21世紀のキーワード―平和・人権・環境

長野県平和・人権・環境労働組合会議

アスベストによる健康被害が深刻さを増している

県アスベスト対策センターが松本市で相談会を開設

面談・電話で8件の相談-多くが建設業で働く人から

2005年のクボタショック以降、アスベスト(石綿)問題が、労働現場でのアスベスト使用や解体に伴うばく露、中皮腫・肺がん発症など労働災害問題にとどまらず、一般市民にも健康被害を及ぼす危険性が明らかになり、重大な社会問題として認識されるようになりました。

アスベストによる健康被害は、40年と言われる長期間にわたる潜伏期間ののちに中皮腫、肺がんなどが発症するため、アスベスト大量使用時代に現役であった労働者や関連工場の周辺住民の健康被害が現代の問題として浮上しています。また、アスベストの吹付、建材に使用された建築物の解体時期を迎える問題も地域社会にとっては重要な課題です。高度経済成長時代の効率のみを追い求める社会風潮が生み出したアスベスト問題は、経済優先の「負の遺産」です。これからの時代は、何よりも人の命や健康を優先させる社会が求められています。

長野県内でもアスベストを扱う事業所での労働者のばく露問題や建築物に使用されるアスベストの解体・補修時の飛散問題など、大きな社会問題となっています。JR東日本では現役の社員がアスベストばく露により悪性胸膜中皮腫を発症、闘病のすえ死亡するという労働災害も注目を集めました。

また、2019年10月の台風19号では、東北信地域を中心に甚大な被害がでましたが、被災地に多くのボランティアが支援に駆け付けてくれました。アスベストが含有される建材をボランティアが扱う場面も見られ、長野市は、注意を喚起するチラシの作成やマスクを配布するなど、安全を確保するための対策を講じました。

「長野県アスベスト対策センター」は2018年4月に結成しましたが、「NPOじん肺・アスベスト被災者救済基金」(神奈川県)の協力により、長野県内の県民・労働者、関係事業者などを対象に7月17日、松本市勤労会館で面談・電話相談会を開設しました。相談会を通じて、アスベスト被害の実態を掘り起こすとともに、少しでも悩みや疑問がある人からの相談への対応や、健康被害で苦しんでいる人への救済制度の説明など、身近な相談センターとしての社会的役割を果たす目的で、今回が9回目となります。


建築物の解体工事や屋根をふく作業に従事した人から相談

相談会は10時から16時まで開設しました。相談は面談で4件、電話で4件(事前相談含む)あり、5件が建設業に携わる方からの相談でした。「屋根をふく作業をして、アスベストを含む建材を切断した」「内装業でアスベストが含有している壁ボードを張る作業をした」「昔、左官業をやっていて、壁塗り材にアスベストを混合する作業をした」「亡くなった父は鉄骨組みをしていて、アスベストの吹付作業もやったと言っていた」など、とりわけ建設業で働く人からの健康被害の相談が多くを占めました。

現在、アスベスト材の吹き付けや、アスベストを含む建材の製造は禁止されていますが、1960年代からの高度経済成長期にはビルの建築現場でのアスベストの吹き付けや、壁や天井に使用されるボードにアスベストが混合されていました。そのような建築物がこれから2020年代の後半にかけて、解体のピーク期に入ります。

アスベストの健康被害は、過去に終わった問題ではなく、これからの問題だと改めて実感した相談会でした。

面談相談は新型コロナ感染防止対策を取って実施。Zoomで神奈川県の相談員とつないで対応した。

相談会を事前に報じるNHK長野放送局のニュース(ホームページより)

労働組合があったから働き続けられた

権力弾圧に抗する全日建関西生コン支部が県内オルグ

県労組会議は7月15日~16日の2日間、全日建関西生コン支部第3次オルグを行いました。全日建連帯労組本部からは小谷野毅書記長、関西生コン支部からは組合員の松尾聖子さんが来県しました。初日は長野、須高地区を中心に各単組へのオルグ、夕方には報告集会、翌日は午前中松本地区の単組の仲間との意見交換会、午後は「21世紀の労働運動研究会」での講演と報告とハードな日程でしたが、熱い思いが伝わる2日間でした。

YouTubeのヘイト動画により、関西生コン支部は「反社会的」な労働組合であるような印象を持っている仲間もいましたが、オルグを重ねるごとにそのイメージは払拭されているように思います。

