ミャンマー民主化を支援する信州の会は、1月22日に長野市生涯学習センター(TOiGO)で、シンポジウム「ミャンマーに平和と自由を~国軍クーデターの衝撃から1年」を開催しました。
昨年の2月1日に発生したミャンマー国軍による軍事クーデターから1年という節目を前に、県内外の支援関係者、ミャンマー在住の日本人、県内外在住のミャンマー人がオンライン形式で多数参加するシンポジウムとなりました。県内の他、北海道や広島などからのオンライン参加者・会場参加者あわせて約80人が参加しました。
シンポジウムの冒頭で挨拶する若麻績代表
長野県内のほか全国各地から50人がオンライン参加した
ミャンマーのヤンゴン市在住の新町智哉さん(映像プロデューサー)から現地の状況についての報告をいただきました。
パネルディスカションでは信州大学の佐藤友則教授(信大グローバル化推進センター)をコーディネーターに、現在のミャンマーを巡る情勢について意見交換が活発に行われました。東京・池袋のミャンマーレストラン「スプリングレヴォリューション」など新たな支援の取り組みや、信州の名産品を活かすことで地域活性化にも繋げる支援のアイデアなどがシェアされました。
日本に住むミャンマー人の方も多数参加されて、当事者としての現状への思いや、民主化支援への様々な取り組みについて紹介いだきました。今後の活動に活かせる有意義なシンポジウムとなりました。
ミャンマー民主化を支援する信州の会は、今後も、学習会やミャンマー料理教室なども企画していく予定です。
【シンポジウム概要】
若麻績敏隆代表あいさつ:
みなさん、こんにちは。今日は寒い日です。マイナス10℃の中で善光寺でお経を読みました。クーデターから1年。10月に長野県議会にミャンマーに関する意見書の請願をして全会一致で可決されました。その後、長野市議会でも可決されました。ミャンマーは仏教の国で、八正道の一つに正見があります。正しい情報に基づいて行動を起こしていきたい。
(1)ミャンマー現地からの最新状況の報告
新町智哉さん(映像プロデューサー):
ヤンゴンにいる。現在停電中でバックアップで繋いでいる。
ミャンマーで映画製作を行っている。コロナの影響が広がる中でクーデターが起きてしまった。発生当初は取材があっても断ってきた。しかし2021年2月28日に、ヤンゴン市の自宅に催涙弾が撃ち込まれた。在ミャンマー日本国大使館の注意喚起で「日本人宅に催涙弾が着弾」と3月1日に発表された。その出来事以降、取材を受けるようにした。
在ミャンマー日本国大使館の発表
現在、名前と顔を出して取材を受ける人は少ない。
他にもニューズウィークが運営する「WorldVoice」で発信をしている。
基本的には、ジャーナリストではないので、あくまでエンターテイメントに関わるものとして、一般人の目で見たミャンマーについて書いているのでよかったら読んでほしい。
WorldVoice ミャンマーでエンタメとクリエイトする日々(新町智哉)
「長野で行われたミャンマーシンポジウムで講演とパネラーをした話」
https://www.newsweekjapan.jp/worldvoice/shimmachi/2022/01/post-59.php
ミャンマーが平和になったという間違った情報が流れている
ジャーナリストではないので綿密な取材をしたというものではなく、あくまで生活の範囲で見聞きしていること感じていることを率直にお伝えできたらと思う。
大晦日のダウンタウンの通り(ヤンゴン市)
12/31のダウンタウンの賑やかなエリアの写真。遠くにスーレーパゴダの仏塔が見える。東側の道路から撮った写真。普段は大渋滞で進まないが、この日は空いていた。今でこそミャンマーでは12月31日と1月1日は祝日になっているが、ミャンマーの正月は4月なので、本来ならもっと賑わっていた。コロナやクーデターがあり今では交通量は減っている。
ダウンタウンの商店(ヤンゴン市)
ダウンタウンのバーなどのお店が並んでいたエリアの写真。閑散としている。クーデター前は、在留邦人で音楽バンドを組んでよく演奏をしていたバーだったが、いつのまにか閉店してした。コロナやクーデターの影響で多くの店が閉店してしまった。
ショッピングモールRUBY MART(ヤンゴン市)
同じダウンタンの大きなショッピングモール。昨年4月に不審火で全焼してしまった。軍系のデパートと言われていたが、今でも犯人は分かっていない。前日に荷物が持ち出されたという噂もある。真相はわからない。いまだに放置されている。
交差点にある交番(ヤンゴン市)
ダウンタウンから離れた写真。交差点の中にある交番。クーデター以降、軍が国民を見張る場所になっている。ミャンマーでは、日本と違い警察は軍の下部組織。非常時は警察は軍の指示に従う。当初デモの弾圧は警官隊によって行われていたが、そこに軍人も加わっていたらしい。国民からすれば軍も警察も一緒という認識。
昨年の9月7日、NUGが防衛戦を開始すると宣言。PDF(国民防衛隊)が組織され、国民が武器をとって戦っている。
ヤンゴンでも毎日誰かが拘束され亡くなっている
