長野市松代地区に松代大本営という巨大な地下壕があります。

太平洋戦争末期、政府の中枢機能移転のために、極秘で山中(象山、舞鶴山、皆神山の3箇所)に掘られた地下坑道です。

地下壕の工事は、東京大空襲に襲われ、敗戦が色濃くなる中、軍部が本土決戦に備え、天皇をはじめとする皇族や大本営、政府機関など日本の中枢を避難・移転させるため、1944年の11月11日から1945年8月15日の敗戦まで行われました。この建設には、当時の金額で1億円とも2億円ともいわれる巨費が投じられ、掘削には地域の労務報国隊や勤労報国隊、学徒・児童まで動員されましたが、その主力として最も危険な労働に従事させられたのは、その数6千人ともいわれる朝鮮人労働者でした。その多くが強制的に動員されたと言われており、壕は、貴重な戦争遺跡として、1990年から一部を公開しています。

松代大本営追悼碑を守る会は、戦後50年の1995年8月に「松代大本営朝鮮人犠牲者追悼平和祈念碑」(追悼碑)を建立しました。碑は、日本の侵略戦争、朝鮮半島植民地支配の加害の歴史を忘却せず継承するためのモニュメントとして、毎年8月に平和祈念の集いを開き犠牲となった朝鮮人労働者を追悼しています。また、未解明な部分が多い松代大本営工事の真相を掘り起こして、歴史の真実を後世に伝えるために活動しています。

追悼碑建立から26年目となる8月10日、今年も昨年に引き続き、新型コロナウィルス感染症対策を十分とって、平和祈念の集いが象山地下壕前広場で開かれました。守る会の会員をはじめ、在日韓国・朝鮮人の団体など60人余りが参加し黙とうをささげ、追悼の花を手向けました。

黙とうを捧げる参加者たち

参加者は一人ずつ追悼の花を手向けました

 

守る会の表秀隆会長(長野大学名誉教授)は、「日朝・日韓関係に改善の兆しが見られないが、だからこそ、過去の歴史を正視し、学びながらどう行動するかが問われている」とあいさつし、松代大本営地下壕工事を通して、植民地支配や朝鮮人強制連行、強制労働の加害の歴史に向き合い、平和な未来を創っていくことの大切さを強調しました。

碑の前であいさつする表秀隆会長

在日団体を代表して、民団県本部の金龍洙(キム・ヨンス)団長、朝鮮総聯・長野朝鮮初中級学校の河舜昊(ハ・スノ)校長から挨拶をいただきました。

民団県本部の金龍洙(キム・ヨンス)団長

朝鮮総聯・朝鮮初中級学校の河舜昊(ハ・スノ)校長

集いに参加した長野朝鮮初中級学校3年の趙利奈さんは取材に応え「この場所を忘れてはいけないし、歴史がなかったかのようにならないように守っていきたいなと思います」と話していました。

取材に応える長野朝鮮初中級学校3年の趙利奈さん

 地下壕前での祈念の集いに続き、サンホール松代で追悼碑を守る会第27回総会を開き、2021年度の事業計画を確認しました。

事業計画は、見学者向け独自パンフの更新・増刷をすすめ松代大本営地下壕跡の案内活動に取り組むとともに長野市の松代大本営・説明文の修正問題について、史実を正確に記すよう求める活動を継続すること、さらに、在新潟大韓民国総領事からの守る会への支援の申出を受け、朝鮮半島をめぐる歴史認識を共有しあう企画を準備するプロジェクトを発足させることなどが柱です。

総会での会長あいさつ

総会は密を避けて行われた