21世紀のキーワード―平和・人権・環境

長野県平和・人権・環境労働組合会議

信州安保法制違憲訴訟の会が報告集会

最高裁の上告棄却決定を受けて訴訟を振り返る

裁判は終わったが違憲の新安保法制廃止運動は続く

2015年に制定された新安保法制が日本国憲法に違反し、平和的生存権、人格権、憲法改正・決定権、安定した立憲民主政に生きる権利・利益などを侵害するとして、国に対して損害賠償を求めた信州安保法制違憲訴訟は、今年4月25日、最高裁判所が原告の上告を退ける決定を行いました。

この最高裁の不当な決定により、立法・行政・司法の三権による権力分立のもと、特定の権力による暴走を食い止めるという三権分立の理念が完全に絵に描いた餅であったことが明らかとなり、さらなる権力の暴走が極めて現実的なものとして危惧されます。司法による立法府・行政府へのチェック機能が十分果たされない状況にあるという残念な現実を見据えながら、しかし諦めることなく、今後、市民として、立憲主義を守るためにどのような行動が必要であるか、一人一人が考えていく必要があります。

私たちは、これからも立憲主義を守り、憲法の理念である平和主義を擁護し、二度と戦争を引き起こさせないため、引き続き粘り強く闘い続けなければなりません。

4月の最高裁の決定から半年を迎えるなか、信州安保法制違憲訴訟の経緯を振り返り、私たちが未来に向かって何をなすべきかを考えるための集会が10月14日、松本市勤労者福祉センターで開かれ、原告など約40人が参加しました。

集会ではまず代理人の安藤雅樹弁護士が訴訟の経緯を振り返りました。安藤弁護士は、長野地裁判決、東京高裁判決では、いっさい憲法判断に踏み込まず、平和的生存権や人格権の具体的権利性がないという形式的な論理で判決が下された点を批判しました。

次に、名古屋共同法律事務所の中谷雄二弁護士が「憲法9条をめぐる訴訟における安保法制違憲訴訟の意義と今後の展望」と題して講演しました。中谷弁護士は、全国で25裁判が提訴され、7699名の原告、1685名の弁護団が参加した訴訟は、憲法9条違反を争う訴訟として過去、最大規模だと指摘。集団的自衛権の行使容認に踏み込んだ安保法制の新たな段階での憲法9条に依拠した裁判であり、正面から法令違憲を問う訴訟であったと述べました。裁判は敗訴したものの、この裁判の評価として、①当初懸念された安保法制を合憲とする判断は一件も出させていないこと、②最高裁も砂川事件と違い「統治行為論」により司法判断の対象から排除することができなかったこと、③全国各地の訴訟で主張された憲法論や違憲の実態、政府の戦争する国づくりに対する事実に基づく批判などは今後の闘いの大きな財産となったことを強調しました。

集会では裁判が集結したため、訴訟の会は解散する方向を確認しましたが、新安保法制の廃止や戦争への道を拒否する運動を継続するため、362人の原告が新たなネットワーク組織を立ち上げていくことも決めました。

報告集会には約40人の原告が参加

代理人の安藤雅樹弁護士

講演した中谷雄二弁護士

原告団長の又坂常人・信州大学名誉教授

〈第18期〉21世紀の労働運動研究会第3回講座「職場におけるハラスメント及び安全衛生の判例と課題」(講師:小川英郎弁護士)

「〈第18期〉21世紀の労働運動研究会」の全4回の講座が終わりました。
今回は、上松町(木曽地区)を会場にした第3回講座についてご紹介します。

ハラスメント問題に詳しい小川英郎弁護士が講演

第3回講座は、9月20日(金)、ひのきの里総合文化センター(上松町)でウェール法律事務所(東京)の小川英郎弁護士を講師に迎え、「職場におけるハラスメント及び安全衛生の判例と課題」というテーマで、ハラスメントの定義、職場での具体的なハラスメント対策、カスタマーハラスメント(カスハラ)についてもお話いただきました。会場参加・Zoom参加をあわせて60人が参加しました。平日夜にもかかわらず、会場は、自治労、林野労組の若手組合員を中心に大勢の参加者で賑わいました。冒頭、木曽地区労組会議の西村議長は「学習を通じて本質を見極めることが大事。悩んでいる人達を労働組合としてどう救済していくのか。この問題で職場を去るという人をゼロにすることも労働組合の課題。職場に持ち帰っていただき、対策に役立てていただけたら」と挨拶されました。

