早稲田大学教授(憲法学)の愛敬浩二氏が講演
守ろう平和憲法 信州ネットワーク(信州護憲ネット)は第25回総会と第34回市民の憲法講座を5月3日・憲法記念日に、長野市内の県労働会館で開催しました。オンラインを含め70人が集いました。
今年の「市民の憲法講座」は、信州護憲ネット代表委員でもある早稲田大学法学学術院教授(憲法学)の愛敬浩二氏に「現在の『改憲/壊憲』動向を読み解く」というテーマで講演いただきました。
岸田政権によって急速にすすむ敵基地攻撃能力保有、防衛費大増税などの軍拡路線の危うさ、緊急事態条項にこだわる改憲派の思惑や、政局に利用される憲法審査会の問題、「改憲/壊憲」の動きに対抗するために私たちになにができるかなど詳しく伺うことができました。
平和国家・日本を改変する「改憲/壊憲」
愛敬氏からは冒頭に、戦後日本の平和国家としての気質(武器輸出3原則、非核3原則、防衛費GNP1%枠など)が、改憲を経ずに「壊憲」によって改変されようとしている現状が示されました。
そして、自民党や改憲派野党がこだわる緊急事態条項の新設が、「平和憲法」と呼ばれる日本国憲法の体質の変更に繋がると指摘しました。
米国主導の下での「戦争できる国」へ
愛敬氏は、自民党・岸田政権がめざす改憲の本質は「壊憲」であり、平和国家という戦後日本の体質・気質を改変させ、軍事大国化が進むことで、東アジア地域の不安定化に繋がると批判しました。
また、改憲についての姿勢に違いがある野党の分断に利用していると、政局的な狙いも指摘。党利党略に利用する改憲論議の不誠実さを非難しました。
地方自治体を国の意の下に置こうとする動き
緊急事態条項の新設については、国家権力を拡大する一方、統制についての規定がないことを問題とするとともに、緊急事態への対応は、各法律の整備で十分であり、改憲は不要と説明しました。
緊急事態を理由とした国の権限拡大について、現在、国会で審議中の地方自治法改正案(指示権)についても触れ、沖縄で強行する新基地建設を例にあげ、「地方自治体を国の意の下に置く意図がある」と警鐘を鳴らしました。
戦後憲法政治における「自衛隊違憲論」の意義として、憲法学者の樋口氏の言葉が紹介され、市民の側の運動の重要性が指摘されました。
「戦後憲法学は、『非現実的』という非難に耐えながら、その解釈論を維持してきた。……その際、過少に見てならないのは、そういう『非現実的』な解釈論があり、また、それと同じ見地に立つ政治的・社会的勢力……があったからこそ、その抑止力の効果を含めて、現在かくあるような『現実』が形成されてきたのだ、という事実である」 ― 憲法学者 樋口 陽一
国民に銃を向けていない日本の自衛隊
また中国の天安門事件、韓国の光州事件での市民と軍隊の衝突、現在のミャンマーの情勢にも触れ、アジア各国の軍隊と異なり、日本の自衛隊が国民に銃を向けていないことも指摘しました。
歯止めとなってきた憲法9条の存在
戦後日本は、平和憲法第9条があったため、自衛隊はベトナム戦争などにも参戦せず、他国の人を直接殺すことがなかった事実を広く知らしめていくことで「改憲/壊憲」を食い止めることができると指摘して、憲法を守り活かす運動の広がりをつくることが重要だと訴えました。
信州護憲ネット総会・長野駅前スタンディング
総会では、改憲よりも国民の暮らしを向上し、平和を維持する憲法理念に則った政治への転換を求めていくことを確認しました。
長野駅前では県護憲連合の取り組みとして、スタンディング行動が実施されました。右翼団体からのヤジと妨害もありましたが、市民の方に、平和憲法を守り、暮らしや政治に活かし広げる大切さをアピールしました。