主役の組合員・松尾聖子さんも来場して訴える

約80人が映画を鑑賞

松尾聖子さんと西澤かおりさんの対談

県労組会議や県護憲連合、I女性会議などでつくる実行委員会は2月18日、長野市の県労働会館で、建設や生コン関連の労働者でつくる「全日本建設運輸連帯労働組合」(全日建連帯労組)関西地区生コン支部に対する使用者団体や警察などによる大弾圧事件をテーマにしたドキュメンタリー映画「ここから『関西生コン事件』と私たち」上映会を開きました。休みの日の午前中にもかかわらず約80人が参加し、関西生コン支部の女性組合員・松尾聖子さんを主役とした映画を鑑賞しました。

映画は、ストライキやビラまき、建設現場の法令違反是正を求める調査・申告活動(コンプライアンス活動)などの正当な組合活動は、労働組合法で刑事免責が明記されているにもかかわらず、威力業務妨害、強要未遂、恐喝未遂といった刑事事件にでっち上げられ、のべ81人もの組合員が逮捕、起訴(66人)された労働運動史上でも類を見ない大弾圧事件を、一人の女性組合員の生活や活動、思いを描写するなかで弾圧の不当性を訴えています。

上映会場には、主役である松尾聖子さんも駆けつけてくれました。映画上映の後、私鉄アルピコ労組川中島バス支部の西澤かおりさんとの対談も行われました。対談の司会は、I女性会議の松澤佳子さん。

参加者のアンケート回答には、「このような異様な弾圧事件を知らなかった。労働者の権利を守り抜くために支援しなければと感じた」「普通の女性労働者が悩みながらも闘う姿に感動した」などの感想が寄せられました。

「労働組合があったから働き続けられた」

松尾聖子さんと西澤かおりさん(アルピコ労組)の対談(要旨)

対談後に3人で記念撮影。

松澤佳子(司会) 松尾さんも、西澤さんも「労働組合があったから働き続けられた。闘ってこられた」と感じていますね。

松尾聖子 生コン業界は労働組合の影響がすごく強くて、労働組合に入っていない人でも賃金とかは高い。組合員と同等になっていたので。知り合いに紹介してもらって、初めて小型のミキサー車を乗った時も「賃金をなんでこんなにぎょうさんもらえるんやろ」と思った。職場を移動し、労働組合が三つあった。組合に入っていない人たちは、組合をよく思っていなかったけど、でも、組合があるから賃金や労働条件が良いと分かってはった。男女平等なので女だから賃金が安いこともなかったし、何か決めるときでも対等で決めていくこともすごいなと思った。労働組合で学習とか活動していると、言いにくいことも言えるようになるし、周りもちゃんと理解しようとしてくれるから、一人では何もできないけど仲間が増えていって理解が広がっていった。

松澤佳子 映画の中でも「男女関係なく仲間だ」と言っている人がいたけど、労働組合が民主的に運営されているのが本当に必要だと感じた。

西澤かおり ユニオンショップなので、入社したら組合員になる。何もわからずに組合員になっていた。映画を見たとき「私甘っちょろいな」と感じた。守られているのが当たり前だとずっと思っていたので、それが当り前じゃないんだと実感させてられた。私が労働組合が一番ありがたいなと思ったのは、2000年に小泉政権の下で規制緩和が進み、バス料金が安くなって、バスガイドは別料金になった。そこで会社から労働組合のない「子会社に行きなさい」と条件が提示された。やめるか、事務員になるか、バス運転手という選択も示された。私は、仲間と労働組合に支えられてこの仕事を続けられてきたので、一大決心をして大型二種を取ってバス運転手になった、労働組合やまわりの人に助けられたから、バス運転手として働き続けられている。

松澤佳子 今コロナ禍で仕事がなくなり賃金が下がり、すごく退職者が増えていて、どう思っているか。

西澤かおり 女性の仲間をたくさん迎え入れることができた。その女性たちが働き続けられるために、私が訴えていかなければならない。家庭もあって仕事もあるので、女性が男の働き方と一緒でなくてもいいと思う。家庭と仕事が両立できる職場をつくっていきたい。朝の6時から夜の8時までの間で女性を働かさせてほしいと会社に求めている。子どもが大きくなったら朝早い仕事や夜遅くてもいいと思うが。長く働き続けられるために労働組合があると思う。

松尾聖子 弾圧でやめて行った人がすごく多い。連帯労組と一緒に沈みたくないという人もいて、誰も止められずに辞めていったことがつらかった。

松澤佳子 映画の中での聖子さんの「間違ったことをしていないから絶対にやめない」という言葉が印象的だった。仲間が去っていく中でも活動し続ける原動力は。

西澤かおり 仲間が一番大切だと思う。入社した時に「お前が一番先にやめる」と言われたが、一番最後まで残っている。おべっかも使わないし、飾らないし、こんな自分を貫き通した。男社会と言われるバス業界で、私を理解してくれた仲間がいることが原動力。仕事は接客業なので、お客さんと接したときに一言、「ありがとう」と言っていれる人がいるとがんばっていこうと思える。

松尾聖子 関西生コン支部も人と人とのつながりを大事にしている。自分もストレスをためて、娘や親の前で泣いて、部屋から出られなくなったり、しんどかった時期があったが、関生支部の仲間がずっと声をかけてくれた。人とのつながりを大切にする関生があるからやめない。

松澤佳子 仲間とのつながりや自分のことを正直に出せる、そのことが働き続けていくうえですごく大事で、それが労働組合があるからできるんだと自分自身も感じている。自分も40年間も労働組合活動を続けてきたが、男が多い労働組合の中で女性が声をあげていくことは大変だった。

西澤かおり 映画を見て「私本当に甘っちょろいな」と実感しました。このような闘いを貫き通せるかどうか、ストライキも昔はやったけど、今は世間から怒られるんじゃないかという雰囲気。労働組合が無ければ、一人では声をあげられない。私は仲間に助けられている。聖子さんももっともっと仲間をつくって、さらにパワーアップしてほしい。

松尾聖子 世界では今、若者がストライキを打っている。ストライキを打つことが当たり前の世の中になるように、労働者が団結する世の中にしていきたい。