講演する小川弁護士

日本の職場環境の悪化がハラスメントの源泉

近年、労働強化や人員の減少などの傾向と相まって、職場でのパワハラ、セクハラ、いじめなどが増えています。さらに顧客からの理不尽なクレームや言動によって労働者のメンタルが傷つけられる「カスタマーハラスメント(カスハラ)」も社会問題となっています。小川弁護士は「職場でのパワハラ、セクハラ、いじめなどの相談が増えている」「90年代後半はリストラや解雇や賃金の問題が圧倒的だった」と長年務めてきた労働弁護団のホットライン(相談ダイヤル)での相談内容の変化から「日本の職場環境が悪化していることに原因がある」「一人ひとりの労働条件が悪くなると、同僚や部下に対して丁寧に気を配る余裕がなくなり、ハラスメントが生まれてきているのでは」と指摘しました。講演では、2019年の「改正労働施策総合推進法」が成立してパワハラが初めて法律で規定されたこと、パワハラの定義、具体的なハラスメントと対策を裁判例を交えながらわかりやくお話いただきました。

日本労働弁護団ホットライン
https://roudou-bengodan.org/hotline/

社会問題化するカスタマーハラスメント

講演の最後にはカスハラの問題に触れ、「カスタマーハラスメントがエスカレートすると犯罪行為に近づいてくる」「基本的には警察対応、どう対応するかを組織の中で線引きをしておくことが必要」と対応策が示されました。質疑応答では、参加者からのサービス残業対策やカスハラ対策などの質問に対して、具体的なアドバイスを頂けました。

会場には50人が集まった。

【講演概要】

職場におけるハラスメント及び安全衛生の判例と課題

第1 パワーハラスメント

1 改正労働施策総合推進法成立

198回通常国会(2019年)で、職場のパワーハラスメント(パワハラ)に対する事業主の措置義務を定めた改正労働施策総合推進法が成立した。

・優越的な関係に基づいて(優位性を背景に)行われること
・業務の適正な範囲を超えて行われること※最も重要
・身体的もしくは精神的な苦痛を与えること、又は就業環境を害すること
※3つの要件を満たすものがパワハラ

⇒詳細は指針に委ねられた(令和2年[2020年]6月1日施行)

◎事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針【令和2年6月1日適用】※パワハラ指針

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000605661.pdf

2 定義について

(1)「職場」

「当該労働者が通常就業している場所以外の場所であっても、当該労働者が業務を遂行する場所については、『職場』に含まれる。」

「業務を遂行する場所」には、出張先、取引先、会社の懇親会等が含まれる。また勤務時間外であっても業務遂行との関連性が認められれば、『職場』にあたりうる。ハラスメント防止の観点からすれば、①明確化と②安全サイドに立った解釈が求められる。

(2)「優越的な関係を背景とした」

「行為者に対して、抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われるもの。」

職位、職種・雇用形態の違い、能力・資格・実績・成績などの個人的能力、容姿や性格、性別、性的指向・性自認など、あらゆる要因により事実上生じた人間関係を広く含む概念と解して対応することが求められる。「抵抗又は拒絶できない」ほどの関係がないと安易に解釈することは危険。

(3)「業務上必要かつ相当な範囲を超えて」について

「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動であるかの判断にあたって、「個別の事案における労働者の行動が問題となる場合は、その内容・程度とそれに対する指導の態様などの相対的な関係が重要な要素となる」

労働者の行動の問題性が高ければ、指導・叱責が直ちにパワハラに該当しなくなるということではない。多くの裁判例で労働者側の問題点を指摘しつつも、違法性が認められている点に注意。

