「原水爆禁止日本国民会議松本地区協議会」が主催して、3月5日松本市エムウィングで、福島県いわき市在住・いわきの初期被ばくを追及するママの会代表の千葉由美さんが「原発事故後の子どもを守る取り組み~この社会は子どもたちを守れるか」と題して講演されました。コロナ禍にもかかわらず、会場には53人の方がつめかけ、熱心に報告を聴き入っていました。
『経済>いのち』という構図の社会に驚愕し、現状を可視化することから始めた
3人の子を持つ母である千葉さんは、事故当時は一番下が小学校3年生で、原発事故からわずか3週間後の2011年4月6日に例年通りの日程で始業式が行われることに驚愕し、この国は原発政策の失敗を認めず改めようとしない、健康よりも経済を最優先する国なのだと悟り、母親のネットワークを立ち上げました。子どもたちを守る体制をつくるためです。
千葉さんは、まずは目に見えない放射能汚染を可視化するしかないと考え、放射線量を測ることから始めました。とは言っても、最初はたった一人での活動で、孤独との闘いでした。徐々に仲間が増えていった中でも、家族や親せきからの反対を受け、ネットワークから離れていった母親もいたそうです。
測定プロジェクト TEAMママベク 子どもの環境守り隊
このプロジェクトでは、以下のような活動を積極的に行っています。
・初期被ばくをしてしまった子どもたちの追加被ばく防護を求めて、いわき市長へ公開質問状を提出
・母親が不安と恐怖でヒステリックになっているだけと思われないために、いわき市内の教育・保育施設・公園等放射線量と土壌汚染調査を、子どもの行動を想定した母親目線でのモニタリング
・国のモニタリング・除染基準は、敷地の四隅と中央のみだが、ママベクでは敷地内を隈なく測定し、放射線による影響を受けやすい子どもに沿った独自の基準を設け、ホットスポットとして報告
・土壌汚染濃度についても独自で調査、放置せず注意を促す看板を試作し提案
・放置された土嚢袋、汚染堆積物を報告書にまとめ撤去を求める
・2019年豪雨災害時の河川の氾濫、汚泥流出による放射能汚染拡大の影響を迅速に調査
・公園や学校などで国の除染を待ちきれずに保護者や教師らが表土を除去し土嚢袋に詰めた汚染土を発見し、除染課に報告
※それに対しての行政・国の対応は、健康に影響を及ぼすほどではない、ずっとそこに居るわけではないから大丈夫という判断などで無対応との報告でした。
いわき市には未来へ残すモニタリング測定情報がない
福島原発事故モニタリング体制の問題点として、土壌汚染の除染基準を設けず測定をしていないという現実があります。よって、原発事故による汚染の実態が記録に残らず、健康被害が出ても証拠がないのです。これにより、ママベクで地道に活動してきた土壌測定結果をいわき市で保管し、未来に生かしてほしいとお願いしているところです。
汚染水海洋放出への福島県の姿勢 「県が容認する容認しないという立場にあるとは考えていない」:内堀県知事
福島県民が最も頼りとする県知事さえも、未だにはっきりさせない態度に、憤りを隠せない様子でした。原発事故から11年を検証したことで何が見えてきたのか、この社会が子どもたちに何を伝えたのか、「原発事故は起こっても大丈夫」・・・なんとも悲しい検証結果にうなだれる思いでした。
離れていても、長野から全国から声を上げること
それでも、私たち市民一人りひとりができること、諦めないで声を上げることだと思います。決して気持ちで負けることなく千葉さん達を支え、一緒に頑張っていくことが大切だと思いました。