特に、松尾聖子さんが「シングルマザーとして3人の子どもを育て上げられたのは、男女同一の賃金が保障されたいたからであり、盆や正月など勤務日数が少ないと賃金が減ってしまうことを労働組合が交渉で解決してくれた。生コンは90分以内に運ばないと固まってしまうので、生理のときはズボンをよごしてしまうこともあり、2日間の有給の生理休暇を獲得したことは本当にありがたかった。労働組合があったから働き続けられた」「義兄が保育所入所のための就労証明をめぐって逮捕された際に関西生コン支部の組合員であるというだけで自分のところにも捜査令状なしで警察の組織対策課が『ガサ入れ』に入った。エアコンの室外機の下を探られ、下着までかき回された。悔しい思いをした。自分は何も悪いことはしていない。泣き寝入りはできない」と悔し涙で訴え、私自身も胸が詰まりました。

私鉄の女性組合員は「厳しい状況下で闘っているからこそ共感する」と話し、自治労の仲間も「自分たちがもっとしっかり運動をしていくことで支えていきたい」、国労の仲間からは「自分たちも攻撃を受けて全国の仲間に支えてもらった。共に闘いたい」など支援していく決意が述べられました。今回のオルグには映画監督の土屋トカチさんも同行され、この秋には松尾聖子さん主演のドキュメンタリーが公開されることを聞き、多くの仲間からぜひ地区や単組で上映会をやりたいという声もあがりました。

小谷野書記長は講演で「延べ81人の組合員逮捕、弾圧による脱退者が500人を超える厳しい状況にあるが、裁判の過程で弾圧の狙いは明らかに不当な、組合つぶしであることが明白になっており、『無罪』判決も出ている。潮目は変わっている」と話しました。

思い返せば、国労をはじめ、これまでも資本の側に都合の悪い労働組合への熾烈な弾圧は繰り返し行われ、人格や尊厳がふみにじられてきました。どんな人でも人格を否定されたとき、傷つき心が折れそうになります。それでも、闘いの中で、松尾聖子さんのように不屈の精神を持った仲間も生まれます。見て見ぬふりをして弾圧に加担するのか、立ち上がって闘う仲間を支えて労働者の尊厳を守るのか、問われています。

長野県平和・人権・環境労働組合会議 議長 松澤佳子

関西生コン支部の松尾聖子さん

全日建連帯労組本部の小谷野毅書記長

映画監督の土屋トカチさん

 

 

長野電鉄労組

アルピコ労組川中島バス支部

国労車両所支部

国労長野地方本部

長野市職員労組

支援集会で松尾聖子さんと

自治労県本部

松本市での懇談会

若者がヒロシマの火をもって県内を疾走

8月10日まで反核平和の火のリレーを実施中

県労組会議青年女性連絡会や民主団体でつくる県平和友好祭実行委員会は、核廃絶や平和の大切さを訴えてランナーが県内を回る「反核平和の火リレー」を実施中です。

7月13日には、松本市役所で出発式が行われ、火が燃えるトーチを持ったランナーが走り出しました。トーチに灯した火は、広島の平和記念公園で燃え続ける「平和の灯」から採火したものです。県平和友好祭実行委員会の高頭千江子委員長 は「ロシアのウクライナ侵攻があり世界平和を願う声が上がっているので、それを胸にゴールまで走り継いでいきたい」と話しています。今年は約600人のランナーが交代で走り、県内77市町村すべてを回って、ゴールの辰野町(8月10日)をめざします。

トーチを持った青年・女性を見かけたときは、声援をお願いします。

松本市役所での出発式

県庁に入るランナー

ミャンマーを忘れない-善光寺仁王門で支援募金

御開帳訪れた観光客に呼びかけ、1時間半で13万円の善意

6月11日、ミャンマー民主化を支援する信州の会(代表=若麻績敏隆・善光寺白蓮坊住職)は、御開帳で賑わう善光寺仁王門でミャンマー民主化支援の募金活動を在日ミャンマー人の皆さんと一緒に行いました。

ミャンマーの国軍・軍事クーデターから既に1年4カ月。警察・国軍による暴力的な鎮圧によって、2,000人を超える市民が虐殺され、大規模デモができないように強圧的な警備体制が敷かれています。そのなかでも、市民は小規模・短時間のデモやサイレント・ストライキなどで粘り強い抵抗を続けています。

ロシアのウクライナへの軍事侵攻の報道が連日続いているなか、ミャンマー民主化問題への関心が薄れてきています。しかし、ミャンマーに自由と平和はいまだ回復していません。ウクライナでもミャンマーでも犠牲になっているのは市民であり子ども達です。

ミャンマーを忘れない!ミャンマー民主化を支援する募金は、この日、1時間半で13万67円の善意が寄せられました。十分な食べ物もなく避難を余儀なくされている市民をはじめ、子ども達に、食料・医療などを届けるために活用させていただきます。

善光寺での募金活動は代表を務める若麻績住職の手配で実現しました。

募金活動の後、15時から善行寺本堂で犠牲者を弔う法要も行われました。参加した31人の一人ひとりの名前を読み上げてもらい追悼しました。

信濃毎日新聞(2022年6月12日)

仁王門の下には多くの観光客が

在日ミャンマー人も募金を呼びかけた

募金をしていただいた方には特製のポケットティッシュを贈呈

回向柱の前には行列が

 

 

 

市民と野党の統一候補・杉尾ひでやさんが再選!