第2 セクシャルハラスメント

■パワハラよりはるかに早く雇用機会均等法(第11条)で規定された。

1 「職場におけるセクハラ」とは?
=「職場」において行われる「性的な言動」に対するその雇用する「労働者」の対応により、当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること。
⇒使用者は「職場におけるセクハラ」が起こらないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用機会上必要な措置を講じなければならない(雇用機会均等法第11条)

2「性的な言動」とは?
・性的な内容の発言
・性的な言動
※性別役割分業に基づく言動も含まれる

(例)
・「男のくせに根性がない」
・「温案は若くてかわいい方がいい」
・女性だけにお茶くみ、掃除をさせる など
・女性であるとして、記者を重要な取材先に配置する※財務省事務次官セクハラ問題

■裁判所の意識も低かった。触ったわけでもないのにセクハラにはならないと。今ではすぐにアウト。セクハラ・パワハラ、ハラスメントへの考え方が変わってきている。しかるべき立場にある人が、セクハラやパワハラが起きているのに放置していると、その個人も法律上の責任を問われることがある。

第3 メンタルヘルス不調と労働災害

1 問題の所在

近年、メンタルヘルス不調が業務に起因する労働災害であるとして紛争になるケースが増えている。特に、労働基準監督署が業務外決定をしたため、行政取消訴訟として裁判に持ち込まれるケースが依然として多い。これらの裁判例の傾向を検討し、業務上と業務外の判断が実務上どのようになされているのか、使用者及び人事労務担当者が気を付けるべき点はどこにあるのか、労働者としてはどうすればよいのかといった点について考察する。

■労働基準監督署で認められるのは2割くらいで、8割は却下されている。裁判に訴えるひとは少数でほとんどのひとが諦めている。しかし、裁判に訴えた場合4割くらい国側が敗けている。いかに労基が労災と認めていないかの反証となっている。

■メンタルヘルス不調を労災かどうか判断するには、「業務による心理的負荷評価表」を参照。ハラスメントに関心があったり学びたいひとは理解していただくといい。

「業務による心理的負荷評価表」(厚生労働省サイトから)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/rousaihoken04/dl/120427_4.pdf

■メンタルヘルスの労災の申請があった際に、労基署はこの表で判断する。表のなかで「弱」「中」「強」とあるが「強」とされると労災認定される。過去半年間のイベント(出来事)を評価する。

■カスタマーハラスメントの場合、表の27番「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」には心理的負荷の強度「Ⅱ」が付いているが、これだけでは労災認定されない。

【27番】

 

しかし、「強」になる例として、
・顧客等から、治療を要する程度の暴行等を受けた
・顧客等から、暴行等を反復・継続するなどして執拗に受けた
・顧客等から、人格や人間性を否定するような言動を反復・継続するなどして執拗に受けた
・顧客等から、威圧的な言動などその態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える著しい迷惑行為を、反復・継続するなどして執拗に受けた
・心理的負荷としては「中」程度の迷惑行為を受けた場合であって、会社に相談しても又は会社が迷惑行為を把握していても適切な対応がなく、改善がなされなかった

【23番】

■このようなことがあった場合は、カスタマーハラスメントは平均的には「Ⅱ」だが、「強」として労災として認める。また、半年間のうちに上司からパワハラを受けた(23番「同僚等から、暴行又はひどいいじめ・嫌がらせを受けた」)などの出来事があった場合は「Ⅱ」が二つあることになり、今の実務では「Ⅱ」が二つあれば労災が認定される。

■ぜひこの一覧を活用できるようになってほしい。

第4 カスタマーハラスメントについて

1 カスハラとは?

顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上、不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの。

「顧客」には、今後の利用可能性がある潜在的顧客も含む。

2 抵触する法律

カスタマーハラスメントは、単なるクレームに止まらず、犯罪行為になる場合がある。傷害罪、暴行罪、脅迫罪、恐喝罪、強要罪、名誉棄損罪、侮辱罪、威力業務妨害罪、不退去罪、軽犯罪法違反罪など。

■パワハラにおける会社の中の上司や部下や同僚などの関係とは異なり、カスタマーハラスメントにおける加害者は一般の顧客のため、その人との関係が法律的にあるわけではない。しかしクレームに止まらず犯罪行為になる場合もある。例えば、「今言ったことは録音してあるからネットにあげてやる」などは脅迫罪です。「これで会社を休まなくちゃいけなくなった。日当は○○円だ」などと暗に金を払えと匂わせると恐喝罪です。土下座させようとするなど不必要なことをさせることは強要罪です。ネットで言いふらすなどは名誉棄損罪です。バカなどと厳しい言葉を投げつけることは侮辱罪です。居座って帰らないなどで業務を滞らせるなどは威力業務妨害罪、不退去罪です。

■カスタマーハラスメントがエスカレートすると犯罪行為に近づいてくる。基本的には警察対応。どのくらいでどう対応するかの線引きをしておくことが必要。

3 対策

(1)相談体制の整備
(2)被害者への配慮のための取組み(メンタルヘルス不調への相談対応、一人で対応させない体制整備など)
(3)マニュアル作成、研修の実施

■組織や会社は、あらかじめそういう人が来たらどう対応するかを決めておく。そうしないとどんどんハラスメントがエスカレートする可能性がある。

4 具体的には

  • 長時間拘束

帰らない。電話を切らないなど

■丁寧に応対する。怒鳴られても同じように言い返さない。一定の時間が過ぎたら「申し訳ございません。これで切らしていただきます」などと言って切るなどの対応をあらかじめ上司は指示しておくことが大事。話をつないで、相手に切らせないようなテクニックを持っている。

  • 反復型

繰り返しのクレーム。

■毅然と対応することが重要。組織として一定の基準をつくっておく。

  • 暴言

やめるように説得、やめなければ録音、退去を求める

  • 暴力

警備員がいる職場なら警備員にすぐ連絡、複数名で対応することが肝心。直ちに警察に連絡。

  • 威嚇・脅迫

「殺すぞ」「ネットで拡散してやる」「口コミに書いてやる」

録音する。脅迫罪にあたることを伝える。退去を求める。警察への通報も考える。

  • SNSなどへの誹謗中傷

SNSのプラットフォームに削除を要請する。身元が分からない場合は発信者情報開示(弁護士に依頼)して対応を考える。名誉棄損の場合は、警察や弁護士に

【質疑応答】

Qサービス残業への対応はどうしたらいいか?

Aタイムカードを置くのがいい。法律上は1分単位で残業代の支払い必要。労働基準法は罰則付きの法律で、違反した場合は懲役6か月以下、罰金30万円以下の列記とした刑罰法規であることをわからせ、タイムカードを置くのが一番いいのがいいと思う。

Q2~3年で、全国にわたり広域に人事異動が多い職場。人事面で事前調査あるが、本人の希望が叶いにくい。組合では限定的ではあるが、健康面や家庭の事情に限り人事に配慮するよう申し入れている。

A東亜ペイント事件では、企業の方に幅広い裁量権を認めてしまった。単身赴任があたり前だった時代に出た判決。人事異動は違法であると権利濫用だと訴え取り消された事例は少ない。ただ労働者側が勝ったケースは家庭の事情がある場合。有名な明治図書事件は、重度のアトピー性皮膚炎のあるお子様が2人いる家庭だった。両親ともにフルタイムで、特殊な病院への通院が必要だった。夫は労組の副委員長だったので不当労働行為的でもあるが、東京から大阪への転勤を命じた。妻が仕事を辞めないと子どものケアができない。裁判所は、夫への配転命令は権利濫用で無効だと判断。今の裁判所は、家族の事情などで配転は過酷だと判断する場合は、これを無効とする傾向がある。法的に難しい場合は労働組合の力が非常に重要。私がかつて務めていた会社は、非常に組合が強くて、転勤の命令が出ても、本人がいやだと言うなら行かなくていいという労使慣行が確立していて、人事についての同意権を持っていた。いまはなくなってしまったそうですが。本人が希望しない配転については、最大限の配慮をするようにというような職場での慣行をつくっていく取り組みが重要。

