最高裁の上告棄却決定を受けて訴訟を振り返る

裁判は終わったが違憲の新安保法制廃止運動は続く

2015年に制定された新安保法制が日本国憲法に違反し、平和的生存権、人格権、憲法改正・決定権、安定した立憲民主政に生きる権利・利益などを侵害するとして、国に対して損害賠償を求めた信州安保法制違憲訴訟は、今年4月25日、最高裁判所が原告の上告を退ける決定を行いました。

この最高裁の不当な決定により、立法・行政・司法の三権による権力分立のもと、特定の権力による暴走を食い止めるという三権分立の理念が完全に絵に描いた餅であったことが明らかとなり、さらなる権力の暴走が極めて現実的なものとして危惧されます。司法による立法府・行政府へのチェック機能が十分果たされない状況にあるという残念な現実を見据えながら、しかし諦めることなく、今後、市民として、立憲主義を守るためにどのような行動が必要であるか、一人一人が考えていく必要があります。

私たちは、これからも立憲主義を守り、憲法の理念である平和主義を擁護し、二度と戦争を引き起こさせないため、引き続き粘り強く闘い続けなければなりません。

4月の最高裁の決定から半年を迎えるなか、信州安保法制違憲訴訟の経緯を振り返り、私たちが未来に向かって何をなすべきかを考えるための集会が10月14日、松本市勤労者福祉センターで開かれ、原告など約40人が参加しました。

集会ではまず代理人の安藤雅樹弁護士が訴訟の経緯を振り返りました。安藤弁護士は、長野地裁判決、東京高裁判決では、いっさい憲法判断に踏み込まず、平和的生存権や人格権の具体的権利性がないという形式的な論理で判決が下された点を批判しました。

次に、名古屋共同法律事務所の中谷雄二弁護士が「憲法9条をめぐる訴訟における安保法制違憲訴訟の意義と今後の展望」と題して講演しました。中谷弁護士は、全国で25裁判が提訴され、7699名の原告、1685名の弁護団が参加した訴訟は、憲法9条違反を争う訴訟として過去、最大規模だと指摘。集団的自衛権の行使容認に踏み込んだ安保法制の新たな段階での憲法9条に依拠した裁判であり、正面から法令違憲を問う訴訟であったと述べました。裁判は敗訴したものの、この裁判の評価として、①当初懸念された安保法制を合憲とする判断は一件も出させていないこと、②最高裁も砂川事件と違い「統治行為論」により司法判断の対象から排除することができなかったこと、③全国各地の訴訟で主張された憲法論や違憲の実態、政府の戦争する国づくりに対する事実に基づく批判などは今後の闘いの大きな財産となったことを強調しました。

集会では裁判が集結したため、訴訟の会は解散する方向を確認しましたが、新安保法制の廃止や戦争への道を拒否する運動を継続するため、362人の原告が新たなネットワーク組織を立ち上げていくことも決めました。

報告集会には約40人の原告が参加

代理人の安藤雅樹弁護士

講演した中谷雄二弁護士

原告団長の又坂常人・信州大学名誉教授