長野県危機管理部や自衛隊駐屯地に申し入れ
祭り当日には駐屯地門前で抗議のスタンディング
岸田文雄政権は、ロシアのウクライナへの軍事侵攻や中国、朝鮮民主主義人民共和国の「軍事的脅威」を理由に、防衛費の対GNP比2%への倍増、「敵基地攻撃能力」の保持と日米軍事同盟のさらなる連携の強化など、日本が戦後、長らくとってきた「専守防衛」を根本的に転換し、自衛隊を「普通の軍隊」へと変質させようとしています。
このような状況のなか、陸上自衛隊松本駐屯地は10月29日、創立72周年を記念した駐屯地祭りを市民に開放する形で開きました。新型コロナの感染拡大により2019年以来3年ぶりの開催で、当初4月に予定されていましたが秋に延期になっていたものです。県労組会議や県護憲連合、松本地区の労組や民主団体などでつくる「連絡会」は、30年以上にわたり、自衛隊祭りが市民や子どもを巻き込んで開催されることに反対してきました。祭りでは、戦争の場面を再現する「模擬戦闘訓練展示」や武器・兵器の展示など、まだ、判断能力のない子どもたちに「カッコイイ」と思わせるような催しが毎年実施されています。
県労組会議や県護憲連合、自衛隊祭り反対松本地区連絡会議などは、好戦的な自衛隊祭りのあり方に異議申し立てするため、10月に長野県。松本市への要請、自衛隊駐屯地への申し入れ、祭り当日に抗議のスタンディング・街頭宣伝などを行いました。
長野県には「武力攻撃事態」を想定した訓練に関しても申し入れ
県労組会議、県護憲連合、県労連、県憲法会議、県教組の5団体は連名で10月17日、長野県危機管理部に対し、自衛隊祭りに関する要請書を手渡して意見交換しました。
申し入れでは、自衛隊祭りでの模擬戦闘訓練や武器類の展示・軍用車試乗はまだ十分な判断力のない子どもたちに好戦的な感覚を植え付けるだけなので、教育的見地から、県代表が出席しないように求めました。これに対し県側は、「台風19号での災害救助など、自衛隊には災害時に大きな支援をいただいている。その御礼の意味で、副知事が出席する」と回答しました。また、9月県議会で阿部守一知事が、国民保護法の「武力攻撃事態」を想定した訓練の実施を検討する考えを示した件に関して、実施する判断に至った経過と目的等をただしました。県側は、「国からの要請もあった。訓練の概要などはまだ何も決まっていない」と答えました。参加者からは「いたずらに危機感をあおるような対応はせず、平和的な外交を国に求めるようにしてほしい」などとくぎを刺しました。
なお、松本市や松本市教育委員会に対しても同様の申し入れが実施されました。
自衛隊松本駐屯地へ15人で申し入れ
小部屋に押し込み、立ったままでの不誠実な対応
10月25日には、県労組会議、県護憲連合、松本地区の労働組合、民主団体など10団体15人が陸上自衛隊松本駐屯地に申し入れを行いました。駐屯地側は広報担当が対応しましたが、参加者を3畳程度しかない部屋に押し込み、立ったまま話をするという極めて不誠実な対応。
申し入れ書では、「駐屯地祭りにはまだ十分な判断力がない子どもたちも多く参加し、戦争を賛美する駐屯地祭りの企画内容が、子どもたちに好戦的な感覚を植え付けてしまうのではないかと危惧」するとし、① 模擬戦闘訓練展示は実施しないこと、②銃器・武器などの展示は中止すること、③駐屯地祭りの模擬戦闘展示の事前訓練、あるいは当日の訓練展示において、複数のヘリコプターが駐屯地周辺を低空飛行しているが、その騒音は市民の平穏な生活を脅かすものであり、住宅密集地の上空を飛行するため安全確保の上でもきわめて問題である。事前訓練および当日の訓練展示においてヘリコプターの使用を中止することなどを求めました。
駐屯地の広報担当者は、「祭りは模擬戦闘訓練も含めて予定通り実施する」と答え、「ヘリコプターによる訓練展示の事前訓練や当日、過去に近隣住民から苦情があった」と明らかにしましたが、「模擬戦闘訓練のための訓練や当日の訓練展示を中止するつもりはない」と答えました。
自衛隊祭り当日には約20人が駐屯地門前で抗議の街頭宣伝
10月29日には自衛隊祭りが市民に公開する形で実施されました。反対連絡会のメンバー約20人は、駐屯地正門前の路上で、「戦争賛美の自衛隊祭り反対」や「戦闘場面を子どもたちに見せないで」などと書かれたプラカードや横断幕をもって抗議のスタンディングを行いました。また、ハンドスピーカーを使って、祭りに参加する親子連れなどに「展示されている武器・銃器は人を殺すものだと子どもたちに教えてほしい」「戦争をあおる模擬戦闘訓練は中止しろ」などと訴えました。
スタンディングの終了後、監視行動として駐屯地内に入り、武器・銃器の展示や模擬戦闘訓練の様子などを監視しました。子どもたちが自由に軍用車両に乗ったり、銃器を間近で見て自衛隊員の説明を喜々として聞いていました。監視行動を終えた参加者は「子どもたちにどういう影響があるのか心配になる。自衛隊の本来の目的は戦闘する集団であり、戦争となれば人を殺傷する場面があるんだと子どもたちに伝えたい」と感想を述べていました。