7月10日、参院選の投開票が行われ、市民と野党の統一候補・杉尾ひでやさんが自民党候補に約5万票の差をつけて再選を果たしました。支援をいただいたすべてのみなさまに感謝申し上げます。

しかし、全国的には自民党が圧勝し、参議院での改憲勢力は3分の2を超えました。今後、政治が暴走しないように国民・労働者の監視体制が重要です。信州の地から9条改憲と大軍拡を許さない声を中央政治に届けましょう。

参院選 大激戦!最後の4日間で勝敗が決する

立憲野党・リベラルな議席を何としても守り抜こう!

杉尾ひでやさんへ最後の支援を!

参院選長野県選挙区の最終盤の情勢は、市民と野党の統一候補・杉尾ひでやさんと自民候補がまさに横一線。大激戦です。

残る4日間の行動次第で、勝敗が決することになります。

信州市民連合は、共同代表の又坂常人さんからの終盤アピールを発表しました。

参院選の争点③ 新自由主義政策の転換こそが求められている

岸田「新しい資本主義」はアベノミクスの焼き直し

本当の意味での「再分配」政策を

2年半以上続くコロナ禍は、非正規労働者や女性、ひとり親家庭、外国人労働者など社会的に弱い立場に置かれている人々の労働と生活を直撃しました。社会活動や経済活動が正常に動いているなかでは表面化しなかった事態が、コロナ禍によってあぶりだされています。

このような危機的な事態を生み出した原因は、ここ数十年、日本の基本政策として政府・自民党が続けてきた「新自由主義政策」にあります。社会・経済のあらゆる分野に「競争」と「市場主義」を持ち込み、「公助」を切り捨て「自助」と「自己責任」を強いる政策は、強い者はより強くなり、弱い者はより弱く、富める者はますます富を蓄積し、中間層は解体されていきました。これにより、日本社会には、格差と貧困が広がり、新たな「階級社会」が出現してしまいました。

コロナ禍は、この日本社会の“不都合な真実”を多くの人々の前にさらけ出しました。

岸田政権は「新しい資本主義」を打ち出していますが、この30年間の新自由主義政策の反省、批判的な総括がないなかでは真の意味での政策転換とはなりません。参院選では、格差と貧困を拡大し、大企業や富裕層だけが優遇されてきた新自由主義政策の転換こそが求められています。そして日本社会を公助や共生、格差是正のための再分配、助け合い社会へ転換していく契機にしていく必要があります。

参院選の争点② ウクライナ危機を利用して進む憲法改悪論議

改憲勢力に「黄金の3年間」を与えない参院選に!

ロシアのウクライナへの侵攻は断じて容認できませんが、自民党や維新の会などがこの機に乗じて、「緊急事態条項」の創設や9条への自衛隊明記などを想定した憲法改悪論議の強行など「火事場泥棒」的な対応を取っていることにも強く抗議します。

国民の暮らしはコロナ禍で痛めつけられ、中小零細事業者の経済活動も縮小や撤退を余儀なくされています。今、政治がなすべきことは、憲法改悪論議ではなく、働く人の権利と仕事を再構築、自助・自己責任の政策から公助と共助を優先する政策への転換を図ることです。

参議院選挙の結果次第では、参議院でも改憲勢力が3分の2以上の議席を占めて、憲法改悪の国会発議が現実のものとなりかねません。参院選では決して改憲勢力に投票しないようにしましょう。改憲勢力に黄金の3年間を与えないためにも。

SBC信越放送は7月1日、参院選の争点である憲法改正問題を特集したニュースを放映しました。信州護憲ネットの代表委員を務める松澤佳子さん(県労組会議議長)がインタビューで登場しました。市民と野党の統一候補・杉尾ひでやさんも、今すすむ改憲論議に反対する立場で発言しています。SBCニュースの内容をチャプター画面で紹介します。

 

参院選の争点① 福島原発の事故は終わっていない

避難者への支援を打ち切る冷たい政府

中日新聞長野版(6月30日)に、福島原発からの自主避難者としてインタビューを受けた草野麻理子さん(県労組会議書記)の記事が掲載されました。原発事故から11年以上が経過し、政府・東京電力は避難者に対しての支援を次々と打ち切っています。原発事故は全く収束していません。参院選では、原発問題も大きな争点の一つ。避難当事者として発言する草野さんの記事を紹介します。