Qセクハラやパワハラは、裁判や交渉事にまで至らず悩んでいる人多い。職場でも相談窓口設けているが、相談するひとは少ない。少しでも職場をよくできた事例があれば教えてほしい。この問題で職場を去る人を皆無にしたい。

A本当にその通りだと思います。セクハラ・パワハラを受けて会社を辞めていく人は非常に多いのでなくしていかないといけない。組合がない職場で、パワハラを会社に申告したが、相談窓口が機能しなかったケース。本人は、まずは否定する。言ったかもしれないけど、そんな言い方ではないなどと言って、事実確認ができなかった。相談者は人望があり、職場の人助けをしていた。私は協力してくれる仲間はいませんかと訊きました。職場の同僚が書面で申入書をつくって、再度相談窓口に出したら、調査が必要となりパワハラがあったことを認定して、加害者本人を処分した。これは1人では浮いてしまう。職場での一種の団結があると解決が早い。普段からのコミュニケーションをきちんととれるようにしておくことが重要。

セクハラ・パワハラは早期発見が重要。相談しやすい相談窓口を用意することが大事だが、現実的にはあまり役に立っていないところが多い。経営者相手に話すこともあるのですが、パワハラで社員が自殺したらどれくらいの賠償が必要か知っていますかと話します。裁判例をあげながら、普通の中小企業なら倒産するくらいの金額の賠償を命じられることもあると話します。労働組合からも会社側に経営上のリスクであると説得していくことも有効。横のつながりで学習会を開催して、情報を共有していくことも有効。

Qカスハラについて、警察などに通報するタイミングが難しい。過度な暴言や土下座要求などの場合でも警察に通報等できるのか?また記録があれば後日訴えることもできるのか?

A脅迫や強要でも警察に通報できる。録音は本人の承諾は不要。暴言、脅迫するような人に確認は不要。その方が絶対安全。後日、勝手に録音しやがってと言われても、法律違反ではない。裁判でも証拠になる。

Q役場で長時間、叱責されるという事案があった。

Aできるだけ毅然と対応されることがいい。一人で対応させず組織で対応している姿勢を示すことで相手もひるむこともある。町役場でしたらその中で、あらかじめどういった対応をするかのマニュアルを作成して、体制を準備しておくことが重要。

【参考】

ウェール法律事務所・社員からの法律トラブル相談室・第6回「配置転換」(小川英郎弁護士)
https://ver-law.ne.jp/img/roumu_120915.pdf

「ノコギリの使い方を教えてもらったら木を切る音が良くなった」

食とみどり、水を守る県民会議が林業体験でヒノキ除伐作業

「令和のコメ騒動」から日本農業の考える学習会も開く

食とみどり水を守る長野県民会議は、10月4日と5日、伊那市で第11回食とみどり、水を考える集いを昨年に続き一泊二日で実施しました。参加者は16人でした。

一日目は、はじめに開会式を行い、県労組会議の喜多英之事務局長より「カーボンニュートラルが話題になる中で、森林の役割は重要であることや、自身も年間の行動の中で一番好きなので行事なので一日頑張りたい」と挨拶があり、南信森林所管内の手良沢山国有林で除伐作業を実施しました。当日は100%の降水確率の中ではありましたが、作業終了まで雨が降ることはなく参加者全員でノコギリを使い、息を切らしながらヒノキの伐採に挑みました。

