2021年1月22日に核兵器禁止条約が発効となり、間もなく2年を迎えようとしています。条約では前文において「核兵器使用の被害者(ヒバクシャ)及び核兵器の実験により影響を受けた者にもたらされる容認しがたい苦しみと被害に留意し」「核兵器のいかなる使用も人道の諸原則及び公共の良心に反するであろうことを再確認し」と記載しました。そして、核兵器の開発、実験、生産、製造、取得、占有、貯蔵などを禁止し、核兵器の使用、その使用の威嚇を行うことを禁止しています。

長年にわたるヒロシマ・ナガサキのヒバクシャの核兵器廃絶、ヒバクシャ援護への訴えが、この条約の大きな原動力になったことは疑いがありません。被爆者が、そして人類が長年求め続けてきた核兵器そのものを法的に「禁止」する条約として、核兵器廃絶への歴史的一歩と評価できるものです。

しかし、今年2月に開始されたロシアによるウクライナ侵攻は、現在も各地で激しい戦闘が続いており、多くの市民の被害が報告されています。また、ロシア軍による核兵器使用の威嚇や原発への攻撃・占拠は、この間、核軍縮に向けた積み重ねを踏みにじる暴挙です。軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)の拡大や、ウクライナ東部のロシア系住民に対する迫害を口実にしていますが、いかなる理由があろうとも、断じて許すことができない蛮行であり、抗議の声をあげ続けていかなくてはなりません。

ウクライナによる反撃も強まるなか、ロシアによる核兵器使用の可能性も指摘される緊迫した情勢にありますが、そうした暴挙を許さないために、市民が声を上げ国際世論の形成を押し進めることが必要です。

こうした状況にあって大きく問われなくてはならないのは、戦争被爆国である日本の役割です。岸田文雄首相は広島県選出であり、これまで「核軍縮はライフワーク」と語ってきた人物であることもあり、日本政府の姿勢の変化を期待する声もありましたが、「核抑止」論へ依存する態度を維持し続けています。さらに、核兵器禁止条約には署名・批准をしない姿勢を続けています。唯一の戦争被爆国である日本は、被爆の実相や、核兵器の残虐性、非人道性、被爆者の思いを世界に発信する責務があります。日本政府の主張は、それらの視点を欠いています。今後、核兵器禁止条約の実効性を担保するためにも、日本は核抑止政策に拘泥することなく条約を批准し、核保有国の条約批准を促していく立場に立たなくてはなりません。

長野県原水禁は、長野県原爆被害者の会(長友会)、県原水協、県生協連、県教組などとともに「核兵器禁止条約をひろげる長野ネット」をつくり、日本政府が核兵器禁止条約に署名・批准するように求めて活動をしています。現在、内閣総理大臣あての要請署名を展開しています。来年1月22日の条約発効2周年にあたり、長野ネット独自に日本政府に署名を提出する方針です。

「自分事として核兵器について考えている」-杉尾秀哉さん

12月3日、核兵器禁止条約をひろげる長野ネットの代表者・事務局が長野市・県教育会館で杉尾秀哉・参議院議員と懇談しました。杉尾さんは「自分の妻は広島出身で被爆2世。核兵器の問題は他人事ではなく自分事としてとらえている」「岸田政権は『敵基地攻撃能力』を保有する方針を打ち出し、大変危機的な状況だ」「何としてもこの動きを止めなければ」などとあいさつしました。