昨年の3月、4月には身の危険を感じていたが、その後は減ってきている。しかし毎日、どこかで人が拘束されていたり、亡くなっていると聞く。地方では国民防衛隊と国軍の戦闘が続いている。日本人は安全だが、ヤンゴンでは毎日誰かが亡くなっている。
日本政府のミャンマーの危険レベルは、全体的には「レベル2:不要不急の渡航は止めてください」。昨年の6~8月はコロナの被害が大きく数万人が亡くなっている。邦人は200人くらいまで減ったと言われていた。コロナ前は3500人~4000人の在留邦人がいた。正式な発表はないが、いろんな方から聞いた数字で、現在1000人くらいまで戻ってきている。
アメリカや韓国などの各国は「レベル3:渡航中止勧告」や「レベル4:退避勧告」にしている。日本は、レベル2だから戻っている。注目してほしいのは、更新が昨年の2月21日。現在まで更新されていない。理由も説明していない。異常なことに感じる。
大企業の在留者が増えている。ミャンマーが平和になったという間違った情報が流れている。2/1を間近に控え、認識の甘さがあって在留日本人が事件に巻き込まれたりしたら責任が問われると思う。
ミャンマーの大多数の国民が軍政を支持していないと私は感じている。しかしその意思が日本に伝わりづらい状況がより一層深まってしまうのではないかと心配している。いかに民意をすくいあげていくことができるかが求められていくと思う。
ポイントは二つ、「これまでの活動を続けること」と、「各団体が連帯を意識して声をかけあうこと」が大事。
(2)パネルディスカッション
ミャンマー人Aさん:
日本に来て20年目になる。今年1月に父親が他界したが帰国できなかった。
パンフの配布活動、募金活動や署名活動を行っている。
この一年募金活動しているが限界ある。毎週やっていると飽きられている。池袋に「スプリング・レヴォリューション」というレストランができて成功している。利益を支援として送っている。継続的な支援ができるビジネスが必要。
ミャンマーに帰れないミャンマー人への支援を行っている。今後、継続した支援を行っていくためにミャンマーに帰れない求職中のミャンマー人を日本企業へ紹介する人材紹介を事業化していく。
日本政府は軍政を認めないでほしい。それが一番、一方、NUG(国民統一政府)を出来る範囲で認めてほしい。今まで、ミャンマーで活動してきた日本企業や組織は、積み重ねがあるため、クーデターが起きたからといって止められなくなっている。
新宿で開催された「SPRING FESTIVAL」
ミャンマー人Bさん:
15年前から日本にいる。クーデターが起きる前はミャンマーに帰国するつもりだった。真の民主国家になるために努力している。
日本ミャンマー協会に期待していない。元から国軍寄り。日本国民のことは心から信じている。日本人の何とかしてあげたいという気持ちを感じています。ミャンマー国内では多くの人が亡くなり、心の傷が大きい。NUGをサポートしてほしい。その動きが大きくなれば、日本政府も認めざるを得ないのではないか?
国軍を心から嫌っており、一緒に暮らしていけないと国内のミャンマー人のほとんどが思っている。今回のことで、ミャンマーが本当に一つになった。初めてのこと。世界では独裁体制が多いが、東南アジアはほとんどが独裁政権。その中で、ミャンマーが民主国家になれば周囲の国にも影響が大きい。
「SPRING FESTIVAL – ミャンマー春の集い」では、ミャンマー国軍とたたかう市民を支持する団体への支援をおこなっている。ミャンマー料理の屋台を出した人たちも。売り上げ600万円をNGOに寄付した。協力すれば何でもできる信念がある。独裁、絶対倒せる。
「Spring Festival」のフェイスブック
https://www.facebook.com/springfestivaljapan
「SPRING FESTIVAL – ミャンマー春の集い@新宿」 の概要
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000028.000080289.html
ミャンマーの若者の窮状を伝えたい
ミャンマー人Cさん:
2月1日NHKBS夜8時からスペシャル番組放送される。現在の若者がどんな生活をしているか報告する。2月1日、ビルマのことを伝えていきたい。
NHK「動画が暴いた軍の弾圧~ミャンマー クーデターから1年~」
https://www.nhk.jp/p/bs1sp/ts/YMKV7LM62W/episode/te/K9P7XJNGP8/
Cさんが出演したNHK BS1スペシャル
NUGの閣僚に同級生がいる
ミャンマー人Dさん:
目立った活動はできないが、陰ながらNUGを支える活動をしている。NUGの閣僚の中に同期生がいる。国賊軍(=国軍)を根絶しないとミャンマーの未来はない。非人道的な行いをする組織を無くしていくことに力を貸してほしい。
佐藤教授:
2014年7月Dさんと一緒にミャンマーを訪れた。Dさんはミャンマーの家族を心配しながら日本で暮らしている。
今後は連帯してより大きな活動にしていきたい
新町さん:
日本で新しいNPOが立ち上がる。昨年は、多くの団体の様々なミャンマー支援活動が行われ、広く知られることになってきた。今後は連帯してより大きな活動にしていきたい。世界的には、日本財団や日本ミャンマー協会はミャンマーにとってよくないと思われている。一方でミャンマー人と連帯する仲間が増えてきた。対抗する力は軍と比較すれば小さい。どうすればいいか。
佐藤教授:
そろそろ日本政府にものを言っていい。今後、どのようなかたちで運動を進めていくのか戦略的に考えていく必要がある。
須藤さん(日本財団):
2017年~2021年までカレン州に滞在していた。日本財団の資金で技術訓練校を運営してきた。武装集団が20あるうち10くらいが停戦協定を結んでいる。カレン州はいち早く停戦協定を結んだので日本財団によって訓練校や連携校がつくられてきた。日本財団の動きは、日本ミャンマー協会とは少し異なるのではないか。あくまで民主化を進める立場で軍を懐柔してきた。ミャンマーの人々の革命的な動きに協力できればと考えている。
全国で初めて都道府県議会で意見書を採択した長野県議会
NORTHさん(北海道):
北海道でも市議会で請願を行う。
続木幹夫長野県議会議員:
全国で初めて都道府県議会ではじめて意見書を採択した。これから県下の市町村議会で意見書採択に向けて動きをつくりたい。
地方活性化とあわせて取り組む支援
新町さん:
新しいNPOには石橋道弘参議院議員がいる。国を動かすことには時間がかかる。プロセスが大事ではないか。一つ一つのアクションに効力があるのかはわからないが、連帯して繋げていくことが大事。歴史を振り返れば、小さな市民運動が社会を変える力になったこともある。
募金活動や署名活動がバラバラになっているが、正しく集計する作業を行なって連帯を広げていったらどうか。日本ミャンマー協会は数字でどんな支援をしているか発表している。ミャンマーから日本に来たいという人は多い。軍政の教育のもとで、日本でなじめない状況がある。日本の教育を取り入れたりして若い人との連携をしていきたい。信州の会から呼びかけてほしい。
地方活性化とあわせて支援に取り組むのはどうか。例えば信州の高野豆腐を寄附金で買ってミャンマーに送ることが地方活性化にもつながる。
佐藤教授:
長野県には「水戻り磯部もち」もある。「おむすびころりん」がつくっている。自治体が防災で買っている。
なによりみんなの命が大事
保芦宏亮さん:
ミャンマーにいながら声をあげる新町君はすごい勇気だと思う。クーデター後、83日間ミャンマーにいた。ミャンマーにいた昨年4月16日に、自分の部屋に軍隊が入ってきた。顔出しで抗議活動をしていたので、殺されるかもしれないという恐怖から1週間後に帰国した。ミャンマーの方が声をあげられない分、毎週土日に声をあげている。日本ミャンマー協会、日本財団の前で抗議活動もしている。スプリングレヴォリューションレストランでは、木金は皿洗いの手伝いに参加している。今は日本でミャンマーカレーを製造販売している。今度こそミャンマーでオリジナルのカレーを作るのが次の夢。でもなによりみんなの命が大事。
クーデター前、日本財団からカヤー州のウコンを使って、カレーをつくる話があって、とてもうれしかった。しかし日本財団の笹川会長は、選挙監視団の団長として日本から派遣されて、2020年の総選挙に不正はなかったと発言していたが、クーデター後はこのことに沈黙している。おかしいと思い始めた。2か月前に、少数民族の上層部の人と会談した報道があり、笹川会長は、「ミャンマーは多民族の複雑な国で、なかなかひとつになれない、平和への道筋はとても複雑な方程式を解くようなものだ」と言っていたが、大多数のほとんどのミャンマー人の方々は、NUGを支持しています。そこにもう答えは出ている。NUGを支持して国軍を非難することです。Spring
Spring Revolution Restaurant (スプリング レボリューション レストラン)
https://springrevolutions.com/restaurant/
(3)活動報告とアピール
1)アジア子ども交流センター 青木正彦さん
募金活動に取り組み、現地へ送り始めている。今後は料理教室を開いてミャンマー人と交流をしていきたい。
ミャンマーを知るための写真展も行っていきたい。
2)信州大学2年生 小古井遥香さん
ミャンマー民主化を支援する信州の会のSNSを担当している。ミャンマー問題に関わりはじめたきっかけは信州大学の同窓生の皆さんが始めたクラウドファンディングに関わったこと。ミャンマーで何が起きたかを知ることと、誰が何を支援しているのかの情報を知ることはできる。関わるきっかけにしていきたい。私たちに何ができるのか考えていくきっかけとなって、国を動かす力となると信じている。民主化支援の波をつくっていきたい。
3)在日ミャンマー人からのアピール
ミャンマー人Eさん:
クラウドファンディングに参加した。民主化支援のZOOM会議にも参加してきた。目立った活動はできないが、いろいろ協力して民主化に向けた活動をしていきたい。
フェイスブックページを紹介する信州大学の小古井さん