参加者からは、「歩くだけでも大変だった。明日は筋肉痛が心配」「ノコギリの使い方を教えてもらったら、木を切る音が良くなった」などの感想が聞かれました。

二日目は、南信森林管理署の会議室で、「2024年の話題 地震・台風・米騒動」と題して、ソーシャルライターの吉田百助氏より講演を受け、米不足の際に政府が備蓄米を放出しない理由や、大規模農業業者が燃料費高騰や機械の高額化により倒産が増えている、現在の日本は米食を1とすると、麺食が1、パン食が1.7となっていて、米が主食でなくなっているなど、農業・食料を取り巻く情勢について学習し、その後参加者で意見交換を行いました。

最後の閉会式で、中川博司・県民会議会長(県議会議員)から「農林水産省は売る物を作ることでなく食べるもの作ることに力を入れるべきだ。そのことを頭に入れながら様々な取り組みを継続しよう」と集約し二日間の日程を終了しました。

林野労組南信分会、伊那バス労組の皆さんに準備段階からお世話になったことに感謝申しあげます。

急な斜面でノコギリを使って作業

カッパを着て除伐作業

林道を借りてみんなで記念写真

2日目は農業問題の学習会

〈第18期〉21世紀の労働運動研究会第2回講座「コミュニティ・ユニオンの現在とこれから」(講師:鶴丸周一郎氏)

「〈第18期〉21世紀の労働運動研究会」の今期の全4回の講座が終わりました。
今回は松本を会場にした第2回講座についてご紹介します。

「名古屋ふれあいユニオン」の鶴丸周一郎氏が講演

第2回講座が7月20日(土)、松本市勤労者福祉センター(松本市)で名古屋ふれあいユニオン運営委員長の鶴丸周一郎氏を講師に迎え「コミュニティ・ユニオンの現在とこれから」というテーマで、未組織労働者からの労働相談の実態、地域ユニオン運動、日本の労働運動のあり方などについてお話いただきました。会場参加・Zoom参加あわせて30人が参加しました。

職域に単位を置く企業別労働組合が主流の日本のなかで、職場をこえて1人でも加入できる労働組合=コミュニティ・ユニオンの活動が注目されています。日本では労働組合の加入率が年々低下するなかで、労働者10人のうち8人が労働組合に加入していません。労働組合のない職場の労働者からの相談を受けて、ユニオンに加入してもらい、企業と団体交渉などを行い問題を解決していくユニオン活動は、労働組合への組織化の最前線を走っています。

講演する鶴丸周一郎氏

「労働組合」「1人」「入れる」と検索したことから始まった

昆虫学者を目指していたなかで市役所職員になるなど異色の経歴を持つ鶴丸氏は、ある職場で社長に異を唱えたことで解雇されたことをきっかけに、1人でも入れる労働組合「名古屋ふれあいユニオン」に加入することになり労働組合との関わりが始まったことや、短期間での配置換えの末に研究開発部と称した「隔離部屋」での地震の体験なども語られました。

講演の最後に組織や国を垣根をこえた運動づくりの重要性が強調され「分断をこえなければ労働運動に未来はない」と訴えました。

講演終了後は、鶴丸氏にコメントをいただきながら、ワークルールについての学習を深めました。

名古屋ふれあいユニオン公式サイト

https://nagoya-union.online/

コミュニティ・ユニオンの現在とこれから

【講演概要】

■コミュニティ・ユニオンとは?

・これまでの日本の労働組合の多くが企業ごとに正社員だけを対象に組織されてきた者であったのに対し、コミュニティ・ユニオンは、地域社会に密着して、パートでも派遣でも、外国人でも、だれでもひとりでもメンバーになれる労働組合。

■運動のはじまり

・1975年頃からサービス業、卸・小売業、飲食店などでの雇用が急速に拡大。その多くが不安定雇用・低賃金の主婦パートだった。1981年頃から労働組合の地域組織(地区労)を中心にして「パート110番」などによる労働相談活動が広がった。江戸川区労協の相談に訪れたパート労働者が「私たちでも入れる組合があればいいのにね」と言ったのがきっかけとなり、1984年に「ふれ愛・友愛・たすけ愛」を合言葉にした江戸川ユニオンが結成。これをきっかけにコミュニティ・ユニオン運動が広がった。

