著しい支障が生ずると認められる事由として内閣が定める事由がある」とされた場合、さらに3年その職に据え置くことができるようにするものです。

このことによって内閣による検察人事への介入が大きく強化され、準司法官としての検察の独立性が揺らぐおそれがあります。憲法の基本原則である三権分立を毀損することにつながるこの法改「正」は、けっして許されるものではありません。

この法改「正」強行の背景には、今年1月31日、検察庁法違反を指摘する声を無視して、定年退官予定だった黒川弘務・東京高検検事長の定年延長を閣議決定したことがあります。安倍政権に極めて近いとされる人物を恣意的かつ違法に重要ポストに据え続けることを、事後的に正当化するような法改「正」には一片の正義性もないばかりか、法治国家としての原則を破壊する行為と言わざるを得ません。

こうした動きに対し、多くの市民が反対の声を上げました。コロナ禍で外出して集会を行うことが困難ななか、インターネット上、とりわけtwitterのハッシュタグ「#検察庁法改正案に抗議します」を活用した抗議の意思表示が、これまでにのべ数百万にも膨れ上がるなど、これまで日本社会ではみられなかった市民の活動が行われました。

安倍政権は、国民の強い反対世論や検察庁OBの反対の意思表示などを受けて、5月18日、今国会での成立を断念しました。

県護憲連合は5月19日、「改正」案は継続審議ではなく、白紙撤回を求める意思を示すため、緊急に長野駅前で街頭宣伝を実施しました。新型コロナ対策で参加者は20名程度に絞り込み、街頭演説とソーシャルディスタンスを取ってプラカードを掲げるスタンディング行動。チラシも配布して市民にアピールしました。

検察庁法「改正」案に反対する緊急の街頭宣伝行動

検察庁法改正案に反対するチラシ

新型コロナウイルス感染症「緊急事態宣言」の下での憲法記念日に向けて、信州市民アクションが290団体の共同アピールを発表

5月3日、憲法記念日には毎年、各地域で多くの市民団体が集会や講演会などを企画しています。今年は、新型コロナウイルス感染症の影響でほとんどの地域で企画が中止ないしは縮小となりました。一方、安倍政権は、新型コロナ対策で命より経済を優先する対策に終始し、「緊急事態宣言」の発出をテコにして憲法改定論議の活発化を呼びかけるというスジ違いの対応をしています。また、「緊急事態宣言」下で、さまざまな自由や権利が制限されています。

信州市民アクションは、「緊急事態宣言」下における自由や権利、民主主義の制限や抑圧に反対し、命を最優先するコロナ対策の徹底、安倍首相の憲法改定発言に抗議する「共同アピール」への賛同を県内の様々な市民団体、各種団体に呼び掛けました。短期間の取り組みでしたが、市民団体やNPO、労働組合など290団体に賛同をいただきました。5月1日に県庁会見場で公表しました。

☞ 共同アピール全文はここをクリック

共同アピールを県庁・会見場で発表

 

自衛隊の中東派兵問題―成澤孝人・信大教授の講演録―

2020年前半は、新型コロナウイルス感染症の蔓延によって、日本や世界の公的機関や人々が拡大防止対策に追われ続けた半年間でした。その陰で、自衛隊が、米国とイランとの緊張の高まりを受けて、米国からの要請で中東地域へ派遣されている問題は、あまり注目されませんでした。しかし、自衛隊法の「調査・研究」名目での派遣は、きわめて法的な根拠が薄く、自衛隊法の無理な解釈による派遣であり、あまりにも問題が多い政府の決定です。長野県憲法擁護連合(県護憲連合)は2月11日、長野市内で定期総会を開き、記念講演として、自衛隊の中東派遣問題について、信州大学教授の成澤孝人氏に解説していただきました。その講演録をお届けします。

 会報52号・成澤孝人講演録はここをクリック