「21世紀の労働運動研究会」で棗一郎・弁護士が強調

棗一郎・弁護士

県労組会議は17年目となる「21世紀の労働運動研究会」の年4講座を開催中です。7月22日には、日本労働弁護団常任幹事の棗一郎・弁護士が松本市で講演しました。テーマは、「今後の労働法制改悪と非正規・非雇用化政策に対抗する社会的労働運動を」。

棗一郎・弁護士は、講演の冒頭、日本が現在置かれている経済的・政治的な状況について言及。「世界から見てこの30年間で日本はもはや経済の面でも“二流国”になった」「軍事費を倍増させ、閣議決定でだけで『敵基地攻撃能力の保有』や、中国・台湾有事に備えると称して、沖縄本島を含む南西諸島に自衛隊基地や攻撃能力を急激に増強している」と強調。

「今こそ、すべての労働運動と平和運動、市民運動の連帯と結合、団結が必要不可欠だ」と訴えました。

以下、棗一郎弁護士の冒頭の発言を掲載します。

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「オールジャパン・デモクラシー」の運動が必要不可欠だ

日本労働弁護団常任幹事  棗  一 郎

政治の闇、経済の没落

現在の労働者・労働組合を取り巻く日本社会の現状は、世界(OECD諸国)と比較してどのような社会・経済・政治状況なのか?

昨年明らかになった政治の闇は、自民党と反社会的カルト教団との歴史的な癒着関係(反共の砦)と法律上の根拠もなく、財政民主主義にもよらない「安倍国葬」の強行により、内閣(政府)の独裁とも呼ぶべき、もはや‟法治国家“ですらなくなった3流の後進国の政治状況となった。日本の国民も労働運動も結果としてそれを容認しているのが現状である。

その反面で、これまで「日本は政治は二流だが、経済は一流」との幻想を抱いてきたが、もはやOECD諸国で最低の賃金(過去20年以上にわたって実質賃金-購買力平価による換算値‐が上がらない国)、最低賃金も最低の国、世界から優秀な人材を集めることができず、逆に日本の若い労働者は海外に出稼ぎに行くような状況である。さらに、世界一の速さで高齢化が進み、労働力が慢性的に不足している状況であるにもかかわらず、人権侵害・奴隷労働を強いている外国人「技能実習生」制度すら廃止できず、日本に来なくなることが予想される。

日本経済は、“日本病”と称される暗礁に乗り上げていて、もはや“経済大国”でさえない、2流・3流の経済国家になってしまった。昨年の世界大学ランキングで、東京大学は39位、京都大学は68位に大きく後退し、もはや往年の見る影もない。人材においても2流の国家になっている。

現在、ロシアのウクライナ侵略戦争の長期化とエネルギー自給・食料自給ができていないことなどを要因として急激な円安と物価上昇を招いて、庶民・経済的弱者層を直撃し苦しめている経済状況、その一方で富裕層と大企業はびくともしない決定的な貧富の格差構造は、変わる兆候もない。もはや日本は2流の経済国というのが世界経済の見方である。

軍事大国化と戦時体制の整備

そして、国家予算では軍事費(戦時体制の強化)を5兆円にまで増大させ、ロシアのウクライナに対する侵略戦争の長期化、中国共産党の独裁体制の確立と北朝鮮の核開発、台湾・東アジア有事をあおる自公政権による軍事費の著しい膨張と軍拡政策、戦争有事体制に備えるかのような警察国家・監視国家への着々とした法整備と予算の執行などが続いている。岸田内閣は、これまで戦後一貫して保持していたはずの日本の軍事的基本戦略である『専守防衛』政策を明確に転換して、「敵基地攻撃能力を持つ」軍隊へと安全保障政策を大転換させた。こんなにも重要な国の基本政策の大転換を行うには、国民的な大きな議論が必要であり、解散総選挙を行って国民に信を問うべきである。にもかかわらず、国会での慎重な議論や決議もなく、国民的な議論を経ることなく、一内閣の閣議決定だけで決めてしまった。主権者たる国民の意思を問うことなく、それを無視して一方的に政策を進めていくのは、まさに“亡国の内閣”であり、この国を誤った方向に導くものである。

沖縄は今年で米国統治下(アメリカ世)から日本への復帰51年を迎える。国内の米軍機基地の7割が沖縄に集中する極めていびつな軍事態勢に加えて、近年、中国・台湾有事に備えると称して、中国に対抗するための「南西シフト」(言葉のごまかしで実は「琉球・沖縄シフト」)を組み、自衛隊の増強が急速に進んでいる。これまで沖縄本島を含む南西諸島は、自衛隊・防衛の「空白地帯」をされてきたが、与那国島、宮古島、奄美大島、石垣島に陸上自衛隊の駐屯地を開設、ミサイル防衛基地を作って、中国と向き合う最前線の島々で防衛拠点の構築を急いでいる。

社民党の福島瑞穂議員が、日本労働弁護団主催『安部自民党改憲案に断固として反対する労働組合の集会』の時に発言されていた。「気づいたら、“戦争”が廊下の奥に立っていた・・・!」

今の日本は労働者・労働組合にとって戦後経験したことのない政治・経済・軍事的に極めて危険な状況にある中で、日本の労働組合と労働弁護士は何をすればよいのか?どこへ向かえばよいのか?それが今、私たち一人ひとりに厳しく問われている。

今、何が必要か?

以上のように、今の日本は政治・経済・軍事、そして雇用社会と労働政策・労働法制は危機的状況にある。このままでは、日本は再び暗黒の時代を迎え、体制翼賛化、ファシズム、軍事国家への道を突き進んでいくことになる。

これを止めるためには、“オールジャパン・ユニオン”だけでなく、“オールジャパン・デモクラシー”で対処し、行動し、運動を作り上げていかなければならない。つまり、今こそ、すべての労働運動と平和運動と市民運動の連帯と結合と団結が必要不可欠なとき!