■名古屋ふれあいユニオン

・1999年に結成。組合員数は約420人、うち移住労働者は40%。14分会のうち半数が移住労働者の分会。ブラジル人の組合員が組織にとって重要な役割を果たしている。大規模雇い止めなど、職場で共通する問題が複数加入のきっかけになっている。

名古屋ふれあいユニオンの組合員数の推移 

■名古屋ふれあいユニオンの課題

  • 問題の原因、問題解決について

移住労働者が職を失いやすい構造(企業が都合よくクビを切れる構造)がもともとあるため、理不尽ではあっても、必ずしも違法ではない。

  • 言語

通訳が常駐していないため、相談の電話にすぐ対応できないことも多い。

いまは1人の組合員に頼ることが多いが、将来的には通訳ができる専従者が必要。しかし現状は費用(人件費の確保)と対象者どちらもクリアできていない。

  • 組織化

個別問題が解決した組合員に対し、組合員である意義をどう理解してもらうか、どうしたら組合内で横のつながりをもてるかが課題。

多くのブラジル人の組合員は家族ぐるみで組合の集まりに参加

■コミュニティ・ユニオンのこれから―運動を継続するために

(1)次世代の担い手をいかにしてつくるか

・20~30代の専従者は、全国ネットのなかでは十数人。50歳でも「若手」。

・20年後も運動を継続するために何が必要か? 全国ネットでは、毎年開催しているユニオンセミナーのほか、近年は比較的若い世代のつながりづくりも行っている。

(2)垣根をこえた運動づくり

・分断をこえなければ運動に未来はない。第1回講座の講師の渡辺さんのPOSSEと同じように名古屋ふれあいユニオンも上部組織がない。特定の潮流もなく、連合系と一緒に活動することもあり、一方で全労連系とも共闘することもある。組織内にも多様な声があるが、こういったことを意識してやっている。自分が労働組合の経験が浅いから出来ているのかもしれない。組織を一つにするのは不可能かもしれないが、必要な運動があればできるだけ垣根をこえていくことが、将来、労働運動を継続、発展させていくために重要。

・労働運動にとどまらないことが重要。あるいは国内だけにとどまらない。労働運動は社会運動の一部だが、労働運動でこの社会を変えることができるということを認識すること。

ポルトガル語の「解雇を撤回しよう」というプラカード

上小地区労組会議チームが初優勝

第20回地区労組会議対抗親善ソフトボール大会に10チーム150人

県労組会議は9月7日、松本市・あずさ運動公園で20回目となる地区労組会議対抗親善ソフトボール大会を開きました。10チーム約150人が参加して熱戦を繰り広げました。トーナメント方式で行われた大会は、上小地区労組会議チームが優勝、準優勝は塩尻地区労組会議チームでした。

大会の終了後には、炎天下の中、テントを張って焼肉交流会を開きました。各地区労組会議から大会の感想などについてアピールがあり、参加者は地区を越えて交流を深めました。

試合前に整列してあいさつ

50歳代でもしっかり打てる

体が多少でかくてもバットは振れる

この打撃フォームはカッコイイ!

キャッチャーは大変な守備位置だ

大会は20回目を迎えた

優勝した上小地区労組会議チーム代表に賞品を贈呈

大会後にはお楽しみの焼肉交流会

チームごとに焼肉を囲んで交流

焼肉交流会の最後には団結ガンバロー

311 子ども甲状腺がん裁判第11回口頭弁論を傍聴して

東京電力福島第一原発事故に伴う放射性物質の影響で甲状腺がんになったとして、事故当時、福島県内に住んでいた男女7人が東京電力に損害賠償を求めている「311子ども甲状腺がん裁判」の第11回口頭弁論が9月11日、東京地裁で開かれた。

この日は、大法廷の一般傍聴席が85席に対し、207人が傍聴券の抽選に並んだ。傍聴希望者が200人を超えたのは、第5回期日ぶりとのこと。裁判は、進むにつれて傍聴者が減るのが一般的だが、この裁判においては少しずつ傍聴希望者が増えているそう。その後の報告集会もほぼ満席。原告はもちろん、弁護団や支援者たちのたゆまぬ努力の賜物なのだろう。

         

今回は傍聴抽選に当たり、法廷内に入ることができたのだが、珍しく協議が長引き、10分ほど開廷が遅れた。資料も揃わず裁判所側がモタモタしている様子だった。ようやく原告意見陳述が始まったころは14:30頃で、原告は「自分の住む町が福島第一原発から西に100キロの場所にあり、まさか被ばくする環境とは知らず、30~40分かけて自転車で通学や買い物に出かけた。自宅の目の前の道路を自動車が通るたび、地面から粉じんが巻き上げられていた。手術後は、再発、転移のことを考えないようにして自分の精神状態を保った」などと緊張しながらもしっかりとした口調で話した。

裁判所から、全ての主張を出し尽くすよう求められていた原告は全部で15本の準備書面を提出した。一方、東京電力は2本の反論書面を提出した。

UNSCEAR報告書の過小評価の原因特定か

原告の主張のうちの1つは、被告の主張する「過剰診断」論を否定するもの。福島県の甲状腺がんの手術症例などに基づき、福島県で見つかっている甲状腺がんは、被告の指摘するような「潜在がん」とは言えないと主張した。また、原告一人ひとりについても、病気の推移を詳細に示し、短期間で腫瘍が増大している実情や、多数のリンパ節転移が見つかっていることを指摘した。

              

大気中浮遊物測定局内で「霧箱」効果?

また、UNSCEARの報告書の被ばく線量評価については、黒川眞一高エネルギー加速器研究機構名誉教授の5通目となる意見書を提出した。UNSCEAR報告書はデータ解析の際、大気汚染を監視するために設置されているSPM局で採取された放射性セシウムの値を利用しているが、意見書では、その値が、大幅に少なくなっている原因を特定。最も高濃度の放射性プルームが福島県内を覆っていた3月15日から16日にかけて、福島市内では気温が低く、かつ湿度の高い飽和状態に近い気象条件にあったとした上で、SPM局の中に取り込まれた大気が、高濃度の放射性物質の影響でイオン化し、液滴となる「霧箱」のような状態に陥っていた可能性があると指摘した。原発事故と甲状腺がんとの関係を証明する意見書を東京地裁に提出した黒川眞一・高エネルギー加速器研究機構名誉教授に対し、東京電力が「放射線の専門家ではない」と主張していることについて、只野弁護士は「黒川名誉教授は高度の学識を持っており、専門家である。東京電力側の主張は黒川さんに対する侮辱であり、今後、このような侮辱は金輪際、やめていただきたい」と語気を強めて抗議する場面もあった。

さらに、当時の福島市内で計測された大気中浮遊物(SPM)のデータが、放射性プルームの到来時間に、数値がゼロになっている事実を提示。この時間に、SPM局内では霧箱状態となり、SPMや放射性セシウムは、粒径が大きくなって排除され、濾紙に付着する量が極端に少なくなっていた可能性が高いと主張した。

「誰ひとり泣き寝入りさせない」〜原賠法の立法時

このほか、原子力損害賠償法の立法当時に遡り、立法趣旨を解説する書面も提出。法廷のプレゼンでは、原賠法立法当時、原子力事故が起きたい際に、被害者が重い立証責任を負うことは想定されていなかったことを解説した上で、国会でも「誰一人泣き寝入りさせない」という答弁が繰り返されていたことを裁判所に訴えた。

         

第12回口頭弁論期日は12月11日(水)に予定されている。

次回期日には、地区労組会議を介して購入いただいているレーメンの販売利益分を3団体(3・11甲状腺がん子ども基金、311甲状腺がん子ども支援ネットワーク、日本チェルノブイリ連帯基金)にそれぞれ寄付する予定。組合員のみなさまの善意がここにも届いている。

次回以降は証人尋問が始まり、裁判も新たなフェーズを迎える。今後もより一層の支援をしていきたい。